デジカメぶらりぶらり

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首相

2013-07-30 06:50:47 | Weblog
首相になるとは、どういうことか。「油を塗った棒のてっぺんに登ったようだ」と語ったのは、英国の名宰相ディズレーリだ。明治元年にあたる1868年に首相になったが、1年弱で退陣し、再び政権を担ったのは5年余も後。

やはりようやく登った宰相の座からつるつると転落し、5年余をかけ登り直した安倍晋三首相は、いかに権力の棒が滑りやすいか、ご存じだろう。参院選が圧勝し、「首相の棒」に滑り止めがついたかのようだ。

民主が惨敗のねじれも消えた。が、ディズレーリは言っている。「手ごわい野党がなければ、政権は長期的に安全ではない」彼が向き合ったのは、貧富の差が危険なまでに拡大した社会だった。

だから「特権階級と庶民が(一国の中で)二つ国をつくっている」との危機感を持ち、選挙制度改革などに取り組んだ。今の日本は、どうだろうか。憲法や原発をめぐり世論は真っ二つだ。

安倍政権の改憲姿勢や原発政策には違和感を抱きつつ、景気回復への期待で自民に票を投じた人も多いのではないか。そのアベノミクスにしても、例えば百貨店で高級時計が売れに売れているということが、まるで別の国の出来事に思える。

「一つの国」のための政治を進めなければ、ディズレーリが指摘したように「両者の間に交わりも共感もない、二種類の国」が生まれかねない。

デトロイト

2013-07-28 07:48:37 | Weblog
「注意!デトロイトには自己責任でお入り下さい」。米メジャーリーグの試合があったミシガン州デトロイト市の球場で昨年秋、こんなチラシが配られた。<全米一暴力的な町です><全米一殺人件数の多い町です><市警は人不足のため、12時間シフトで働かされ・・・警官は疲労困憊しています>。

配ったのは現役のデトロイト市警の警官だ。ジャーナリストの堤未果さんの近著『(株)貧困大国アメリカ』はGM、クライスラーフォードのビッグスリーが拠点を構えた「聖地」の疲弊ぶりを描いている。

失業率は50%。中心部の工場や映画館、学校などは廃墟のまま放置され、185万人だった人口は半分以下に、公共サービスは切り売りされ、低所得者層の子どもが通う公立学校は閉鎖になった。

財政非常事態宣言が発令されていたそのデトロイト市が先週、ついに財政破綻した。負債1兆8千億円は全米の地方自治体では過去最大だ。米国流のグローバリズムにのみ込まれつつある日本にとって対岸の火事ではない。

膨らんだ国の負債1千兆円。非正規雇用で働く人は2千万人を超え、格差は広がる一方だ。参院選も終え、経済政策や憲法、TTP,消費税増税など日本の将来を大きく左右する焦点が並ぶ。

これから3年、国政に意思表示出来る機会はないだろう。後悔しても時は取り戻せない。

比例代表

2013-07-26 07:44:09 | Weblog
参院選比例代表の当選者は48人。その真ん中ぐらいの票を集めながら落選した候補者がいる。緑の党から立候補したアーティストの三宅洋平さんだ。

獲得した176、970票は比例代表の落選者の中では最多だった。みんなの党の川田龍平さんや自民党の渡辺美樹さんら上回る票を得ながら、当選を果たせなかったのは、緑の党全体の得票が少なかったためだが、三宅さん独特の選挙活動は若い世代を中心に日を追うごとに支持が広がった。

東京選挙区で当選した山本太郎さんと共闘しながら、「選挙フェス」と称する街頭ライブを全国各地で展開。原発やTPP、改憲に反対するメッセージを熱っぽく訴えた。

その動画はツイッターやフェイスブックなどを通じて爆発的に広がった。最終日夜の東京・渋谷駅前は、ツイッターなどを通じ知った大勢の若者で埋め尽くされていた。

インターネットを使った選挙運動は参院選から解禁となったが、大きな効果があった例だろう。「負けた気はしない。十数万人の票というのは、質量が重い。3年後の参院選をめざす。これか千日間で世の中を変えましょう。選挙、面白くてやめられないぜ!」と三宅さん。

自民党の圧勝の裏に、選挙に無関心だった若い世代をネットでつなげ、社会を変えてゆこうとする新運動の芽吹きが見えてきた。

乾杯

2013-07-24 07:19:16 | Weblog
十数年前、ある中学校の公民の教科書に誤記が見つかった。豪雪地帯にある新潟県中里村(当時)が制定した「雪国はつらつ条例」を「雪国はつらいよ条例」と紹介していたのだ。

雪を克服、利用して、親しむ施策を進め、はつらつとした活力ある村づくりを目指す。そう高らかにうたっていた条例が、寅さん映画のような名になっていても教科書検定を素通りしていた。

雪国暮らしの大変さを思えば、つらいよ条例でも違和感がなかったということか。中里村は2005年に合併で消滅し、はつらつ条例もなくなってしまったのは残念だ。

町おこしや村おこしに熱心な自治体は時にユニークな条例をつくる。最近では、地元の酒で乾杯を勧める条例だろう。佐賀県や京都市、石川県白山市など、酒どころの自治体が、「乾杯条例」を相次いで制定している。

福島県南会津町には、「花泉」「男山」「国権」「金紋会津」という日本酒ファンに知られる銘酒をつくる四つの蔵元がある。南会津町の議会も先月、乾杯条例を可決した。

条例まで必要か、という考えもあると思うが罰則もない。地産地消を進めるため緩やかな申し合わせなのだろう。東日本大震災では多くの東北の蔵元が被災した。

福島第一原発の事故による風評被害もある。苦闘は今も続く、東北の蔵元がはつらつと酒造りに励めるよう、飲んで応援してみたい。

ペスト

2013-07-22 07:16:39 | Weblog
日本で初めてのペスト患者が出た翌年の明治33年1月、当時の東京は「ネズミ券」の配布を始めた。ペスト菌を媒介するネズミの死骸1匹につき5銭で買い上げ、伝染病の広がりを未然に防ごうという狙いだ。

区役所や警察署、近くの交番にネズミを届けると、引き換えに切符をくれた。これがネズミ券。現在の50円ぐらいに相当するだろうか。区役所や銀行で換金することができた。

東京市の買い上げは10年ほどで打ち切られた。ネズミが減ってペスト対策が万全になったからではない。商売しようという連中が出てきて、ネズミが増えすぎてしまったためだ。

飼育して金に変えようと考える人間が出てくる。そんな想定をした役人はいなかったのではないか。よかれと考えた政策が思いもよらぬ反応を招き、逆効果になってしまうことは決して珍しくはない。

山梨県甲州市で39・1度を記録したのをはじめ、全国で猛暑だった、参院選の候補者や政党幹部は暑さにも負けず政策を訴えた。アベノミクス、憲法、原発政策、TPP・・・。

単純化された主張は有権者の耳になじみやすいが、想定外の要因が加われば、自信満々の公約もいつ骨抜きにされるか分からない。政党や候補者が訴えている政策の裏側にまで目を凝らしながら、大切な一票は自民党が圧勝した。

マウス

2013-07-19 07:22:30 | Weblog
20世紀、米国で恐ろしいまでの増殖力を持つネズミが、2匹生まれた。それこそネズミ算式に増え続け、日本でもすみついていない家を探すのが、難しいほどだ。

1匹は、おなじみディズニーのミッキーマウス。もう1匹は、パソコンのマウスだ。「マウスの父」は、2日に88歳で逝去したダグラス・エンゲルバート博士だ。

彼が、米西海岸で開かれたコンピューター工学の学会で行った発表は、伝説になっているという。壇上で博士がキーボードとマウスでコンピューターを操って、画面上の言葉をクリックすると、たちまち関連文書が現れる。

離れた場所にあるコンピューターともデータを共有し、一緒に作業を勧める。テレビ会議でもやりとりする。いや、これは私たちは、何の驚きもない光景だ。だが、発表は今から45年も前の1968年。

千人を超える聴衆は眼前で繰り広げられる未来絵巻に息をのみ。1時間半に及ぶ実演が終わると、立ち上がって喝采したという。コンピューターが車ほど大きな計算機だった時代から、誰にでも使え、人々をそれまでなかったような形でつなぐ道具にすることを、博士は目指した。

時代よりも先に進みすぎていたから、変人扱いされ、時に孤立した。「その人がどれだけ成熟しうるかは、どれだけの辱めに耐えられるかに、正比例する」と、博士は語ったそうだ。

危機一髪

2013-07-17 07:18:15 | Weblog
三重県警は2日、同県亀山市の東名阪自動車上り線で1日夕、走行中の大型観光バスの男性運転手(44)が突然意識を失ったため、乗客3人がバスを停車させ、乗客31人は無事だったと明らかにした。

運転手は搬送先の病院で急性大動脈解離による死亡が確認された。高速隊によると、一日午後5時50分ごろ、緩やかな右カーブにさしかかったバスがそのまま直進、走行車線側のガードレールに接触した。

運転席の直後ろに座っていた女性会社員(52)ら二人が、運転手がぐったりしていたのに気づき、ハンドルを操作。後方に座っていた名古屋市の男性会社員(42)が運転手の足元に潜り込み、手でブレーキペダルを押したという。

バスはガードレールに接触後約100メートル進んで中央分離帯に接触、停止した。運転手に大きな持病などはなかったという。乗客は伊勢神宮での参拝を終え、愛知県岡崎市に戻る途中だったそうだ。

実戦

2013-07-15 06:37:17 | Weblog
稽古をみっちり一年間やった漫才師と10日間だけ舞台に出たことがある漫才師いたら、実力はどちらが上だろうか。

ビートたけしの答えは明快だ。舞台に出たほうが勝つに決まっているという。稽古を軽視しているのではない。

実際に客の前にたって演じることで得られる経験は、人のいないところで稽古を重ねるよりも芸人を成長させる力になる、と言いたいのだと思う。

スポーツも同じだ、ブルペンではすごい球を投げるのに、実戦では緊張のあまりさっぱりストライクが入らないという投手は多い。


2013-07-12 07:46:47 | Weblog
源氏蛍と平家蛍は、武士たちの亡霊。だから年に一度、宇治川で大合戦をする。そんな光景を随筆『蛍』に綴ったのは、小泉八雲だ。

蛍合戦が済むと、宇治川は、漂い流れる蛍のなおきらきらと輝くむくろにおおわれて、さながら銀河のように見える>と、八雲は光が滴るような筆で幻想の美を描きつつ、進化論の時代の知識人らしく、こうも記した。

<蛍の真のロマンスのありかは、日本の民間伝承の妖しい野辺でもなければ、日本の詩歌の古雅な庭園でもなく、科学の大海原こそがその場>であると(『日本の名随筆 虫』作品社)。蛍はなぜ光るのか。

発行生物の「大海原」を探索する名古屋大学の大場裕一さんによれば、蛍は卵も幼虫もサナギも光るが、卵と成虫では発光の仕組みが違うという。卵やサナギはボーッと光り「食べるとひどい目に遭うぞ」と警告し、成虫は点滅信号で「愛し合おう」と伝えるらしい。

光る意味は違えども「光の源となる物質は、脂肪を燃やす酸素からそれぞれ進化したようだ」と大場さんは話す。「脂を燃やす酸素のたった一つのアミノ酸を変えただけで、光る酵素になるのです」。

進化の神秘を八雲はこう見た。<生命を有する物質のどんな単位にも無限の力が潜み眠っている・・・今は消滅した幾億万の宇宙の無限にして不滅の経験が宿っている>。蛍の銀河を見てみたいものだ。

エジプト

2013-07-10 07:08:00 | Weblog
エジプトにあって、軍は単なる軍隊ではないらしい。軍需産業をはじめ、建設業や食品加工業などあらゆる分野の企業を経営している。

『現代エジプトを知るための60章』(明石書店)によれば、軍こそはエジプト最大の企業体であり、国内総生産(GDP)にしめる割合は、10%から15%といわれる。30%という説まであるという。

各省庁や国営企業にも退役軍人を送り込んでいるというから、まさしく軍は国家なり。今回のクーデターも「政治家がうまくできないのなら、当然ながら俺たちの出番」といった感覚なのかもしれない。

だが、権限を剥奪されたモルシ大統領を擁するムスリム同胞団も、強く広い根を持つ。医療の無料奉仕など貧者救済はもちろん、中古車販売やスポーツクラブ経営にまで手を出しているという。

何より、軍をはじめとする既得権益の綱からこぼれ落ちた人々に手を差し伸べてきたからこそ、庶民の幅広い支持を集めている。単なるイスラム原理主義組織という色眼鏡で見ていては、その実現は見えてこないだろう。

エジプト軍を支える柱の一つは、米国がイスラエルとの友好を条件に払い続けてきた年1千億円規模という軍事援助だ。国民の4割が貧困層で、字が読めぬ人も4割いるというエジプトに、本当の春が訪れるには何が必要か。

これ以上、血が流れぬことを祈りつつ、考えてみる。