眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

デュエル歌合戦

2018-04-27 21:19:56 | 折句の扉
サイド攻撃を仕掛けようと君は左サイドを駆け上がった。けれども、ゲームは右サイドを中心に組み立てられていた。10番と7番がテンポよくパスを回し幾度となくチャンスを生み出していた。敵もそれに応じて右サイドに守備の重点を置き始めた。そうなると攻撃は目に見えて渋滞を起こした。「よこせ!」君は大きく手を上げてアピールした。ピッチの中にサイドチェンジという言葉は存在しないようだった。向こうが陸ならば、こちらは海だ。君の前には敵のアタッカーが立っていた。

「どうしてマークする?」
「危険だからだ」
ゲームは逆サイドに傾いているのに何が危険だ。左サイドには攻めもなければ守りもない。忘れ去られた左サイド。もしかしたら誰も見ていないのかもしれないと君は思い始める。ただ無意味な上り下りを繰り返して、地味に消耗していく肉体。退屈と少しの寂しさの中で折句の扉が開かれた。

「監督が希望の星をつかむ手に」
「ハミングをする炊き込みご飯」
何だって。
「駆け上がる希望の消えた土を蹴り」
「ハムを拾って食べてもいいの」
腹減ってるのか。
「過大なる期待の裏でつぶされた」
「バームクーヘン食べてもいいの」
「どうして返すんだ?」
「お前の動きに合わせるのが俺の仕事だ」
「そうか。だったらもっと真面目に返せ!」
「お前もな」

「回想の汽車が運んだ月の夜に」
「はくしょん!メシの種をまきたい」
何だって。
「軽やかに着こなしていたつかの間の」
「ハーフタイムに食べる焼きそば」
腹減ってるのか。
「形なきキッスがうそをつく頃に」
「ハンバーガーを食べ尽くす君」
「お前、腹減ってるな」
「それがどうした」
「歌に私情を挟むんじゃない」
「他に何があると言うんだ」
「もっと大きな世界を歌うべきだろう」
「お前がちゃんとビジョンを出せよ」
「お前とは合わないな」
「当たり前だろう」

「カシミアの胡瓜に苦い罪を着せ」
「はさみ将棋を楽しむがいい」
「快楽と恐怖が交じるつむじ風」
「判定はアンタッチャブルだぜ」
「癇癪のキックが語り継ぐものは」
「墓石ほどに他愛ないもの」
「どういう意味だ?」
「俺にわかるはずがないだろう」
「俺のかきつばたをよくも壊してくれたな」
「お前のかきつばただと?」
「俺のじゃない。だがお前のものでもない」
「だったら何だ」
「歌うならちゃんと魂を込めて歌え!」
「半分はお前のせいだろう」

「神さまが君を描いた翼ある……」
「……」
割れるような大歓声が歌を断ち切った。ついに右サイドの攻撃が実を結んだのだ。下の句を聞かず恐る恐る君は喜びの輪の方に近づいていく。ようやくチームの一員になる瞬間が訪れた。君は抱きしめるべき対象を探してチームメイトの顔を見回した。ゴール前で跳ねているのは、ウサギ、リス、キリン……。折句サイドでくすぶっている間に、急速な世代交代が起こっていたようだ。絡めそうな相手を見つけることはついにできなかった。10番はカモシカ。7番は今はユニコーンのものだった。



気まぐれに
世界をかける
キッカーは
例に背いて
生きるのが好き

折句「キセキレイ」短歌

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ジャパン・レッド(アクロスティック)

2018-04-27 13:24:36 | 短歌/折句/あいうえお作文
梅ちゃんの
旅先今日は
イタリアン
ひねくれ麺に
とけ込めるやら

折句「うたいびと」
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心の太陽

2018-04-27 03:11:54 | 短歌/折句/あいうえお作文
愛情を
語る上では
皆が知る
煮込みの上手い
クレアおばさん

折句「赤身肉」
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インテリア・ショップ

2018-04-27 02:06:54 | 短歌/折句/あいうえお作文
チーズバーガーを食べていた椅子が気に入ったので、一緒に持ち帰ろうとするとやっぱり店長に止められてしまった。ちょうど大通りを隔てて前にあったインテリアショップで椅子を探した。アマゾンで見つけたお気に入りの机に合う椅子が必要だったけど、それはアマゾンでは買えないしパイプ椅子では駄目だったし、ホームセンターやリサイクルショップに行っても気に入ったのが見つからなかった。くるくる回るような椅子は嫌だった。遊ぶにはいいけれど、それで机に向かっていると遠心力が働いてどこかに飛ばされてしまうことが気になった。店主のおすすめの椅子は、5万とか6万とかそんな感じの高級な椅子だった。

「まあ掛けてみてください」

掛けてみるとまあまあだった。くつろぎに来たのではないけど、少しくつろいだ気分になる。踊り場にある気になる椅子に掛けてみるとそれが探していたものであることは、直感でわかった。アマゾンで手に入れた机の高さとピッタリ合うのだ。すぐに値段を聞いた。安くはないけど、あの椅子に比べれば高くはないと言えた。理想の椅子のために、ある程度の覚悟はできていた。好意を告げると店主はうれしそうに笑った。

そんな椅子を買ったことがある。今も元気だ。

少し暖かくなってきた春、久しぶりにその店の前を通ると店は閉店セールの貼り紙に覆われていた。外から少しのぞいてみると店の中にほとんど商品はない様子だった。セールはもう終盤に差し掛かっているのかもしれなかった。あの時、家まで椅子を届けてくれた店主は、そう若くはなかった。ガラス張りの店の中からこぼれる明かりがキラキラト輝いて、いつも夜になると綺麗な店だった。もう、次の椅子を買うことはなくなった。



援助者は
通りすがりの
鹿に化け
繰り返しあい
さつを教える

折句「江戸仕草」短歌

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個文字デュエル

2018-04-27 01:40:01 | 短歌/折句/あいうえお作文
エルボーは
届かぬ屋根の
心象が
くの字を描いた
錯乱の角

折句「江戸仕草」
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