デジカメぶらりぶらり

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刀傷

2012-04-30 08:12:47 | Weblog
映画監督の溝口健二には、背中に刀傷のようなものがあるという。関係のもつれから確か粋筋の女性に切りつけられた後で、本人はこう嘯いていたそうだ。「これぐらいのことがないと女は描けない」。

名匠が吐くから、決まる台詞。片傷も、場合によっては“勲章”になりえるということであろう。さて、前田国交相と田中防衛相に対する問責決議が20日の参院本会議で可決された。

前者は、岐阜県下呂市長選の告示前に送った特定候補支援の文書が公選法に抵触する疑いを持たれており、後者は、国会での説明能力不足など大臣としての資質が問題にされた。

いわば野党が「許さぬ」と刀を抜いたのだから、この議決は、閣僚が受けた刀傷であろう。だとしたら民主党には、刀傷を持つ人がゴロゴロいることになる。あの政権交代からまだ2年半なのに、問責決議を突きつけられた閣僚は、実に6人にもなる。

もっとも、自民党も簡単に抜刀しすぎるきりがある。仮に将来、民主党と立場が逆転したら意趣返しを受けるのは想像に難くない。何しても、溝口のそれとは正反対の無粋な“刃傷沙汰”である。

国民そっちのけで、どう転んでも、“勲章”とはなり得ぬ刃傷だけが政治家の背中に増えていく。


ランキング

2012-04-27 07:01:17 | Weblog
日本は国民の「豊かさ」を示す一人当たりGDPで、2010年現在、世界20位。それが30年には21に後退、10年の24位から15位に浮上する韓国に抜かれるのだという。

生産性の伸びなど種々の条件に基づいた予想だそうだが、より楽観的シナリオでも、17位の日本は15位の韓国の後塵を拝するとの見立て。

「先進国から転落しかねない」とまで脅かされれば、ちょっと暗い気持にもなる。ただ一方で思う。「先進国」であり続けさえすれば、「豊か」なのか。

さいきん、心を去らない歌がある。俳人の長谷川櫂(かい)さんが「3・11」後の作をまとめた「被災歌集」の一首だ。<つつましき文明国であるために必要なもの不必要なもの>。「先進国」や「経済大国」の看板にしがみつかずとも、「つつましき文明国」であればよい。

過激な便利に取り巻かれた、いわば“量”の「豊かさ」から“質”のそれへの転換の中にこそ、日本の将来像は見いだされるべきだ。何が本当に<必要>で何が本当は<不必要>かを見極めるところから始まる。

震災と原発事故を経た今こそ、その転換の大チャンス。政治がそれをフイにせぬようにと願う。

尖閣諸島

2012-04-25 07:30:19 | Weblog
したたか酔って、盗んだ自転車をこいでいる時、謝って交番に突っ込んでしまった男が、驚いている警察官にこう言ってしまう。「こ、こ・・・これは盗んだ自転車ではありません」。

記憶が曖昧だが、昔読んだ、つかこうへいさんの本に、確かこんな風な話があった。まさに、盗んだと言っているようなもの。世の中には、聞かれてもいないことを、わざわざ主張すると、かえって逆を疑われるということがままある。

石原都知事が沖縄県・尖閣諸島の一部を民間の所有者から都予算で買い取ると言いだし、世間を仰天させている。領有権を主張し、日本の実行支配に何かと容喙(ようかい)してくる中国の態度を腹にすえかねたようだ。

気持ちは分からぬでもないが、そも、外交は政府の仕事だとか、都民の税金の使い道としておかしいとか、当然の批判も噴出している。「民主党政権が弱腰だから俺がやる」という。

新党構想もにらんだアピールにも映る。だが、一番心配なのは、わざわざ「日本固有の領土。だから買い取る」と騒ぐことで、逆に、その主張に自信なげな印象が生まれないかということだ。

粗忽者

2012-04-23 08:15:16 | Weblog
落語には多くの粗忽者が登場するが、『近日息子』に出てくる息子も相当なもの、父親は息子の愚かさにあきれ、「お前といると体の調子が悪くなる」と言っただけなのに医者を呼び、医者は父親を見てもどこも悪くないので首をひねっただけなのに、もういけないと葬儀社へ走り、表に「忌中」の札まで・・・。

この息子とダブるのが、停止中原発の再稼働をめぐる政府の動きである。大飯原発(福井)3,4号機について、政府が再稼働の方針を決めたのは13日。ところが昨日になって、電力各社の今夏の需給見通しを、専門家ら第三者が検証する委員会を設けると発表した。

電気は本当に足りないのか。足りないとしても節電などで対応できぬほど足りないのか。
そうした点を精査すべきなのは当然だが、需給見通し逼迫も理由に再稼働方針を決めた後で、需給見通しの検証とは、まるで順序があべこべである。

滋賀県と京都府の知事は昨日、共同提言で政府に「脱原発依存」への工程表を示すよう求めたが、本来は、それが第一にすべきこと、次に短期的需給見通しの精査、それから再稼働の判断という順でなくてはおかしい。

それを、「まず再稼働」とは、父親は存命、病気でさえないのに、「忌中」の札を出すようなもの。まったく、こんな政府を持つと体の調子が悪くなる。落語じゃないのだから怖い話だ。

最年長

2012-04-21 07:42:35 | Weblog
中日ドラゴンズの山本昌投手。先日の阪神戦で、史上最年長での先発勝利を記録した。46歳8カ月と4日。46歳8カ月ちょうどだった浜崎慎二投手(阪急)の記録を実に64年ぶりに塗り替えた偉業である。

ドラフト5位で入団して、もう29年目。初勝利を挙げたのはやっと5年目だし、何度も最多勝に輝いたが節目の2百勝にたどり着いたのは、ほかのどの2百勝投手より遅かった。

そう言っては何だか、その球速まで含め「ゆっくり」こそ彼の身上だろう。だから、今春、企業に入り「早く目立った業績を」と焦っている新入社員諸君には、キリストの話じゃないが、こう言いたい。

「この人を見よ」と。よく見習って、取引先、つまりお客様という、“神様”に<すこし>ずつでも<ながーく>愛してもらえるなら、それに勝ることはあるまい。山本投手は、昨季、登板ゼロ。

だから見事な復活でもある。今後も、「史上最年長」の冠がつく記録はどんどん増えていくはずだ。

交代

2012-04-19 09:35:27 | Weblog
今月から、人事異動で上司が変わったという人は、さぞかし、楽しみにしていただろう。オーケストラ団員なら指揮者、子どもなら学級担任か、ひっくるめてリーダーとでも呼ぶべき存在が変わるということは、その影響、場合によっては指揮、命令を受ける側にとっては大きな意味をもつ。

不満があればなおのこと、後任に期待する。思えば日本国民も2年半前はそんな感じだった。長く続いた自民党政権が民主党政権に代わった。あれもよくなる、これもよくなるはずだと思い込んだ。

だが、結果は・・・御案内の通り、北朝鮮も指導者が交代した。故総書記の三男が先日、「第一書記」なる地位に就いたそうだ。もとより人事異動や選挙結果とは違い、独裁者の死に伴う世襲にすぎぬ。

俗に「血は争えぬ」ともいう。しかし、妃を6人も代えた英国王レンリー八世の娘エリザベス一世が独り身を通した例もある。“父王”に苦しみ抜いてきた北朝鮮の人々が、交代に一縷の望みを抱いたとしても不思議はない。

ほんの少しでも前任者より国民思いなら、と、だが、残念だ。新指導者も国民の飢餓など知らぬ顔で、衛星だが、ミサイルだがの発射に突き進む。

トイレ

2012-04-17 05:58:40 | Weblog
駅や飲食店などのトイレには清潔に使ってもらおうと、張り紙がある。ありふれているのは、「きれいに使いましょう」「もう一歩前に」などだろう。

最近、よく見かけるようになったのは「きれいに使っていただき、ありがとうございます」という表現だ。遠回しだが、汚しちゃいけないと、用を足すにも集中力が高まる気になるから効果はあるのだろう。

「言葉を覚えて一番嬉しいのは、直接相手に『ありがとう』と言えるようになったことです」。脳性まひなどの病気を抱え、13歳の時の気管切開を機に筆談を身に付けた仙台在住の詩人大越桂さん(23)は、詩集『花の冠』にそう書いている。

<小さな小さな種だって/君と一緒に育てれば/大きな大きな花になる>。被災地からの祈りのこもった詩は、野田佳彦首相が国会の所信表明演説に引用した。この詩集にあるのが「ありがとうの行き先」という詩だ。

<ありがとうの行き先は/ありがとうが旅をして/必ずここにもどるとき/みんなと一緒の/幸せがある/ありがとうに/ありがとう.>.。感謝の気持ちは、巡り巡って戻ってくるような気がする。

夫婦円満の秘訣は「ありがとう」という言葉だと聞いたことがある。お互いにやってもらって当然と思っているといつか心はすれ違ってくる。照れくさいけれど、婉曲的(えんきょくてき)にではなく、ありがとうと伝えてみたい。




サッカー

2012-04-14 08:01:14 | Weblog
イタリヤのサッカー一部リーグ(セリエA)の昨季の試合で八百長に関与したとして、自陣ゴールに球を入れるオウンゴールをした選手が先日逮捕された。

報道によると、所属チームは二部降格が決定、相手チームは一部残留がかかっていた。報酬は約2千万円に上るという。動画を見る限り、シュートのクリヤミスにも見えるが、その裏では大金が動いていた。

日本の政治に目を転じると、オウンゴールの連続だ。そもそも、政権交代も民主党の政策への支持というより、自民党への不満のマグマが爆発したオウンゴール感が強かった。

橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会期待する声が強いのも、オウンゴールで失点を繰り返す民主党への失望だろう。正統性に疑問符がつく三人目の首相は、マニフェストにもない消費税増税に「命をかける」と意気込むが、法案提出前に国民に信を問う勇気はない。

首相を背後から操る財務官僚は胸に手をあてて考えてほしい。日本の財務をここまで悪化させた自らの責任のことである。政権と二人三脚で財政のかじ取りをしてきた財務官僚の反省の弁を一度も聞いたことはない。

せめて、戦後、政権与党とともに政策決定に深く関与してきた過ちの原因を誠実に検証して、国民に許しを請うべきだろう。それもせずに、今後もプレーを続けるつもりなら、八百長のそしりは免れない。間逃れない

裁判

2012-04-13 06:44:07 | Weblog
腕ききの特捜部幹部が完全否定しているのを、最高検が取り調べて起訴、それを裁判官が裁く。大阪地検の証拠改ざん隠蔽事件は、法律のプロ中のプロ同士の戦いだった。

例えは悪いかもしれないが「ミサイルをミサイルで撃ち落とすことができるか」との言葉が浮かんだ。法廷では、事実認定や法の解釈ばかりでなく司法の誇りが火花を散らしたに違いない。

だが、裁きのポイントが「改ざんを上司に電話で伝えた」ことの事実認定にあったことには違和感が残る。権力を行使することの崇高な法律判断を争うのではなかった。「言った言わない」のレベルで争っていた印象が強い。

上司が部下の罪をなすりつけられたのか。部下の罪を中間管理職がもみ消したのか。どこの組織にもある構図かもしれないが、司法がそのようなレベルであってはなるまい。歴史に残る大きな裁判だったのに、争点は小さすぎた。


2012-04-11 07:13:24 | Weblog
後悔先にたたずというが、もし被災者が時計の針を震災の一日前に戻せて「こうすればよかった」と言えるなら、その声は説得力がある。

政府の機関誌「ぼうさい・春号」で、5年前の能登半島地震を経験した60代女性の話が紹介されている。「薬は肌身離さずもっていろ」との教えだ。避難所で持病のリウマチの痛みに襲われ、眠れない高齢者がいたのを見たからだった。

医者が薬をくれたので助かったが、周囲のお年寄りから「私もほしい、私にも薬を」と同じ注文が相次いだという。いかに薬を手放して困っている人が多いかを物語っていた。

震災時は、着のみ着のままで避難する。持病のある人は薬が切れて、たちどころに困る。被災者にしか分からない体験はほかにも多い。水、食料、小銭、ラジオ、懐中電灯などの備えの大事さはよく言われる。

薬や衛生用品、眼鏡なども手元になければ半日もまともに暮らせない。これが意外と難しい、災害列島・日本には役に立つ「後悔」が山ほどある。自然の猛威の前にはささやかな知恵かもしれないが、この心構えが生死を分けることもあろう。