14-82.悪童日記
■原題:Le Grand Cahier(英題:The Notebook)
■製作年、国:2013年、ドイツ・ハンガリー
■上映時間:111分
■料金:1,800円
■鑑賞日:10月18日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)
□監督・脚本・製作総指揮:ヤーノシュ・サース
□脚本:アンドラーシュ・セーケル
◆アンドラーシュ・ジェーマント
◆ラースロー・ジェーマント
◆ピロシュカ・モルナール
◆ウルリッヒ・トムセン
◆ウルリッヒ・マテス
◆ギョングベール・ボグナル
◆オルソルヤ・トス
◆ザビン・タンブレヤ
◆ペーター・アンドライ
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
第二次世界大戦末期の1944年8月14日。双子の兄弟は母親に連れられ、村人から“魔女”と呼ばれる祖母が暮らす国境に近い田舎へ疎開する。母親と別れた兄弟に与えられた仕事は、薪割りと水汲み、そして鶏や豚への餌やり。
祖母の家の敷地には川があり、その先は外国だった。やがて仲良くなった隣家の少女と一緒に、町の酒場で寸劇などをして小銭を稼ぎ始める。また、森の中では兵士の遺体を発見し、そこから武器を盗む。その一方で、母親が自分たちに送ってくれた物資を祖母が隠していたことを知る。いつまでも迎えに来ない母親を忘れるため、精神を鍛える訓練で母の手紙と写真を焼き、残酷さに慣れる訓練として虫や魚などの生き物を殺す。兵士の遺体から奪った手榴弾を司祭館のストーブに投げ入れた兄弟は、女中に大火傷を負わせたことから警察に連行され、拷問を受ける。2人を助けたのは、祖母の家の離れに住む外国人将校だった。
戦争が終わったとの噂を耳にして、祖母と一緒に収容所を見に行くが、そこには何も残っていなかった。そして、外国語を話す軍隊がやって来る。その戦車に乗せてもらった隣の女の子は、死体になって帰ってきた。死にたいと言う女の子の母親の求めに応じて、家に火を点ける兄弟。やがて、赤ん坊を抱いた母親が車でやって来るが、空から落ちてきた爆弾で赤ん坊とともに命を落とす。2人の遺体を埋めていた祖母が、発作を起こして倒れる。そこへ、兵士として戦っていた父親が現れ、墓地に埋葬するために母の遺体を掘り起こすが、その際に赤ん坊の存在を知る。そして祖母が亡くなる。言われた通りに祖母の遺体を清め、母親の隣に埋めた兄弟は翌朝、逮捕を逃れるために逃亡を図る父親を国境の鉄条網へと案内する。だがそれは、2人にとって“別れ”という最後の訓練でもあった。
この作品には特定の場所は出てこないが、原作者の出身がハンガリーであることから、舞台はハンガリーの国境付近の寒村が舞台であることは容易に想像出来るし、外国軍というのも恐らくナチス・ドイツ軍であろう。だが、この映画はハンガリー対ナチス・ドイツがメインでは無い。こういう時代を生きることになった双子のお話であり、予期せぬ両親との別離、望まない祖母(母方)との陰湿な生活。だが、二人は誰に言われることもなく「一心同体」で成長していく。きつく当たる祖母を怨みながらも子供なりに祖母に逆らって叩き出されたら困るのは自分たちであると理解している。
そんな祖母との生活が続く中、戦争は終わり母が見知らぬ幼子を連れて迎えに来たが、あれほどまでに母の帰還を望んでいた双子達は憎んでいた筈の祖母との生活を選択、その最中に爆撃にあい母と幼子は即死する。そして祖母も心臓発作で亡くなり、帰還した父は身の危険を感じて国境を越えようと双子の案内で試みるが、二人はしたたかだった。悲しみを超えて時代を生き抜こうとする二人は父が超える事の出来なかった国境の鉄条網を超えて別々の人生を生きることになるのだろう。
映画は明確なラストを描いていないが、既に、人生の荒波を経験した二人がこれからも荒波を突き進み己の人生を築いて行くのだろう、そんな未来が待っていると自分は感じた。