STAP細胞論文をめぐる問題の渦中にいた理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の笹井芳樹・副センター長が、首をつっているのが見つかり、死亡が確認された。論文問題で揺れ続けた理研に、改めて大きな衝撃が走った。
兵庫県警によると、午前8時40分、先端医療センターの関係者が、笹井氏が首をつっているのを発見し、午前9時2分に「男性が首をつっている」との110番通報があった。午前9時46分に神戸市立医療センター中央市民病院に搬送されたが、午前11時3分に死亡が確認された。
遺書は秘書の机の上と自殺現場で発見された。秘書の机の上の遺書は人事課長と総務課長宛てだということは分かっているが、何通あったのかはまだ分かっていない。自殺現場で発見されたのは3通。小保方晴子ユニットリーダー宛のものもあったという報道もあるが、3通の宛先や内容については「ご遺族の心情を優先したい」として公表されなかったが、遺族の了解が取れた上で公共性が高いと判断された部分については今後公開する考えだ。遺書は、1枚の紙に、パソコンで作成され、「限界を超えた」、「精神的に疲れました」といった言葉のほか、「あなたのせいではない」など、小保方氏を励ますようなメッセージが記されていたことが、関係者への取材でわかった。
ノーベル賞候補とも目されていた笹井氏の死は国内のみならず、海外でも大きな衝撃をもって受け止められているようだ。アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルは、「日本人は、時として、自殺をして償う」と報じたほか、2013年、笹井氏の研究を表彰したスイスのベルン大学は、笹井氏の功績をたたえる、哀悼の意を発表。また、STAP細胞論文を掲載し、その後、取り下げた「ネイチャー」も、笹井氏の自殺について、「本当に悲劇で、多大な損失だ」とコメントしている。
現在、STAP細胞の検証を理研側が小保方氏を交えて行っているが、その中で大きな役割を果たしていた笹井氏の訃報を受けて、今後、実験再現に大きな影響が出ると予想される。