インターネットで大量に購入した馬券の払戻金を申告せず、所得税約5億7千万円を脱税したとして、所得税法違反(単純無申告)の罪に問われた大阪市の元会社員の控訴審判決で、大阪高裁は5月9日、外れ馬券を経費と認めた一審大阪地裁判決を支持、検察側の控訴を棄却した。
米山裁判長は、外れ馬券を含む馬券の全購入費が、所得から控除できる必要経費と認められると判断。
申告すべき課税額を約5200万円と大幅に減額し、懲役2月、執行猶予2年(求刑懲役1年)とした
昨年5月の一審判決を支持した。
元会社員は競馬予想ソフトを使い、ネットで長期間にわたり大量の馬券を購入。
2007~2009年、28億7千万円分の馬券を買い、このうち、約1億3千万円分の当たり馬券で、30億1千万円の払戻金を得ていた。
40年以上前の国税庁の通達は、競馬の所得を「一時所得」に分類。
検察側は通達に基づき「所得は、当たり馬券だけを差し引いた28億8千万円」と主張していた。
判決は「通達が出た当時、元会社員のような購入方法は想定されていなかつた。 払戻金を画一的に一時所得とすることは実態に即さない」と指摘。
通常の購入方法は「一時所得」に当たるが、元会社員のように、営利目的で継続性が認められる場合は、外れ馬券分も経費に算入できる「雑所得」に相当すると判断した。
弁護側は「上告を断念し、高裁判決を確定してもらいたい」とし、検察側は上告するかどうかを検討する。
競馬の払戻金の課税をめぐつては、北海道でも札幌国税局が、外れ馬券の購入費を経費として認めず、4億円以上の申告漏れを指摘している。
馬券の購入方法をめぐる個別の事情を考慮しており、一審に続く妥当な判決である。
馬券を買った回数や金額を基準にして、経費に相当するかどうか判断する考え方は、一般の人にも分かりやすいだろう。
ただ、この事件ではネット上で馬券を購入し、その履歴がデータとして残っていたからこそ客観的な証拠を評価することができた。
記録が残っていなければ、同じ結論になるかどうかわからない。
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