前回の記事で、WILLCOM D4を紹介しました。Intelの新しいプラットフォームであるAtomを搭載するフルWindowsPCでありながら、ポケットに入るサイズの端末。モバイルの可能性を広げる、やたら豪華な”PHS”でした。
さて、二日続けてモバイルPCっぽいものの記事で恐縮ですが、今回はNECのLuiというサーバーおよび端末の話。コンセプトは「ユビキタス」。ここ数年にわたって「くるぞくるぞ」と言われながら、普及の影すら見えなかった「いつでもどこでもサーバーにつながる生活」を、NECはどう実現しようというのでしょうか。
自宅のPCをポケットに入れて持ち歩く――NEC「Lui」発表会 ITmedia
Lui(Life with Ubiquitous Integrated solutions)は、デジタルコンテンツをサーバPCで一元管理し、家庭内や外出先から「いつでもどこでも」「好きなときに好きなところで」(同氏※)で利用するための製品群を指す。
※引用注:NEC代表取締役社長の高須英世氏
Luiは、言ってみれば家庭用のシンクライアントシステムを構築するものです。コンテンツ・・・テレビ番組の録画や写真、テキストやオフィス文書など・・・を全て家庭用のPC兼サーバーで一元管理し、専用のシンクライアント端末からリモートで扱えるようにするというもの。ただ、通常のシンクライアントサーバーと違うのは、「専用端末でサーバーのデスクトップを操作する」という操作形態になるため、一対一の関係でしか使えないと言うことでしょうか。
ネットさえあれば外からでも家のPCを触れると言うことで、事実上フル機能のPCを持ち歩くことができると言えるLuiですが、WILLCOM D4と違う点は、ネットが無いと何もできないという点。ホットスポットが僅かしかない日本の環境においては、実質的に家庭内で”デスクトップ環境を持ち運ぶ”為の端末と言えるでしょう。また、サーバーのドライブに光学メディアが入っている場合や、ハイビジョン録画の番組をリモートで試聴できないと言った制限もあり、何というか魅力が大幅に削られています。
自分の部屋でDVDやBlu-Rayを見たり、ベッドサイドで録画しておいた番組を見たりができない・・・著作権上仕方ない措置かと思いますが、コレができなくて一体何のための家庭用シンクライアント端末なんだ、と言う気はしますね。
ちなみに、その片手落ちのメディアサーバーを実現するためのコストを見てみると、NECの「最小構成」で、PC兼サーバーが約21万円にDSサイズのシンクライアント端末が5万円の26万円。新規開発の専用機に至っては、PC兼サーバーが下位モデルで33万円、ノートPCサイズのシンクライアント端末が9万円(!)の合わせて42万円。Blu-Ray搭載モデルなら、さらに5万円プラスとなります。ディスプレイは、リビングのテレビとの接続を想定してか、標準ではついてきません。
普通にノートPCが買える金額のシンクライアント端末に、もはや冗談みたいな価格設定の母艦。一体どんな購買層を想定しているのか私には理解できませんが、NECは多分本気なんでしょうね。私ならば、10万円強のBlu-Rayレコーダーと、15万円くらいの普通のノートPCを選択しますね。それでも25万円、専用母艦の金額にすら及びませんし、多分、もっと便利に使えることでしょうから。
・・・家庭用シンクライアントという着眼点は本当に良いと思うのです。サーバーを一台おいて、複数台の端末でそれをシェアする様な使い方ならば、お父さんの管理も楽ですし、コストも抑えられることでしょう。でも、Luiのような「基本1対1」「端末には大幅な機能制限」「導入コストがPC導入と同程度以上」となると、もはや価値を見いだすのさえ難しくなってしまいます。
サードパーティも参入するようですが、どうやら「ユビキタス」の普及はまだまだ遠いみたいです。