トランジェントならなんとかなるだろうが、パーマネントのセルラインを樹立するなんてことがそう簡単にできるだろうか、などとプラスミドをいじっていた頃のことを思い出しながらみている。そもそも大腸菌とか酵母ではなく、扱っているのはヒト。トランジェントではフランケンシュタインになってしまう。
だが、私のようなへなちょこ研究者(今は研究者でもない)でない、ハイレベルの技術をもった人がヒトのゲノムDNAをいじって継代可能な個体を作出することも可能なのかなあ、とも思う。
NHKのテレビドラマ『デザイナーベイビー』は生殖医療の暴走の可能性を描いていて、生物系の実験でDNAをいじったことのある人なら誰でも興味が持てる内容となっている。遺伝子操作など全く知らない人(速水刑事)でも多少勉強すれば理解できるという点では、誰もがこの領域に関心を持っているということもわかる。 誘拐犯という犯人がいるという点でコウノドリとは全うサスペンスドラマで、来週はいよいよ最終回。NHKなので、そこそこハッピーエンドとなるだろうが、生殖医療の問題点のみならず、遺伝性疾患のように未だに治療法の乏しい疾患が少なくないことなど、扱われたテーマは重かった。
奇しくも同じ時期に放送された『コウノドリ』と『デザイナーベイビー』。それぞれ良くできたテレビドラマだった。二つのドラマを見ていると、いくら人間が奮闘しても、また技術を手に入れても、神様にしか扱うことのできない領域(例えば、胎盤の形成とか剥離のコントロール、染色体のランダムな発現等々たくさん)というものがあるということ。そういったことのいくつは解決して、私たち人間は神様に肉薄したような気になるかも知れないが、そこから先にはきっと大きな壁があって、私たち人間はそれを越えることはできないだろうと思うのだ。
思い上がってはいけない