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眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

素通りバス

2018-04-05 21:23:52 | 短歌/折句/あいうえお作文
「もう行ってしまったよ」
 老人は言った。
「どうして……。ずっといたのに」
「いたのかね」
「かくれんぼをしながらずっといたよ!」
 君はベンチの下の君にしか見えない友達と一緒になってかくれんぼに夢中だった。
「それはいたことにはならないな」
「ぼくらはずっといたんだ!」
「君は自分が思うよりもちっぽけな存在なんだ。誰もが君をみつけてはくれないんだよ」
 バスは鬼ではないと老人は言った。
 もう行ってしまったんだね。
 時刻表を見るとそこは一面真っ白だった。
「ここはもう廃線になってしまったのさ」
「おじいさんは何してるの?」
「君と同じさ」
「それじゃあおじいさんも乗り遅れたの?」
「ふふふ……。あっという間さ」



永遠の
オンリーワンを
待ちわびて
いま燃え尽きた
青の惑星

折句「エオマイア」短歌

グルメ街

2018-04-05 12:25:28 | 短歌/折句/あいうえお作文
肉の焼けるよい匂いが誘いかけていた。一人焼き肉もわるくない。思いながら前を通り過ぎる。結論を急ぐこともない。ここはそういう場所。数歩行けば逞しい力士人形が今にも勝負を始めそうな構えで手招いていた。一人ちゃんこか。わるくない。だが、ここだろうか。早まることもない。出会いはこの先にもあふれるほどあるのだから。和でも中華でも何でも揃っている。

穏やかに歩く内にひっかかる心の声を待てばいいのだ。早まった選択で空腹を埋める必要はない。決断に至るまでも大切な時間であるはずだ。それもある、これもある……。シズル感豊かなパスタが看板に渦巻いて見えた。その隣には高らかに手打ちを歌う名店らしきうどん屋の扉が見えた。一人麺類か。わるくない。わるくない。みんなもつれあいからみあいいがみあいいつの間にかおかしなことになってしまう。誰もわるくない。ただしあわせになりたいだけだったのに。まあ、そんなに急ぐこともないんだ。

「お気軽にどうぞ」
迷える旅人の背中をそっと押すような愛に満ちたポップに引き寄せられる。一人お好み焼きか。いいね。この辺でいいね。ここにしようか。ここにしよう。思いながら歩く内に君はグルメ街を抜け出した。
春の空気が何より美味しかった。
「うちにかえろう」


AIの
おかん調理を
待ちきれず
いまにあふれる
荒削り節

折句「エオマイア」短歌