デジカメぶらりぶらり

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惑星

2013-02-27 07:43:59 | Weblog
岩手も宮城も福島の浜通り、中通り、会津も太陽系のどこかを旅している。いずれも小惑星の名前だ。復興を応援するため、被災地の名が新発見の小惑星に付けられたのだ。

太陽系には、無数の小さな天体がある。その一つ「2012DA14」が、地球に大接近する。静止衛星の軌道と地表の間を秒速8キロ近い猛スピードで通り抜けていく。直径45メートルのこの小惑星が地球にぶつかったらどうなるか。

1908年にシベリア上空で大爆発が起き、東京都の広さほどの森林がなぎ倒された。この時飛来したのが、2012DA14より少し小ぶりの天体らしい。もしモスクワやサンクトペテルブルクに衝突していたら、世界史は変わっていただろう。

NASAによれば、直径50メートルほどで地球に接近する軌道を持つ小惑星が50万個もあり、千二百年に一度ほど地球に衝突するという。恐竜を絶滅させたとされる直径10キロ級の小惑星も1億年に一度は、衝突するという。

とはいえ、6千5百万年前の大衝突がなかったら、恐竜の繁栄が続き人類の世は来なかったかもしれない。小惑星や彗星が生命の源となる物資を地球に運んだのではないかとの説もある。

小惑星は破壊と創造を共に司るヒンズー教のシヴァ神のような存在なのかもそれない。シヴァと名付けられた小惑星も、火星と軌道を交差させつつ旅している。

レスリング

2013-02-25 07:01:53 | Weblog
紀元前708年というから、今から二千七百年以上も前のことだ。古代オリピックが始まって68年、新競技が加わった。レスリングである。その古代の大会を代表する名選手が、ミロだ。

紀元前6世紀にレスリングの成人競技で5連覇。3連覇中の吉田沙保里選手らが、東京も開催地に立候補中の2020年大会まで連覇を続ければ、二千5百年来の偉業になる。

だが、古代から五輪と共に歴史を重ねてきたレスリングの歩みに、国際オリンピック委員会(IOC)が黄信号を点じた。五輪から外す構えなのだ。競技関係者ならずとも、「なぜ?」と首をかしげざるをえない。

IOC幹部は「どうすればよりエキサイティングになるか(国際レスリング連盟は)説明すべきだ」と発言したらしいが、ロンドン五輪の中継で手に汗握った身からすれば「どこがエキサイティングじゃないのか?」と、「?」は重なるばかりだ。

ペロテット著『驚異の古代オリンピック』によれば、古代の神聖な祭典はその実「金次第だった」という。ローマ皇帝ネロに買収された審判が「詩の朗読」を新種目にすることを承知したこともあったらしい。

IOCがとにかく気にしているのは、テレビのようだ。古代の審判は皇帝の財力に額ずき、IOCは巨額の放映権料に額ずく。選手は金メダルを目指し、IOCはひたすら金を目指すのか。

みどりのおばさん

2013-02-23 06:58:49 | Weblog
柿間喜美さん(69)は、「みどりのおばさん」だ。30年近く川崎市の街角で小学生たちの登下校を見守ってきた。毎日、顔を見ているから、分かることがある。

真新しい服や靴を着てうれしそうな子には「おはよう、新しい靴だね」「いい服だね」。少し気落ちした顔の子もいる。そんな時は肩や背中をポンとたたき「いってらっしゃい」。柿間さんは「ほんの」一、二秒のことなんです」と言う。

地元の中学に通う浅野愛子さん(12)のお母さんが、作文を渡してくれたのは昨年末のことだ。それを読んで、柿間さんは「これが私のお給料だな」と思った。<なんだか少し暗い気分の朝、みどりのおばさんは、まるで私の気持ちがわかるかのように、そっと私の肩に手をおいてくれる。

そんな時は、みどりのおばさんの心の中の言葉が手のあたたかさをつたって、私の心に聞こえてくるような気がする>。中学に通うようになって、通学路は変わった。でも愛子さんは、時々遠周りしては、柿間さんに会いに行く。

いつもの「いってらっしゃい」を聞くために、愛子さんは、作文をこう結んでいる。<いつもあたりまえのようにそこにいてくれる、いつもあたりまえのように声をかけてくれる、いつもあたりまえのように笑い顔で見送ってくれるーそんなみどりのおばさんがいてくれる、あたりまえのある風景が、私は大好きだ>

復興

2013-02-21 07:12:35 | Weblog
福島第1原発の周辺で、イノブタが急増しているらしい。野生のイノシシと家畜のブタの交配が進んでいるのでは、というのが地元の獣医師たちの見立てという。

イノブタはイノシシに比べ、繁殖力が4、5倍も強いそうだ。増え続ければ、田畑が荒らされる。福島県が実態調査に乗り出さそうとしているが、捕獲にあたる猟友会員の多くも避難してしまっていて、調べたくとも調べられない。

「嘘が嘘を生む」と古代ローマ人が言ったように、嘘も増殖する。一つの嘘を守るために別の嘘を・・・ときりがない。どうやら東電の嘘の増殖力は、イノブタ並みらしい。

「あんな大津波は想定外」と言っていたが、実のところ大津波対策の必要性は分かっていた。東電は、国会の事故調査委員会にも嘘をついていたという。第1原発内部を調べようとして事故調に「真っ暗で危険」と説明していたが、実は薄明るく照明器具もあった。

事故調が調べようとしていたのは、非常用の冷却装置が東電の主張とは違い、地震で壊れたのではないか、という疑問だ。事故を検証して、教訓を得る機会が潰された。既に虚構と化した「原発安全神話」を生き永らえさせるための嘘が、増殖し続けているのだろう。

東電は今年「福島復興本社」を発足させた。だが、まず復興すべきは、自らの信用なのだということが、どこまで分かっているのか。

銃口

2013-02-19 08:27:55 | Weblog
『レッド・オクトーバーを追え』は、1990年にヒットした映画だ。ソ連の非人間性に憤った潜水艦の艦長が、最新鋭の艦ごと米国亡命を目指す。米ソの潜水艦が一足即発の神経戦を繰り広げるのは、静寂と闇が支配する世界。

そこでは、音が頼りだ。敵艦が放つかすかな音に、耳をそばだてる。ソ連艦の真の狙いは何か。それを探るため、米艦はわざと大きな音を出して敵に気づかせた上で、魚雷発射管の扉を開く、「金属音探知。発射管の扉を開けたもよう」。

ソ連艦に緊張が走る。応戦準備を促す部下にショーン・コネリー演じる老練な艦長が命じる。「扉は開けるな」。扉の音だけで「貴艦に戦意ありや?」「戦意なし」とやりとりをする。緊迫の瞬間だ。

中国の軍艦が、海上自衛隊の艦に照射用のレーダーを当てた。拳銃を突きつけ「撃つぞ」と言ったようなものだ。恐怖の一瞬だったろう。だれが「照準を合わせよ」と命じたのか。共産党指導部の指示か。

それとも軍人の独走か。後者だとすれば、事態は恐ろしく深刻だ。自ら内戦を闘った毛沢東は「政権は銃口から生まれる」と言い、同時に「党が銃砲を指揮する」という原則を立てた。

が、今の指導者は「戦争を知らない子どもたち」だ。彼らが強大化した軍部を制しきれるのか。政治が制しえなくなった軍の恐ろしさは、日本の歴史が教えるところだ。

ズボン

2013-02-17 08:09:16 | Weblog
パリジェンヌがそろって「無法者」だったとは、驚きだ。パリには女性のズボン着用を禁ずる条例があり、政府がこの有名無実の禁止令を正式に無効としたのは、つい先日のことという。

二百年以上も前に女性の社会進出を阻むために制定され、1892年と1909年に乗馬と自転車に限り着用を認める、と改められた。してみると、柔道界の先見性は相当なものだった。

講道館が初の女性門下生を受け入れたのは1893年。パリでズボン禁止令がモノを言っていた時代に、柔道は女性に扉を開いたのだ。が、女子柔道では長らく試合が禁じられた。世界選手権や五輪への道を開いたのは、米国人ラスティ・カノコギさんだ。

その生涯を描いた『柔道の恩人』によると、女性は1959年、ある大会で優勝しながら、メダルを剥奪された。ただ「女性の出場は想定していない」との理由でその悔しさに突き動かされ、後に自宅を抵当に入れてまで初の世界選手権を開催した。彼女がいなかったら、女子柔道が五輪種目になるのは20年遅れたといわれる。

「こんな思いを後輩にはさせない」という一念で道を開いた先駆者の姿が、必死の思いで監督の暴力を告発した女子選手たちと重なる。多くの名選手を輩出しながら、全日本柔道連盟には、女性の理事がいない。「女性の参画は想定していない」からなのだろうか

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2013-02-15 07:24:42 | Weblog
両親の許へ、プレゼントの特大のケーキを持って行ったら、玄関先で蹴つまずき、ぐしゃぐしゃにしてしまったー。12代市川団十郎さんは、白血病になった時の心境を『団十郎復活』に書いている。

両親への贈りものとは、9年前の市川海老蔵襲名披露だった。何せ団十郎と海老蔵の共演は、7,8代目以来150年ぶりのこと、自身は海老蔵襲名を前にした19歳の時、先代に先立たれていた。

だからこそ親子共演を成功させ、いずれあの世で「親父さん、あなたより長生きしたよ。そうしてあなたのできなかった団十郎・海老蔵が一緒の舞台に立つことができたよ」と報告するつもりだったが、その公演中に発病した。

「光さえ苦痛になって耐えられない」ほどの闘病を経て復帰し感じたのは、団十郎という名前に負わされた日本文化継承の役目の重さだったという。お家芸の大きく目を見開き黒目を寄せる「にらみ」を見れば病も飛ぶ、厄払いだと江戸っ子はありがたがった。

信心の的にすらなる名の重さ<今ここに団十郎や鬼は外.>とは、2代目と親交があった其角(きかく)の句。節分の夜に逝った12代目は、あの世で報告しているだろうか。「ご先祖様が果たせなかった坂田藤十郎さんとの共演も、海老蔵、団十郎のそろい踏みも果たしもした」。

歴代の団十郎たちが「これはでかした」と大きな目を細めているだろう。

2013-02-13 07:48:11 | Weblog
噺家の古今亭志ん朝さんは、鰻を食べなかった。一家はみんな鰻好きだったが、出前をとっても、志ん朝さんは口にしない。だから姉の美濃部美津子さんは、嫌いなんだろうと思っていた。

鰻が嫌いな方は別として、環境省がニホンウナギを「絶滅危惧種」に指定したと聞いて、憂鬱になった人が多かろう。高騰でなかなか口にできなくなったが、鰻丼が「絶滅危惧種」になったようで、何とも寂しい。

しかし、その実態を知れば仕方ないことだ。鰻の稚魚シラスウナギは、50年前に比べ40分の1ほどしか獲れなくなった。稚魚がいなくなれば、養殖もできない。ニホンウナギの生態は謎だらけという。

日本から2千キロ離れたマリアナ諸島沖で卵が初めて採取されたのも、つい3年前。海と川の偉大な水のめぐりの中で生きる鰻のことをろくに知らぬまま、日本人は食い尽くしてきた。

専門家は「もう取り返しのつかない状態かも」と警鐘を鳴らす。志ん朝さんは、本当は鰻が大好物だった。けれども自分が熱心にお参りする虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)の使いとされるのが、鰻。19歳の時に芸の上達を祈願して、鰻断ちをした。

そのまま逝った弟の霊前に、美津子さんは鰻を供え、「ずっとがんばったんだね」と声をかけたという。鰻のいない日本。そうなっては希代の落語家も、あの世で笑えまい。

先生

2013-02-11 07:42:09 | Weblog
精神科医の中井久夫さん(79)は、阪神大震災後に心の傷がどんな症状を起こすかを調べていて、子どもの時にいじめられた自らの体験が、ふつふつと蘇るのを感じたという。

それは、半生記後も風化していなかった。随筆集『アリアドネからの糸』で中井さんは、いじめに陥った者の絶望感を書く。<「出口なし」感はほとんど強制収容所なみである。

それも、出所できる思想改造収容所では決してなく、絶滅収容所であると感じられてくる。その壁は透明であるが、しかし、目に見える鉄条網よりも強固である>。

そして、多くのドイツ人に強制収容所が「見えなかった」ように、おぞましい事態もそれが常態化すれば、日常の風景となり「みえなくなる」。見えていても、見たくない現実であれば、人間の心理は「見えないもの」にしてしまうものなのだと大津市の中二男子の自殺を調べていた第3者委員会は、報告書で中井さんの一文書を引用しつつ、先生も生徒もいじめを見ながら「見えないもの」にしてしまっていたと指摘した。

それでも、勇気を出して先生にいじめを訴えた子がいた。異変を察知した先生もいた。だが、学校は生徒を救わず、家庭での虐待が原因であるかのように言い募った。「透明人間」にされた少年の絶望を、思う。いかに不都合な事実でも、きちんと見る。悲劇を繰り返さぬための第一歩だ。

殴る

2013-02-09 07:47:06 | Weblog
92歳で逝った作家、安岡章太郎さんは戦時中、病を得たために、九死に一生を得た。大学在学中に召集され、中国大陸に送られた。夏になり所属部隊は南方へ転ずる。

転戦先はレイテ島。そこで、部隊はほぼ全滅する。だが、安岡さんは部隊出発の前々日に、40度の高熱を発し入院したため置いていかれ、命拾いした。だから自伝的な戦争小説『遁走(とんそう)』が描くのは、戦闘ではない。

作家が体験した人間を使い捨ての兵器にするための兵営の日常。指導名目の暴力だ。<殴られるための正当な理由、そんなものはどこにもあるはずはない。けれども殴られた直後には、どうしたってその理由を考えずにはいられない><ところが軍隊では「考える」などということで余計な精力を浪費させないためにも、殴って殴り抜く>。

異常な世界である。しかし、そんな体質が戦後も運動部などに受け継がれ、日本人は美談にすらしているとも、安岡さんは書いていた。そんな作家の訃報を伝えた朝刊が、女子柔道の五輪代表監督の「暴力指導」も報じられたとは、何たる皮肉か。

五輪での不振を受け、全日本柔道連盟は「選手の試合中の状況判断が甘かった。監督らが教えすぎ、選手の自主的に考える力が低下した」と反省した。それでもなお、暴力を使う監督を続投させるのは「暴力が、自主性を高める」とでも思ってのことなのか。