眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

その限りではない

2023-05-21 03:27:00 | グレート・ポメラーへの道
長時間ぼーっとする方大歓迎!
短時間集中して学ぶ方お断り!

 がむしゃらに打ち込む時代は終わっていた。人々は与えられた1つのドリンクの前で大人しくするように丸め込まれている。少しでも長居したい。そう考えるなら、掟に反抗するのは愚かなことだ。積極的に何かを始める仕草をみせる者は誰もいない。広々としたテーブル、格調高い椅子、和菓子のようなソファー、どこを見回しても熱情の切れ端は見当たらない。越してきた幽霊のような顔をした人がくつろいだポーズを取っているだけだった。
 大人しくしているから不満がないと?
 僕はまだ騙されているだけかもしれないぞ。

笑っているから楽しいと?

悪いことをした人が捕まるの?

水槽にいるのは金魚なの?

ピストルが鳴ったら走り出す?

怖がらせるのがお化けなの?

布団に入ったら眠るのか?

缶を開けたらすぐ飲むの?

角道を止めたら振り飛車か?

テレビを壊すとロックなの?

上着を着たからすぐに帰る?

雨が降ったら悲しいの?

離れていたら忘れるの?

玉葱を炒めたらカレーなの?

笑っていれば平気なの?

チョコをくれたから好きなの?

チョコをくれないから好きじゃないの?

 そんなことない!
 世の中そんなに甘くも単純でもない。

「全くなんて限りない世界だ!」
(手に負えない世界だ)

「早くここを出して!」

 鞄の底から魂の叫びを聞いた。
 次の瞬間、テーブルの上にはpomeraが乗っていて僕の指は吸い着くようにその上を這っていた。そして間もなく店の人が駆けつけてきた。

「お客様、お勉強の方は……」

「はあ?」

「他のお客様のくつろぎマインドの妨げになりますので」

「えーっ?」
 そんなことで僕らの運動が止められるはずないだろう。

「お客様! 退店していただきます!」

 ふっ。笑わせるな。
 お勉強だって?
 そこまでしていったい何を守りたいのだ。
 こんなところこっちから願い下げだ。

「チッ!」

 最後にpomeraが捨て台詞を吐いた。
 ミサイルの飛び交うメインストリートを抜けて、僕らは寛容なテーブルが残された街をたずねて歩き出した。


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