11-90.ブリューゲルの動く絵
■原題:The Mill And The Cross
■製作年・国:2011年、ポーランド・スウェーデン
■上映時間:96分
■字幕:小野郁子
■料金:1,700円
■鑑賞日:12月23日、ユーロスペース
□監督・製作・脚本・撮影監督・音楽:レフ・マイェフスキ
□脚本:マイケル・フランシス・ギブソン
□撮影監督:アダム・シコラ
□衣装デザイン:ドロタ・ロクエプロ
□美術:カタジーナ・ソバンスカ、マルセル・スラヴィンスキ
□編集:エリオット・エムス、ノルベルト・ルジク
□音楽:ヨゼフ・スカルェク
◆ルトガー・ハウアー(ピーテル・ブリューゲル)
◆シャーロット・ランプリング(聖母マリア)
◆マイケル・ヨーク(ニクラース・ヨンゲリンク)
【この映画について】
闇に光を与えたキリストを葬ることは再び闇に支配を許すこと。しかし、人間は愚行を繰り返す一方で、何度でも立ち上がり、図々しいほどの逞しさで歴史を作ってきた。16世紀フランドル絵画の巨匠ブリューゲルの「十字架を担うキリスト」は、処刑地ゴルゴダの丘へ向かうキリストの道行を当時のアントワープを舞台にして描き出したユニークな傑作。その作品世界に入り込んで普遍的な人間の営みを活写してみせたのは、『バスキア』で原案・脚本を手がけたポーランドの鬼才レフ・マイェフスキ。デジタル技術を駆使した斬新で大胆な映像表現とダイナミックなサウンドに圧倒される。
出演は「ザ・ライト エクソシストの真実」「ホーボー・ウィズ・ショットガン」のルトガー・ハウアー、「わたしを離さないで」「スイミング・プール」のシャーロット・ランプリング。
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
16世紀のフランドルの夜が明け、農村の一日が始まる。若夫婦は仔牛を売りに出かけ、岩山の風車守りの家族は風車を回し小麦を挽く。だが、のどかな村の様子とはうらはらに、支配者は異端者を無惨に迫害していた。
アートコレクターのニクラース・ヨンゲリンクは画家ピーテル・ブリューゲルに、このあり様を表現できるかと問いかける。それに応えブリューゲルが風車の回転をとめると、すべての光景がぴたりと動きをとめた。するとフランドルの風景の中にキリストや聖母マリアらが過去から舞い戻り、聖書の「十字架を担うキリスト」の物語が始まるのだった……。
ブリューゲルの「十字架を担うキリスト」は、十字架を背負いゴルゴダに向かうキリストの受難の物語を、1564年のフランドルを舞台にして描き出した傑作。映画では数百人がひしめきあうこの絵画から、十数人にスポットが当てられ、彼らの当時の生活の様子と聖書の物語が絡み合いながら繰り広げられてゆく。
ブリューゲルが描いたこの絵の中のほぼ中央で十字架を背負っているのがキリストであるが、眼を凝らしてみないとこれがキリストであるとは分からない。そもそもこの映画には、この絵を分析した美術批評家マイケル・フランシス・ギブソン著「The Mill And The Cross」が原作となっている。
ギブソンはマイェフスキの作品に深く関心を寄せていて、彼に自著の「The Mill...」を贈ったのがこの映画化の始まりだったそうだ。マイェフスキはたぐいまれな想像力を発揮し、まるで一枚の絵画が動いているかのような絵画と映像の融合をCGを駆使して見事にスクリーンに投影した。
この映画はストーリーを楽しむと言うより、邦題にあるように「動く絵」そのものを観賞した人たちが如何にして楽しむかでしょうね。ここには主人公が雄弁にセリフで語るシーンは僅かで、無言のシーンが続きますが「ツリー・オブ・ライフ」で感じたような”苦痛”ありませんでした。
この画から当時のフランドル地方の苦しい生活が垣間見えるようで、そこにキリストの苦難を掛け合わせた解釈は我々日本人には理解するのが難しいですが、この映画の良い所は映像でそうした点を超越したことだと勝手に思いました。
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