12-9.アニマル・キングダム
■原題:Animal Kingdom
■製作年・国:2010年、オーストラリア
■上映時間:113分
■字幕:岩辺いずみ
■観賞日:1月29日、TOHOシネマズシャンテ
□監督・脚本:デヴィッド・ミショッド
□撮影:アダム・アーカポー
□美術:ジョー・フォード
□編集:ルーク・ドゥーラン
□衣装:カッピ・アイアランド
◆ジェームズ・フレッシュヴィル(ジョシュア・コディ)
◆ジャッキー・ウィーヴァー(ジャニーン・コディ)
◆ベン・メンデルソーン(アンドリュー・”ポープ”・コディ)
◆ジョエル・エドガートン(バリー・”バズ”・ブラウン)
◆ガイ・ピアース(ネイサン・レッキー)
◆サリヴァン・ステイプルトン(クレイグ・コディ)
◆ルーク・フォード(ダレン・コディ)
【この映画について】
映画は少年の目を通してこの犯罪者一家の姿を描いていくが、少年の内面はほとんど最後まで明かさない。これは意図的で、そんな家族でも依存するしかない少年の心境を観客にゆだねているのだ。それまで主体的に行動することがなかった少年なので、この家族と警察のどちら側につくかは、その無表情な顔からはなかなかわからないのだ。
ある事件をきっかけにこの家族の非情さがより露わになるが、そこからそれまで目立たなかった祖母がクローズアップされてくる。この祖母の歪んだ愛情がこのような家族を生み出し、過去に少年の母親が出て行った原因なのだろう。もっとも人間くさいはずの“家族”を、「アニマル・キングダム=野生の王国」と表すほど、殺伐とした世界が広がっている。犯罪に対する冷ややかな視線が印象的な、クライム・ムービーだ。
「メタルヘッド」の脚本家、デヴィッド・ミショッドの長編初監督作。出演は「ハーモニー」のジャッキー・ウィーヴァー、「英国王のスピーチ」のガイ・ピアース、「ノウイング」のベン・メンデルソーン、「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝」のルーク・フォード。(この項gooより転載しました)
【ストーリー&感想】
オーストラリア・メルボルン。17歳の高校生ジョシュアは母ジュリアと二人で静かに暮らしていたが、ある日突然、ジュリアがヘロインの過剰摂取で死亡してしまう。ジョシュアは、ジュリアが長い間付き合いを避けていた祖母ジャニーンに電話をかけ、すぐにジョシュアのもとに駆け付けたジャニーンは、すべてを処理して彼を自分の家に連れ帰る。
ジャニーンにはジュリアの他に、アンドリュー、クレイグ、ダレンという3人の息子がいた。彼らは皆家族思いで、一見、明るく温厚な人物に見えたが、全員が銀行強盗や麻薬の密売など、あらゆる凶悪犯罪に手を染め、その収入で生計を立てていた。ジャニーンも息子たちの犯罪を黙認し、事実上裏ですべてを仕切っていた。そして、アンドリューの昔からの強盗仲間で、冷静で頭脳明晰なバリーが多くの犯罪を計画していた。ジョシュアの母は、そんな一族から距離を置くため、息子を連れて家を出たのだ。だが今や他に行くあてのないジョシュアには、その家で暮らしていくしか道は残されていない。
当初、一家がジョシュアを直接犯罪に巻き込むことはなかったが、彼が犯罪にまったく無関係でいつづけることは不可能だった。一方、横行する凶悪犯罪に業を煮やした警察は、凄腕の巡査部長ネイサン・レッキー率いる強盗特捜班を組織すると、一家で最も凶暴なアンドリューに目を付け、彼の逮捕のために執拗な捜査を開始。
レッキーは、ジョシュアを犯罪者一家から救い出し、彼の証言でアンドリューたちを一網打尽にしようと画策するが、ジョシュアは口を割らない。だが一家はジョシュアが彼らを裏切って警察に寝返るのではないかと疑いはじめ、強力な圧力で口止めをするのだった。頼る者のいない孤独の中で、逃げ場を失ったジョシュアは今、自分自身が生き残るために、強くならなければならなかった……。
この話、メルボルンで実在するファミリーの話しとのことだが、そこはハリウッド映画ではないので派手なアクションは控え目な演出が取られていた。作られた脚本では無いので、所謂、予想通りの終わり方へとはならない。
中でも母ジュリアが亡くなっても無表情で何を考えているのか判らないジョシュアと、ジョシュアの祖母にあたるジャニーンが物語の主役だ。ジョシュアは最初は「野生の王国」と呼ばれるファミリーの中で自分の立ち位置を見つけることが出来ずここでも孤独な生活が待っていた。
そのジョシュアにもやはりファミリーの血が流れていた。寡黙なジョシュアに対して警察は何とかファミリー崩壊の切り札にと考えていたものの、彼は裁判でファミリーに不利な証言はしなかった。そして、彼に取って唯一の心を許せた彼女をポープに殺害されたことでキレたジョシュアはポープを殺害し復讐を果たし、最後は、ジャニーンとハグを交わして終わる。
息子達を自分の意志のままに操り、コディ一家の事実上のボスとして君臨してきた彼女のこのハグで、コディ家のボスがポープからジョシュアへと事実上交代したことを彼女が「認めた」瞬間のように思えた。
ストーリー的には娯楽性は僅かに抑えた重い内容である。ここオーストラリアは白人社会であり、アメリカほどではないがやはりここでも暴力と血が平然と流れる社会が存在し、たとえファミリー内部の抗争であってもボスの交代は血で血を洗う展開だった。白人社会はやはりこうなるんだね。
最後に、ガイ・ピアースを除いて有名な俳優は出演していなかった。ジョシュアを演じていたジェームズ・フレッシュヴィルは難しい役どころだったが、今後、オーストラリア映画以外での出演にも注目したい俳優だ。
【主題歌について】
この映画の舞台はメルボルン、と言う事で時代背景を考えると1980年代初頭と想像出来る。この映画の中でファミリーがTVを観ている時に、その画面から流れてきた曲が地元メルボルン出身の人気AORバンド「エア・サプライのAll Out Of Love」のPVである。
この↑ビデオを見ていたシーンがあったのを覚えているだろうか?映画の予告編でもBGMとして流されていて主題歌扱いされていて、映画の中でも印象的なシーンだった。
この曲は1980年にアルバム「ロスト・イン・ラヴ」の2曲目に収録され、シングルカットされて全米チャートで2位を記録する大ヒットをなっている。個人的にもエア・サプライは大学生時代に頻繁に聴いていて、この曲も大好きな曲だ。