こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

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よりよく生きるにはどうしたらいい?

病理医をめざしたわけ  1

2008年01月28日 | あの頃のこと…思い出話

病理の仕事のなかでつらいもののひとつとして、”術中迅速診断”というのがある。手術中に迅速に診断するというもので、けっこうプレッシャーがかかる。今日もあった。
そもそも私が病理医をめざした理由というのが、外科の実習中にこの”術中迅速診断”があったから。患者から摘出した組織を病理組織学的に検索して、その結果で、この先の手術をどうするか、手術を終りにしていいかどうか?といったことを決定する。
その間、外科医や麻酔科医、看護師らはみんな、待っている。そのときは私たち医学生もいたので、手術室の中は患者以外で全部で10人くらいはいたはずだ。そこにいた全員が、病理医の診断、指示を待っていた。結構、空気が凍ったようになっていたのを覚えている。
そして、手術室の中では”御宣託”のように聞こえる”腫瘍、残っていません”の声で、手術の成功が確認され、手術は最大の山を越え、終了へとむかうこととなる。  実際は腫瘍の有る無し以外にも、いろんなことを”迅速”に診断しないといけない。
そんな、診断をする病理医、とてつもなくかっこいー。と思って、病理医になった。
でも、かっこいーと思うのは、自分自身もしくは、手術室のスタッフくらいで、患者自身は寝ていて、病理医の存在まではほとんど意識しないだろう。手術室のスタッフへの連絡も、いろんな手術があるので、いちいち直接伝えにいくわけにもいかないからインターホン越しで、あっちから、“ありがとうございまーーーーす!”なんて、声が聞こえてくるだけで、手術が終わっても、お互い忙しいので、顔を合わせることも無い。
というわけで、結局、あんまりかっこ良く無かった、というか、直接誰かにお礼を言われるようなことはない、大事だけど、地味な仕事であることが判明した。
さらに、最初の憧れが強烈だっただけに、迅速診断のプレッシャーだけは、しっかり残っている。

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