眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

浮遊コーラ

2020-11-19 03:02:00 | 夢追い
 ゴミを拾い自転車を道端に寄せた。地味な作業が一段落を迎えた頃、落ち葉に触れると浮遊の感覚が戻ってきた。
 古民家の壁をよじ登って軽く浮遊実験に入った。人気ないところから始める手もあったが、気が逸っていた。偉大な実験がこそ泥騒ぎに変わるかも知れない、危ないところでもあった。路地裏に着地した時、一服する料理人と顔が合った。「おつかれさま」と男は頭を下げた。同業者だと思われたのかもしれない。

 浮遊コントロールに自信を得て一気に高度を上げた。高いビルをクリアする途中、浮遊して行く以外に垂直に壁を駆け上がる動作を取り入れてみた。これは映え増しだ。
 最上階に近いところまで浮遊した時、室内で窓掃除をしている男と目が合った。男は驚いて雑巾を落とした。それから見えなくなって、戻ってきた時には手に缶コーラがあった。

「おつかれでしょう」
 開いた窓から差し出してくれた。
 体を傾けながらコーラを流し込んだ。この動作は映えるぞ。
「おー!」
 地上からの歓声だろうか。 

 専門家の提案によって精密なスキャンを受けると、浮遊細胞の活発な拡散が認められた。翌月には『ムー』への掲載も決まった。
「重力コントロールに成功した唯一の存在」
 唯一の……
 わるくない響き!


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 昼下がりのフードコート | トップ | ライフ »

コメントを投稿