デジカメぶらりぶらり

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勝負

2012-09-30 07:51:25 | Weblog
勝負がついた後、よろよろと立ち上がった力士の額と腹にはたっぷりと砂がついていた。まるで敗者のようだ。持てる力を出し尽くして、大きな壁を乗り超えた男の姿だった。

大相撲秋場所の千秋楽。大関の日馬富士は、結びの一番で2分近い大熱戦の末に横綱の白鳳を破り、二場所連続の全勝優勝をかざった。幕内でも最軽量級の力士が、来場所の横綱昇進を確実にした。

5〇本近い懸賞がかかったこの一番。落ち着いていた日馬富士の顔が仕切りの間にみるみると紅潮していくのが分かる。立ち会いから不利な体勢になっても、頭をつけて耐え抜いた。

双方が技を繰り出すたびに、東京・両国国技館が揺れるような大歓声と悲鳴が交錯する。大一番を制したのは挑戦者だった。安馬のしこ名でとんとん拍子に大関昇進を決めたが、
日馬富士に改名した後は、けがも重なり低迷が続いた。大関通算22場所は昭和以降4番目のスロー昇進だ。

力士のしこ名は不思議だ。最初はよい名とは思えなくても、強くなると自然に定着する。日馬富士は横綱らしい驚きのしこ名になった。豊富なけいこに裏打ちされた相撲で体格の差をはね返してきた。

同じモンゴル出身で一歳違いの白鵬にはライバル意識が強い。16場所ぶりの東西の横綱で角界をもり立ててほしい。

イグ・ノーベル

2012-09-27 07:45:34 | Weblog
自分の声の録音を聞くというのは、妙なものだ。何か違和感に陥ることすらある。そういう人が多いのではないか、ユーモアあふれる研究に贈られるイグ・ノーベル賞に、6年連続で日本人が輝いた。

2人の若い研究者が開発したのはスピーチ・ジャマー。他人の迷惑を顧みず、演説やおしゃべりを続ける人を激治する装置だ。原理は単純。演説を、0・2秒ほど遅れでしゃべっている本人に聴かせるだけだ。

脳は、自分の声を確認しながら発話の指示を出しているから、声が微妙に遅れて届くと混乱し、うまく話せなくなる。この「視聴覚遅延フィードバック」というよく知られた現象を応用した発明品だ。

居眠りしている議員ばかり目立った民主党臨時党大会を見ていて、スピーチ・ジャマーを試したくなった。代表に再選された野田佳彦首相は「原発ゼロ社会を30年代に目指す、実現をする、ぶれない姿勢で」と強い口調で言い切った。

だが、原発ゼロとは相反する核燃料サイクル政策も、建設中の原発の工事も継続するというのが、野田政権の方針だ。よくよく、自分の言っいることに、矛盾を感じない人たちらしい。

こんな政界にこそ、スピーチ・ジャマーを導入してほしいが、この新兵器には、弱点がある。当たり前のことだが、耳栓をしている人、聞く耳持たぬ人には、何の効果もない。

身分

2012-09-25 07:06:02 | Weblog
身分に縛られた社会だった江戸期、それを乗り越える道はわずかに開かれていた。と司馬遼太郎さんは指摘する。

武術と学問の世界だ。武術の流祖のほとんどは農民出身で、学問も事情は同じだった。著明な学者のうち旗本出身者は皆無に近いのではないか、と司馬さん。学者の大半は、農民や諸藩の下級の士・卒の出身で前途に何の保証もない次男、三男たちだったという。

「学問にせよ、武術などの技芸にせよ、この一筋の綱にすがりつく以外に飢えから脱出することができないという恐怖感がひとびとを刻苦勉励へ駆りたてていたといえるし、逆に言えば最初から煖衣飽食を約束されている境遇の者に耐えられるものではなかった」。

永田町は党首選の真っ最中である。次期首相に近い自民党の総裁候補は、5人とも大臣経験者の父親を持つ世襲議員。世襲でも有能な議員は多いが、他に人材はいないのか、と言いたくもなる。2030年代に「原発ゼロ」を打ち出した政府の方針にはそろって否定的だ。

政権を奪還したら白紙に戻すのだろうか。世論の多くが支持する将来像を随分、軽く考えているらしい。尖閣諸島の問題でも、勇ましい発言が目につくが、武力衝突を避けるための具体策は誰も示さない。政府の対応を批判するだけでは無関だ。タカ派度を競い合っている場合ではない。

ドイツ製品

2012-09-23 07:03:05 | Weblog
品に製造国名を入れることを義務つけたのは、125年前に英議会が制定した商品商標法だ。ドイツから輸入される安価な刃物から自国の産地を守るのが目的だった。

だが、ことは英政財界の思惑通りに運ばなかった。ドイツ製品の高品質さを消費者が知る契機となり、「メード・イン・ジャーマニー」は、敬遠されるどころか評価を高めていったーと、ドイツのテレビ局が先日、誇らしげに紹介していた。

<痛切の念とともに認めなければならないが、これは「日本製」の災害である>。福島原発事故の国会事故調査委員会の報告書は英語版序文でこう書いた。この国の事なかれ主義的な、なれ合いの文化が事故の背景にあるとの趣旨だ。

当たっている面もあろう。だが、問題はもっと根源的だ。問われるべきは、いったん暴走すれば止めようもない核の力、半減期が10万年もある物質を、寿命が100年ほどしかない人間が制御しきれるのか、ということだろう。


残暑

2012-09-20 07:58:04 | Weblog
残暑にはいささか閉口するけれど、湿った布団を干せば、すぐふかふかになるのは、うれしい。日向(ひなた)臭くなったふとんには何とも言えぬ幸福感がある。

「日向臭さ」というのは、不思議な匂いだ。日本香料工業会に聞いたが、洗剤メーカーなどがあの匂いを醸し出す化学物質を探っているものの、正確に分かっていないという。

正体不明の幸福感分泌物質なのだ、そもそも母なる太陽自体、分からぬことばかりらしい。上出洋介・名古屋大学名誉教授の『太陽と地球のふしぎな関係』(講談社)によれば、<太陽からのエネルギーがどのような経路をたどって地球までやってくるかについても、よく知らないのです>。

ただ、太陽で今注目すべき変化が起きていることは確かだ。太陽活動の活発さを示す「黒点」は通常11年周期で増減を繰り返すが、これが13年近くになっている。17世紀半ばに同じ現象があった時は、その後数十年も寒い時代が続いた。

今回の変化が同じような異変かどうかはまだ確認中らしいが、三百年前はロンドンのテムズ川まで凍結し、欧州は凶作や戦乱に苦しめられた。日本でも飢餓が起きたというから、大ごとだ。

という事情を知れば、ぎらぎら照り続けるお日さまは、ありがたい限り。残暑大歓迎だ。

健康診断

2012-09-18 06:33:00 | Weblog
向田邦子さんが好きだったのは、競馬の騎手が着るカラフルな勝負服だったとか、多くの職業にはふさわしい身なりがある。

典型は医者の白衣だろう。患者からの信頼の象徴を裏切る事件が起きた。東京都板橋区の病院で、医師免許を持たない疑いのある男が、非常勤の医師として区民の健康診断を2年間も担当していた。

実際は医療系予備校の講師で、偽の医師免許を使って、実在する医師になりすましていた。医院は医師法違反の疑いで刑事告発する方針だ。

健診を受けた2363人の区民は、白衣の男を本物の医師だと疑いもしなかったはずだ。「命に関わる見落としはない」と病院側は釈明するが、白衣を汚した不信という大きな染みは消えない。

富士山

2012-09-16 06:36:38 | Weblog
富士山が下から突き上げをくらっている。東日本大震災と余震のため、地下のマグマだまりに噴火してもおかしくないほど圧力がかかっている。

震災後に噴火しなかったのは、たまたまマグマの準備ができていなかったから、と言うから幸運に感謝するほかない。畏敬の的だった富士を権力の象徴として巧みに使ったのが、家康だ。

江戸開府早々に架けられた日本橋から眺めると、水路の奥に江戸城天守閣が天高くそびえる。そして、その左手に鎮座するのが、日本一の山。幕府の権威を霊峰が支えるがごときt都市計画だった。もっとも、この眺めは50年しか続かなかった。

大火で天守閣は焼け落ちて、再建されなかった。城より町の復興を優先したためといわれる。まこと、あっぱれな復興策だ、けれど、失態もあった。幕府は大火の直前、東インド会社から欧州製の消防車を贈られていた。

なのに、いざ火事が起きると、御家人たちは、大事な贈り物を燃やしてはならじと池に投げ入れてしまった。予想される災害に備えなければ、先人の愚行を笑えぬことになる。

メイド・イン・ジャパン

2012-09-14 07:06:21 | Weblog
米国を代表するコメディアンのボブ・ホープが海賊に扮し、青龍刀を手に船の上でチャンバラを繰り広げる。そんな映画が占領期、日本で公開されたそうだ。

当たり所が悪かったのか、刀が曲がってしまう。あきれた表情でホープは言った。「なんだ、メイド・イン・ジャパンか」場内は自嘲的な笑いで満ちたという。

評論家の矢野誠一さんが『落語商売往来』で振り返っている。若い世代にはピンと来ないかもしれないが、今では「高品質」を意味するメード・イン・ジャパンという言葉が「安かろう、悪かろう」の代名詞だった時期があった。

30年ほど前では、中国や韓国の商品にも、同じようなイメージがあった。その中国には国内総生産で追い越され、日本の家電メーカーがそろってサムスンの後塵を拝する時代だ。

領土問題で両国が声高な主張をするのも、経済発展で得た自信と無縁ではないはずだ、尖閣諸島の購入を目指す東京都の調査船が先日、魚釣島などを洋上から調査した。

資産価値の策定のために地形の把握などが必要だという。中国のテレビはトップニュースで批判したが、日本政府が許可していない調査であることも伝え、反日感情を煽らない配線も感じさせた。

日中両国は今月末で国交正常化から40年になる。着火したナショナリズムを鎮める知恵を、両国の指導者が出し合う時だろう。

領土

2012-09-12 07:36:58 | Weblog
領土問題は、双方が主権をかけ真っ向から主張を戦わす外交交渉で、片方の圧勝というのは難しい。ある程度の妥協を強いられるから、国民の反発もある。よほど国内の支持基盤がしっかりしていなければ腰を据えた交渉は難しい。

しかし困ったことに、末期症状を呈した政権ほど、領土問題に手を出したがる。難題に取り組んでの一発逆転、支持率急上昇を目指すのだが、まぁ、問題をややこしくして終わる。

その好例が、任期残り一年を切った韓国の李明博大統領だろう。物価が上がり、雇用は低迷、身内の汚職疑惑にまみれ、支持率は下落、人気取りのため竹島に足を運び、揚げ句に日本の親書の受け取りを拒否する非礼を犯した。

問題は、よりによって東アジアの安定を担う主要国がそろって政権末期だということだ。米大統領選と中国、韓国の主脳交代が一致するのは20年に一度。

微妙な外交問題に手を出すには危険な時に、禁断の実に手を出したのだから李氏の罪は深い、それにつけても、わが国の首相はここ5年、毎年交代。常に政権末期の体だ。これはだれの責任か、と考え込む。

音楽家

2012-09-10 06:37:31 | Weblog
10年以上も前のこと、空港の待合室でロシア人チェリストが嘆いていた。「前は音楽家だと言えば、チェロの機内持ち込みを無料で認めてくれていた。それが今じゃ航空券を買わなくちゃいけないんだ」。

日本オーケストラ連盟にきたら、昨今はもっと世知辛いらしい。バイオリンですら、機内持ち込みをあきらめるか、割安ながら一席分の料金を支払わされるようになっている。規制緩和による競争過熱で、航空業界も経営が厳しいのだろう。

ただ、世間から余白がどんどん失われていくような、寂しい話だ。一流の音楽家になればなるほど旅は増える。楽器も国境を越える。そこで問題になるのが関税だ。6歳のモーツァルトがウィーン入りした時、関税で一曲弾いたら、音楽好きの税関史が荷物検査を免除してくれた。

そんな逸話が残るくらいだから、昔の音楽家は苦労したのだろう。とはいえ世界的パイオリニスト堀米ゆず子さん(54)が申告を怠ったとして、愛用の名器をドイツの税関に押収されたのには納得がいかない。

参考に、わが国の対応を財務省に尋ねたが「例を聞かないし、ありえません」ドイツ税関に提案がある。掘米さんに空港で演奏してもらってはどうか。ただし、出演料として、関税・罰金と同額の38万ユーロ(約3800万円)を払うべし。