まずは朝日新聞のタミフル報道。以前、話題になった「タミフルを飲むと意識障害、幻覚などが出て、自殺(?)に至るケースもある」といったことが、それほど心配しなくても良いんじゃないか、というはなし。
以下引用。
まず気になるのは、これ、疫学研究なのだろうか。
数字の出し方が、疫学的ではないけれど、それは記者が分かりやすさを優先してこうなったのかも。たぶん、「タミフル曝露群」と「タミフル非曝露群」で分けて、オッズ比を出すような症例対照研究したのだと想像する(詳しい報告書どこかにアップされてませんか?)
で、もしそうなら、この結論は、納得できる範囲内。どのみちインフルエンザで熱が出ている人が、痙攣したり、幻覚やうわごとを言うのは、よくある話。それをタミフルのせいとするかどうかは、結局、こういう研究で比較するしかないわけだ。
でも、さらに一点、気になってならないこと。
子どもを持つ身として、インフルエンザの予防接種は効くのかどうかということについてのエビデンスがほしい。
予防接種しても、インフルエンザにかかること自体への抑止効果がそれほどないのは多くの人が知るところ。「発熱を指標とした場合1歳以上で6歳未満の幼児では約20~30%の発病を阻止する効果」というのが厚生労働省の研究だが、発熱したかしないかだけで切り分けているので、なんだかすっきりしない(インフルエンザ以外の発熱も含まれている)。
では、なぜそれでも推奨されるかというと、重症化が期待できるから、というのが標準的な説明だ。これは期待であってエビデンスではない。
発症が少なくなるなら、やはり重症も少なくなるだろうなどという説明を受けたこともあったっけ。でも、これもエビデンスではない。
特に気になっているのは、重症化の最たるものであるインフルエンザ脳症。
レアなケースだからこそ、症例対照研究が威力を発揮する。なのに、無理にコホートでやろうとして「サンプルが少ないからはっきりしたことが言えない」などとのたまう専門家がいる。脳症になる子どもは年間数百人。その中で亡くなるのは、百人未満。たとえば、ひとつの県の子どもをコホート研究で追跡しても一年に数人しか症例がいないことになる。
だから、実質上、症例対照研究しかないのだ。
で、今回のタミフル調査。
前述の通り、たぶん症例対照研究だ(コホート内症例対照研究っぽい雰囲気もあるが)。
これくらいの人数だと脳症というところまではいった人は少なかっただろうから、脳症のエビデンスはこの研究からは出てこない。でも、重症と軽症をどこかで切り分けることはできる。たとえば、痙攣だとかうわごとだとか、脳症の前駆症状とされるものはどうか。インフルエンザ予防接種を受けると、痙攣したりうわごとをいったりする子が減るのかどうか。
各症例がインフルエンザの予防接種を受けていたかどうか、ということを聞き取ってくれれば(たぶん聞き取っているのではないか)、インフルエンザワクチンに曝露・非曝露に対して、それぞれどれだげ重症化したり、しなかったり、ということを比較して結論を得ることが出来る。
ワクチン効くのですか? 発症した後で、重症化をふせいでくれるのですか?
タミフルでできて、ワクチンでできない、なんてことはないはずなのに、なぜ、やってくれないのだろう。
追記
このタミフルの研究、かなり問題がありそうだと分かってきました。
タミフルと異常言動との関係を少なく見積もるための努力があらゆるところで払われている、ような気配。
そのうち別エントリを書きます。
以下引用。
調査は昨年度、全国12都県の小児科医を通して行い、2846件(99.5%が0歳から15歳まで)の回答を得た。発熱後7日間の服薬状況や肺炎や中耳炎の併発、けいれんや意識障害、幻覚やうわごとなどの異常言動があったか答えてもらった。
調査対象の患者の9割がタミフルを服用していた。服用した患者の異常言動発生率は11.9%。一方、服用しなかった患者の異常言動の発生率は10.6%だった。統計学的に意味がある差ではなかったという。
まず気になるのは、これ、疫学研究なのだろうか。
数字の出し方が、疫学的ではないけれど、それは記者が分かりやすさを優先してこうなったのかも。たぶん、「タミフル曝露群」と「タミフル非曝露群」で分けて、オッズ比を出すような症例対照研究したのだと想像する(詳しい報告書どこかにアップされてませんか?)
で、もしそうなら、この結論は、納得できる範囲内。どのみちインフルエンザで熱が出ている人が、痙攣したり、幻覚やうわごとを言うのは、よくある話。それをタミフルのせいとするかどうかは、結局、こういう研究で比較するしかないわけだ。
でも、さらに一点、気になってならないこと。
子どもを持つ身として、インフルエンザの予防接種は効くのかどうかということについてのエビデンスがほしい。
予防接種しても、インフルエンザにかかること自体への抑止効果がそれほどないのは多くの人が知るところ。「発熱を指標とした場合1歳以上で6歳未満の幼児では約20~30%の発病を阻止する効果」というのが厚生労働省の研究だが、発熱したかしないかだけで切り分けているので、なんだかすっきりしない(インフルエンザ以外の発熱も含まれている)。
では、なぜそれでも推奨されるかというと、重症化が期待できるから、というのが標準的な説明だ。これは期待であってエビデンスではない。
発症が少なくなるなら、やはり重症も少なくなるだろうなどという説明を受けたこともあったっけ。でも、これもエビデンスではない。
特に気になっているのは、重症化の最たるものであるインフルエンザ脳症。
レアなケースだからこそ、症例対照研究が威力を発揮する。なのに、無理にコホートでやろうとして「サンプルが少ないからはっきりしたことが言えない」などとのたまう専門家がいる。脳症になる子どもは年間数百人。その中で亡くなるのは、百人未満。たとえば、ひとつの県の子どもをコホート研究で追跡しても一年に数人しか症例がいないことになる。
だから、実質上、症例対照研究しかないのだ。
で、今回のタミフル調査。
前述の通り、たぶん症例対照研究だ(コホート内症例対照研究っぽい雰囲気もあるが)。
これくらいの人数だと脳症というところまではいった人は少なかっただろうから、脳症のエビデンスはこの研究からは出てこない。でも、重症と軽症をどこかで切り分けることはできる。たとえば、痙攣だとかうわごとだとか、脳症の前駆症状とされるものはどうか。インフルエンザ予防接種を受けると、痙攣したりうわごとをいったりする子が減るのかどうか。
各症例がインフルエンザの予防接種を受けていたかどうか、ということを聞き取ってくれれば(たぶん聞き取っているのではないか)、インフルエンザワクチンに曝露・非曝露に対して、それぞれどれだげ重症化したり、しなかったり、ということを比較して結論を得ることが出来る。
ワクチン効くのですか? 発症した後で、重症化をふせいでくれるのですか?
タミフルでできて、ワクチンでできない、なんてことはないはずなのに、なぜ、やってくれないのだろう。
追記
このタミフルの研究、かなり問題がありそうだと分かってきました。
タミフルと異常言動との関係を少なく見積もるための努力があらゆるところで払われている、ような気配。
そのうち別エントリを書きます。