川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

映像・資料をウェブにアップしました。(5/15見えないモノと向き合うセミナー・保護者と教師のための放

2011-05-27 14:29:43 | 保育園、小学校、育児やら教育やら
110515_bnr_l5月15日行ったセミナーの映像および、使用スライドをウェブにアップしましたので、ご報告。

https://sites.google.com/site/radiology3871/seminar20110515/jiang-yan-hua-xiang-zi-liao

こちらでご覧になれます。

なお、津田敏秀さんの発表は「疫学の基礎の基礎」を説いてから、現状をどう考えるかというふうな構成になっているので、密度が異様に濃いです。

川端が、津田さん担当(参加要請しました)だったこともあり、このスライドや映像記録をみて興味を抱いた人には、どんどん「先」へ進んでほしいです。
そこで、津田さんの疫学入門書をあらためて紹介。
市民のための疫学入門―医学ニュースから環境裁判まで市民のための疫学入門―医学ニュースから環境裁判まで
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2003-10


また、医学部の学生さんや、実務で疫学調査をしたり、疫学を織り込んだ判断を下さなければならない可能性がある人にはこちらも推薦しておきます。
基礎から学ぶ楽しい疫学基礎から学ぶ楽しい疫学
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:2005-12



屋上のとんがり帽子

2011-05-25 12:02:42 | ひとが書いたもの
屋上のとんがり帽子 (たくさんのふしぎ傑作集)屋上のとんがり帽子 (たくさんのふしぎ傑作集)
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:2008-01-20
2008年の出版だから、きっと今のニューヨークでも同じなんだろうか、と思うと不思議な感覚にとらわれる。

1997-98にマンハッタンに住んでいた頃、ぼくはすっかりこんなのに気づいていなかったよ。
でも、視点を変えると、きっとあちこちにあったんだね。

とんがり帽子は給水塔・給水タンク。
ただし、金属製ではなくて、古くからの木製。
実は金属よりも、ずっと丈夫で長持ちで、「水がおいしい」のだそうだ。

夏・冬の気温差とか、ニューヨーク独特の気候条件も、木製が有利な条件らしい。

しかし、良い写真だなあ。
この写真絵本、紹介したくなった次第。だって、中2の息子とぼくがそれを見ながら、ああでもないこうでもないと議論が始まっちゃうような広がりがあるんだよ。
素敵だ。

なお、ぼくのニューヨーク時代の経験は、2冊のノンフィクションと1冊の小説にぶち込みましたが、「動物園にできること」と「リスクテイカー」(小説)は今も文庫として手に入るのに、「緑のマンハッタン」は残念ながら絶版です。
これ、なんとかしたいなあ。

なお、中古でやすーく買えるみたいてのが、かろうじて救い(?)か。
緑のマンハッタン―「環境」をめぐるニューヨーク生活(ライフ)緑のマンハッタン―「環境」をめぐるニューヨーク生活(ライフ)
価格:¥ 1,800(税込)
発売日:2000-03


と紹介したところで、むかしのいやーな記憶が。
Amazonの紹介ページで、ブックレビュー社なる紹介者が、本の紹介文を書いている。

*********
ニューヨークのもうひとつの顔。それはセントラルパーク,ハドソン川にあふれる自然の息吹
ニューヨークには世界中のあらゆるものがある。ニューヨークなら何でもそろう。情報の発信源であると同時に,それらを加工する技術にもたけた街。それがニューヨークの表の顔である。
そしてもうひとつは,世界中からやって来る人々を簡単に飲み込む懐の深さ。豊かに繁茂したサトウカエデやオークの森など,瑞々しい湿地に覆われたマンハッタン島の姿もイキである。だから,ニューヨークでは何が起こっても不思議はない。
著者は1997年の8月から98年7月にかけて,ニューヨークはコロンビア大学に研究員として在籍。そこで垣間見た環境保護活動家たちとの「人間以外」の生命をめぐる価値観や活動について真しに詳述した。つまり,体験的米国文明論の趣もある書である。

とはいえ,決して肩肘張って読むべきではない。著者自身が経験した「知的スリル」やおびただしい数のジレンマ,そしてちょっとばかりの生活上の冒険が満ちているからだ。予備知識は要らない。奇人変人の類の登場に驚かない心の準備はしておこう。
(ブックレビュー社)

*********

この紹介文は、今読んでも胸が痛む。
というのも、これを書いた人、よほどたくさん紹介業務があったのか、本の「はじめに」しか読んでいないのがあきらかなのです。

「はじめに」を読みそこに自分自身のニューヨークについてのイメージを合成し、こう書いておけば、外れていないだろうというふうにして書いた紹介。

結果、こういう本ではありませんから。

ぷんぷん。

「12歳の文学・第五集」から「はしご」を読んできた

2011-05-24 09:39:43 | 保育園、小学校、育児やら教育やら
12歳の文学 第五集 (創作児童読物)12歳の文学 第五集 (創作児童読物)
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2011-03-25
セレクションに手抜きをしているという非難はまぬがれず。

しかし、子どもたちの反応がとても良いので、だいたいの子が触れるまで、「12歳の文学」のシリーズを読んできた。今回でおしまいかな。


最新刊の第五集は、3月後半に出たばかり。
「はしご」という物語は、本格感のある話の構造で、読ませる。

不遇のうちに亡くなった女の子ユキが、生き返る・記憶を失ってまた赤ちゃんからジンセイをやりなおす・永遠に死ぬ、という三択を迫られ、結局、どれも選べずに、第4の選択肢、「選択誌を与える者になる」を選ぶ話。

第4の選択肢を与えることは、「選ばせる」側の子にもなにがしかの変容をせまるものでもあった。
ユキが新たな役割りを受け入れた後で、その子は自分の人生を生きることを選び直し、かつての「選択肢を与える役」の記憶を失った状態で、ユキのところにやってきたとも読めるイミシンなラストについて、子どもたちと話し合った。

一応、最後まで話を読んだのだけれど、話がそれでおしまいと思っていない子の方が多かった。
しかし、子どもたちよ、この余韻がいいんじゃないか。
この作者、相当できるよ。

例によって貸し出し。きっと1学期が終わるくらいまでには帰ってくるだろう。

「PTAヘルプライン」は作れるか、というTogetterまとめ

2011-05-23 09:38:59 | 保育園、小学校、育児やら教育やら
http://togetter.com/li/138740
とまてさんによる、「PTAヘルプライン」は作れるか、というTogetterまとめ。

話を投げかけたのは、ぼくで、下記の問いかけ。

*******
・PTAで、誰かが不当な仕打ちを受けたり、入退会をめぐって問題な対応を受けることがあります。役決めをめぐり、「人権問題レベル」の問題が起きることがしばしばだと認識しています。これをなんとかできないか、自治体と話し合ったこともあります。

・しかし、PTAは建前上、任意団体であり、社会教育関係団体です。社会教育法では、要請があった時にのみ、行政が助言できることになっており、それ意外の介入はできません。だから腰が引けます。あきらかな人権問題の場合でも。

・そこでP連、P協、に会員支援のヘルプデスクを置いてもらえばいいのではないか、と考えたりもするのですが、これは望み薄。本当に、1000万人をこえる児童数(世帯数ではなく!)から会費を吸い上げる日Pがやってくれてもいいんですけどね。

・そこで思いついたのは第三者機関。たぶん最初は自治体ごとの単位になるでしょう。PTAの不合理・非合理・非人間性の部分(良い部分ももちろんある)について相談を受けた場合、教育委員会・校長・当該PTAに改善を申し入れる。

・同じ自治体ならば、教育をめぐって、この第三者機関の構成員もステークホルダーです。教育の場で起こる人権問題を看過することはできず、PTAは子どもたちの手本になれるような組織であってほしいという観点から、申し入れ可能だと思うのです

・PTAオンブスマン? PTAヘルプライン? PTAアクショングループ? 実現可能かも含めて名前も募集。PTAに心痛める市民(子育て現役、OBとわず)による活動はできないものでしょうか。仕事しつつコメント待ちます。
*******

なにはともあれいろいろな意見が出て参考になりましたよ。


病理学の一般書を2冊(20110527追記2)

2011-05-20 11:56:29 | ひとが書いたもの
わたしの病気は何ですか?――病理診断科への招待 (岩波科学ライブラリー)わたしの病気は何ですか?――病理診断科への招待 (岩波科学ライブラリー)
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2010-12-09
その「がん宣告」を疑え 病理医だから見分けるグレーゾーン (講談社プラスアルファ新書)その「がん宣告」を疑え 病理医だから見分けるグレーゾーン (講談社プラスアルファ新書)
価格:¥ 880(税込)
発売日:2010-06-22
前々ら興味を持っている病理学の本を2冊続けて読んだ。
古い話だが「白い巨塔」の中で、権謀術数渦巻く医局の中、病理学の教授だけが「真実を追究する学徒」として登場し「医学は病理学に始まり病理学に終わる」と述べるシーンが印象的だった。

実際に、物語のラストシーンは、栄華を誇った教授がみずからがんに罹患し死亡、病理解剖されるシーンだったはずだ(かなりあいまい)。

「病理学に始まり病理学に終わる」というのはすごい自負であるが、それとは別方面から疫学の勉強などをしていると、日本の病理学重視はなにか変なんじゃないかという気もしてくる。

しかし、病理学という領域自体は、医学界で頼りにもされているものの、なり手のなかなかいない不人気分野らしいことも聞き知っていた。というわけで、そのあたりも含めて興味津々。


両書とも、きわめて一般書なので、わかりやすい。しかし、知らないことだらけの世界なので、それなりに頭の中がパンパンになる要素もあって、いいあんばいである。

*********
前者「わたしの病気は何ですか」は、岩波科学ライブラリーらしい良書。
我々が病院に行って、なにやら病気らしいとわかり、たとえば胃の組織を少し採取したあとでどんな検査が行われどう判断が下されるのか。

病理医の「確定診断」の仕事が導入部として述べられる。その後、一般的に視野を広げ、基礎編・応用編と続く。読みやすい。手にした組織をどんな手技で標本にしていくのか、とか、術中迅速診断話など興味深い。

キモは、サブタイトルになっている「病理診断科」への招待の部分か。病理学、「標榜科」として認められていなかったそうなのだが、2008年から「病理診断科」なるものが認められ、大きな病院などではぽつぽつとそのような専門科ができつつあるそうだ。

そして、市民病理学への誘いという大きな風呂敷を広げて、着地する良書。

最後の方のコラムで述べられている病理医不足は深刻。年間千数百万件必要とされている病理診断に対し、病理医は千数百人しかないという。単純計算一人の病理医が1万件の病隣診断をする。年間300日実働として、1日で300の標本を見なければならない計算になる。この計算が正しければ、ちょっと危険な領域だ。

日が当たらず不人気で有名(らしい)麻酔医でも8000人くらいはいると聞いたのだが。これは麻酔医ハナちゃんのコミックから仕入れた知識だから本当かしらないが。

*********
「そのがん宣告を疑え」は、「病理医だから見分けるグレーゾーン」という不思議なサブタイトルがついている。

病理医なら、グレーゾーンにしっかりと線を引けるという意味なのだろうか。

それはそれとして、冒頭のエピソードが衝撃的だ。

静岡県清水市に、乳がん手術の名医がいた。
その名医にかかると、乳がんの再発率が全国平均よりずばぬけて低い。すばらしい手術の技術を持った名医である……というのが嘘で、実は、ろくろく病理検査もせずに、乳がんでない人まで手術をしていたからではないか、と訴訟になったという話。

たしかに、乳がんでない人を手術すれば、「再発」はありえないわけで、すごい名医もいたものである。

で、だからこそ、病理検査は大事で、いかに病理医はグレーゾーンを見分けることに神経をとがらせ、努力しているか、という方面に話はいく。

グレーゾーンの病変については、一歩引いて見つめるべき、という信条は信頼できると感じた。
病理医の魅力、やりがいについても語られ、新たな病理医よ出でよ!という内容にもなっている。

*********
両方とも、病理医の世界を垣間見せさてくれて、非常に興味深い読書だったといえる。

2冊通して読んでみて、不思議に感じたのは、感度と特異度についての議論がないのはどうしてだろうということ。

たとえば、後者の方に出てきた乳がんを例にとって考えてみる。

乳がんの集団検査で、ひっかかってくる人たちの中には疑陽性(本当は乳がんじゃないのに、乳がんかも、と判定された人)がかなりまじっている。これは、感度が高い(乳がんの人を見逃さない。しかし、同時に乳がんぽい人も拾ってしまう)スクリーニングの宿命。

そこで、確定診断というものが必要になって、病理検査の出番だ。
病理検査は、感度は高くなくてもよくて、特異度が高いものを採用する。つまり、がんではない人をちゃんとがんではないと判別すること。
病理検査にまわされてくる標本は、かりに、乳がんの検診で陽性が出たのだとしても、その中にまぎれているかもしれない、本当はがんではない人をかんではないと判別してあげることが大事だ。

これを完璧にできれば、最初は疑陽性が含まれた「がん候補」の集団から「本当にがん」のみの集団を抽出できる。
このとき、病理医は、自分が特異度の高い検査をしているのだと自覚しているのかなあと素朴な疑問。

ちなみに、特異度の検査は頑張っても100%にはなりえない。これは、感度を高めると疑陽性が多くまぎれこむのと一緒で、特異度を高くすると、今度は本当はがんなのにがんではないと判定される人が出てくる。
慎重に複数の方法で確かめると、かなり確からしいところまでいくだろうけれど、残念ながら一〇〇%にはならない。

で、一般にがんを見逃すことの方が怖いと考えられるだろうから、きっと、今でも「がんではないのにがんとして手術される」人っているんだろうなあと、この本を読んであらためて思ったのだった。

考えが浅かったらご指摘を。


20110526追記
このエントリを読んで、複数の方から「意を得たり、医学不信なり」みたいな反応をいただいたので追記。
ぼく自身としては、ここで医学不信を表明したかったわけではまったくないです。
もちろん医学過信はいかんと思いますが(何事も過ぎたるは及ばざるがごとし)、別に不信になるほどでもない。

ある方は、「がん」を不定な概念として、日本の医療は、不定なるモノを無理矢理ある形に落とし込み利益を得んがための利権産業である(意訳)と述べました。

そうなのかな?
たしかに「がん」というのが、境界の分からない言葉であるのは事実かも。
しかし、世のお医者さんたちは、ただの「不定な」概念相手に日々、仕事してるのですか?
医学のおかげで、平均余命が伸びたり、QOLが向上したように思えるのはただの錯覚ですか?

ここから先、世界観の問題になってしまうかもしれんですが、ぼくはそう感じたことは全くないです。

で、ぼくがここでなにが言いたかったかというと……
「医学は病理学に始まり病理学に終わる」わけでも、「臨床にはじまり臨床に終わる」わけでも、両方リンクしないと意味ないし(リンクさせるのは、たぶん疫学の仕事ですよね。このブログ読んでくれている人は周知の通り)、しかし、すべてうまくリンクしたとしても、「間違いは必ずどこかでおこっている」という、あまり受け入れたくないけれど、まず間違いない事実についてです。

これは、この世界の仕組み上仕方ないので、そういうの織り込み済みで、我々は生きなきゃいかんわけです。
過信はいかんけど、不信も不幸でしょう。
そういうこと。
(やや酔っ払いながら追記)

追記2 20110527
コメント欄でいただいたコメント欄から、「特異度の高い検査」「病理検査」「確定診断」といった語群を、かなり混同しているのかもしれないと気づきました。
病理標本を見ることが、そのまま確定診断であるというのは、単純に現実と違うみたいですね(汗)


5/15見えないモノと向き合うセミナー・保護者と教師のための放射線学」無事に終了

2011-05-18 17:56:31 | 保育園、小学校、育児やら教育やら
110515_bnr_l5/15(日)、国際大学グローコム(六本木)にて行われた「見えないモノと向き合うセミナー・保護者と教師のための放射線学」の開催を無事に終えることができたので、報告いたします。

もともと大きなハコではないですが、週末のまさに行楽日和の中、会場には50人ほどの保護者・教師、その他興味のある方が集まってくださいました。

またニコ生中継では、およそ1万1000近い視聴が記録されていたので、かなりの方が見てくださったのだと思います。

わずか3週間前に急遽開催を決め、インターネットを介して仲間が集まり、えいやっと当日の勢いでやってしまったというかんじです。たぶん運営上の不備はあちこちあったはずですが、それでも致命的なことにはならず、無事に終えることがきました。

快く講演を引き受けてくださった先生方、当日足を運んでくださった方々、そして、もちろん、一緒に、開催のために動いてくれたみなさんに感謝!

その上で、内容について総括しておきます。

東大の横山広美さんによる「放射線,放射能ってなんだろう」では、放射線・放射性物質・放射能、といったまぎらわしい言葉の背後にある、物理学の基本的な概念を説明いただきました。メディアで放射線が○シーベルト・時とか、放射能が○ベクレル、といわれた時に、たじろがぬよう、福島第一原発の事故が我々に突きつけている現実的なリスクを理解するための地ならしをしていただきました。

横山さんが素粒子物理を学ぶ学生だった頃、実験施設内では絶対に飲食禁止(内部被曝を避けるため)だったというエピソードが印象的でした。

科学が万能ではなく、「科学的合理性」と「社会的合理性」を常に考え合わせなければならないという重要な指摘で、次の演者、岡山大学の津田敏秀さんにバントタッチしてもらいました。

津田さんによる「科学的確率統計の考え(VSゼロリスク)について」は、放射線の健康影響を考えるにあたって欠かすことのできない「疫学」の基礎の基礎を語っていただいた上で、放射線への曝露と健康被害の関係に切り込みました。

さらには、現在の国際的指針が基本的に、広島・長崎の原爆による被害(短い時間の外部被曝中心)の研究から得られたもので、今回のように長期間にわたって、おそらくは内部被曝も含めてだらだらと続く被曝についてはあまり例がないことから、ヨーロッパの核施設周辺での白血病増加の研究などの成果も織り込んで、より安全側に考えておくべきとの認識も示されました。

と同時に、わたしたしたちの世界には、放射線以外にも常にリスクはあり、例えば、放射線のリスクと「避難するリスク」との兼ね合いをいかに考えるかが、施策としても、個人防衛の考えからも、絶えざる課題として突きつけられることも示されました。

東海大学の芳川玲子さんによる「震災とストレス、メンタルケアについて」は、「自然災害に対するメンタルケア」と「見えない放射線についてのメンタルケア」が大きく異なることを指摘してくださいました。

「自然災害によるストレス」は、余震などの減少から安心感が回復し、日常生活がある程度確立していく中で、同じ災害を経験した子どもどうしの連帯感などもプラスに作用するすることがあるのに対して、原発事故の場合、終わりが見えず安定した日常になかなか戻れないことや、「見えない」ことで安全感・安心感が回復しにくいことから、大人も子どもも大きな不安を抱え込むことになるとのこと。子どものへの対応として、避難してきた子どもたちに対して、また、被災地外でも不安を抱える子どもに対しての対応の仕方を、ケースに応じて教えていただきました。

質疑応答で「地震ごっこをしたがる子どもにどう対処するか」という問いに対して、「一緒になって、恐がり、避難するフリをしてあげてください」と答えられたのが印象的でした。子どもたちは、経験した地震の恐怖も、自ら再現し、避難に成功する(コントロールに成功する)ことで、自らをいやしていく方法を知っているという主旨の説明に大いに納得いたしました。

それぞれ限られた時間の中での講演・質疑応答で、今私たちが知っておくべきことのすべてがつくされたわけではありません。しかし、保護者や教師が、子どもたちに対して、また、子どもたちとともに、適切に考えつつ、働きかけ、行動するための指針を得る一助となったのではないか、と自負しています。

あらためて、講師のお三方、来場してくださったみなさん、そして、この企画を一緒に実現してくださったスタッフのみなさんへ感謝!

近い将来、当日使用されたスライドや動画などを分かりやすい形でアップできる予定です。その際にはまたお知らせします。

なお、津田さんが紹介してくださった「疫学」は、とても重要な考え方を提示する専門分野ですが、なぜか日本ではあまり知られていません。
津田さんの入門書を紹介しておきます。
市民のための疫学入門―医学ニュースから環境裁判まで市民のための疫学入門―医学ニュースから環境裁判まで
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2003-10


また、例えば、自治体などで公衆衛生分野(もちろん放射線被曝の健康影響を含む)に関して実務をこなさなければならない可能性のある方には、こちらの本も推奨します。
基礎から学ぶ楽しい疫学基礎から学ぶ楽しい疫学
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:2005-12


追記
無財源ではじめた企画ですが、入場料から必要経費を差し引いた額と、懇親会費としてスタッフから集金したものからのささやかな剰余金をあわせて、被災地で活動するNGO/NPOを支援するThink The Earth基金に寄付することができました。

「ナーガの雨」雲の王3

2011-05-17 12:40:16 | 自分の書いたもの
小説すばる 2011年 06月号 [雑誌]小説すばる 2011年 06月号 [雑誌]
価格:¥ 880(税込)
発売日:2011-05-17
小説すばるに出ました。
これ隔月連載ですのでご注意を。

今回の舞台はインドシナ半島なんですが、ぼくはこの小説のための取材中に3月11日を迎えました。
次のべつのネタの取材をキャンセルしてすぐに帰国したのだけれど、ずっとCNNをみて眠れなかった夜は辛かった。

子どもたちも帰宅難民と化したつれあいが帰り着いた午前3時まで、家にふたりぼっちで(娘の小学校、地区ごとに帰宅させちゃったんですよね)、かわいそうなことをしました。

結果的になんにもなかったけど。

そんな背景の中、書いた第三話でした。


月刊プリンシパル6月号

2011-05-12 18:13:00 | 自分の書いたもの
月刊 Principal (プリンシパル) 2011年 06月号 [雑誌]月刊 Principal (プリンシパル) 2011年 06月号 [雑誌]
価格:¥ 620(税込)
発売日:2011-05-13
校長先生のためのPTA入門的連載の第3回目です。

今回は、校長先生が薄々気づきながらも、無視してしまうことの多い(と思われる)PTAの現況のきつさについて、なぜ、校長の目にはそれほどに見えないのか(無視していられる程度にしか見えないのか)、メカニズムを考察したりしています。

今回の結論としては、今後、不合理で非人間的なPTAを温存する学校は評価を落とす時代がやってくる、という予言(?)で締めました。


「ギャングエイジ」最終回。

2011-05-11 17:51:32 | 自分の書いたもの
Gangウェブメディア「文蔵」にて、連載中の「ギャング・エイジ」第12話「最後の授業(ちいさな卒業式)」が更新されました。
最終回です。きっちり12回で終わるのが、1年を描くこの作品にはふさわしいと思い、この回数に収めました。

すでに書籍化のための改稿も第一段階を終了しており、7月後半か8月あたりには本になるのではないかと期待しております。

1年間のご愛読ありがとうございました!

http://www.php.co.jp/bunzo/web_bunzo_list.php#kawabata

スカイエマさんのこのカットを使うのも最後だなあ。また、なにかよろしくおねがいします!


Ustreamもニコ生もやるというのに

2011-05-11 16:04:01 | 日々のわざ
110515_bnr_lこの企画、Ustreamは最初からやる予定でしたが、どうもニコ生もやる方向になってます。

それでも、現場に足を運んで、肉声を聞いてやろうって方々は、ある意味、我々の「共犯者」です。企画を成立させてくれるサポーターであります。

スタッフはTwitterや口コミで集まり、全員ノーギャラ、もちろん財源なし。フライヤーの印刷代、講師交通費など、必要経費は、足りなかったら「言い出しっぺ」の持ち出しです。

だからこそ気楽で、小回りが利くというのはあるのですが、本当に来てくださる方が、ぼちぼち集まりだして(事前登録制です)うれしいかぎり。

でも、まだまだ席はあります(笑)。
http://www.i-learn.jp/arc/index.asp?did=707&k=X99T6UWV

共犯者来たれ!


呼びかけ人って、いったい……(今も募集中)

2011-05-10 17:09:28 | 日々のわざ
110515_bnr_lええっと、今回企画しているセミナーのウェブページの下の方を見ていただくと「呼びかけ人」と書かれた人たちがいます。

↓このページの下の方をみてやってくださいませ。
http://www.i-learn.jp/arc/index.asp?did=707&k=X99T6UWV

発起人とか、主催とかではなくて、「呼びかけ人」。
おまけに、永井美奈子さんの名前が入っているぞとか、神矢みのるさんや神先史土さんなどマンガ創作者が入っているぞ、とか不思議な現象が起きてます。

実は、これまた「呼びかけ人」に入ってもらった秋津コミュニティの岸裕司さんに去年、教えてもらった(?)、非常にゆるーいスキームでして、主旨に賛同し、周囲に呼びかけてくれるなら、だれでもなれます。
当日来てくださると素敵ですが、それができないから、呼びかけ人として貢献しましょう!というパターンもあり、です。永井さんはそうです。


印刷物として作ったフライヤーにはその時点での「呼びかけ人」のリストの脇に(常時更新中)とか書いてあり、ウェブ上では、どんどん更新していきます。今回は企画から実施までの期間が極端に短いため、あまり集まってませんが、去年行った「フォーラム・PTAは新しい公共を切り拓けるか」では、最終的にこんなことになりました。
http://pta-forum.seesaa.net/article/154816076.html

このときはPTAをめぐる議論をして、意見の違う人も当然のごとくたくさんいるわけですが、それでも広がる仲間意識みたないものが、素敵でした。

というわけで、今回のセミナーの呼びかけ人も、まだまだ募集中ですよ!

あと、下の本は、ぼくが、コミュニティビルディングに興味のある人によく薦める岸裕司さんの名著。
学校を基地に「お父さんの」まちづくり―元気コミュニティ!秋津学校を基地に「お父さんの」まちづくり―元気コミュニティ!秋津
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:1999-03


「見えないモノへの不安と向き合う」セミナー(保護者と教師のための放射線学とメンタルケア)

2011-05-06 05:46:52 | 保育園、小学校、育児やら教育やら
110515_bnr_lタイトルのごときセミナーを急遽開催することになりました。

日時・会場
2011年5月15日(日曜日)13:00~15:30(開場12:30)
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター

お三方が、次のようなテーマで語ってくださいます。

「放射線,放射能ってなんだろう」
横山広美先生 東京大学大学院理学系研究科准教授

「科学的確率統計の考え(VSゼロリスク)について」
津田敏秀先生 岡山大学大学院環境学研究科教授

「震災とストレス、メンタルケアについて」
芳川玲子先生 東海大学文学部心理・社会学科教授

詳しくはこちらをご覧くださいませ。申込みフォームなどもありますので。
http://www.i-learn.jp/arc/index.asp?did=707&k=X99T6UWV
その上で、多少、能書きを述べます。

かなり緊急に、えいやっと立ち上げた企画です。

福島の子が避難先で通う学校でいじめられたり、福島というだけでホテルに泊まるのを拒否されたり、というニュースが立て続けに報じられた時、呼びかけ人の中に名前のある川石さん(漫画家)とぼくがTwitterで「こういう時こそ、PTAで放射線ってなんだ、みたいな勉強会をやればいいのに」とやりとりしていたところ、グローコムの豊福さんが「ハコなら、ここにありますが」というオファーをしていただき、じゃ、やろか、とあっというまに決まっていました。

早稲田大学の田中さんに横山さんに声を掛けていただいたり、ぼくから津田さんにお願いしたり、豊福さんから芳川さんに連絡していただいたりするうち、川石さんを中心とする広報隊が、別名チーム杉並として立ち上がり、フライヤーやバナーやウェブサイトを準備してくださいました。

できる時に、できることを、できる人が!
って、まさにPTAみたいでしょ。それを、言葉の通りに実行すると、こんなふうになります。

というわけで、本企画は、PTAの「家庭教育学級」拡大版のような意味合いを持っているとぼくは考えております。

だからといって、どうしたと言われると困るのですが、そういえば、去年の夏、似た方式の企画をやりましたっけ。
http://pta-forum.seesaa.net/article/158112960.html

これも、夏だけにあつーい会でありました。

閑話休題。
今回のセミナーですが、ひとつだけ、注意書き。
おそらくは東京近郊の方々が集まる「家庭教育学級」になると思われます。
Ustream中継もするはずなので遠くの人もごらんになれますが、どちらかというと首都圏目線になる可能性が高いことをご承知おきください。

マグネシウムがジンルイを救う?

2011-05-01 18:44:15 | ひとが書いたもの
マグネシウム文明論 (PHP新書)マグネシウム文明論 (PHP新書)
価格:¥ 756(税込)
発売日:2009-12-16
マグネシウムがシンルイを救う?
といったかんじの本。2010年に出たもので、原発に見込みなし、と多くの人が思っている今、オルタナティヴとして、非常に魅力的に映る出来映えだ。

この場合、本の出来映えがよいという意味で、本当にここに描かれているマグネシウム循環社会が、容易に実現できるどうか、というのはぼくには分からない。原理的には可能でも、なかなか超えられない壁とか、技術的にはできていても、別の理由で(たとえば社会文化的な要因)で、主流にならない技術とか、いろいろあるわけで。

しかし、この本で提唱されるマグネシウム循環型のエネルギーサイクルは、破綻がなく、魅力的だ。なにしろ、ほとんど自然エネルギーだけを使い、最終的には火力発電までマグネシウムで置き換えるところまで考えてある。
長い目でみれば化石燃料を代替でき、二酸化炭素を出さず、それ自体をリサイクルして使い続けられる夢のエネルギーと言ってもいい(永久機関的エネルギーというわけではないですが、念のため)。

さらっと書くと……
・おおもとのマグネシウムは、海水の淡水化の副産物として採取。逆浸透圧膜を使った従来の炭水化装置よりはるかに効率のよい太陽熱を使った炭水化プラントをすでに開発済み。すでに商品化し、プラント輸出済み。
・酸化マグネシウムを金属マグネシウムに精錬するために、太陽励起レーザーを使う方法を開発中。かなりイイセンいっている。現在のマグネシウム精錬よりも安価になる。
・金属マグネシウムを「空気電池」として使い、自動車に応用する方法は開発済み。
・既存の火力発電所をそのまま活用し、マグネシウムを燃やして火力発電する方法も提案。
・いずれも、「燃えた」後に残るのは酸化マグネシウムのみ。それをまた太陽励起レーザーで再精錬し、金属マグネシウネに戻す。

風力よりもエネルギー密度が高く、水素のように取り扱いが難しくない点で、マグネシウム循環型のエネルギー供給モデルは優れているとか。

さて、どうなんでしょうか。著者の頭の中ではすでに「出来上がっている」ようであり、ぼくも破綻なく炭素フリーであるこの一連の技術群を、読んで感じた範囲では、好感しているのだが。

で、この本を読んで誰もか抱くであろう素朴な疑問について、すでに著者自身が回答したこんなページがあった(ここで聞いている側と聞かれている側が、のちにこの本を書いたわけだ)。
http://wiredvision.jp/blog/yamaji/200907/200907151101.html

基礎から学ぶ楽しい疫学

2011-05-01 04:56:09 | ひとが書いたもの
基礎から学ぶ楽しい疫学基礎から学ぶ楽しい疫学
価格:¥ 3,150(税込)
発売日:2005-12
「エピデミック」を書く前から、疫学、疫学言っている川端ですが、評判のよいこの本を、ずっと読まずに済ませてました。

ゴメン! これは大変な良書です。

なにはともあれ、看板に偽りなく、楽しい! 特に脚注が(笑)。
脚注だけを読むという、変態読者がいるというほどに楽しい脚注というのは、ちょっと規格外。

その上で……
非常に体系だった議論が展開されるので、とても安心して、流れに身を任せ、しっかり知識が身につく、というのは希有な書籍ですね。背景には、著者が思い切りよく記述の精度を切り替えている(必要なところはきっちり、それほどでもないところは厳密さを求めず)からだと感じました。

さらに、疫学で使われる様々な段階の様々な「方法」を常に、うまく整理して提示してくれるので、頭に入ってきやすいです。

たとえば、疫学の研究デザインについて、それぞれの射程、メリット、デメリットなどをしっかり述べてくれるわけですよ。(表になってます。楽しい脚注もあります)

日本ではコホート研究こそ、疫学の王道で、症例対照研究は劣ると考えている人は多いが、それは間違えで、研究デザインには長所短所があり、コホートでしかできないこともあれば、症例対照研究でしかできないこともある、というくだりは、感涙モノ。

ほんと専門家だって、そこのこと、誤解している人が多いんだから。

ぼくはかつて、感染研での取材で、インフルエンザ脳症の症例対照研究はできないのかと、聞いたことがあるのだけれせど、「対照群の設定が難しい」という理由で現実的ではないと言われたことがあって、しかし、この本が述べる「基礎」をふまえると決してそんなことはなさそう。

というか、東京都くらいの大きなグループでコホートを追跡しても、まれな症例なので、ちゃんとした結果が出てこず、時間もかかるわけですよ。対照群の設定が難しかろうが、すでに病気になった人を全国から捜してきた上での症例対照研究の方が適しているわけです。

で、研究デザインの問題はこのあたりで切り上げるにして……実際に研究をまとめる際に問題になる誤分類について。その誤分類が、ディファレンシャルかノンディファレンシャルかを考えることも大切なのがよく分かります。後者は非差誤分類と和訳されてました。

よく喫煙と健康影響についての研究で、誤分類を指摘して、研究があてにならない、などと、たばこ会社が主張することがあったのですが、非差誤分類の場合、結果がぼやける方向(過小評価する方向)に働くので、誤分類があってもしっかり結果がでるのは、逆に強い証拠、とまで言えちゃうわけですね。

さらに、交絡を制御する際に、層化するのか、多変量解析をするのか、メリットデメリットも懇切丁寧におしえていたたきました。

さらにさらに……統計的検定よりも、推定をせよというのも、おっしゃとおり。ロスマンもどこかで言ってましたっけ。検定というのは「有意かどうか」「帰無仮説を棄却できるかどうか」だけに焦点を当てるけど、「推定」は中心値と信頼区間を示す分、情報量が多い。なんだか、ぎりぎり1をまたいでいて有意にはならなくとも、なんか関係ありそうだなあというところまで、疫学では気にしようよ、という話。
そりゃあそうだよなあと納得(今、書かれる疫学論文は実際に、95%CIをきちんと書いてあるはず)。

ま、こんなかんじで、ほかのこともたくさん、楽しく書いてあります。

強くお奨めします。

なお、これまで、人に薦めてきた疫学入門書との棲み分けもかなりはっきりと分かりました。

まず、本書は、「初歩的ながら体系だった知識を得たい人」「本書を読んでから、専門書に進みたい人」向け。将来実務家になる可能性がある人も。

津田敏秀さんの「市民のための疫学入門」は、本当に「市民」として、知っておくべき疫学知識(一番一般向け)。

そして、「ロスマンの疫学」は、因果推論の森にちょっとばかし入り込んで彷徨ってもいいという人や、哲学的背景に興味がある人、ってかんじでしょうか。
市民のための疫学入門―医学ニュースから環境裁判まで市民のための疫学入門―医学ニュースから環境裁判まで
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2003-10

ロスマンの疫学―科学的思考への誘いロスマンの疫学―科学的思考への誘い
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:2004-08


追記
ほんと「楽しい疫学」は、各章が楽しくて、だらだら書いていると、とりとめがなくなってくるのだけれど、あとひとつふたつ。
・記述疫学と分析疫学で、なんとなく分析疫学の方が高級みたいな、イメージを持っていた不明を恥じました。記述疫学の方法で整理したとたん、人ははじめて「見通し」を持ち得て、さまざまな仮説を立てたり、直接、公衆衛生政策に反映させたりできるようになるわけですね。
・感度と特異度がトレードオフである話は、いろいろなところで見るようになったけれど、ここでもよい議論がされています。