kintyre's Diary 新館

野球(西武ファン)や映画観賞記等を書き綴っています。野球のオフ期には関心の高いニュース等も取り上げています。

映画『永遠の僕たち』を観て

2011-12-30 17:05:11 | アメリカ映画 2011

11-93.永遠の僕たち
■原題:Restless
■製作年・国:2011年、アメリカ
■上映時間:90分
■字幕:寺尾次郎
■観賞日:12月30日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)

 
□監督・製作:ガス・ヴァン・サント
□脚本(脚色):ジェイソン・リュウ
□撮影監督:ハリス・サヴィデス
□編集:エリオット・グラハム
□美術:アン・ロス
□衣装デザイン:ダニー・グリッカー
□オリジナル楽曲:ダニー・エルフマン
◆ヘンリー・ホッパー(イーノック)
◆ミア・ワシコウスカ(アナベル)
◆加瀬亮(ヒロシ)
◆シュイラー・フィスク(エリザベス)
◆ジェーン・アダムス(メイベル)
◆ルシア・ストラス(レイチェル)
◆チン・ハン(ドクター・リー)
【この映画について】
他人の葬式に潜りこむ事を日常とする、死に取りつかれた少年と、ガンに冒された少女─そんな思春期の二人を主人公にした、純粋で真っ直ぐなラブストーリー。
第64回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でオープニング上映され高い評価を受けた本作のメガホンをとったのは、『グッド・ウィル・ハンティング』で瑞々しい青春を描いたガス・ヴァン・サント監督。彼の死生観が漂う、一風変わった青春映画だ。主演の二人に、名優デニス・ホッパーの息子ヘンリー・ホッパー、『アリス・イン・ワンダーランド』でアリス役に抜擢されたミア・ワシコウスカというフレッシュな新鋭が名を連ね、二人を見守る重要な役どころで加瀬亮が出演しているのも話題。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
イーノックは、自動車事故で両親を亡くして以来、生きることを諦めてしまった少年。見知らぬ人の葬儀に、遺族のふりをして参列することが彼の趣味だった。ある時、いつものように葬儀に参列していると、係員から問い詰められてしまう。窮地を救ってくれたのは、以前、別の葬儀で出会った少女アナベル。この再会で2人は互いに心を開き始める。

イーノックは、事故の際の臨死体験をきっかけに、ヒロシという第二次世界大戦で戦死した特攻隊員の幽霊が見えるようになっていた。家では、叔母とうまくいかず、ヒロシと遊んで過ごす時間が多かった。
ある日、彼は再会したアナベルを両親が眠る墓地に案内する。帰宅後、イーノックのことを姉のエリザベスに嬉しそうに話すアナベル。そんな彼女の明るい表情に、エリザベスは心を軽くする。実はアナベルは、ガンの闘病中だったのだ。しかも、定期健診によって、一時収まっていたガンが再発していることが明らかになる。自分の余命が3カ月であることをイーノックに打ち明けるアナベル。イーノックは、彼女にヒロシの存在と両親を失った事故の経験を告白する。

やがて、自分の葬儀を自分でプロデュースしたいと告白したアナベルに、イーノックはその準備を手伝うと約束する。それからもデートを重ねて心を通わせる2人だったが、遂にある日、アナベルが倒れてしまう。そのショックで自棄を起こしたイーノックは、両親の墓を掘り返そうとしてヒロシに殴られ、失神。目覚めたのは病院のベッドの上。イーノックは、同じ病院に入院していたアナベルを見舞う。
最期の時が近づいた彼女と言葉を交わしていると、ヒロシが彼女のお伴をしようと現れる。そして迎えたアナベルの葬儀。彼女自身がプロデュースしたセレモニーの最中、イーノックの心には、彼女との思い出が走馬灯のように巡るのだった。

ここ最近、何だか若年の癌患者がテーマの作品が続いているけど、単なる偶然だろうかこういう現象は。「50/50」は体験者がセス・ローゲンと親交があったことから脚本を書いたそうだが、今回の主人公は若い女性で、如何にして亡くなっていくのか?という流れの中での話し。加瀬亮が臨死体験後のイーノックだけに現れる元特攻隊員との設定だが、加瀬の英語は覚えたての英語ではないようでアメリカ滞在経験があるそうで多少納得。今後、外国映画からのオファーが増えそうな予感がします。
あの変な特攻隊員の格好には多少違和感を感じたが、それよりイーノックとの会話の中で原爆投下のことが出て来て、映像でも長崎に投下されたシーンが数秒ドーンとまさに出るのだが、日本で日本人が観ることが全く念頭に無い無神経なシーンだった。未だにアメリカ人の意識はこの程度かと残念だった(映画の評価を下げる要因にはなりません、念の為)。

原爆投下のシーンは不快だったが、ストーリー全体としてが孤独な居場所の無い二人の若者の話し。イーノックは学校にも通わず、他人の葬儀に知人を装って顔をだすのが日常で、それに気が付いたアナベルの親族に摘まみ出されそうになったところを彼女の機転で救われたのが交際の始まり。
イーノックが「ヒロシ」の話をするとアナベルも興味深そうにヒロシについて質問してくる。アナベルの余命が3カ月近くと宣言され、やがて死に行く彼女に対してヒロシが彼女をあちらの世界に「誘導」するような終わり方。ヒロシは自分が現生で悔いを残すような死に方だったので、イーノックを通して彼女には悔いのない終わり方(変な表現だが)を望んでいた。加瀬亮のこの辺の演技は良かった。
最後は、彼女の葬儀に途中から「知人」として参加したイーノックが壇上で思い出を語ろうとするところ(実際は話そうと壇上に上がったが彼女との思い出が駆け巡り話しださないまま)でストップモーションがかかってエンドロールへと。この流れは良かった。それまでに二人の間の関係を中心に進んでいるので、ここで彼があれこれと語るシーンを挿入する必要はないからだ。

エンドロール前がこういう終わり方で、逆に、オープニングではザ・ビートルズの「Two Of Us」がバスからの車窓を背景に流れる。この曲をカバーでなく、オリジナル曲(アルバム「レット・イット・ビー」)をそのまま映像と重ねているのだが、タイトル通り、この映画がイーノックとアナベルの二人(Two Of Us)の物語であることを示している。

イーノックを演じるのはデニス・ホッパーの息子であるヘンリー・ホッパー、どことなく素人さを感じるが出演作を重ねれば解消されるだろう。一方のミア・ワシコウスカの出演作は数本観ているので違和感なく、感情の起伏が多い難しい役だったが上手く演じていた。若手演技派女優としての道を進むことになるだろうが、何時の日か主役級での話題作への出演を観てみたい。


映画『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』を観て

2011-12-25 11:34:33 | アメリカ映画 2011

11-92.ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル
■原題:Mission:Impossible-Ghost Protocol
■製作年・国:2011年、アメリカ
■上映時間:132分
■字幕:戸田奈津子
■鑑賞日:12月25日、吉祥寺スカラ座(吉祥寺)



□監督:ブラッド・バード
□脚本:ジョッシュ・アッペルバウム、アンドレ・メネック
□製作:トム・クルーズ、J.J.エイブラムス、ブライアン・バーグ
□撮影監督:ロバート・エルスウィット
□美術:ジム・ビッセル
□編集:ポール・ハーシュ
□衣装デザイン:マイケル・カプラン
□音楽:マイケル・ジアッキノ
◆トム・クルーズ(イーサン・ハント)
◆ジェレミー・レナー(ウィリアム・ブラント)
◆サイモン・ペッグ(ベンジー・ダン)
◆ポーラ・パットン(ジェーン・カーター)
◆ミカエル・ニクヴィスト(カート・ヘンドリクス)
◆トム・ウィルキンソン(IMF長官)
◆レア・セドゥー(サビーヌ・モロー)
◆アニル・カプール(ブリッジ・ナス)
◆ジョッシュ・ホロウェイ(トレヴァー・ハナウェイ)
◆ウラディミール・マシコフ(アナトリー・シディロフ)
【この映画について】
トム・クルーズが製作・主演を務める「ミッション:インポッシブル」シリーズの第4弾。『Mr.インクレディブル』『レミーのおいしいレストラン』で2度のアカデミー長編アニメーション賞に輝いたブラッド・バードが初の実写監督に挑んだ。今回のイーサン・ハントは、ドバイにある世界一の超高層ビル“ブルジュ・ハリファ”の壁面をよじ登ったり、複雑に動き回る立体駐車場の中で格闘したりと、正に縦横無尽の活躍を繰り広げる。これらのアクションをすべてトム・クルーズ自身が演じているというのだから、その役者魂には脱帽だ。
今回チームを組むのは「ザ・タウン」「マイティ・ソー」のジェレミー・レナー、「宇宙人ポール」のサイモン・ペッグ、「ミラーズ」「プレシャス」のポーラ・パットン。
(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
IMFエージェントのトレヴァー・ハナウェイはハンガリーの首都ブダペストで、「コバルト」というコードネームの人物に渡されるはずの秘密ファイルを奪う任務に就いていた。簡単な任務のはずだったが、同ファイルを狙う別組織が乱入したため追跡・銃撃戦となる。やがて、ハナウェイは女殺し屋のサビーヌ・モローによって殺され、ファイルも横取りされてしまう。

その後、ハナウェイのチームリーダーのジェーン・カーターと、新たに現場エージェントに昇格したベンジー・ダンが、イーサン・ハントとその情報屋であるボグダンをモスクワの刑務所から脱出させる。新たなチームリーダーとなったイーサンはIMFの指令によってコバルトの正体を探るため、ダンとカーターを率いてクレムリンに侵入する。だが、IMFの周波数を使う別組織に先手を打たれて爆破テロに巻き込まれ、イーサンは気を失う。病院で目覚めたイーサンは、ロシア諜報員のアナトリー・シディロフに爆破テロの首謀者だと決め付けられる。イーサンはその場から逃亡し、IMFに救助を求める。

イーサンを迎えに来たのはなんと、IMF長官だった。長官によると、ロシア政府は爆破テロをアメリカ合衆国によるものであると信じ込んでいるという。しかも、合衆国大統領は関与を否定するために「ゴースト・プロトコル」を発動させていた。つまり、IMFは解体され、イーサンのチームはテロリストとして追われる身となってしまったのである。
IMF長官は、コバルト追跡任務続行のためにイーサンを逃がそうとする。だが、彼らが乗る車がシディロフ率いる部隊に市中でいきなり銃撃され、長官は射殺され、イーサンも車もろとも川に沈み橋上から銃撃されるが辛うじて逃げ切った。ハントは長官に同行していた分析官のウィリアム・ブラントと共に脱出し、カーターとダンと合流する。

クレムリンを爆破したのは、実はカート・ヘンドリクスという核兵器戦略家で、彼こそがコバルトの正体だった。ヘンドリクスは、人類の次の進化のためには核兵器による浄化が必要であると信じており、核兵器発射制御装置を盗むためにクレムリンに潜入し、その盗難を隠蔽するためにクレムリンそのものを爆破したのだった。

そして、モローがハナウェイから奪ったファイルには、ヘンドリクスの装置を機動するための暗号が記されているのだった。イーサンたちは、モローとヘンドリクスの部下が取引する手筈になっている中東ドバイのブルジュ・ハリーファ・ビルに先行し、仕掛けを施す。
2つの異なる階で、ジェーンがモローに成りすまし、イーサンとブラントがヘンドリクスの部下に成りすますことにより、お互いに取引が成立したと思わせ、ヘンドリクスに偽暗号をつかませるという作戦である。

いつも国際色豊かなM:iシリーズ、今回は、いきなり冒頭でクレムリンを爆破するというハイライト的な場面で始まる展開には度肝を抜かれた。あのシーンはもっと後でも良かったのだが、007同様出し惜しみをしないサービス精神の塊であるトムらしいアイデアだ。そのモスクワでのシーンから始まり、中東のドバイでの超高層ビルでのスタントなしの死ーン、最後はインドへと舞台が移りアメリカに戻って来て終わるのだが、その間にも世界各地での出来事が短く挿入されるなど、まさに世界をまたぐ設定だ。
ストーリー的には核テロリストに先を読まれて逆にテロリストとして追われる身になったチームだが、今回はチームとしての結束が強調されていて、イーサンのワンマンチームではなく4人でチームとして動いているのも特徴だ。中でもブラントは「事務職」?から待望のチーム入りで張り切っている。またこの映画は国際色豊かな配役も見所だが、中でも核テロリストとして登場するミカエル・ニクヴィストはオリジナル版「ミレニアム」3部作シリーズで主人公となる記者ミカエル(ハリウッド版ではダニエル・クレイグが演じ来年2月に公開)を演じていたが、ここでは準主役での扱いで、記者役とは異なる個性を放っていた。今後、ハリウッド系作品で欧州が舞台になる場合、出番が増えそうな予感がする。

さて、主役のトムはプロデューサーも兼ねているのだが、やはり、何といっても本作ではドバイでのスタント・シーンには感心した。CGを巧に使えば問題無いシーンだが、この危険なシーンを自ら演じる彼の熱意は凄いの一言だ。現場スタッフも映画会社も愛妻ケイティ・ホームズも本心はハラハラドキドキだったのではないか?
今回、ある意味で最もほろりとさせられたのはミッションを完了させてチームとしてアメリカに戻ってきたシーン(シアトルかな?)。ここだけは敢えてネタバレしませんが、あの場面でのイーサンの表情が爽やかだったのは何故か?あのシーンがスピード感満点で進んだストーリーの解毒剤とも言える、是非、映画館かDVDで確認して下さい。


映画『私だけのハッピー・エンディング』を観て

2011-12-18 16:22:54 | アメリカ映画 2011

11-87.私だけのハッピー・エンディング
■原題:A Little Bit Of Heaven
■製作年・国:2011年、アメリカ
■上映時間:107分
■字
幕:伊原奈津子
■料金:1,800円
■鑑賞日:12月17日、新宿ピカデリー(新宿)
 

□監督:ニコール・カッセル
□脚本:グレン・ウェルズ
□撮影監督:ラッセル・カーペンター
□編集:スティーヴン・A・ロッター
□美術:スチュアート・ワーツエル
□音楽:ヘイター・ペレイラ
◆ケイト・ハドソン(マーリー・コーベット)
◆ガエル・ガルシア・ベルナル(ジュリアン・ゴールドスタイン)
◆キャシー・ベイツ(ビバリー・コーベット)
◆ルーシー・パンチ(サラ・ウォーカー)
◆ロマニー・マルコ(ピーター・クーパー)
◆ウーピ・ゴールドバーグ(神様)
◆ローズマリー・デウィット(レネー・ブレア)
【この映画について】
突然ガンを宣告されたキャリアウーマンが、残された時間に苦悩しながら自身の人生を見つめ直すようになる姿を描いた切ないラブストーリー。不治の病に侵されたヒロインには、『あの頃ペニー・レインと』のケイト・ハドソン、彼女を不器用ながら温かく見守る主治医を、『バベル』のガエル・ガルシア・ベルナルが演じる。
共演には『ゴースト/ニューヨークの幻』のウーピー・ゴールドバーグ、『アバウト・シュミット』のキャシー・ベイツら実力派が脇を固める。(この項、シネマトゥデイより転載しました)
【ストーリー&感想】
広告代理店に勤務する30歳のマーリー・コーベットは、大好きな仲間たちに囲まれ、仕事も順調、恋も気ままに楽しんでいる。ただし、真剣な恋はお断り。物事が深刻になってもユーモアで交わし、独身生活を満喫するキャリアウーマンだ。ところがある日の検診で、医師ジュリアン・ゴールドスタインから、突然の“がん”の宣告を受ける。

何も起こっていないかのようにいつもの笑顔で元気に過ごそうとするマーリーだったが、友達はハレモノに触るようにマーリーに接し、母・ビバリーはただ悲しみオドオドするばかり。父は離れて暮らしていたために、どう接していいかも分からない。ジュリアンとの出会いも、患者と医師という立場が二人を遠ざけていく。周りの気遣いにマーリーはイライラしてしまい、八つ当たりする日々。友達とも険悪になり、両親との溝も深まっていく……。

だがそんなマーリーを静かに受け止めてくれるジュリアンの存在がいつしか彼女の心を溶かし始めていた。明るく振舞い、自分の気持ちを隠していたが、本当は本気になって向き合って、傷つくのが怖かったのだ。ジュリアンが側にいてくれるおかげで友人や両親、愛する人に心を開き、素直になる大切さを知っていくマーリー。しかしその喜びに気付いた時、彼女に残された時間はあとわずかだった……。

若くして癌に冒される話って言うと「50/50」「永遠の僕たち」も同じテーマで、偶然にも同じような時期に公開されているのは不思議だ。「50/50」はセス・ローゲンが明るく励ます役で暗くなっていないし、本作でもケイト・ハドソンのキャラもあってかコメディ・タッチで前半は進んでいく。
本人には全く癌に冒されていると言う意識は無く、むしろ周囲の人間が妙に気を遣っているのが滑稽に感じる位だ。マーリーは不仲な両親をみて育ったせいか、自身は恋愛に奥手で心を開こうとしない。母はオロオロするだけで何を言ってもマーリーは受け付けない。母を演じているキャシー・ベイツ、彼女はこういう役柄が最近目立つようで「P.S.アイ・ラブ・ユー」ではヒラリー・スワンクの母役だった。
その我儘な性格のマーリーを癒したのが担当医でもあるジュリアンだった。ジュリアン役はガエル・ガルシア・ベルナルでだが、この手の役に慣れていない?せいか英語のせりふも演技もぎこちなさを感じた。しかし役上では彼はマーリーの癒し役で担当医と患者の関係を越えた仲になって行く。あれほど気ままな恋を謳歌していた彼女が担当医に気を許すのだが、前半は明るくふるまっていた彼女にもやはり癌は徐々に彼女の体を蝕んでいった。

コメディ・タッチの前半から打って変わって後半は彼女の体調が悪化し重くなっていく。それでもケイト・ハドソンは深刻になり過ぎずに上手くこの役を演じていた。最後は、車椅子で公園に行っていた彼女が静かに息を引き取って行くのだが、やはり若くして癌で亡くなるのを見るのは辛い。
それでもマーリーは担当医ジュリアンとの僅かな期間の関係で人生を終えたが、彼女に取っては「チョットした天国(幸せ)」(A Little Bit Of Heaven、←原題)を味わった気分だったに違いない。

最後にウーピ・ゴールドバーグが「神様」役で出演しているが、何だかこのシーンだけ浮いているように感じたがマーリーに重要な啓示を与えるので、まあ良いかな?


映画『リアル・スティール』を観て

2011-12-15 11:32:20 | アメリカ映画 2011

11-84.リアル・スティール
■原題:Real Steel
■製作年・国:2011年、アメリカ
■上映時間:128分
■字幕:松浦美奈
■料金:1,000円
■鑑賞日:12月14日、TOHOシネマズ渋谷


□監督・製作
:ショーン・レヴィ
□脚本
:ジョン・ゲイティンズ
□原案:リチャード・マシスン
□製作総指揮:ジャック・ラプケ、ロバート・ゼメキス、スティーヴ・スターキー、スティーヴン・スピルバーグ、ジョシュ・マクラグレン、メラリー・マクラグレン
□撮影監督:マウロ・フィオーレ
□美術:トム・マイヤー
□衣装デザイン:マーリーン・スチュワート
□音楽:ダニー・エルフマン
◆ヒュー・ジャックマン(チャーリー・ケントン)
◆ダコタ・ゴヨ(マックス・ケントン)
◆エヴェンジェリン・リリー(ベイリー)
◆アンソニー・マッキー(フィン)
◆ケヴィン・デュランド(リッキー)
◆ホープ・デイヴィス(デブラ・バーンズ)
◆ジェームズ・レブホーン(マーヴィン・バーンズ)
◆カール・ユーン(タク・マシド)
◆オルガ・フォンダ(ファラ・レンコヴァ)
【この映画について】
スティーヴン・スピルバーグとロバート・ゼメキスが製作総指揮を手がけ、『ナイト・ミュージアム』のショーン・レヴィが監督を務める本作。2020年という近未来を舞台に、ロボット・ボクシングを通して心を通わせていく父と息子、少年とロボットの物語だ。
ヒュー・ジャックマン演じるダメ親父と、ダコタ・ゴヨ演じる生意気な少年が、一つの目的に向って進むうちに親子の絆を強くしていく過程は、なんとも心を打つ。しかし、ただの感動物語だけではなく、『トランスフォーマー』のようなロボット同士の対決の迫力と面白さや、場末の賭けボクシングの世界の怪しさ、自分より強い選手に戦いを挑むスポーツ映画としての魅力といった様々な楽しみ方がある作品だ。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
チャーリー・ケントンはかつて将来を嘱望された期待のボクサーだった。チャンピオンを目指してトレーニングに打ち込んできたものの、時代は高性能のロボットたちが死闘を繰り広げる“ロボット格闘技”の時代に突入。もはや人間のボクサーは生きる場所を失い、チャーリーは人生の敗残者も同然だった。

辛うじてロボット格闘技のプロモーターとして生計を立てているものの、乏しい資金力で手に入れられるロボットは、リングの上であっという間にスクラップ状態。人生のどん底にも関わらず、さらなる災難がチャーリーに舞い込んでくる。
赤ん坊の時に別れたきりの息子マックスが最愛の母を亡くして、11歳になった今、初めて彼の前に現れたのだ。だが、マックスは、そう簡単にチャーリーに心を開くはずもなく、親子関係は最悪の状態。そんなある日、2人はゴミ捨て場でスクラップ同然の旧式ロボット“ATOM”を発見する。それが、彼らの人生に奇跡を巻き起こす“運命の出会い”であることに、チャーリーもマックスもまだ気づいていなかった……。

ATOMは古い型のスパーリング・ロボットだったが、この型特有の模倣機能が備わっていたのが大きかった。マックスは対戦相手だったノイジー・ボーイから取りだした音声認識システムをATOMに組み込み、プログラムを徹夜で進化させる。マックスは、父がかつては諦めない闘いぶりで観客を魅了していたボクサーだったことをベイリーから聞かされ、ATOMに技を教え込んで欲しいと懇願されマックスの願いを聞く。
これを機に、チャーリーの中に眠っていた感覚が蘇り、ATOMは連戦連勝街道を突っ走り、遂に、最強ロボットであるゼウスとの戦いに挑む。最強ゼウス相手に超満員の観衆は大興奮、このクライマックスの戦闘シーンにはジーンとさせられた。誰もがゼウス圧勝を予想するなかでも、ATOMは今までも不利な戦いに勝利してきた経験がここで活きてきた。
ゼウスは初回にダウンを奪ったものの、徐々にATOMの反撃にあい焦りが募って来る。必死に反撃を試み王者の強さを見せるが、ATOMの攻撃も執拗だった。観客は攻め込まれるゼウスをみて大いに興奮するが、結局は初回にダウンを奪ったゼウスが辛うじて判定勝利を収めるが、観客はどちらが真の勝者か知っていた。

その勝利の裏で、マックスは親権者の叔母夫婦に引き取られることが決まっていた。当初はぎこちなかった父子関係も、ATOMを通じてその絆は強固なものになっていた。

当初、観賞するか決めかねていたこの映画だったが、観て大正解だった。恐らく自分の年間ベスト10入りするのは間違いないだろう。生き別れ状態だった父子が、心を通わせるまでの物語だが、シャイな父はボクサーとしては大成しなかったが、息子マックスが発見したATOMに自分が成し得なかった夢を託せるまでになっていった。マックスも孤独な自分の境遇を嘆くだけでは無く、この格闘ロボットと共に成長していく様子が描かれていたのは良かった。
ラストの格闘シーンでは、ハリウッド映画にありがちな「勝者こそ真の王者」ではなく、日本的な「負けるが勝ち」的な終わり方だったし、叔母夫婦に引き取られるシーンはホロリとさせられた。
日本的と言えば、余談だがマックスがノイジー・ボーイをコントロールする時に使う言語は「日本語」だったし、マックスのTシャツやロボットのデザインの一部も漢字だった。
マックス役でヒュー・ジャックマン相手に堂々と演じていた子役のダコタ・ゴヨには今後大いに注目したい。


映画『フェイク・クライム』を観て

2011-12-10 17:55:30 | アメリカ映画 2011

11-83.フェイク・クライム
■原題:Henry's Crime
■製作年・国:2010年、アメリカ
■上映時間:108分
■字幕:岡田理枝
■料金:1,800円
■鑑賞日:12月10日、ヒューマントラストシネマ渋谷


□監督:マルコム・ヴェンヴィル
□脚本・原案・製作総指揮:サーシャ・ガヴァシ
□脚本:デヴィッド・ホワイト
□原案・製作:スティーブン・ハメル
□撮影監督:ポール・キャメロン
□美術:クリス・ジョーンズ
□衣装デザイン:メリッサ・トス
□音楽:タップトーン・レコード
◆キアヌ・リーヴス(ヘンリー)
◆ヴェラ・ファーミガ(ジュリー)
◆ジェームズ・カーン(マックス)
◆ビル・デューク(フランク)
◆ピーター・ストーメア(ダレク)
◆ジュディ・グリア(デビー)
◆ダニー・ホック(ジョー)
◆フィッシャー・スティーヴンス(エディ)
【この映画について】
ヘンリーは、毎日ただなんとなく生きている男。そんな彼の人生が、刑務所を出てから、銀行強盗という目的のために、自分で決めて人を動かしていくという能動的な生き方に変わっていく。この作品の面白さは、銀行強盗の段取りより、ヘンリーが俳優になるという展開。劇のリハーサルと実際の女優との恋愛、そして銀行強盗の準備が平行して進んでいく。
最後にヘンリーが選択するのはどれか。無為な人生を送っていたが、次第に生きる力を取り戻していく主人公にキアヌ・リーヴス。銀行強盗の仲間になる詐欺犯に名優ジェームズ・カーン、そして舞台女優役に『マイレージ、マイライフ』でアカデミー賞にノミネートされたヴェラ・ファーミガが扮している。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
ニューヨーク州バッファローのハイウエイ料金所で深夜働くヘンリー・トーンは、看護師の妻と共に目的もなく漫然と日々を過ごしていた。ある日、高校時代の悪友たちから野球の試合に誘われ、車を銀行の前に停めて待っていたところ、突然ベルが鳴る。知らないうちに彼は強盗の運転手にさせられていたのだ。逮捕されたヘンリーは仲間の事を一言も喋らず、懲役3年の刑に服する。

刑務所で同房になったのは詐欺犯のマックス。彼は、ヘンリーに意義ある人生を送るようアドバイスする。そして1年後。仮釈放されたものの、妻が他人の子を身籠っていることを知って家を去るヘンリー。
雪が降る中、強盗のあった銀行の前にぼんやり立っていた彼は、突然クルマにはねられる。あわててクルマから飛び出してきたのは、舞台女優のジュリー・イワノワ。彼女は隣の劇場でチェーホフの『桜の園』の主人公ラネーフスカヤを演じることになっていた。
大した傷もなく、これをきっかけにジュリーと知り合ったヘンリーは、劇場と銀行の間に古いトンネルが存在したことを知り、あることを思いつく。やってもいない銀行強盗で刑務所に入ったのだから、銀行から金を頂いてもいいだろう……。
やがて刑務所から出所したマックスを巻き込み、劇場から銀行までトンネルを掘る計画を立てる。それはまず、マックスを劇場のボランティア・マネージャーに仕立て上げ、続いてヘンリーが劇団員に応募するというものだった。

計画は順調に進み、トンネル掘りが開始。だがやがて、ヘンリーは自分に舞台俳優の才能があることに気付くとともに、ジュリーに対する恋心を自覚してゆく。ある夜ついに、ジュリーに身に覚えのない犯罪で刑務所に入っていたことと、これからの計画を打ち明けるが……。

この作品、キアヌ・リーヴスが主役なのですが、彼だけが目立つ設定ではなくて舞台女優役のヴェラ・ファーミガと塀の中で知り合ったマックスを含めた三人の物語と言えます。ヴェラ・ファーミガは「マイレージ・マイライフ」でブレークして、最近では「ミッション:8ミニッツ」にも出演していていた注目の女優です。
ヘンリーは彼に心を寄せる女性の存在がありながらも結婚を躊躇っていて、ある日、かつての知り合いから野球の試合へ駆り出された筈なのに、騙されて銀行強盗犯に仕立てられた。ここから彼の人生は違った方向へと進んで行って、塀の中で「主(ぬし)」のような存在のマックスと意気投合。マックスは塀の中の居心地が良いのか仮釈放の面接でワザと悪態をつく。そして、ヘンリー釈放後、度々マックスを訪ねてそこで銀行強盗の話を持ちかける。しかし、そのきっかけがトイレに張ってあった古い記事、という設定がけっさくだった。

まあ、結局あれやこれやでジュリーと仲良くなって、彼女の舞台を見学に行って演技に興味を持ち、そこにマックスを引きこんで計画を練る。ヘンリーが徐々に演技に興味を持ち始めるのだが、マックスは隙をついて控室からトンネルを掘り進める。でもね、これってちょっと無理があるんだよね。だって、当然大きな音もするし土砂を処理しなければならないし、また協力者も必要だし。
ってな訳で登場したのが、ヘンリーを陥れたメンバーの一人でヘンリーの妻を寝取った男。また、この男がヘンリーには内緒で主犯格の男に知らせて波乱が起きるのだが、今度は簡単に騙されなかった。一度は銃を向けられたが、反撃して負傷しながらもこの男をねじ伏せた。

こうして銀行の地下まで掘り進めることに成功したが、その一方で銀行の古参警備員は勘付いていたのだが、逆に内部情報を教えるサービスぶり、まあこれには訳があったのですがね。
ヘンリーの俳優としての舞台と銀行から金を盗む計画は同時進行で進み、この辺がドキドキする反面盛り上がりに欠ける面もあった。計画はまんまと成功し、ヘンリーはマックスと共にフロリダ方面へと逃亡...。と思いきや、ヘンリーは町に留まり、マックスだけが計画通り高飛びしたのでした、っていうオチでした。

ヘンリーと地方巡業女優から抜け出したいジュリーの関係、ここではジュリーの強烈な個性が目立っていてキアヌ・リーヴスの個性を上回っていた。やはりヴェラ・ファーミガは只者では無いですね。それとマックスを演じたベテランのジェームズ・カーンも良い味だしていましたよ。この二人が個性的だっただけに、逆に、キアヌ・リーヴスが大人しく感じた。


映画『50/50 フィフティ・フィフティ』を観て

2011-12-05 14:57:23 | アメリカ映画 2011

11-82.50/50 フィフティ・フィフティ
■原題:50/50
■製作年・国:2011年、アメリカ
■上映時間:110分
■字幕:石田泰子
■料金:1,800円
■鑑賞日:12月4日、TOHOシネマズ渋谷
 


□監督:ジョナサン・レヴィン
□脚本・製作総指揮:ウィル・レイサー
□製作総指揮:ネイサン・カヘイン
□撮影監督:テリー・ステイシー
□美術:アニー・スピッツ
□衣装デザイン:カーラ・ヘットランド
□音楽:マイケル・ジアッキーノ
◆ジョセフ・ゴードン=レヴィット(アダム)
◆セス・ローゲン(カイル)
◆アナ・ケンドリック(キャサリン)
◆ブライス・ダラス・ハワード(レイチェル

◆アンジェリカ・ヒューストン(ダイアン)
◆マット・フルーワー(ミッチ)
◆フィリップ・ベイカー・ホール(アラン)
【この映画について】
ガンで余命わずかと宣告された青年の葛藤(かっとう)と周囲の人々の姿を、笑いと涙を交えてつづるハートフル・ドラマ。コメディー俳優セス・ローゲンの親友で、ガンを克服した脚本家ウィル・ライザーの実話を基に、シリアスになりがちな闘病記を新鋭ジョナサン・レヴィン監督がユーモラスに描き出す。
迫り来る死を意識しながら病魔と闘う主人公を、『(500)日のサマー』のジョセフ・ゴードン=レヴィットが好演し、彼の親友をセス・ローゲンが演じる。(この項、シネマトゥデイより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
シアトルの公営ラジオ局で働く27歳のアダムは火山の番組を取材中で、信号はきちんと守り、ジョギングが好き(シアトルなので一昔前のマリナーズの野球帽を被っていた)で絵に描いたような律儀な性格だが、ガールフレンドで画家のレイチェルは、アーティストのせいかマイペース。同僚で親友のカイルも女好きでお気楽なタイプだ。
ある日、アダムは腰の痛みが治まらないので検査を受けると、「悪性神経鞘腫 神経線維肉腫」、つまり「ガン」と診断される。酒もタバコもやらないアダムだが、このガンは5年後の生存率が50%、転移後の生存率は10%という過酷な病気だった。

落ち込んでいてもしかたがないと腹をくくったアダムは、医師の指示に従って抗ガン剤治療を受け、さらにセラピストのキャサリンの診察を受けることに。まだ24歳でセラピーの経験が少ない彼女に不安を抱きつつアダムは前向きに病気と闘おうとするが、抗ガン剤治療は思った以上に過酷だった。
そんな中、スキンヘッドにしたアダムはアランやミッチという患者仲間に励まされて病を乗り越えていく。一方、カイルはアダムと一緒に行った本屋で美人店員に声をかけ、まんまとデートの約束をとりつけたところ、そのデート先のギャラリーでレイチェルが他の男とキスする現場を目撃してしまう。これをきっかけにレイチェルは看病疲れを告白、ついにアダムも彼女との別れを決意する。

そんな折、病院にバスで通うアダムをキャサリンが送ってくれ、彼女と話しているとアダムはリラックスしている自分に気づく。しかし、患者仲間のティムが息を引きとり、さすがにアダムも自分の余命をリアルに意識し始めた。さらに彼は医師から、抗ガン剤が効いていない現実を知らされる。大きくなった腫瘍は摘出手術を行わないと、転移の危険があるという。「自分が生きる確率は50/50(フィフティ・フィフティ)。半分の確率に賭けるのもいいじゃないか」と決意を固めたアダムは、愛する両親とカイル、そしてキャサリンに見送られ、手術台に上るのだった……。

最近この手の作品が増えているような気もしますが、やはり27歳という若年で癌を宣告されたらどんなに強靭な精神の持ち主でも「死」を意識するだろう。本作は脚本を書いたウィル・レイサー氏の体験談で、レイサー氏がセス・ローゲンと親交があり、そんな関係で脚本化したそうで、実際にセス・ローゲンもプロデューサーとして名を連ねている。
実話に基づいた作品だが、果たしてどこまでが本当の体験談でどこまでが脚色されたのか判り辛いが、随所に洒落っ気のあるシーンが目立つのでセス・ローゲンのアイデアもかなり盛り込まれている可能性大だ。

主人公のがん患者を演じるジョセフ・ゴードン=レヴィットは「(500日)のサマー」や「メタルヘッド」での怪演が記憶に新しい俳優で、本作では出演が撮影開始前に急遽決まったとのこと。それでも彼の演技の奥深さを感じさせられた。でも、あのバリカンで頭を丸めるシーンは見ていてドキドキしました。
対するセス・ローゲン、「グリーン・ホーネット」では勝手に一人で目立っていて悪評を振りまいていた?が、本作では良い意味で他の出演者とは異なるカラーを出していた。癌発症で落ち込むアダムを天真爛漫な性格そのままに励ます親友の役で、こういう個性が彼の持ち味となりそうだ。
女優陣では癌発症後、浮気現場をカイルに目撃されたレイチェル役のブライス・ダラス・ハワード(ロン・ハワード監督の娘)は浮気がばれる役(男としたら許せないけどね)、研修中の頼りなさそうなセラピストを演じるのはアナ・ケンドリック。アダムから別れを告げられてから、アダムを精神的に支えることになるアナ・ケンドリック、「マイレージ・マイライフ」では嫌な新入社員役を演じていたけど、その美貌はこれからが楽しみな女優さん。でも、車内が滅茶苦茶汚くてアダムに嫌味を言われていたけど、綺麗な女性でもあれでは幻滅だな自分だったら。

ストーリー的には癌治療の辛さ、特に、病院での治療で知り合った高齢者の二人の一人が、急に亡くなったことで落ち込むアダム。最後は、しい治療に挑むことで覚悟を決めるのだが、最後まで身近で励まし続けていたのが冗談ばかり言っているカイルだった。そして、いつもお節介ばかり焼きたがる母だった、そこにこれからはキャサリンがその輪に加わって、メデタシメデタシ。
それにしてもアメリカの医師って、日本のように深刻に(別に私は癌経験者では無いですが)告知しないのですね。


映画『フェア・ゲーム』を観て

2011-11-27 23:05:11 | アメリカ映画 2011

11-81.フェア・ゲーム
■原題:Fair Game
■製作年・国:2010年、アメリカ
■上映時間:108分
■料金:1,800円
■鑑賞日:11月27日、新宿武蔵野館




□監督・製作・撮影監督:ダグ・リーマン
□脚本:ジェズ・バターワース、ジョン・ヘンリー・バターワース
□撮影監督:アンドリュー・ダン
□美術:ジェス・ゴンコール
□衣装デザイン:シンディ・エヴァンス
◆ナオミ・ワッツ(ヴァレリー・プレイム)
◆ショーン・ペン(ジョー・ウィルソン)
◆サム・シェパード(サム・プレイム)
◆ノア・エメリッヒ(ビル)
◆ブルース・マッギル(ジム・パヴィット)
◆デヴィッド・アンドリュース(スクーター・リビー)
【この映画について】
イラクに大量破壊兵器が存在しないことを公表したために、アメリカ政府の厳しい報復に遭った元CIAの女性エージェントの実話「プレイム事件」を映画化したクライム・サスペンス。『ボーン・アイデンティティー』『Mr.&Mrs.スミス』のダグ・リーマンがメガホンを取り、CIA諜報(ちょうほう)員役のナオミ・ワッツと元大使役のショーン・ペンが夫婦役で共演。
真の正義を貫いた夫婦のきずなと衝撃の真実がリアルに描かれ、スピード感あふれるスリリングなエンターテインメント作品としても楽しめる。(この項、シネマトゥデイより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
2001年9月11日の同時多発テロ以降、アメリカのブッシュ政権はイラク政府が大量破壊兵器を密かに保有し、世界にテロを“輸出”する「悪の枢軸」のひとつだとして、世論を動かしながら攻撃準備を進めていた。
極秘にこの疑惑を調査していたCIAの秘密諜報員ヴァレリー・プレイムは、潜入捜査の末、イラクに核兵器開発計画がないことを突き止める。一方、ヴァレリーの夫で、元ニジェール大使のジョー・ウィルソンも、国務省の依頼でアフリカ・ニジェールへ赴く。イラク政府が核兵器開発に必要な濃縮ウランを密かに買い付けているとの情報の真偽を確認するためだ。そして彼もまた、イラク政府によるウラン購入の事実はないとの結論に達する。

だがブッシュ政権はヴァレリー夫妻の報告を無視、2003年3月20日、イラクへ宣戦布告する。4ヶ月後、ジョーは自身の調査報告を元にイラク戦争の真実をニューヨーク・タイムズ紙に寄稿、ブッシュ政権を揺るがす大論争を巻き起こす。
核兵器開発計画が最初から存在しないならば、イラク戦争を始めたブッシュ政権の正当性が疑われかねない。ところがその直後、ワシントンの有力ジャーナリストたちに、ヴァレリーがCIAの秘密諜報員だという情報がリークされる。情報漏えいを指示したのは、チェイニー副大統領主席補佐官のルイス・“スクーター”・リビーだった。

身分を暴露され、たちまち世間の好奇の目に晒されるヴァレリー。家族や各国に散らばる協力者にも危険が迫り、彼女のキャリアと私生活は崩壊し始める。匿名で送られてくる脅迫状や無言電話、容赦ない世間の中傷……今まで証券会社勤務だと偽っていた彼女から友人も離れていった。ジョーは、メディアに自身の正義を論じるが、ヴァレリーは沈黙を貫く。公の場で事実を明かすべきだと言い募るジョーと対立し、唯一の安らぎの場所だった家庭さえもが崩れ落ちそうになったとき、彼女はいつも温かく見守ってくれた両親のもとへ向かう。
家族との穏やかな時間を過ごす中、大切なものとは何か気付いたヴァレリーは、自らの名誉と家族を守るため、強大な国家に戦いを挑むのだった……。

実はこの事件について自分は全く記憶が無い。エンドロール突入前に彼らの素性をばらしたのが国務副長官でもあり知日派としても知られ、プロレスラー並の巨体でスキンヘッドの容姿で目立っていたアーミテージ氏だったというのも始めて知った。
それにしてもヴァレリーがCIA工作員だったことが暴露されてからの近所の眼ががらりと替わったのは、アメリカでもこういうことがあるのだな?ってことが分かったと同時に驚いた。プレイム夫妻を演じるナオミ・ワッツとショーン・ペン、この二人の演技力のバランスが絶妙だったことで、どちらかが浮くこともなかった。ショーン・ペンが妻を守ろうと必死に弁護し、TV番組に出演して熱っぽく語る場面は愛情の深さを示していた。
アメリカ式の民主主義は、日本のように与えられたものではなく、米国民が自ら選んだ制度でありその為には自分で戦ってでも民主主義を守るのも務めである。そんなことを改めて感じさせられたと同時に、息子ブッシュ大統領のイラク敵視政策の愚かさも白日の下にさらけ出していたストーリー展開でもあった。


映画『ラブ・アゲイン』を観て

2011-11-26 18:33:33 | アメリカ映画 2011

11-80.ラブ・アゲイン
■原題:Crazy,Stupid,Love
■製作年・国:2011年、アメリカ
■上映時間:118分
■字幕:藤澤睦実
■料金:1,800円
■鑑賞日:11月20日、シネマート新宿
 

□監督:グレン・フィカーラ、ジョン・レクア
□脚本:ダン・フォーゲルマン
□撮影監督:アンドリュー・ダン
□編集:リー・ヘキソール
□美術:ウィリアム・アーノルド
□衣装デザイン:デイナ・ピンク
□音楽:クリストフ・ベック、ニック・ウラタ

◆スティーヴ・カレル(キャル)
◆ライアン・ゴスリング(ジェイコブ)
◆ジュリアン・ムーア(エミリー)
◆エマ・ストーン(ハンナ)
◆ジョン・キャロル・リンチ(バーニー)
◆マリサ・トメイ(ケイト)
◆ケヴィン・ベーコン(デイヴィッド・リンハーゲン)
◆ジョナ・ボボ(ロビー)
◆アナリー・ティプトン(ジェシカ)
◆ジョシュ・グローバン(リチャード)
【この映画について】
幸せな人生を謳歌(おうか)してきた中年男が、愛妻から何の前触れもなく離婚の話をされたことから巻き起こる騒動を描くラブ・コメディー。監督は、『フィリップ、きみを愛してる!』のグレン・フィカーラとジョン・レクアが再びタッグを組み、脚本を『塔の上のラプンツェル』のダン・フォーゲルマンが手掛ける。
『40歳の童貞男』などハリウッドきってのコメディー俳優スティーヴ・カレルを主演に、ライアン・ゴズリング、ジュリアン・ムーアらが共演。愛の本質を突いた、おかしくもほろ苦いストーリーが共感を誘う。
(この項、シネマトゥデイより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
真面目を絵に描いたような40代のキャル・ウィーバーは理想的な人生を送っていた。安定した職に就き、マイホームを手に入れ、高校時代の恋人だった妻との間には可愛い子供たちがいる。だが妻のエミリーが男をつくり、離婚を考えていると知ったときから、キャルの“申し分のない”人生は脆くも崩れ去る。おまけに昨今の“独身市場”では、キャルのようにウン十年もデートから遠ざかっている中年男はヤボなバツイチとして相手にもされない。

そんなある日、ひとりの夜を地元のバーで寂しく過ごしていたキャルは、30代の遊び人ジェイコブ・パーマーと知り合い、舎弟のようになっていく。
ジェイコブは妻への未練を断ち切れないキャルにもう一花咲かせてやろうと考え、キャルを未知の世界へと誘う。男慣れした女性を紹介し、男らしい酒の飲み方を手ほどきし、GAPでは手に入らないハイファッションを見立ててやった。しかし、柄に合わない恋愛ゲームに興じているのはキャルとエミリーだけではなかった。
13歳の息子のロビーは17歳のベビーシッターのジェシカに夢中になり、そのジェシカはキャルにぞっこん。そんなモテ男に変身を遂げたキャルだったが、心までは簡単には変えられなかった。キャルの思いはいつも振り出しに戻ってしまうのだった……。

この映画のキャストを見ていると、何故拡大公開されないのか不思議な気もして、自分も最初は知らなかったのですがジュリアン・ムーアの名前をみて「オッ!!」と思いました。
スティーヴ・カレルの出演作は記憶に無かったけど、プロデューサーでもある彼を中心にストーリーは展開。キャルとエミリー夫妻の仲はエミリーがデイヴィッド・リンハーゲンとの浮気を告白して別居することに。キャル・エミリー夫妻のベビーシッターである17歳のジェシカはキャルに憧れていて、そのジェシカに13歳の息子ロビーは夢中。ロビーの担任ケイトとキャルは弾みで肉体関係をもち、キャルの娘ハンナにジェイコブは夢中だがキャルもエミリーもその事は知らない。
こうして出演者たちがどこかで繋がって、最後はそれがバレて大騒動に発展したり、ホロリとしたりとドタバタ劇ながらストーリーには一本筋が通っていたのは素晴らしい。

前半は初恋の妻に振られた格好となった冴え無い中年男キャルと、プレイボーイ風のジェイコブが中心。特に、ジェイコブがキャルを改造しようと、彼のクレジットカードでバンバン買物をして、カッコいい中年男へと変身する過程は面白かった。
中盤以降は今度は前半に登場していた人間関係が思わぬ方向に進んだりして、特に、ラスト近くで学校の卒業式でロビーが父兄が見守る中でジェシカへの愛を告白したシーンは「名場面」だった。でも、彼女はキャルへ夢中なのと、4歳年下のロビーは恋愛対象外であり、そっと今後の関係の発展を見守りたくなる良いシーンだった。

ジュリアン・ムーアは最近では深刻な表情で出演するような役が多かったが、コメディ・タッチの本作ではノビノビと演じていたのが印象的だった。


映画『マネーボール』を観て

2011-11-25 10:01:49 | アメリカ映画 2011

11-79.マネーボール
■原題:Moneyball
■製作年・国:2011年、アメリカ
■上映時間:133分
■字幕:菊池浩司
■料金:1,800円
■鑑賞日:11月19日、TOHOシネマズ六本木ヒルズ



□監督:ベネット・ミラー
□脚色:スティーヴン・ザイリアン、アーロン・ソーキン
□原作:マイケル・ルイス
□撮影監督:ウォーリー・フィスター
□編集:クリストファー・テレフセン
□美術:ジェス・ゴンコール
◆ブラッド・ピット(ビリー・ビーン)
◆ジョナ・ヒル(ピーター・ブランド)
◆フィリップ・シーモア・ホフマン(アート・ハウ)
◆ロビン・ライト(シャロン)
◆クリス・プラット(スコット・ハッテバーグ)
◆スティーブン・ビショップ(デイヴィッド・ジャスティス)
◆ケリス・ドーシー(ケイシー・ビーン)
【この映画について】
メジャーリーガーから球団経営者に転職した実在の人物、ビリー・ビーン。彼は強豪球団の三分の一しか年棒が払えないという球団の弱点をカバーするため、2002年に「マネーボール理論」を導入。これまでのやり方にしがみつこうとする抵抗勢力に迎合する事なくチームの変革を成し遂げ、公式戦20連勝という記録を打ち立てた。
本作では、自分の信念を貫きチームを変革していくビリー・ビーンを、ブラッド・ピットが力強く演じている。元野球選手たちが選手役で出演しているだけあって、試合シーンはリアリティたっぷり。普段は見られない球場の裏側が多く見られるのも、ファンにはたまらない。監督を務めたのは、『カポーティ』のベネット・ミラー。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
メジャー経験のあるプロ野球選手から球団のフロントに転身するという珍しいキャリアを持つビリー・ビーン。風変わりで短気なその性格は、若くしてアスレチックスのゼネラルマネージャーになってからも変わらなかった。自分のチームの試合も観なければ、腹が立つと人や物に当り散らすという、癖のあるマネジメントを強行。そんな変わりダネが経営するアスレチックスは弱かった。しかも、貧乏球団のため、優秀で年俸の高い選手は雇えない

チームの低迷は永遠かと思われ、ワールド・チャンピオンの夢はほど遠かった。だが、野球経験はないものの、データ分析が得意なピーター・ブランドという球界の異分子と出会ったことで、風向きが変わり始める。
ビリーは後に“マネーボール理論”と呼ばれる“低予算でいかに強いチームを作り上げるか”という独自の理論を実践。だがそれは同時に、野球界の伝統を重んじる古株のスカウトマンだけでなく、選手やアート・ハウ監督らの反発を生み、チーム状況が悪化。それでも強引に独自のマネジメントを進めてゆく。
その揺るぎない信念は、徐々にチームに勝利をもたらし、誰も想像しなかった奇跡が……。球界はビリーの手腕を認め、周囲からの信頼も次第に回復。そしてある日とんでもないオファーが飛び込んでくる。しかし、そこで重大なことに気づいたビリーは、意外な行動に出る……。

このマネーボールについてですが、野球が趣味の管理人は以前から知っていた内容でこれをブラピ主演で映画化すると知って「どういう内容になるのかな?」って疑問に思いました。と言うのも決して映画向きの内容では無いので、どのように盛り上げるのかが最大のポイントだったからです。案の定、製作発表からブラピ主演で動き出すまでには紆余曲折があったそうで監督も交代したとか。
で、やはりというかA’S(アスレチックスの略称です)20連勝へ導く過程でブラピがGMとして如何にして取り組んできたか?との流れになったようですね。この20連勝ですが、実は管理人もこの20連勝達成した試合を球場で生観戦していました。夏季休暇を取得してSF(サンフランシスコ)に滞在してSFジャイアンツとオークランドA’Sの試合を数試合観戦しましたが、その中の1試合が20連勝目の記念すべき試合でした。自分が観戦した記念碑的な試合が映画のハイライトとして採用されたことは嬉しいですね素直に。

ブラピの演技は非常に良かった半面、アカデミー賞俳優フィリップ・シーモア・ホフマンが演じたアート・ハウ監督役は地味な演出で残念です。ブラピは野球には詳しくないそうですが、テンポの速いセリフ回しや部下のブランドとの会話は面白かった。

ただし、ストーリー的には野球ビジネスの裏側がテーマでA’Sの伸び盛りの若手カルロス・ペーニャをトレードするエピソードなんかは興味深かったです。当時、新人王有力候補だったぺーニャのタイガースへのトレードは私も記憶していますが驚きましたのでね。また、ビーンGMがインディアンスの事務所に乗り込んでリカルド・リンコンというメキシコ出身の中継ぎ左腕投手のトレード交渉の様子や、その帰り際にピーター・ブランドという後の右腕を発掘したエピソードも面白かった。
こうしたビジネスの裏側と、ビーンがメジャーのスカウトの目に留まってスカウトの絶賛を背景にドラフト1位で期待されて入団したもののメジャー定着は出来なかった、この挫折が彼のGMとしての背景にあるのがよく理解出来た。

スカウトの眼力よりも成績をデータ化して「出塁率」と「長打力」のある選手を求めるマネーボールの原型が形成されていった。だが、古株のスカウトやスコアラーはこのビーンGMの方針に当然ながら戸惑いと反発を覚える。編成会議で獲得候補選手に対してビーンGMはあくまでも「出塁率」に拘った選手獲得をピーター・ブランドと一緒に進めて行った。その中でA’Sが注目したのはマイナーで燻っていたケヴィン・ユーキリス、アンダーハンド投手のチャド・ブラッドフォード、スコット・ハッテバーグ捕手について紹介されていた。ユーキリスはRソックスでその後大成してA’S入団は叶わなかったが、後の2人はA’Sが獲得し、特に、ハッテバーグは捕手から一塁へのコンバートを成功させ20連勝を決めるサヨナラ本塁打を放った。

だが、このマネーボール理論は長続きしない。何故なら、「出塁率」の高さを求めるが、そこから先の作戦は結果次第で確率の悪い盗塁やヒットエンドランなどの機動力を使わないので、長打力が求められるのだがそういう選手は給料も高くてA’Sの低予算では手が出せない。
映画のラストではA’Sがヤンキース相手にプレイオフで敗退してブラピが無人のスタンドでポツンとラジオを聴いているシーンがあるが、その後、A’Sは低迷している。マネーボール理論は、他球団で
もその後取り入れてはいるが、元祖のA’Sはオークランドというスモール・マーケットを本拠地にしていて観客動員も伸び悩み成績もパッとしない。昨季は日本人の松井秀喜選手がDH兼左翼手で在籍したがオフに自由契約選手となった。
現在は、サンノゼへの移転をMLBへ申請中だが承認は降りておらず、緊縮予算で投打の主力選手を続々と実績の無いマイナー級の若手有望選手とトレードしていて、来季も下位低迷が既に予想される。

ブラピの出演作ならすべて観たいファンや、野球ビジネスに興味のある方にはお勧めですが、MLB野球事情に疎い単なる映画ファンには余りお勧めできませんね。
 


映画『カウボーイ&エイリアン』を観て

2011-11-24 17:33:04 | アメリカ映画 2011

11-78.カウボーイ&エイリアン
■原題:Cowboys & Aliens
■製作年・国:2011年、アメリカ
■上映時間:118分
■料金:1,800円
■鑑賞日:11月19日、TOHOシネマズ六本木ヒルズ


□監督・製作総指揮:ジョン・ファヴロー
□脚本・製作:ロベルト・オーチー、アレックス・カーツマン
□脚本:デイモン・リンデロフ
□脚本・スクリーン・ストーリー:マーク・ファーガス、ホーク・オストビー
□撮影監督:マシュー・リバティーク
□編集:ダン・レベンタール、ジム・メイ
□美術:スコット・チャンブリス
□衣装デザイン:メアリー・ゾフレス
□音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ

◆ダニエル・クレイグ(ジェイク・ロネガン)
◆ハリソン・フォード(カーネル・ウッドロー・ダラーハイド)
◆オリヴィア・ワイルド(エラ)
◆サム・ロックウェル(ドク)
◆アダム・ビーチ(ナット・コロラド)
◆ポール・ダノ(パーシー・ダラーハイド)
◆ノア・リンガー(エメット・タガード)
【この映画について】
「もし侵略型エイリアンが西部劇の時代に現れたら」。そんなスコット・ミッチェル・ローゼンバーグの発想を、CG技術を駆使し映像化。記憶を失くしているが滅法腕が立つガンマン、町を力で牛耳る権力者、謎の女…。そんな西部劇的な背景に、突然エイリアンの飛行物体が現れる。その違和感がこの作品の醍醐味だ。とはいえ、本作に出てくる西部は“西部劇”的な要素として機能しているだけで、リアルさはない。この映画の世界そのものが、地球に良く似たパラレルワールドにも感じる。
ダニエル・クレイグの寡黙だが腕が立つキャラクター、そして残酷な町の権力者を、何とハリソン・フォードが演じている。監督は、『アイアンマン』シリーズのジョン・ファブロー。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
1873年、アリゾナ。一人の男が荒野で目を覚ます。なぜ、ここにいるのか、自分が誰かさえもわからない。そして、腕には奇妙な腕輪をはめられている。自分のルーツを探るべく西部の町へとたどり着くが、そこはダラーハイドという男に支配された町だった。
偶然訪れたバーで、出会ったばかりのはずの女が話しかけてくる。“あなた、何も覚えてないの?”その女は何か知っているようだ。そしてその夜、西部の町の夜空に突如として未知の敵が襲来。それはかつて見たことのない脅威であった。立ち向かえるのは記憶を失った男だけしかいない。いったいこの男は何者なのか。その正体は、敵か味方か。そして侵略者の目的とは。想像を絶する巨大な敵が夜空を満たす時、男の手にはめられた謎めいた銀の腕輪が青い閃光を放ち始めた……。

荒唐無稽な内容でありながらも、スピールバーグが製作総指揮に加わっているのでストーリー的には決して散らかってはいない。タイトルからは中身の想像は付きづらいのだが、実際にはロネガンとダラーハイドという二人の大物カウボーイの話でそこに突如としてエイリアンというか宇宙船が攻撃を加えて飛来する展開だが、基本的には西部劇映画である。
記憶喪失に陥った男の前に現れた集団、それをいとも簡単に叩きつぶしたロネガンを演じるジェームズ・ボンド俳優のダニエル・クレイグは英国人だがカウボーイ姿中々似合っている。このオープニングからして西部劇らしさが充分に発揮されていて、ロネガンが流れ着いたのが砂漠の田舎町で、町を牛耳っているのがハリソン・フォード演じるダラーハイドという構図。
当然ながら町にはバーがあり、そこが社交場となっていて、そこにダラーハイドのどら息子パーシーが騒動を引き起こし、よそ者のロネガンがボコボコにする。パーシー役のポール・ダノが演じるどら息子役も板についていた。

まあ、そんなこんなで記憶喪失だったロネガンの記憶が徐々に蘇り、そこで謎の美女エラが盛んにロネガンに付き纏うのだが、エラを演じているのは「トロン:レガシー」で一躍有名になったオリヴィア・ワイルド。このエラが後半になると重要な役目を担うのだが、その正体は実は宇宙人で地球人の姿をしているという設定は驚きだった。
最後は、ネイティヴ・アメリカンとダラーハイドとロネガンらが団結してエイリアンらを打倒するのに成功するのですが、エイリアンの姿はどこか中途半端で、エイリアンのロケット型基地?より途中で登場した砂漠の中に客船がさかさまに転覆していた映像のインパクトの方が強かった。

ストーリーとしてはどのパートも程良く纏まっていた。ハリソン・フォードとダニエル・クレイグの新旧2
大スターの共演も脚本構成上、二人の登場シーンを上手く配分していて、あくまでも二人が主役であるという位置付けになっていた。


映画『コンテイジョン』を観て

2011-11-22 10:36:27 | アメリカ映画 2011

11-76.コンテイジョン
■原題:Contagion
■製作年・国:2011年、アメリカ
■上映時間:106分
■字幕:松浦美奈
■料金:1,000円
■鑑賞日:11月14日、TOHOシネマズ六本木ヒルズ
 

□監督:スティーヴン・ソダーバーグ
□脚本:スコット・Z・バーンズ
□編集:スティーヴン・ミリオン
□美術:ハワード・カミングス
□衣装デザイン:ルイーズ・フログリー
□音楽:クリフ・マルティネス

◆マリオン・コティヤール(レオノーラ・オランテス)
◆マット・デイモン(ミッチ・エムホフ)
◆ローレンス・フィッシュバーン(エリス・チーヴァー博士)
◆ジュード・ロウ(アラン・クラムウィディ)
◆グウィネス・パルトロウ(ベス・エムホフ)
◆ケイト・ウィンスレット(エリン・ミアーズ)
◆ブライアン・クランストン(ライル・ハガティ海軍少将)
◆ジェニファー・イーリー(アリー・ヘクストール)
◆サナ・レイサン(オーブリー・チーヴァー)
【この映画について】
ある新種のウイルスの感染爆発を通し、様々な立場の人々がそのウイルスに立ち向かおうとする姿を描いた群像ドラマ。死亡患者の家族、ウイルスの蔓延する現場でパンデミックを阻止しようと戦う医師、ラボでウイルスの治療薬を開発しようとする医師、パニックに陥り暴動を起こす一般市民たち、新種のウイルスに対する政府の嘘を報道しようとするジャーナリスト…。
マット・デイモン、ケイト・ウィンスレット、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウといった名優たちが、緊迫した演技を見せている。スティーブン・ソダーバーグ監督が本作で様々な立場にある人々の危機への対し方を通して描いたのは、人間というものの弱さと強さだと言えるだろう。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
ベス・エムホフは香港出張の帰り、夫のミッチが待つミネソタの自宅に向かわず、シカゴで元恋人と密会する。だが、ベスは咳と熱を発症しており、同じような症状の人間が香港、ロンドン、東京など各地で次々と亡くなっていた。
その事件に疑惑を抱いたフリー・ジャーナリストのアラン・クラムウィディは、政府が伝染病を隠しているのではないかとブログで指摘する。さらに帰国から2日後、ベスが死亡し、続けてベスの連れ子クラークも命を落とす。報告を受けた世界保健機構(=WHO)のドクター・レオノーラ・オランテスたちが、続いてアトランタの疾病予防センター(=CDC)が調査に乗り出す。

エリス・チーヴァー博士の指示でミネソタに派遣されたドクター・エリン・ミアーズは、感染が疑われる人々の隔離を実施。カリフォルニア大学の医師が、コウモリと豚のウィルスが混ざった新種のウィルスであることを解明したが、現時点では治療法もワクチンもない。
WHOはウィルスが48時間以内に世界主要都市に拡散すると宣告。ワクチン開発に全力が注がれるものの、ウィルスは変異し、恐るべき速度で感染拡大してゆく。折しもネットでは、米仏が治療薬を極秘に製造しているとの噂が広まったことから、中国衛生部のスン・フェンが故郷の村人のワクチンとの引き換えとして、オランテスを拉致。任務途中で感染するミアーズ。恋人に極秘情報を漏らしてしまうチーヴァー。娘を家に閉じ込めるミッチ。それぞれが愛する者を守ろうとする中、アランは政府が有効な治療薬を隠していると主張。
恐怖はウィルスよりも早く感染し、パニックを起こした人々によって、各地で暴動が勃発する。それぞれが選んだ決断は……?そして明かされるウィルスの発生地点とは……?

さすがソダーバーグ監督作品とあってか出演者の顔触れが凄い。これだけ主役級の俳優を揃えたらギャラだけでも凄い額なのでは?とか想像してしまう。
この手の未知のウィルスを扱った作品は数多くあり、ホラー系ではゾンビ物とウィルス感染は人気テーマだが、ソダーバーグ監督作品がそんな単純な作品をこれだけのキャストで作る筈は無い。最初は、あっと言う間に世界中に蔓延したウィルスの発生源を突き止めてワクチン製造を急ぐのかと思っていた。が、映画のスタートは何故か「2日目」からのスタート。あれ?何で?と観客に思わせながら、エンドロール突入直前に「1日目」へと戻って、「あ~、ウィルスの発生源とこれだったんだ!」って結論を提示して終わるパターン。

それでもベスが帰国途中に経由地を変更して元恋人と密会したり、CDCの責任者が恋人に国民に知らせるより前に密かに退避勧告したり、ブログ・ジャーナリストのアランが特効薬に関する情報で危機感を必要以上に煽ったり、中国の衛生部の役人がワクチン提供と引き換えにWHO担当者を監禁したりと、サイドストーリーも盛り沢山で、それらが全て本筋と密接に絡んでいるので取り散らかった印象は全く無いのは流石だ。そこには「絆」といテーマが流れていて家族間の「絆」、人々の「絆」、人種を超えた「絆」が下地になっていた。
それと共に未知のウィルスがあっと言う間に世界中を恐怖に陥れるパンデミックの怖さ、例えば、流言飛語が飛び交いそれがネット通じて広まる怖さ、パニックに陥った人間心理とそれを煽る著名人や真相を明かそうとしない政府機関への批判も見え隠れする。

ストーリーとしては実際にこういう事が起こり得るのではないか?と思わせる内容でドキュメンタリー調の描写は良かった。中国が発生源でワクチン開発を米仏に先をこされて悔しがる様子は中国人(漢人)の性格を充分に理解していた描写だった。
豪華俳優陣の出演シーンに関してはソダーバーグ監督といえども気を遣っただろうがグウィネス・パルトロウの登場シーン少なかったですね。あれで主役級のギャラ貰ったのかな?


映画『ミッション:8ミニッツ』を観て

2011-11-16 20:56:24 | アメリカ映画 2011

11-75.ミッション:8ミニッツ
■原題:Source Code
■製作年・国:2011年、アメリカ
■上映時間:94分
■字幕:林完治
■鑑賞日:11月13日、TOHOシネマズ有楽座
■料金:1,800円
 

□監督:ダンカン・ジョーンズ
□脚本:ベン・リプリー
□撮影監督:ドン・バーゲス
□編集:ポール・ハーシー
□美術:バリー・チューシッド
□衣装デザイン:レネー・エイプリル
□音楽:クリス・ベーコン

◆ジェイク・ギレンホール(コルター・スティーヴンス大尉)
◆ミシェル・モナハン(クリスティーナ・ウォーレン)
◆ヴェラ・ファーミガ(コリーン・グッドウィン)
◆ジェフリー・ライト(ラトレッジ博士)
【この映画について】
死者の死ぬ直前8分間の意識に入り込むことができる“ソースコード”(この映画の原題)というプログラムを利用し、電車爆発テロの犯人を暴くこととなった軍人の奮闘を描くタイムリミット・サスペンス。
死者の意識に何度もアクセスし、同じ状況を繰り返しながら徐々に犯人を暴いていく軍人を、『ブロークバック・マウンテン』のジェイク・ギレンホールが演じている。
モニター越しにコルターとやりとりする軍人を演じるのは『マイレージ、マイライフ』のヴェラ・ファーミガ。非常なミッションを遂行しつつも、どこか人間味を感じさせる彼女の演技が、物語に深みを与えている。斬新なアイデアを見事にまとめ上げたのは、『月に囚われた男』の鬼才ダンカン・ジョーンズ監督(父はデヴィッド・ボウイ)。
(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
ある朝。コルター・スティーヴンスは列車の座席で目覚める。目の前の女性が、親しげに話しかけてくる。だが、コルターには自分がなぜここにいて、彼女が誰なのかわからなかった。陸軍大尉のコルターは、アフガニスタンで戦闘ヘリを操縦していたはずなのだ。

鏡を覗きこんだ彼の眼に映ったのは、見知らぬ別人の顔。所持していた身分証明書には、“ショーン・フェントレス:教師”と記されていた。そのとき突然、車内で大爆発が発生。なす術もなく炎に飲み込まれていった……。
コルターが意識を取り戻したのは薄暗い密室。モニターに軍服姿の女性、グッドウィン大尉が映し出される。列車の爆発事故について質問されるが、状況が飲み込めず、回答できない。“包囲された城”と呼ばれるこの空間は、何かの研究室らしかった。
朝7時48分に列車爆破事件が発生したことは事実で、コルターの任務は、乗客であるショーンとなって車内を捜査し、爆弾魔を特定することだという。なぜか再び列車に戻されたコルターは、次第に状況を理解してゆく。目の前の女性の名はクリスティーナ。コルターが繰り返し列車に戻るのは、“ソースコード”というラトレッジ博士が開発中の極秘実験によるもの。
これによってコルターの意識はショーンの身体とリンクし、死亡するまでの8分間を繰り返し体験できるのだ。5回目のスリップで彼は、アフガニスタンに向かったコルターについて調べてくれるよう、クリスティーナに依頼する。そして明かされる衝撃的な真実。“ソースコード”には、まだ知らない秘密が隠されていた。さまざまな疑問が浮かぶ一方で、コルターはクリスティーナに特別な思いを寄せるようになる。彼女を救うためにも、爆弾犯を探し出そうと8分間のミッションを繰り返すが、その先に待ち受けていたのは想像を絶する運命だった……。

この作品、タイムトラベルとパラレル・ワールドを合体させたような内容で、純粋なタイムトラベル物なら斬新さは無いのだが、そこにパラレル・ワールドの要素を組み入れたことで、観ている方は頭が混乱する。何しろ主人公であるスティーヴンス大尉の肉体は現実には存在しない。この事はグッドウィンとラトレッジ博士の会話の中で分かるのだが、スティーヴンスの現実が映像として明かされるのはラストに近くなってからだ。
スティーヴンスが乗り移るのはショーンなのだが顔はスティーヴンスなのがややこしい。更に、8分間のトラベルを繰り返すことでストーリーとして同じ列車内で進んでいくのだが、この辺は車内の乗客とのやり取りがあったり車掌とのスリリングな場面があって飽きさせない工夫がある。
でも、肝心のメインである爆破犯を特定するシーンは博士のマシンが功を奏してスティーヴンスの活躍?もあり犯人を途中下車した駅の駐車場で特定することに成功する。バック・トゥ・ザ・フューチャーもそうだったが、タイムトラベルでは歴史を変えてはならないのが原則なのだが、今回は爆破犯というテロ事件を阻止する目的での使用で敢えて禁を破った?
スティーヴンスが乗り移ったショーンは、スティーヴンスが肉体を乗っ取り?パラレル・ワールドの中でクリスティーナに恋をして、最後は印象的なシカゴ市内の場所で将来を約束されるような感じでジ・エンド。
スティーヴンスが8分間の世界の中で自身がアフガンで何があったのかを探る場面には切なさを抱いた。

スティーヴンスの肉体はアナキン・スカイウォーカーのように再生されることなく、彼の「意志」でパラレル・ワールドの世界で生きて行く決意をしたところで、グッドウィンとラトレッジ博士は第2のスティーヴンスを捜すのだろうか?
ジェイク・ギレホールは難しい役だった筈だが、ストーリーがドンドン進んでいく中で肉体は滅びている現実の世界と8分間の世界とを使い分けていた。8分間の世界では当初の戸惑いを乗り越えて、大尉としての任務を進めながらも一人の人間としての意識が芽生えて行く心理の流れに上手く乗っていた。
そのスティーヴンスを指令室で制御するグッドウィン役のヴェラ・ファーミガも上手かった。人間味を感じさせながらも時には冷徹な態度を見せていた。グッドウィンに指示するラトレッジ博士役のジェフリー・ライトも含めたこの3人のやり取りは面白かった。だが、この3人のやり取りだけでは娯楽性に多少欠けるところを、列車内で知り合うクリスティーナ役のミシェル・モナハンの柔和な表情と演技が花を添えていた。


映画『ウィンターズ・ボーン』を観て

2011-11-14 16:44:24 | アメリカ映画 2011

11-74.ウィンターズ・ボーン
■原題:Winter's Bone
■製作年・国:2010年、アメリカ
■上映時間:100分
■字幕:杉田朋子
■鑑賞日:11月13日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)
■料金:1,800円
 

□監督・脚本:デブラ・グラニック
□製作・脚本:アン・ロッセリーニ
□撮影:マイケル・マクドノー
□編集:アフォンソ・ゴンサルヴェス
□美術:マーク・ホワイト
□衣装デザイン:レベッカ・ホファー
□音楽:ディコン・ハインクリフ

◆ジェニファー・ローレンス(リー)
◆ジョン・ホークス(ティアドロップ)
◆デイル・ディッキー(メラブ)
◆ギャレット・ディラハント(バスキン保安官)
◆ローレン・スィーツァー(ゲイル)
◆ケヴィン・ブレズナハン(リトル・アーサー)
◆シェリル・リー(エイプリル)
【この映画について】
サンダンス映画祭でグランプリ&脚本賞の2冠に輝き、アカデミー賞では作品賞、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞の4部門でノミネートされた、インディペンデント映画界の意欲作。ダニエル・ウッドレルの同名小説を基に、ミズーリ州の山間部の村に住む17歳の少女が、家族を守るため父親を捜しに、そして真実を追い求めて旅をする。心のすさんだ大人たちから罵声を浴びようとも、暴力に打ちのめされようとも、くじけず、諦めず…本作でオスカーにノミネートされた新星、ジェニファー・ローレンスの凛々しい姿が観る者の心を打つ。本作が長編2作目となるデブラ・グラニック監督は、ミズーリ州でオールロケを行い、土着性、地域密着のリアリティを追求した画作りとなってる。
(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
ミズーリ州南部のオザーク山脈に住む17歳の少女リーは、年少の弟と妹をかいがいしく世話し、その日暮らしの生活をどう切り盛りするかで頭がいっぱいだ。ドラッグ・ディーラーの父ジェサップは長らく不在で、辛い現実に耐えかねて精神のバランスを崩した母親は言葉を発することすらほとんどない。
そんなある日、リーは地元の保安官から、警察に逮捕され懲役刑を宣告されたジェサップが、自宅と土地を保釈金の担保にして失踪、もしこのまま翌週の裁判に彼が出廷しない場合、リーたちの家は没収されると聞かされる。
あてどない父親捜しを始めたリーは、何らかの手がかりを得ようと、親族や知人を訪ねることにする。だが薬物漬けの伯父ティアドロップは、リーを荒っぽく突き放す。父親の消息をタブー視する村人たちの過剰な反応ぶり、そして秘密を隠し持っているかのような態度にリーは不審を抱く。

そんなとき親友ゲイルの協力を得たリーは、州境のバーに足を踏み入れる。そこで父親の元愛人エイプリルと対面した彼女は、父親が深刻なトラブルに巻き込まれたらしいとの目撃証言を得る。さらにティアドロップが重い口を開き、もう父親はこの世にいないことを仄めかしてくる。
やがて裁判の当日、ジェサップはやはり姿を見せなかった。リーのもとにやってきた保釈保証人は、冷酷にも一週間以内に家を出て行くようにと告げる。何とか自宅の没収だけは免れたいリーに残された唯一の手段は、既に父親が死亡したという証拠を見つけ出し、保釈保証人に手渡すことだった。

どうやら父親はこの地域の掟に背いた報いを受け、何者かに殺されたらしい。リーは全ての真相を知っているであろうミルトン一族の長老への直談判を試みるが、一族が封印しようとしている父親の謎をこれ以上ほじくり返すことは、彼らの逆鱗に触れる行為だった。
案の定、ミルトン一族の女たちに拉致されたリーは、凄まじいリンチを受ける。そんな絶体絶命のリーを助け出したのは、意外にもティアドロップだった。命は救われたものの、もはやリーは家族とともに家を立ち退くしかなかった。だがリーの切なる思いが通じたのか、予期せぬ人物が彼女の前に現れる……。

アメリカの閉鎖的な田舎町でのとある一家を巡る話しで、一族の掟を破った父を捜す娘リーの逞しさが魅力な映画。リーの母親は父失踪以来精神的に病んでしまい全く何の役にも立たない。となると17歳で年長のリーが否が応でも何とかしないと一家はホームレス状態を強いられるから、さあ大変。
本当は父の一家が救助の手を差し伸べるべきなのだろうが、そんな日本的な考えはこの地区の一家には通じないばかりか、逆に何の役にも立たず17歳のリーは八方塞。でも、このリーはやはり行動的でしっかりしている。
リーは自分の身に何かがあった時の為にと、空いている時間を利用して散弾銃での狩猟方法を伝授する。更に、彼女自身が軍隊への入隊を志望する場面が中盤に登場するのだが、それは入隊すれば纏まったお金がもらえる、と知っていてそのお金を頼りにしようとするものの面接官に相手にされず入隊も出来ず途方に暮れる。
結局、父の消息は当初は冷たかったティアドロップのおかげで、寒い池の中から死体が発見され父親が死亡したことが分かったおかげで、何とか自宅を没収されずに終わったので、まあ一応ハッピーエンド。なのでしょうが、それはあくまでも当面の危機を乗り切っただけで、精神を病んだ母親や若い弟妹の成長を見守らなければならないリーに取っての試練はまだまだこれからで、そういう意味ではハッピーエンドとは程遠いな。

リーを演じているジェニファー・ローレンスは現在は21歳だが、若さを前面に出した美貌派でも肉体派女優のどちらでもないが、この若さで既に成熟した演技を見せている。ストーリー展開上、その必死さが伝わってくる演技は見事である。
撮影は殆どがミズーリ州でのロケ映像で、重苦しいストーリーとバックに流れる音楽も含めて見事にマッチしていた点も見逃せない。


映画『ラビット・ホール』を観て

2011-11-09 11:09:22 | アメリカ映画 2011

11-72.ラビット・ホール
■原題:Rabbit Hole
■製作年・国:2010年
、アメリカ
■上映時間:92分
■字幕:太田直子
■鑑賞日:11月6日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)
■料金:1,800円


□監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
□脚本:デヴィッド・リンゼイ=アベアー
□撮影監督:フランク・G・デマルコ
□編集:ジョー・クロッツ
□美術:カリーナ・イワノフ
□衣装デザイン:アン・ロス
□音楽:アントン・サンコー

◆ニコール・キッドマン(ベッカ・コーベット)
◆アーロン・エッカート(ハウイー・コーベット)
◆ダイアン・ウィースト(ナット)
◆タミー・ブランチャード(イジー)
◆マイルズ・テラー(ジェイソン)
◆ジャンカルロ・エスポジート(オーギー)
◆ジョン・テニー(リック)
◆パトリシア・カレンバー(ペグ)
◆ジュリー・ローレン(デビー)
◆サンドラ・オー(ギャビー)
【この映画について】
わが子の命を奪った少年との交流を通して悲しみを乗り越えようとする母親を、ニコール・キッドマンが演じる感動の人間ドラマ。ピューリッツァー賞受賞の戯曲を基に劇作家のデヴィッド・リンゼイ=アベアー自身が脚本を手掛け、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のジョン・キャメロン・ミッチェル監督が映画化。
共演は、『サンキュー・スモーキング』のアーロン・エッカート、『ハンナとその姉妹』のダイアン・ウィースト。絶望の中でも前向きに生きようとする女性を体現したニコールの繊細な演技に魅了される。(この項、シネマトゥデイより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
郊外の閑静な住宅街に暮らすベッカとハウイーのコーベット夫妻。彼らの幸せな生活が一変したのは8か月前。一人息子ダニーが道路に飛び出して交通事故に遭い、わずか4歳でこの世を去ってしまったのだ。
それ以来、2人の心には埋めようのない欠落感が生まれていた。ダニーとの思い出を大切にして前に進もうとするハウイーとは対照的に、亡き息子の面影に心掻き乱されるベッカ。同じ痛みを共有しながらも、夫婦の関係は少しずつ綻び始める。

ハウイーの提案で、身近な者に先立たれた人々のグループセラピーに参加するベッカ。だが、やり場のない苛立ちから、他のメンバーに辛辣な言葉を浴びせ、退席することになってしまう。立ち寄った実家でも、母親ナットとの間に漂う気まずい空気。その帰り道、ベッカはある少年を目撃する。翌日、尾行して図書館に入ると、彼が返却した『並行宇宙(パラレル・ワールド)』という科学の本を借りる。
次の日、ベッカはその少年から声を掛けられる。彼の名前はジェイソン。8か月前、ダニーを車で轢いた高校生だった。しかし、ベッカには彼を責めるつもりはなかった。ぎこちない対面を果たした2人は奇妙な安らぎを覚え、やがて公園のベンチで会話するのが日課となってゆく。

『並行宇宙』を読んでいることを打ち明けたベッカに、ジェイソンはそれを参考に描いた漫画を差し出す。タイトルは『ラビット・ホール』。科学者の父親を亡くした少年が、パラレル・ワールドに存在する別の父親を探すため、“ウサギの穴”を通り抜けるという不思議な物語だった。一方その頃、ハウイーは心の癒しを求めるかのように、セラピーで出会った気さくな女性ギャビーと急接近してゆく。幾度となくほつれかける夫婦の絆。ベッカとハウイーは、再び共に歩み出すことができるのだろうか……。

二コール・キッドマン久し振りの一作は、自宅前で高校生が運転する車にはねられた4歳の息子の喪失感に耐えられない夫婦の話。妻は息子の遺品を整理することで忘れようとするのに対し、夫は携帯の中の動画を毎日眺めることで息子の存在を何時までも身近に感じていたかった。
だが、男女間の考えの相違は埋め難く、セラピーに対して参加した時に取った態度で夫婦間の溝は決定的になってしまい、母や妹に対してまで辛辣な言葉を浴びせる妻。妻のそうした言動に成すすべなく過ごす毎日は苦痛だった。
妻の言動に振り回される夫を演じるのがアーロン・エッカートで、つい最近、宇宙人来襲に立ち向かう軍人の役を演じていたばかりで、今度は随分と方向性の異なる役柄に挑戦していた。

二コール・キッドマンの妻役としては終始重い役所で展開も同じテンポで進む。途中、セラピーを通じて夫が仲良くなりかけたギャビーとの交流シーンが何だか浮いて見えた。アーロン・エッカートの夫役もどこか彼のイメージに合わない感じがした。それと、ベッカが街中で偶然犯人の高校生と再会するシーンは何だか唐突過ぎる印象を持った。
それでも登場人物の内面への切り込み方は非常に良かった。ベッカとハウイー夫妻のそれぞれの悩み、ベッカから辛く当たられる母の娘に対して力になれない悩み、高校生ジェイソンの悔恨の念を抱えた悩み、ギャビーと夫ハウィーの心の闇などだ。
その中で最も印象に残ったのは高校生ジェイソンが車の座席から歩いていたベッカを見つめる視線には、若い彼がこれからの長い人生の中で背負っていかなければならない罪への決意が感じられた。そして、ラストシーンでは、未だ悲しみを乗り越えられない夫婦が、力を合せて同じ方向をみて生きて行く決意を固めかのような表情に思えた。

二コール・キッドマンの演技は流石だったのだが、彼女の母ナットを演じていたダイアン・ウィーストの落ち着いた演技も流石。ベッカの精神的バランスが不安定になっていた時に、そっと優しく見守っている様子はとても自然でキャリアの豊富さを物語っていた。アーロン・エッカートはこの役を演じて見て、今後、どういう役者へと変貌を遂げるのか、その辺は次回以降の彼の出演作をみて判断したいと思う。


映画『リミットレス』を観て

2011-10-19 18:43:46 | アメリカ映画 2011

11-69.リミットレス
■原題:Limitless
■製作年・国:2011年
、アメリカ
■上映時間:105分
■鑑賞日:10月14日、TOHOシネマズ六本木ヒルズ(六本木)
■料金:1,000円
 

□監督:ニール・バーガー
□脚本・製作:レスリー・ディクソン
□撮影:ジョー・ウィレムズ
□編集:トレイシー・アダムス、ナオミ・ジェラティ
□美術:パトリツィア・フォン・ブランデンスタイン
□音楽:ポール・レナード・モーガン

◆ブラッドリー・クーパー(エディ・モーラ)
◆ロバート・デ・ニーロ(カール・ヴァン・ルーン)
◆アビー・コーニッシュ(リンディ)
◆アノドリュー・ハワード(ゲナディ)
◆アンナ・フリエル(メリッサ)
◆ジョニー・ウイットワース(ヴァーノン)
◆トーマス・アラナ(ベージュの上着の男)
【この映画について】
“脳が100%活性化する新薬”という驚愕の設定でベストセラーとなったアラン・グリンの「ブレイン・ドラッグ」を完全映画化。エディを演じるのは、『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』や「ハングオーバー」シリーズのブラッドリー・クーパー。落ちぶれた負け犬から世界を股にかけるエグゼクティブに大変身する爽快な成り上がり人生と、その先に待つ最悪のトラブルと闘うスリルに満ちた役を演じ切った。
共演は、アカデミー賞に2度輝く名優ロバート・デ・ニーロ。圧倒的な存在感と長年にわたってハリウッドを担ってきたカリスマ性で、エディを巧みに利用しようとする財界の大物カール・ヴァン・ルーンに扮した。監督は、『幻影師アイゼンハイム』のニール・バーガー。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
作家志望のエディ・モーラは出版契約を交わしたにもかかわらず、原稿を一行も書けていない。ホームレスのような風貌で酒に溺れ、恋人のリンディも彼の元を去っていく。
エディは街で、元妻メリッサの弟ヴァーノンと偶然再会する。薬品会社のコンサルタントを自称するヴァーノンはエディの窮状を知ると、開発されたばかりの新薬NZT48を差し出す。通常20%しか使われていない脳を100%活性化する薬だという。エディがその薬を飲むと、脳に埋もれていた過去の全ての記憶から情報を集める能力が覚醒し、一晩で傑作小説を書き上げる。
翌朝目覚めると元の自分に戻っていたエディは、ヴァーノンを訪ねる。ヴァーノンは顔に殴られた跡があり、外出できないと言う彼の代わりにエディが用事を済ませに行く。エディが戻ると、部屋は荒らされ、ヴァーノンは死んでいた。エディは通報した後、新薬が狙われていることに気づき、薬を見つけて持ち出す。

大量の薬を手に入れたエディの人生は一変し、さらに証券取引に挑戦する。エディは金貸し屋ゲナディから元手を借りて、10日間で1万2000ドルを230万ドルにする。大物投資家カール・ヴァン・ルーンはエディに目をつけ、史上最大規模の会社合併の話を持ちかける。エディはリンディとの関係も修復し、成功を手に入れたかに思えた。
しかし突然、エディの身体に異変が起こる。一夜を共にした女性が死体で発見されるが、前後の記憶が欠落している。エディはヴァーノンの顧客リストに電話する。すると、3人は死亡、あとは病気を患っていた。さらにリストの番号を押すと、数日前からエディを尾行していた男の携帯が鳴る。エディがとっさに逃げ出すと、男も追いかける。エディは男をまき、メリッサと再会する。やつれて変わり果てた彼女は、新薬に関する恐ろしい秘密をエディに告げる。

この話、最初はテンポよく進み、怪しげな新薬を元妻の弟から一錠差しだされて半信半疑で服用したことから人生が替わった男の話でこの辺までは良くある話。ところが、薬効凄く、別人のように脳が冴え渡ったことで人間として欲が出て来るたややこしくなる。
そもそも売れない作家だったのに、予想外の成功を手に入れると、欲が欲を生み出し、何時の間にか自分自身への制御が効かなくなると、今度は危険な方向へと進んでいく。案の定、エディを尾行する男の出現やヴァーノンの死にまつわる謎とメモ帳の存在。そこに大物投資家がエディの成功の秘密を探ろうとし始める中盤辺りから展開が変わって来る。
結局エディは薬の影響が体に及ばすパワーを制御するために、服用を徐々に止める方向へと向かわせるのだが、一度薬の効果を知ってしまったことで止められなくなった。やがて、彼は上院議員にまで登りつめたが、カールは全ては薬のおかげだと見抜いていたのだが、何となくラストは曖昧な終わり方でエディがカールをやり込めてジ・エンドという締まらない形だった。

デ・ニーロは前半は登場シーンが無く、途中からの登場だが、折角デ・ニーロを起用しているのだから、カールが大物投資家なのに大物ぶりが伝わって来なかったものの、デ・ニーロの貫録でその辺は補っていたので監督も脚本家もその辺は感謝すべきである。
そしてストーリー上重要なアイテムである「薬」。この不思議な薬の存在の裏で何があったのかは殆ど語られないのだが、その辺をもう少し掘り下げてもらいたかった。でも、あの薬一度でいいから服用したい...なんて思っちゃいました。


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