眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

宇宙旅行(やまとなでしこ)

2013-05-01 18:53:15 | アクロスティック・メルヘン
休みの日に行くならどこだろう?
まだみんなの考えはまとまらず、
「東京ディズニーランド!」
なんて言う者もあれば、
「テーマパークがいい!」
しまりのないことを言う者もあって、
行楽の行方も定まらないのでした。

やがておばあさんが、
「まだ宇宙には行ってないわね」
とびきりの提案をすると
「夏休みには宇宙に行こう!」
提案はみんなから受け入れられて、
出発の日を夢見ては、
今夜の月を見上げるのでした。

「やっぱり宇宙に行ったらさあ」
まだ先のことなのに、
時の向こうに想像が膨らんで、
「なんと言っても宇宙カレーだね!」
てるちゃんはカレーが好きです。
「しょーもない! 昨日食べたでしょ!」
これでは先が思いやられます。

「やっぱり宇宙に行ったらさあ」
まだ先のことなのに、
時の向こうに想像が膨らんで、
「なんと言っても宇宙映画だね!」
てるちゃんはディズニーが好きです。
「しょーもない! 水曜に見たでしょ!」
これでは先が思いやられます。

「やっぱり宇宙に行ったらさあ」
まだ先のことなのに、
時の向こうに想像が膨らんで、
「なんと言っても宇宙サッカーだね!」
てるちゃんはセレッソが好きです。
「しょーもない! 日曜に遊んだでしょ!」
これでは先が思いやられます。

「やっぱり宇宙に行ったらさあ」
「まずは地球が見てみたい!」
時の向こうに丸々とした想像が膨らんで、
「なんと言っても地球だね!」
てるちゃんは地球が好きです。
「しょーもない! いつも住んでいるでしょ!」
これでは先が思いやられます。

「やっぱり見たいな! 住んでいると言っても、
まだ見たことはないんだからね。
当然見たいと思うだろうね。
なんと言っても見たいよね。
テレビでだったら見たことはあるよ。
しかしそれは実際に見たのとは違う。
言葉で作った地球みたいなものさ」

休みが近づいていくにつれて、
魔法がとけていくように、
時は宇宙計画を裏切っていきました。
「何も他人になってまで自分を見つめる必要はないのよ」
てるちゃんに向けてお母さんは言います。
出発の日に合わせるようにして台風がやってくると、
根底から宇宙の土台をひっくり返してしまうようでした。

休みの日に行くならどこだろう?
回り回ってようやく答えは出たようです。
「東京ディズニーランド!」
なんて言う者の声に合わせて、
手をみんなで一斉に上げると、
しぶしぶそれに従う者もいたけれど、
「これでいいのよ」   とお母さんは言いました。


コメント
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