11-93.永遠の僕たち
■原題:Restless
■製作年・国:2011年、アメリカ
■上映時間:90分
■字幕:寺尾次郎
■観賞日:12月30日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)
□監督・製作:ガス・ヴァン・サント
□脚本(脚色):ジェイソン・リュウ
□撮影監督:ハリス・サヴィデス
□編集:エリオット・グラハム
□美術:アン・ロス
□衣装デザイン:ダニー・グリッカー
□オリジナル楽曲:ダニー・エルフマン
◆ヘンリー・ホッパー(イーノック)
◆ミア・ワシコウスカ(アナベル)
◆加瀬亮(ヒロシ)
◆シュイラー・フィスク(エリザベス)
◆ジェーン・アダムス(メイベル)
◆ルシア・ストラス(レイチェル)
◆チン・ハン(ドクター・リー)
【この映画について】
他人の葬式に潜りこむ事を日常とする、死に取りつかれた少年と、ガンに冒された少女─そんな思春期の二人を主人公にした、純粋で真っ直ぐなラブストーリー。
第64回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でオープニング上映され高い評価を受けた本作のメガホンをとったのは、『グッド・ウィル・ハンティング』で瑞々しい青春を描いたガス・ヴァン・サント監督。彼の死生観が漂う、一風変わった青春映画だ。主演の二人に、名優デニス・ホッパーの息子ヘンリー・ホッパー、『アリス・イン・ワンダーランド』でアリス役に抜擢されたミア・ワシコウスカというフレッシュな新鋭が名を連ね、二人を見守る重要な役どころで加瀬亮が出演しているのも話題。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
イーノックは、自動車事故で両親を亡くして以来、生きることを諦めてしまった少年。見知らぬ人の葬儀に、遺族のふりをして参列することが彼の趣味だった。ある時、いつものように葬儀に参列していると、係員から問い詰められてしまう。窮地を救ってくれたのは、以前、別の葬儀で出会った少女アナベル。この再会で2人は互いに心を開き始める。
イーノックは、事故の際の臨死体験をきっかけに、ヒロシという第二次世界大戦で戦死した特攻隊員の幽霊が見えるようになっていた。家では、叔母とうまくいかず、ヒロシと遊んで過ごす時間が多かった。
ある日、彼は再会したアナベルを両親が眠る墓地に案内する。帰宅後、イーノックのことを姉のエリザベスに嬉しそうに話すアナベル。そんな彼女の明るい表情に、エリザベスは心を軽くする。実はアナベルは、ガンの闘病中だったのだ。しかも、定期健診によって、一時収まっていたガンが再発していることが明らかになる。自分の余命が3カ月であることをイーノックに打ち明けるアナベル。イーノックは、彼女にヒロシの存在と両親を失った事故の経験を告白する。
やがて、自分の葬儀を自分でプロデュースしたいと告白したアナベルに、イーノックはその準備を手伝うと約束する。それからもデートを重ねて心を通わせる2人だったが、遂にある日、アナベルが倒れてしまう。そのショックで自棄を起こしたイーノックは、両親の墓を掘り返そうとしてヒロシに殴られ、失神。目覚めたのは病院のベッドの上。イーノックは、同じ病院に入院していたアナベルを見舞う。
最期の時が近づいた彼女と言葉を交わしていると、ヒロシが彼女のお伴をしようと現れる。そして迎えたアナベルの葬儀。彼女自身がプロデュースしたセレモニーの最中、イーノックの心には、彼女との思い出が走馬灯のように巡るのだった。
ここ最近、何だか若年の癌患者がテーマの作品が続いているけど、単なる偶然だろうかこういう現象は。「50/50」は体験者がセス・ローゲンと親交があったことから脚本を書いたそうだが、今回の主人公は若い女性で、如何にして亡くなっていくのか?という流れの中での話し。加瀬亮が臨死体験後のイーノックだけに現れる元特攻隊員との設定だが、加瀬の英語は覚えたての英語ではないようでアメリカ滞在経験があるそうで多少納得。今後、外国映画からのオファーが増えそうな予感がします。
あの変な特攻隊員の格好には多少違和感を感じたが、それよりイーノックとの会話の中で原爆投下のことが出て来て、映像でも長崎に投下されたシーンが数秒ドーンとまさに出るのだが、日本で日本人が観ることが全く念頭に無い無神経なシーンだった。未だにアメリカ人の意識はこの程度かと残念だった(映画の評価を下げる要因にはなりません、念の為)。
原爆投下のシーンは不快だったが、ストーリー全体としてが孤独な居場所の無い二人の若者の話し。イーノックは学校にも通わず、他人の葬儀に知人を装って顔をだすのが日常で、それに気が付いたアナベルの親族に摘まみ出されそうになったところを彼女の機転で救われたのが交際の始まり。
イーノックが「ヒロシ」の話をするとアナベルも興味深そうにヒロシについて質問してくる。アナベルの余命が3カ月近くと宣言され、やがて死に行く彼女に対してヒロシが彼女をあちらの世界に「誘導」するような終わり方。ヒロシは自分が現生で悔いを残すような死に方だったので、イーノックを通して彼女には悔いのない終わり方(変な表現だが)を望んでいた。加瀬亮のこの辺の演技は良かった。
最後は、彼女の葬儀に途中から「知人」として参加したイーノックが壇上で思い出を語ろうとするところ(実際は話そうと壇上に上がったが彼女との思い出が駆け巡り話しださないまま)でストップモーションがかかってエンドロールへと。この流れは良かった。それまでに二人の間の関係を中心に進んでいるので、ここで彼があれこれと語るシーンを挿入する必要はないからだ。
エンドロール前がこういう終わり方で、逆に、オープニングではザ・ビートルズの「Two Of Us」がバスからの車窓を背景に流れる。この曲をカバーでなく、オリジナル曲(アルバム「レット・イット・ビー」)をそのまま映像と重ねているのだが、タイトル通り、この映画がイーノックとアナベルの二人(Two Of Us)の物語であることを示している。
イーノックを演じるのはデニス・ホッパーの息子であるヘンリー・ホッパー、どことなく素人さを感じるが出演作を重ねれば解消されるだろう。一方のミア・ワシコウスカの出演作は数本観ているので違和感なく、感情の起伏が多い難しい役だったが上手く演じていた。若手演技派女優としての道を進むことになるだろうが、何時の日か主役級での話題作への出演を観てみたい。