kintyre's Diary 新館

野球(西武ファン)や映画観賞記等を書き綴っています。野球のオフ期には関心の高いニュース等も取り上げています。

映画『トロン:レガシー、3D字幕版』を観て

2010-12-19 00:00:00 | アメリカ映画 2010

10-81.トロン:レガシー
■原題:Tron:Legacy
■製作年・国:2010年、アメリカ
■上映時間:126分
■字幕:戸田奈津子
■鑑賞日:12月19日、吉祥寺スカラ座(吉祥寺)
■料金:1,000円

 

スタッフ・キャスト(役名)
□監督:ジョセフ・コジンスキー
□脚本・ストーリー:エドワード・キツイス、アダム・ホロビッツ
□衣装デザイン:マイケル・ウィルキンソン
□オリジナル音楽:ダフト・パンク
◆ジェフ・ブリッジス(ケヴィン・フリン/クルー)
◆ギャレット・ヘドランド(サム・フリン)
◆オリヴィア・ワイルド(クオラ)
◆ブルース・ボックスレイトナー(アラン・ブラッドリー/トロン/リンズラー)
◆マイケル・シーン(キャスター/ズース)
◆ボー・ガレット(ジェム)

【この映画について】(ネタバレあり)
人間が作り出したコンピューターの中の世界に迷い込み、謎の敵と戦うハメになった青年の姿を描くSFアクション。主演は「エラゴン 遺志を継ぐ者」のギャレット・ヘドランド。
アップルやナイキのCMを手がけてきた新鋭ジョセフ・コジンスキーによる先鋭的なビジュアルや、ダフト・パンクによる音楽が物語を盛り上げる。(この項、Movie Walkerより転載しました)
【ストーリー&感想】
1989年。デジタル業界のカリスマ的存在にして、巨大企業エンコム社のCEO、ケヴィン・フリンが7歳の息子サムを残して失踪する。20年後。サムは、27歳の若者に成長していたが、父に捨てられたという哀しみや不信感は心から消えることはなかった。
ある日、ケヴィンの共同経営者だったアランに謎のメッセージが届く。発信源はケヴィンが所有していたゲームセンター。足を踏み入れたサムは、地下に秘密の研究所を発見するが、突然サムを閃光が包み、彼はコンピューター・システムの中の世界に入り込んでしまう。
サムは監視用飛行マシン=レコグナイザーによって、トロン・シティの壮大なコロシアムに連行され、大観衆の歓声の中、人間たちが互いにディスクを飛ばして闘い、敗者は“死”あるのみという競技を強いられる。
この世界の人間は皆プログラムであり、背中には自身の全ての情報を記録したディスクが挿入されていた。ゲームに投入されたサムは覚悟を決め、抜群の運動能力を発揮してトーナメントを勝ち上がっていくが、さらに危険なゲームに投入され、場内に侵入してきた謎の女性クオラに命を救われる。

クオラはサムをトロン・シティの外、山中の家に連れ出し、サムの父ケヴィンと再会させる。ケヴィンは20年前、システムの中に理想の世界を創り上げたがISOと呼ばれる豊かな個性と自由意思を備えたミュータントが出現したことからプログラム“クルー”がクーデターを起こしISOを粛清、ケヴィンはクルーの監視が及ばぬ辺境の地に隠れ、この世界に閉じ込められてしまったのだった。
事実を知ったサムは、父の苦悩と自分への愛を感じ取り、現実世界へ戻って“クルー”を削除しようと決心する。だが、現実世界へのポータル(出入り口)までの案内人・ズースは、クルー側と通じていた……。
ポータルへと導いてくれると思っていたズースが実はクルー側と通じていて、辛くも逃れたサムとクオラだったがクオラは戦闘で負傷し左腕を失う。その二人の窮地を救ったのは父ケヴィンだったが、戦闘で大事なディスクを失ってしまう。

クルー側の狙いはケヴィンのディスクを奪い、サムがトロンの世界に来た時のポータルから現実の世界に移ることだった。この世界の創造主であるケヴィンとサムの取った選択は、サムに取っては折角20年ぶりに父と再開したのに過酷だった。父はトロンの世界に残り、サムは腕を失ったはずのクオラと現実世界に戻ってメデタシメデタシ。クオラは人間では無いので、現実世界でどうやって生きていくのかは不思議ですね(第一無国籍だろう?)。

28年前に公開されていたとは知らなかったこの作品。当時出演していたのはジェフ・ブリッジスと、彼の友人でサムの親代わりとなるアラン役のブルース・ボックスレイトナーの二人。
最新技術のCGを駆使して当時のジェフ・ブリッジスを蘇らせたり、戦闘シーンでの光の使い方、コンピューターの世界などコジンスキー監督の手腕も凄いし、ダフト・パンクの音楽もストーリー展開と一体化していて素晴らしかった。
所々、スター・ウォーズと似たシーンもあり、それは愛嬌で良いとして、ストーリー的にはコンピューター内での戦いに終始せず、サムとフリンの親子の物語であり、そこにISOであるクオラが二人をサポートするという絡みになっていたのは良かった。

細かい点を指摘すればキリがないこの映画だが、2時間という時間内で興行ベースに乗せるにはこの程度が限界かな?ストーリー的には、もう少し細かく描けばもっと良くなったと思うが、この映画のそもそものアイデアが28年前のものだった点は驚きだ。
ジェフ・ブリッジスは「クレイジー・ハート」でアカデミー賞を受賞した直後の出演だったが、円熟味が益々増してきてその安定感と個性はここでも遺憾なく発揮されていた。
サムを演じるギャレット・ヘドランドは今後若手スターの道を歩んでいけるかに注目。クオラを演じるオリヴィア・ワイルドはヘドランドと同年齢で、お互いキャリアも実績もこれからの俳優だが、二人の次回作に期待したい。


映画『ロビン・フッド』を観て

2010-12-12 00:00:00 | アメリカ映画 2010

10-79.ロビン・フッド
■原題:Robin Hood
■製作年・国:2010年、アメリカ
■上映時間:140分
■字幕:松浦美奈
■鑑賞日:12月11日、渋東シネタワー(渋谷)
■料金:1,600円

 


スタッフ・キャスト(役名)
□監督・製作:リドリー・スコット
□脚本:ブライアン・ヘルゲランド
□衣装デザイン:ジャンティ・イェーツ
◆ラッセル・クロウ(ロビン・ロングスライド)
◆ケイト・ブランシェット(マリアン・ロクスリー)
◆マックス・フォン・シドー(サー・ウォルター・ロクスリー)
◆ウィリアム・ハート(ウィリアム・マーシャル)
◆マーク・ストロング(ゴドフリー)
◆オスカー・アイザック(ジョン王)
◆ダニー・ヒューストン(獅子心王リチャード1世)
◆アイリーン・アトキンス(アリエノール・ダキテーヌ、ジョン王と獅子心王の母)
◆マーク・アディ(タック修道士)
◆マシュー・マクファディン(ノッティンガムの代官)
◆ケヴィン・デュランド(リトル・ジョン)
◆スコット・グライムス(ウィル・スカーレット)
◆アラン・ドイル(アラン・ア・デイル)
◆ダグラス・ホッジ(ロバート・ロクスリー)
◆レア・セドゥー(イザベラ)

【この映画について】
伝説の義賊、ロビン・フッドの物語を『グラディエーター』のリドリー・スコット監督と、ラッセル・クロウの黄金コンビが手掛けた歴史スペクタクル大作。
12世紀のイギリスを舞台に、勇猛果敢なヒーローの戦いぶりを活写する。出演者も『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のケイト・ブランシェットや、『シャーロック・ホームズ』のマーク・ストロングら名優が勢ぞろい。映画の前半と後半で描かれるイングランド対フランスの壮絶な戦闘シーンは必見だ。(この項、シネマトゥデイより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレ含みます)
12世紀末。十字軍の兵士としてフランスで戦っていたロビンは、戦闘中にリチャード王が戦死したことで、仲間と共に部隊を離れたロビンは、リチャード王の王冠をイングランドに持ち帰る役目を担った騎士のロバート・ロクスリーが、英国王の側近でありながらフランスのスパイであるゴドフリーによって闇討ちされる現場に遭遇、瀕死のロバート・ロクスリーからノッティンガムの領主である父親に剣を届けて欲しいと頼まれ、成り行きから引き受けてしまう。ノッティンガムでは、ロバートの妻マリアンが10年にわたって夫の留守を守っていた。
ウォルターはロビンに、ロバートの身代わりになってこの地に留まってほしいと提案。このままでは後継ぎのない領地は国に没収され、マリアンも住む場所を失ってしまうという。ロビンはウォルターの提案を受け入れ、次第にマリアンはロビンに対して心を開いていく。

そんなある日、ウォルターから、彼が万人の平等な権利を求める自由憲章に署名した貴族のひとりであることを知らされたロビンは、ウォルターの代理として、貴族たちの会合に参加する。その席でロビンは「我々が求めているのは法に守られた自由だ」と自由憲章の理念を説き、ジョン王は自由憲章の発行を約束。貴族たちはイングランドの旗の下でフランス軍と戦うことに同意する。
だがその頃、ジョン王の重臣でありながらフランス王の手先としてイングランドを内部崩壊させようとしていたゴドフリーの一軍がノッティンガムに襲来。
不意を襲われたウォルターは帰らぬ人となってしまう。ドーバー海峡ではスパイであるゴドフリーが呼び寄せたフランス軍の大艦隊が攻撃を開始。
イングランド連合軍が海岸線を埋め尽くす中、実戦の指揮を執るロビンは、射手兵部隊を高台に配備。フランス軍めがけて矢の雨を降らせ、大きなダメージを与える。そこへ鎧兜を着けたマリアンが現れ、彼女の毅然とした表情に決意の固さを見てとったロビンは、「攻撃に加われ」と命令、マリアンは義父ウォルターを亡き者にしたゴドフリーめがけて馬で突進していく……。

最後は、戦果を挙げたロビンだったが、ジョン王は貴族との約束を反古にして自由憲章へのサインを拒否するどころか、ロビンを「Outlaw」(法による保護の外に置かれるもの、現在は「無法者」と西部劇などでは訳される)であると宣言し、再び追われる身になったが、マリアンと結婚したロビンは、森の生活に戻って行った。
リドリー・スコット監督とラッセル・クロウは「グラディエーター」でコンビを組んで以来相性が良いようで、スコット監督も何かとクロウを指名する。
クロウは同郷のケイト・ブランシェットとは始めてコンビを組むが、そのケイト・ブランシェットは「エリザベス」に出演するなど、英国の時代劇ものは得意である。二人の豪州出身のアカデミー賞受賞歴を持つ俳優が出演し、監督がリドリー・スコットとなので公開前から注目していた。

スコット監督は時代考証が細かく、映画の中でのシーンも、オープンセットを組んで細部に渡るまで当時の様子に似せている。映像を観ているだけでも、当時の様子が偲ばれる感じでスクリーンに惹きつけられる。
この手の映画で重要な戦闘シーンだが、冒頭から迫力のあるシーンの連続。スタントを使用しないクロウの乗馬技術も凄いけど、ラストのフランス軍との戦闘に加わるケイト・ブランシェットの乗馬姿も流石、女王陛下を演じていただけに様になっている。
ストーリー的には、実在の人物か架空の人物かは不明だが、英国王室の内部の葛藤やフランス王の野心、重税を取り立てる側近や王に忠実な側近、こうした要素を巧みに取り入れながらも、ロビンの仲間との絆やマリアンとのロマンスなど盛り沢山のストーリーながらも一本筋が通っている脚本は素晴らしい。
クロウとケイト・ブランシェット二人の演技ばかりではなく、脇を固めるスパイのマーク・ストロングの個性も光るし、王の忠臣マーシャルを演じるウィリアム・ハートの渋さ、アイリーン・アトキンスの二人の王の母としての威厳を感じる存在感、マックス・フォン・シドーの年齢を感じさせない演技力、ダメ王振りの演技が上手かったオスカー・アイザックなど、個性的なこれらの俳優たちの存在なくしてはこの映画は成り立たなかった。


映画『キス&キル』を観て

2010-12-05 00:00:00 | アメリカ映画 2010

10-77.キス&キル
■原題:Killers
■製作年・国:2010年、アメリカ
■上映時間:101分
■字幕:伊原奈津子
■鑑賞日:12月4日、渋東シネタワー(渋谷)
■料金:1,800円
 
スタッフ・キャスト(役名)
□監督:ロバート・ルケティック
□脚本・原案:ボブ・デローサ
□脚本:テッド・グリフィン

◆アシュトン・カッチャー(スペンサー・エイムス)
◆キャサリン・ハイグル(ジェン・コーンフェルド)
◆トム・セレック(ミスター・コーンフェルド)
◆キャサリン・オハラ(ミセス・コーンフェルト)
◆キャサリン・ウィニック(ヴィヴィアン)
◆ケヴィン・サスマン(マック)
◆リサ・アン・ウォルター(オリヴィア)
◆ケイシー・ウィルソン(クリステン)
◆ロブ・リグル(ヘンリー)
◆マーティン・マル(ホルブルック)
◆アレックス・ボースタイン(リリー)

【この映画について】
旅行先でとある女性と運命的な恋に落ちスピード結婚を果たした若い男が、元CIAのすご腕エージェントという素性を隠していたために夫婦そろって騒動に巻き込まれるラブ・コメディー。
アシュトン・カッチャーがキャサリン・ハイグルを相手役に迎え、一筋縄ではいかない恋の試練に立ち向かう。監督は、『男と女の不都合な真実』のロバート・ルケティック。
理想の相手に出会えたものの、真実を語れない主人公のジレンマが共感を集めそうな一作。
(この項、シネマトゥデイより転載しました)
【ストーリー&感想】
失恋の恋の痛みを忘れるために、両親との南仏バカンス中に素敵な男性・スペンサーとチェックインしたその日に出会い、恋に落ちたジェン。
スペンサーとのデートを楽しむジェンだが、スペンサーは決してバカンスで訪れていた訳では無かった。
その後も交際は順調に進み、過保護な父親になんとか結婚を認めさせ、
ジェンの実家近くで結婚生活を始めた。

結婚三年目のある日、スペンサーの友人が彼を殺そうと襲いかかって来た! なんと、スペンサーは元スパイで、彼には2000万ドルの懸賞金が懸けられていた。スペンサーは何と結婚を機に組織を抜けたことで、今になってかつての組織から命を狙われ始めたというのだ。
ジェンはスペンサーの過去を突如として知ることになり、
戸惑いながらも、スペンサーと一緒に次々に襲いかかってくる隣人たちと戦うことに…。
スペンサーは眠っていた闘争本能が蘇り、隣人として付き合っていた町の人たちを次々と殺害するが、それでも彼は襲われジェンと命からがら逃げまくる。そして、遂に、ジェンの父までもが彼を疑い、銃口を向ける羽目になる。

と、まあ予定調和のドタバタ劇が繰り広げられるのだが、南仏での
冒頭のバカンスシーンは、スパイ映画の様な雰囲気で、しかしながらジェンとの結婚生活に突入するアメリカでは、一転してほのぼのとした家庭生活から懸賞金目当てに命を奪われかねない事態に突入。こうして観ていると、映画の展開としては大きく二つに分かれ、ストーリーもそういう展開。
アシュトン・カッチャーとキャサリン・ハイグルによるラブコメにスリリングな要素を上手く絡めている。また、プロデュースを兼ねるアシュトン・カッチャーの要請で、ジェンの父役として久し振りに姿をみたトム・セレックの、過保護なお父さんの表顔を胡散臭い裏の顔を使い分けていた存在感も好印象を感じた。
キャサリン・ハイグルの出演作って始めて観たけど、彼女はラブコメで存在感を発揮している女優さんだとか。ラブコメは自身好きなジャンルなのでかなり観ているけど知らなかったとは勉強不足でした。
アシュトン・カッチャーは、必死にスパイ風アクションをこなしていたけど、
「覚えたてのアクション」ってな感じで、板に付くのはまだまだ先か?
仲良くしていた住民たちが、
懸賞金目当てに豹変して銃をぶっ放すとは、これまたアメリカらしさ全開の映画でした。

英題の「Killers」は”殺人者たち”だけど、これが邦題になると「キス&キル」って、この変わりよう、アメリカの配給元、納得してOKしたのかな?


映画『アメリア-永遠の翼』を観て

2010-12-03 00:00:00 | アメリカ映画 2010

10-76.アメリア-永遠の翼
■原題:Amelia
■製作年・国:2009年、アメリカ
■上映時間:111分
■字幕:栗原とみ子
■鑑賞日:12月1日、新宿武蔵野館(新宿)
■料金:1,000円
 
スタッフ・キャスト(役名)
□監督:ミーラー・ナーイル
□脚本:ロン・バス、アンナ・ハミルトン=フェラン
□音楽:ガブリエル・ヤレド
◆ヒラリー・スワンク(アメリア・イアハート)
◆リチャード・ギア(ジョージ・パットナム)
◆ユアン・マグレガー(ジーン・ヴィダル)
◆クリストファー・エクルストン(フレッド・ヌーナン)
◆ジョー・アンダーソン(ビル)
◆チェリー・ジョーンズ(エレノア・ルーズベルト)
◆ミア・ワシコウスカ(エリノア・スミス)

【この映画について】
大恐慌によって米国全体が疲弊していた時代、夢と希望という最大のカンフル剤で人々を元気づけた女性パイロットの第一人者アメリア・イヤハートの半生を描いた本作。
ガッツのあるヒロインをやらせれば右に出る者なしの2度のオスカー受賞女優ヒラリー・スワンクが主演だけでなく、自ら製作総指揮も買って出るほど惚れ込んで完成させた力作である。
自由を愛する妻を待ち続ける献身的な夫役にリチャード・ギア、不倫相手のパイロット役にとびきりハンサムなユアン・マクレガーら豪華キャストを揃え、アメリアが最も愛したエレクトラ機を復活させ、メガホンをとったのは『モンスーン・ウエディング』『その名にちなんで』のミーラー・ナーイル。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレ含みます)
1928年6月18日、アメリカ全土が勇気ある1人の女性に熱狂していた。アメリア・イヤハート、世界で初めて大西洋を横断した女性だ。その姿を一目見たいという人々の願いに応えて、彼女は講演会やCM出演に駆け回る日々を送っていた。
リンドバーグの本を出版したジョージ・パットナムが広報担当を引き受け、彼の提案で、初の著書も出版。アメリアの夢に魅せられたジョージは、やがて彼女自身にも心を奪われ、2人は恋に落ちる。とはいえ、空を飛ぶことに人生を捧げたアメリアは、結婚は自らを縛るものとしか考えていなかった。
だが、ジョージが愛しているのは、空への夢を追う自分であると知ったアメリアは、「もし1年立っても、夢を追う自分との結婚に幸せを見いだせないなら離婚する」との約束で彼のプロポーズを受ける。

彼女の次の夢は、乗客としてではなく自ら操縦桿を握り単独大西洋横断をすること。1932年5月20日、着陸予定地のパリ郊外のル・ブルージェ空港には歴史的瞬間を目撃しようと多くの群衆が駈けつける中、翌日、アメリアは牧草地に着陸した。そこはアイルランドで、世界中がその偉業に熱中した。
その後も数々の新記録を打ち立て、ついにアメリアは世界一周飛行を決意する。その為の、資金集めに、彼女はCMや講演への出演などが続く日々を送った。そんな多忙な生活を癒してくれたのは、パイロットのジーン・ヴィダルとの友情の一線を越えた関係だった。

1937年6月1日、この世界一周を最後のフライトにしようとの決意を胸に秘めてマイアミを出発し、順調に南アメリカ~アフリカを横断しアラビア半島からアジアへと入り、途中インドで悪天候に見舞われるが、ニューギニアに辿りついた。そこで、ジョージと最後の交信をするアメリア。しかし、ニューギニアを出発すると、次は広大な太平洋を渡る、今回のフライトの最大の難所が待ち受けている。途中、燃料補給でハウランド島という小島に立ち寄る予定だったが、この島は洋上の小島で、その発見には優秀なナビゲーターであるフレッド・ヌーナンが頼りだった。だが、悪天候で視界は悪く、フレッドも地図を頼りに必死にこの小島を探そうとするが...一方、既に到着時間を過ぎ米軍の管制との通信も周波数を聴きとれず、焦りは募るばかり。

映画はアメリアのフライト機が交信を断ち、米軍の管制官らが何とか通信を試みる必死の様子を追う場面で終了。後は、字幕でこの後、どうなったかをなぞってエンドロールへと突入。
彼女とジョージの絆を強調しながらも、彼女が女性の地位や社会進出が遅れていた時代に、強い意志を持ってそんな女性達に勇気を与えたかを描いていた。
アメリア・イアハート(劇中では「エアハート」と発音していた)は、アメリカでは知らない人が居ないとも言われるレベルの実在の人物で、ヒラリー・スワンク自身もこのキャラに対する思い入れが強く自らも「製作総指揮」に名を連ね、実際のアメリアに近付こうと仕草や外見も似せようとリサーチを続けていたそうだ。

「P.S.アイラヴユー」のようなロマンチックものより、やはり、彼女には強い女性を演じている姿が一番似合っている。映画としては彼女がこの作品で3度目のオスカーを目指すのではないかという野心を多少感じるのだが、アメリアが一躍有名になるとCM出演などで多忙になったり、同じパイロット仲間のヴィダルとの関係にジョージが嫉妬するなど、有名になったことで生活に不自由さを感じ始めたのは、今のハリウッド映画界と似ている。
共演者では夫ジョージ役のリチャード・ギア、有名になった女性を妻として、自らは「広報兼夫」としての立場で野心的に彼女を広告宣伝材料として売り出すことに成功する。最後は、「夫」として妻アメリアの危険な世界一周に複雑な気持ちを抱きながらもサポートする。
ヒラリー・スワンクとしては、実在の人物に扮することで相当のプレッシャーを感じていたそうだが、相手役に彼女のあこがれの俳優でもあったリチャード・ギア起用で、そうした気分もほぐれたようだが、実際の夫婦もこんなに年齢差があったのかは知らないが、スワンクとギアは25歳の年齢差あるので、どうしても夫婦と思えないような感じがしました。

印象に残ったセリフが、アメリアがジョージと結婚する前に彼の事務所で、何故あなたは空を飛びたいのか?と質問されて、彼女が答えた言葉はシンプルに「自由になりたいから」(i wanna be free)と語る場面(予告編の15秒辺りに出てきます)。
この一言にこの時代の女性の本音が集約されていて、彼女のフライトのテーマとしてもインパクトが強かった。


映画『クロッシング』を観て

2010-11-18 15:35:59 | アメリカ映画 2010

10-70.クロッシング
■原題:Brooklyn's Finest
■製作年・国:2008年、アメリカ
■上映時間:132分
■字幕:川又勝利
■鑑賞日:11月14日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)
■料金:1,000円

 
スタッフ・キャスト(役名)
□監督・製作総指揮:アントワン・フークア
□脚本:マイケル・C・マーティン
□撮影:パトリック・ムルギア
□編集:バーバラ・タリヴァー
□衣装:ジュリエット・ポルクサ
◆リチャード・ギア(エディ)
◆ドン・チードル(タンゴ)
◆イーサン・ホーク(サル)
◆ウェスリー・スナイプス(キャズ)
◆ウィル・パットン(ホバーツ副署長)
◆エレン・バーキン(スミス捜査官)
◆シャノン・ケイン(チャンテル)

【この映画について】
「トレーニング デイ」のアントワーン・フークア監督が、リチャード・ギア、イーサン・ホーク、ドン・チードルの3人を主演に迎えて描く緊迫の刑事ドラマ。
ブルックリンの犯罪多発地区で危険と隣り合わせの過酷な日常を送る3人の警官たちの三者三様の苦悩が、リアルかつ緊張感溢れるタッチで綴られてゆく。共演はウェズリー・スナイプス、ウィル・パットン、エレン・バーキン。
(この項、All Cinemaより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
ニューヨーク、ブルックリンの低所得者層が暮らす「BK公営団地」。ここで、警官による強盗事件が発生し、罪の無い将来を嘱望されていた黒人青年が被害者になった。
マスコミの非難にさらされたニューヨーク市警では、犯罪の取締り強化でイメージの回復を狙う。そんな中、ベテラン警官のエディは定年退職を1週間後に控えていた。日々を無難にやり過ごすことだけを考えて警官人生を送ってきた彼だったが、最後の任務として犯罪多発地区での新人研修を任されることに。

カトリック教徒で信心深く5人の子だくさんの麻薬捜査官、サル。愛する家族のためにどうしても広い新居が必要になるが、彼の薄給ではとうてい資金の工面などできるわけもなく、カビ臭い安アパートでの生活で妻の体調は悪化の一途を辿っている。麻薬捜査の現場で、大金を目にする度に、警察官としての正義感と自らの生活環境からの脱却との挟間に揺れていた。

長年、BK公営団地を基盤に持つギャングへの潜入捜査を続けているタンゴ。身分を隠す潜入捜査で妻ともまともに会う事が出来ず、もはや結婚生活もボロボロで離婚を突き付けられている。捜査から抜けたいと上司に願い出る。ところが、そんなタンゴに、彼の命の恩人でもあるギャングのボス、キャズに対するおとり捜査というさらなる過酷な任務が課せられる。
キャズ逮捕と引き換えに昇進を約束されたが、上司は黒人であるタンゴでなければキャズ逮捕は難しいと思っていた。

この三人のそれぞれの人生観、警察官としての職務遂行能力は異なる。正義感は薄く退職前の1週間を従来通り無難に過ごすことだけを考え、同僚からは馬鹿にされ続け挙句の果てには研修を施している新人警官にまで蔑まれ担当を外されたエディの唯一の息抜きは、娼婦のチャンテルと過ごす間だけで、そのチャンテルにさえ自分の気持ちを裏切られたエディ、最後は、退職期限切れ直後に「一般市民」となったエディが、誘拐された女性を救出するのは皮肉だ。

正義感が強いのは、子沢山で病気の妻を抱えているからで、警察官の安月給サルも麻薬捜査での現場における大金をどう扱うかに悩むでは到底5人の子供と妻は養えない。アメリカの警官が退職後は年金で手厚く保護されるが、現職警官の下働きは辛いのだろう。そういう生活感がにじみ出ている設定だ。

黒人警官として公営住宅へ潜入捜査官として裏社会のボスの信頼を勝ち得ていたタンゴ。ボスの側近がタンゴは警察官ではないかと疑いの目を向けても、ボスのキャズはタンゴを信頼し続けている。
そんなキャズを上司から昇進と引き換えに逮捕せよとの命を受けて悩むタンゴだったが、キャズは対立する仲間に射殺されタンゴの潜入捜査も終りを告げたのだが、何と、ラストでは

同僚警官にギャングと間違われBK公営団地内で射殺される。

この三人の人生、男性なら大いに共感出来るだろうがタンゴのラストは気の毒だったな~。ドン・チードルもイーサン・ホークも私の好きな俳優で、今回は、特にドン・チードルの役が個人的に一番良かった。しかし、彼の上司である白人女性の上から目線丸出しの態度は、黒人警官であるタンゴを、自分達の思うように使って成果を挙げさせ、昇進をチラつかせながらも、結局はタンゴの昇進は見送り続けられ女性上司だけが良い思いをする。こんな構図の中で、タンゴはよく我慢していたなと思ってしまった。
イーサン・ホーク演じるサルは、結局は金の誘惑には勝てずに、正義感を発揮する前に家族の境遇を考えると、ああいう結末は予想の範囲内でしたね。
イーサン・ホークはラヴストーリーも演じられるが、やはりヴァンパイヤよりは今回の様な役が良いですよ。

最後に、一番無難に生きて定年を全う?したエディ。彼の、今後の人生はどうなるのか?家族も失い、同僚も定年で失い、チャンテルとの生活も失い、彼の背中には男の郷愁が漂っていたのですが...。


映画『ソルト』を観て

2010-08-13 23:04:02 | アメリカ映画 2010

10-44.ソルト
■原題:Salt
■製作年・国:2010年、アメリカ
■上映時間:100分
■鑑賞日:8月7日、シネパレス(渋谷)
 

スタッフ・キャスト(役名)
□監督:フィリップ・ノイス
□脚本:カート・ウィマー
□音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード

◆アンジェリーナ・ジョリー(イヴリン・ソルト)
◆リーヴ・シュレイバー(テッド・ウィンター)
◆キウェテル・イジョフォー(ウィリアム・ピーボディ)
◆ダニエル・オルブリフスキー(オレグ・ワシリエヴィチ・オルロフ)
◆アンドレ・ブラウアー(国防長官)
【この映画について】
アンジェリーナ・ジョリー主演の、本格スパイアクション。数年前、アンジェリーナが製作準備中だった『007 カジノ・ロワイヤル』の話を聞き、「私がボンドをやりたいわ!」と漏らしたことから、本作の主演話が浮上。
当初の脚本では男性だった主人公を、急きょ女性に書き換えたという。それだけに、これまでのヒロインものに比べ、アクションもストーリーも格段にハードボイルド!タフでミステリアスなアンジーの魅力が、ソルト役に最大限に反映されている。
また冷戦時代のソ連で、優秀な子どもたちを集めて徹底したスパイ教育を施し、訓練に耐えた者だけをアメリカに潜伏させ、一斉に戦争をしかける「Xデー」を何十年も待ち続けさせるという実在の“KAプログラム”を下敷きにするなど、内容もかなりリアル。
男性の憧れをファンタジックに描いてきたスパイ映画とは一線を画す、骨太で硬質な作品となっている。
(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】
北朝鮮で、過酷な拷問を受けながら「自分はスパイじゃない、石油会社に勤務している」と訴え続けるイヴリン・ソルト。やがて捕虜交換で解放された。
アメリカCIA本部。
優秀な分析官イヴリン・ソルトは、突然現われたロシアからの亡命者・オルロフを尋問する。特殊スパイ養成機関の元教官だという彼は、アメリカに長年潜伏してきたロシアのスパイが、訪米中のロシア大統領を暗殺すると予告する。
そして、そのスパイの名は「イヴリン・ソルト」だと告げる。一転して二重スパイ容疑をかけられたソルトは、身の潔白を訴えるが聞いてもらえず、最愛の夫の身を案じてCIA本部から逃走。だが自宅に夫の姿はなく、何者かに連れ去られた形跡が残っていた…。ここからイヴリンは一転して追われる身に。CIAはイヴリンを必死になって追いかけるも、必死の追跡劇を交わし姿をくらます。そしてNYではアメリカ副大統領の葬儀にロシア大統領が出席することから会場となる教会は厳戒態勢が敷かれている。

そんなこんなで彼女の追跡劇の合間に、彼女の知られざる過去が暴かれ、何とCIAのロシア課が実はロシアスパイの巣窟だったことが分かったり、大統領の身が危機に曝されたりと、ストーリーはドンドン意外な方向へと進み話が大きくなる。
ストーリーそのものは実話に基づいているそうで、冷戦時代にこのような壮大な計画が実際にあったそうで、平和ボケしている日本人には信じられない計画があったんですね。ロシア時代の仲間を巡って、最後は同士討ちみたいになって展開はますますテンポが早まって行く。

何度も、これで終わりかな?」って思いながらも、ラストシーンを見ていると「パート2」に繋がりそうで、アンジェリーナ・ジョリーのアクション女優としての可能性を大きく感じさせられた。
いずれこれがシリーズ化され、女性版ジェイソン・ボーン見たいになるのだろうか?


映画『インセプション』を観て

2010-07-27 00:00:00 | アメリカ映画 2010

10-41.インセプション
■原題:Inception
■製作年・国:2010年、アメリカ
■上映時間:148分
■字幕:アンゼたかし
■鑑賞日:7月25日、新宿ミラノ(歌舞伎町)
インセプション.jpg
□監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン
□製作:エマ・トーマス
□製作総指揮:クリス・ブリンガム、トーマス・タル
□撮影監督:ウォーリー・フィスター
□衣装デザイン:ジェフリー・カーランド
□美術:ガイ・ヘンドリックス・ディアス
□編集:リー・スミス
□音楽:ハンス・ジマー

キャスト(役名)
◆レオナルド・ディカプリオ(コブ)
◆ジョセフ・ゴードン=レヴィット(アーサー)
◆エレン・ペイジ(アリアドネ)
◆トム・ハーディー(イームス)
◆渡辺謙(サイトー)
◆ディリープ・ラオ(ユスフ)
◆キリアン・マーフィー(ロバート・フィッシャー)
◆トム・ベレンジャー(ブラウニング)
◆マリオン・コティヤール(モル)
◆ピート・ポスルスウェイト(モーリス・フィッシャー)
◆マイケル・ケイン(マイルズ)
◆ルーカス・ハース(ナッシュ)

【この映画について】
『ダークナイト』を世界的大ヒットに導き、一躍注目を集めた俊英 クリストファー・ノーラン監督の最新作。
人の潜在意識からアイデアを盗む、スゴ腕の産業スパイ・コブ役にレオナルド・ディカプリオ。コブに危険な依頼をする、クールでクレバーな大物実業家・サイトー役に渡辺 謙という、日米スターの共演も話題だ。見どころは、“夢”という何が起きても不思議じゃない世界で繰り広げられる、刺激的な現象の数々。
これまで見たことのない、独創的でスタイリッシュなSFX映像から、この若き監督の手腕を見せつけられるはずだ。そして監督が10年も前から構想していたという、豊かなイマジネイションで彩られた独特の世界観も強烈だ。他人の意識の深層にどんどん潜っていくという、なんとも生温かくて、ぐにゃりとした手触りの映像体験が待っている。(gooより転載しました)
【ストーリー&感想】
予告編を観たときは、どういうストーリーなのか掴めなかったが、実際に観ても掴みどころがないのが特徴?のような映画だった。
相手の潜在意識に潜入し、そこで何を考えているかを盗むのが仕事というのが展開なのだが、ストーリーとしては奇抜で他の映画には無いこのアイデアは良いと思う。
だが、相手の夢に潜入し、更に、そこからもう一歩踏み込んで夢の中の夢に深く入り込み過ぎたことで、踏み込んだ側のレオや謙さんの側に不測の事態が生じる。これを映像で観る側に伝えるのだが、演じている方も観る側も「展開しているのはどこの部分?」か理解が難しくなる。

最初の夢?夢の中での夢、ウ~ン、何だかこちらまでもが現在地が分からず、ストーリー展開より何が起こっているのか、頭の中がグチャグチャに。レオの演技は何だか思いつめている感じで、謙さんは肝心な場面で足を引き摺って戦力外になりかけたりして、その他にも多国籍スター俳優陣が要所を占めているのだが、俳優の演技より夢の中を追いかける方に「夢中」になってしまいました。


映画『プレシャス』を観て~アカデミー賞受賞作品

2010-06-17 00:00:00 | アメリカ映画 2010

10-28.プレシャス
■原題:Precious
■製作年・国:2009年、アメリカ
■上映時間:109分
■鑑賞日:5月1日、シネマライズ(渋谷)
■料金:1,000円

スタッフ・キャスト(役名)
□監督・製作:リー・ダニエルズ
□脚本:ジェフリー・フレッチャー
□撮影監督:アンドリュー・ダン
□編集:ジョー・クロッツ
◆ガボレイ・シビデ(プレシャス)
◆モニーク(メアリー)
◆ポーラ・パットン(ミズ・レイン)
◆マライア・キャリー(ミセス・ワイス)
◆シェリー・シェパード(コーンロウズ)
◆レニー・クラヴィッツ(ナース・ジョン)

【この映画について】
ハル・ベリーに黒人女性初のアカデミー主演女優賞をもたらした映画『チョコレート』でプロデューサーを務めたリー・ダニエルズが、初監督した本作。
家族からの虐待に苦しむ黒人少女が、文字を知ることにより自我を確立し、自身の可能性を大きく広げて行く物語だ。彼女を襲うのは、目を覆いたくなるようなむごい現実の数々。
しかし、彼女は自分をしっかりと持ち、周囲の人々に支えられながら生き抜こうとする。自身も虐待を受けていたという監督がプレシャスに託した希望が、強いメッセージと共に伝わって来る作品だ。プレシャスを虐待する母親を演じたモニークが、物語終盤に見せる凄まじい独白にも注目して欲しい。
サンダンス映画祭グランプリをはじめ、各国の映画賞を総なめにした感動作。主演は、映画初出演のガボレイ・シディベ。「サイレンサー」のモニークが、本作でゴールデン・グローブ賞、米アカデミー賞の助演女優女優賞を獲得。
(この項、goo載しました)
【ストーリー&感想】
1987年のアメリカ、ニューヨークのハーレム。アフリカ系アメリカ人の16歳の少女クレアリース・プレシャス・ジョーンズは、“愛しい、貴い”という意味のミドルネームとは似ても似つかない、過酷な現実を生きていた。
彼女は今、自分の父親の子供を妊娠している。彼女は12歳のときにも妊娠し、出産していた。しかし子供を引き取ることはできなかった。父親は行方をくらまし、母親メアリーはプレシャスを、精神的にも肉体的にも虐待している。
太っていて文字も読めないプレシャスは、きれいになってもてはやされる自分を夢想していた。ある日、プレシャスの妊娠が学校に知られてしまい、彼女はフリースクールに送られる。

プレシャスは代替学校“イーチ・ワン・ティーチ・ワン”に通い始めるが、当初は反発する。しかし、自分と同じように悲惨な境遇にある仲間たちや、女性教師レインと出会い、人を愛するということを見出していく。レイン先生は辛抱強くプレシャスを理解しようとし、彼女に作文を教える。少しずつ読み書きができるようになったプレシャスは人生に生きる意味を見つけ、次第に強く、美しく生まれ変わっていく。しかし過酷な運命が、プレシャスを待ち構えていた。
この作品ではプレシャスの母を演じたモニークがアカデミー賞を受賞したのですが、主役はタイトル通り「プレシャス」なんですね。
文盲で16歳とは思えない100キロ超の巨体と2人の子供の母であるプレシャス、彼女の不幸な生い立ちと、母親から精神的にも肉体的にも、これでもかとダメを押したように虐待を受け、父親からは性的虐待を受けその父親の子を二人も生んだ。

学校からもドロップアウトし、落ちこぼれの生徒が通う代替学校に渋々通うが、ここで出会った女性教師レインとの出会いが彼女の人生を変えるきっかけになる。文字を覚え徐々に教養も身に付けたプレシャス、自立に向けて頑張ろうと決意していたら、今度は自身がHIVウィルス感染者で陽性だったことが判明。
どこまでも不幸を背負いこんだ彼女、それでも福祉課のミセス・ワイスの励ましもあり、最後は生活保護を受けている母の下を去り、二人の子供を育てる決意を固める。アメリカの16歳の黒人女性を演じたガボレイ・シビデは新人だが、新人とは思えないほどその体格同様どっしりとした演技が光った。
アカデミー助演女優賞を受賞したモニークは、理不尽とも思えるほど娘を虐待する役で、その虐待ぶりの見事さ?には脱帽だ。

母とは正反対のキャラであるミズ・レインを演じたポーラ・ハットン、ノーメイクで社会福祉課のミセス・ワイス役のマライア・キャリーはこの役を見事に理解していたし、レ二ー・クラヴィッツまでもが脇役で出演するなど、音楽界のスーパースターが二人出ているのにも注目したい。


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