美濃屋商店〈瓶詰の古本日誌〉

呑んだくれの下郎ながら本を読めるというだけでも、古本に感謝せざるを得ない。

古蘭と聖伝(大川周明)

2010年02月28日 | 瓶詰の古本

   さて古蘭はアラーが天使ガブリヱルを通して直接マホメットに告げたる言葉其者の復誦なるが故に、一切の自余の預言者の書の上に超出する聖典である。然るに聖伝は、正統回教徒に従へば、基督の四福音書に比すべきものである。何となれば四福音書は、弟子達によつて伝へられたる基督の言行録であり、聖伝は同朋によつて伝へられたるマホメットの言行録なるが故である。マホメットは『吾がスンナを愛する者に非ずば吾が弟子に非ず』と言ひ、また『逆境に在りて吾がスンナを守る者は、百の殉教者の受くる報償を受くべし』と言つたと伝へられる。かくて回教の正統派はスンナ派と呼ばれ、一切の生活を彼の先蹤によつて律することを理想とする。かくてイブン・カルドゥン Ibn Khaldunが言へる如く『回教の律法は古蘭の本文と聖伝の教訓とを礎とする』のである。

(「回教概論」 大川周明)

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