猫のことを考えていた。猫の振り返り。猫の足音。猫のあくび。猫の通り道。猫の足跡。猫の独り芝居。猫の霊感。猫の駆け足。猫のダッシュ。猫の横切り。猫のジャンプ。猫の好物。猫の壁登り。猫のつまみ食い。猫の威嚇。猫の後退り。猫のジャブ。猫のいる日溜まり。好きな猫のことを考えていた。
8番ホームには誰もいない。いつもいる人がいない。祝日の月曜日。突然、鴉が降りてくる。何もないことを確かめて、羽ばたく。ベンチには誰もかけていない。誰もいない。猫がホームの端を歩いていく。誰にも遠慮はいらない。ダイヤは大幅に削られている。もう、今日は来ないかもしれない。終わったのかもしれない。ベルは鳴らない。アナウンスは何もない。冷え込みが激しくなっていく。
誰もいない8番ホームの片隅に幻のうどん屋が浮き上がってくる。鰹だしの香り。立ち上がる湯気。おばあさんの横顔。
「かやくうどん」
おばあさんは何も言わず動き始める。
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