ローマのスクデリエ・デル・クイリナーレ(Scuderie del Quirinale)で開催されている「CARAVAGGIO(カラヴァッジョ)展」を観てきた。
会場に向かう階段(CARAVAGGIOの文字が今回の照明を象徴しているかのようだ)
スクデリエの会場では、作品は2つの階に分かれて展示されている。ゲストのdesiderioさんのレポートにもあったように、展示会場は薄暗いものの、作品の光と影を浮き出させるためのスポットライト照明が効果的である。朝日新聞の記事にはもっと明るい方が良かったという感想が出ていた。多分、照明はそれぞれの好みによるのではないかとも思うが、私的には照明効果によってカラヴァッジョの意図するものが強調されたように見えた。スポットライトにより作品の陰影が際立ち、その彫の深さにより画面に塗り込められていた精神性が立ち上がってくるかのように思えたのだ。
多分、今までに美術館・教会の定位置で観ているせいもあるのかもしれないが、この意欲的な照明演出をとても面白く観ることができた。特に絵画上のスポットライトが多種に渡ると思われたロンドン《エマオの晩餐》の会場スポットライトが3個、光と影の彫りが割と浅いと思っていたウフィッツィ《イサクの犠牲》は5個と、意外な照明展開に驚くとともに、とても興味深かった。
一方、今回の照明にも一長一短があるかもしれないと思う場面もあった。例えばアンブロジアーナ《果物籠》であるが、ミラノでは明るい照明の展示室で、ガラスも無く、至近距離で観ることができた。故に葉や果物の水滴(何とリアルで細かいことか!)や、背景の絵具のひび割れもくっきりと確認された。
カラヴァッジョ《果物籠》(アンブロジアーナ絵画館)
だが、今回の展示会場では作品と観客の間に、約50cm程の立ち入り禁止ゾーン線が引かれ(接近するとピーピー警告音が流れる)、薄暗い中でスポットライトに浮かぶ作品と対峙することになる。すると、背景の薄黄色のひび割れた光の拡散が均一な塗りの平面となり、その中間色効果で果物籠が画面から突出するように浮かび上がった!ボルゲーゼ《果物籠を持つ少年》と同じような艶やかさがそこに出現したのだ。
だが、あまりに作品との距離があり、薄暗さのせいもあり、あのカラヴァッジョの静物画を描く繊細な技量を満喫することができないのだ。あの思わず唸ってしまうような水滴が見えない! 今回の展覧会では作品展示の難しさもつくづく感じてしまったのだった。
次回は各作品を観ながら再発見したことなどを中心に書きたいと思う。
会場に向かう階段(CARAVAGGIOの文字が今回の照明を象徴しているかのようだ)
スクデリエの会場では、作品は2つの階に分かれて展示されている。ゲストのdesiderioさんのレポートにもあったように、展示会場は薄暗いものの、作品の光と影を浮き出させるためのスポットライト照明が効果的である。朝日新聞の記事にはもっと明るい方が良かったという感想が出ていた。多分、照明はそれぞれの好みによるのではないかとも思うが、私的には照明効果によってカラヴァッジョの意図するものが強調されたように見えた。スポットライトにより作品の陰影が際立ち、その彫の深さにより画面に塗り込められていた精神性が立ち上がってくるかのように思えたのだ。
多分、今までに美術館・教会の定位置で観ているせいもあるのかもしれないが、この意欲的な照明演出をとても面白く観ることができた。特に絵画上のスポットライトが多種に渡ると思われたロンドン《エマオの晩餐》の会場スポットライトが3個、光と影の彫りが割と浅いと思っていたウフィッツィ《イサクの犠牲》は5個と、意外な照明展開に驚くとともに、とても興味深かった。
一方、今回の照明にも一長一短があるかもしれないと思う場面もあった。例えばアンブロジアーナ《果物籠》であるが、ミラノでは明るい照明の展示室で、ガラスも無く、至近距離で観ることができた。故に葉や果物の水滴(何とリアルで細かいことか!)や、背景の絵具のひび割れもくっきりと確認された。
カラヴァッジョ《果物籠》(アンブロジアーナ絵画館)
だが、今回の展示会場では作品と観客の間に、約50cm程の立ち入り禁止ゾーン線が引かれ(接近するとピーピー警告音が流れる)、薄暗い中でスポットライトに浮かぶ作品と対峙することになる。すると、背景の薄黄色のひび割れた光の拡散が均一な塗りの平面となり、その中間色効果で果物籠が画面から突出するように浮かび上がった!ボルゲーゼ《果物籠を持つ少年》と同じような艶やかさがそこに出現したのだ。
だが、あまりに作品との距離があり、薄暗さのせいもあり、あのカラヴァッジョの静物画を描く繊細な技量を満喫することができないのだ。あの思わず唸ってしまうような水滴が見えない! 今回の展覧会では作品展示の難しさもつくづく感じてしまったのだった。
次回は各作品を観ながら再発見したことなどを中心に書きたいと思う。
お帰りなさい、素晴らしいレポートに感心いたしました.
照明の話ですが、私の拙い文章では伝えられなかったことが見事に表現されて
いてスッキリしました.今回の照明を過剰な演出だと思う人がいるかもしれま
せんが、私もバロック的世界を表現していると思い好感を持ちました.
「果物籠」ですが、思わず近づき過ぎてしまい警告音を鳴らして係員にライン
を指さされました.確かにこの絵の大きさにしては遠すぎますね.
こちらに返信を書きます.
>ユトレヒト派のテル・ブリュッヘン作品なども展示されていたのでしょうか?
「The Genius of Rome」の図録で確認しました.
ユトレヒト派では、Gerrit van Honthorstが3点、Dirck van Baburenは1点
が出品されていましたが、Hendrick Terbrugghenはありませんでした.
(オランダは1度しか訪れたことがなく、オランダ絵画の知識は微々たるもの
です.オランダでカラヴァッジョの大きな影響を知り驚きました.ハプスブル
ク家の親戚スペインと並んでカラヴァッジョは大人気だったのでしょうね.)
つまらない愚痴にまで返信して頂き、ありがとうございました.
今後のレポートを楽しみにしています.
拙文をご覧いただきありがとうございました(汗)
今回の展覧会はdesiderioさんのおっしゃった通り照明がとても凝っていて楽しむことができました。朝日の記者の方はきっと他でご覧になったことがない方かもしれませんね。
で、desiderioさんも「果物籠」でピーピー組でしたか(笑)。小さな絵なのに近寄れないなんて欲求不満を覚えまますよね(^^;
さて、desiderioさん、わざわざ図録確認いただき恐縮です。ありがとうございました!
う~む、テル・ブリュッヘンはマイナーなのかもしれませんね(ちょっと残念/汗)。ユトレヒト派はホントホルストとバビューレンだけというのは意外でした。主にイタリア・スペインのカラヴァッゲスキが中心だったのでしょうね。そう言えば、最近シモン・ヴーエの絵にカラヴァッジョ「聖マタイと天使」の中の天使ソックリさんを発見しました(^^;。フランスもなかなかでしょうか?
ところで、今回のローマではdesiderioさんにすっかり影響されて、ローマにある作品の定位置チェックをしてしまいましたです(^_-)-☆
これで、没後400年をしっかり味わえたような気がします。ありがとうございました!
ご返信、ありがとうございます.
数名しか入場していない朝の会場で、「果物籠」前で最初に注意されました.
その後も入り口付近から何度かピーピーと聞こえてきました.あの距離では集
中していると気づかずにラインを超えていまいますね.チケットとポスターに
「果物籠」を使っているのに、展示場所は良くなかったですね.
「The Genius of Rome」にSimon Vouet の作品は4枚出品されていました.
「聖マタイと天使」の指先をつまんだ天使(棘を刺したの?)に似ている作品
があるのですか!!!(ネット検索しましたが、見つけられませんでした.)
彼はベルリンのアモール、ウフィツィのイサクと同一人物ですよね.
ユトレヒト派の3人ですが、Romaで活躍した画家を選んだのかと思いました.
調べてみると3人共Romaに来ているのですね.Terbrugghenだけが展示され
ないのは不思議です、近くのNational Galleryに作品があるのに...
図録を見ながら記憶が曖昧な作品が多くて情けなくなりました.Caravaggioの
影響を注意深く見ていなかったのでしょう.
「The Genius of Rome」で、Caravaggioに次いで作品が多かった5人です.
Annibale Carracci 10枚
Peter Paul Rubens 8枚
Cavaliere d'Arpino 8枚
Domenico Zampieri 7枚
Adam Elsheimer 6枚
ご参考まで.
眼神経痛&頭痛&肩首凝りが続いたため、極力PCから離れておりました。
で、すっ、すみません!私の記憶違いで《聖マタイの殉教》の方の天使でした(^^;;;
desiderioさんは「指先をつまんだ天使」がお気に入りのようですね(^_-)-☆ 実は私も大好きです(笑)
天使はおっしゃる通り同一モデルでしょうね。かなりお気に入りの少年だと思います(^^;
ところで、ヴーエの天使は「Burlington Magazine」の展評に紹介されていました。
http://www.burlington.org.uk/issues/1272.php
《聖カタリナの殉教》(個人蔵)で、仏ナントとブザンソンでの「simon vouet, les années italiennes(1613-1627)」展の出展作品でした。個人蔵なのでネットには画像が無いのでしょうね。
http//exponantessimonvouet.free.fr/site_1280/lancement_1280.htm
さて、「The Genius of Rome」は本当に面白い展覧会だったのですね!アンニバレが次に多かったというのも、なるほどです。ルーベンスやダルピーノはカラヴァッジョとの繋がりで良くわかるのですが、ドメニッキーノは意外で、エルスハイマーは合点!です。レンブラントはカラヴァッジョ(ユトレヒト派から?)とエルスハイマーからの影響ですよね。う~ん、ご覧になったdesiderioさんが羨ましい!私も観たかったです(涙)