どういうつもりで言っているのかな……。アホだ、アホだって。きっとどういうつもりでもないのかもしれない。こちらが深く疑うほどには何も考えてはなくて、ただ、挨拶の類のように。やあ、暑いね、夏だね、元気、おー、猫か、おはよう、またね、雪か、はじめまして、ははは、hola、肩の力を抜いて、アホ、アホ、アホ、アホ、アホ、アホ、アホだ、アホだ。念仏のように繰り返されて。僕は隣に立って名前もない馬として振る舞いながら、いななきもしないのだけど、その内だんだんと自分が鞭打たれているような気持ちになってきて。ただ掛け声みたいなものなのにどうしてこんなことになってしまうのだろう。猫とおはようの数はいつも数えないのに、アホ、アホ、アホ、アホ、アホ、アホ、アホ、アホ、アホ、アホ。あなたの聡明な口から無数のアホがまたしても生み出されて、僕の目の前を行進していく。アホ、アホ、アホ、アホ、アホ、アホ、アホ、アホ、アホ、アホ……。
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃい」