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眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

スイッチがない

2020-08-29 07:37:00 | 忘れものがかり
天井の明かりが消えない
リモコンが利かない
強く押しても近づけてみても駄目
電池を交換して結果が変わらなかった時
大いなる不安に襲われた

リモコンの他にスイッチはないのだ
(このままずっと明るいままか)
どうしてこんなことに!
リモコンを叩くと部屋が暗くなった

しばらくすると
また忘れた頃に同じ事態になる

今度は叩いても駄目で
iPhoneから少し離すと上手くいった

色んなものが部屋の中に飛び交っていて
干渉し合い混乱が始まったのかもしれない

みえないものでつながっていることが
急に恐ろしく感じられた
気がついたら
何もコントロールできなくなっているのでは……

カチッ♪

天井から垂れ下がった紐を引いて
明かりを消せれば安心なのに

わかり始めた昔話

2020-08-28 14:58:00 | 忘れものがかり
「消さないでくれ」
父の背中がドラマを消すなと言った
みてもいないくせに……

あの時 
父はおばあさんの朗読を聴いていたのだ
昔々 いました ありました そして
こんなことがあり 言いました それから
おばあさんの声に包まれながら いたいのだ
夢の国へいきたいのだ

ごめんよ お父さん
何も知らないで テレビを消そうとして

(いつになっても物語は必要だった)

マッチアップ、猫

2020-08-22 15:15:00 | 忘れものがかり
猫が歩き、止まり、隠れ、
にらみ、見上げ、ひっくり返り、
背を丸め、目を伏せ、尾を伸ばし、
揺らぎ、移ろい、思い上がり、
はしゃぎ、化けて、静まって、

ひと時の間
僕をかき回した

じゃあね

猫を置いて
猫の庭を離れた


「猫なんてどこにでもいる」
と思われるでしょうか

今日は 猫の詩が胸に沁みます


星の住民

2020-08-06 21:43:00 | 忘れものがかり
チキンを食べている時の僕の気持ちと
猫の気持ちはどれくらい同じなの

道を走っている時の僕の気分と
猫の気分はどれくらい違うの

うとうとしている時の僕の心地と
君の心地はどれくらい近いの

僕らは食べてかけて夢みて
失っていく似た者同士

pomeraを開いて打ち込んでいる
僕のことをどう思っているの

君も色々と 考えるの?

さよなら、昨日の友だち

2020-08-05 16:31:00 | 忘れものがかり
友だちを減らしたくなかったら
黙っていることだ
余計なことを言ったり
目立ってしまったら
煙たがられることもあるだろう
大人しくしていれば大丈夫

それで真の理解者はできるか
新しい友だちはみつけられるか
自分を隠してまで数は保たれるべきか

どっちを選ぶか
好きにすればいい


ヘビーメタル(それがいい)

2020-07-30 23:11:00 | 忘れものがかり
「根を詰めすぎるとよくないよ」
 その忠告は正しいものだ。だけど詰めなければ隙間が空いて余計なものが入り込んでくる。お腹が空きすぎて痛くなったこと。友達が笑いながら裏切ったこと。古書の匂いが奪われたこと。3月の終わりに引き裂かれたこと。コーヒーカップがあふれたこと。邪魔者扱いされたこと。濁った現実と忌まわしい記憶が、呪いのように押し寄せてくることをとめられない。

「根を詰めるのはよくない」(それは何に対して……?)
 その正しさは揺るがないものか……。

 不意に戻ってきた反抗期に導かれて僕は根を詰めはじめる。
 風に向かって歩きながらすべてのテーマは風になる。(余計なものはいない)
 僕は忘れる。何も食べていないこと。友達がいなくなったこと。12月が終わったこと。コーヒーカップが空っぽになったこと。自分がこの世に存在しないこと。既に過去の話になったこと。

 あなたにはわるいけど、きっといまはそれがいいことなんだ。



五円玉拾いますか

2020-07-28 21:19:00 | 忘れものがかり
姉が子犬を拾ってきた

まだ子供の僕たちと
作りかけの家と一緒に
犬は大きくなっていった

いくつもの段ボールと
柱の削りくずと
色んな人の靴を玩具にして

ともに河川敷をかけた
雨に打たれた
けんかしたり仲直りした
父と一緒に山菜を採りに遠出した
謎の洞窟を見つけて潜り込んだ

時々犬は家出することもあった
呼んでも呼んでも帰らなかった
突然さささと足音がして
体中に土をつけて犬は帰ってきた

しばらくすると僕が家を出た
久しぶりに帰ってくると
犬はよそよそしかった
1年も離れれば忘れてしまう
あきらめている内に表情が変わる
突然思い出したように声を上げて
何度も何度もすり寄ってきた

一緒だと思っていたけれど
犬は僕を追い越すように大人になり
おばあさんになり
そして……


犬という大河の中に
僕はどれくらいいたのだろう

もしあの日 姉が犬を拾ってこなかったら
犬はうちにいなかっただろう

あるいは こうも思う
しばらくして姉は
別の何かを拾ってきたのではないか

それはまた別の宇宙の話かもしれない


孤独系宇宙

2020-07-28 20:18:00 | 忘れものがかり
私があなたを知ることはない
私に知らせる道がない

あなたが私を知ることはない
あなたに知らせる橋がない

私はここにいる
あなたはそこにいる
毎日のように行き違っている

ここには手がかりがない
互いを知らせるシグナルがない

孤独系宇宙の中で私たちは出会わない

偶然と幸運に恵まれない限り



蛍の光リフレイン/これから

2020-07-27 04:04:00 | 忘れものがかり
1時間が経って
フードコートの脇から「蛍の光」が零れ始めた

ここも追い出されるのか……

イヤホンを外して身構えていた

蛍の光はいつまでも続く
蛍の光はいつまでも終わらない
もう泣きそうだ

空調の音
弁当に輪ゴムをかける音
椅子を引く音
恋人たちの談笑
ささやき 願い
台車の車輪


プレハブの匂い

何もかも建て替えられる
僕らは過渡期の中にいたのだった

退院してから数年経った頃
施設を訪れた
新しいベッドは角度を変えられる
あの頃 枕は石みたいだったけど
何から何まできれいに整っている

ここにはいじめっ子なんていないのだろう

羨ましくて
くやしくて
少し切なかった


蛍の光は終わり
雑貨店は明かりを落とした

追い出されなかった……

僕は生き残り
今に帰ってきた

ノンシュガーは甘くない

現在地
イヤホンを取り戻してロックオン

夜は これから


さよなら、ポータルサイト

2020-07-21 15:40:00 | 忘れものがかり
どうやら僕はポータルサイトの中にいたらしい

雨のこと、車のこと、ピザのこと、
不正、疑惑、スキャンダル、
野球、ボローニャ、猫、躊躇なく、
賭博

途中で広告が入り交じる
猫、ゲーム、保険、ビリー

読む人の好みによって傾向も変わるらしい

タイトル獲得王手なるか
身内のゴタゴタか
未知の物質発見か
セリエA復帰か
結婚秒読みか

情報の多くは未確認のもの
(そうでなくてもフェイクが交じっているらしい)

読んでいるのか読まされているのか
だんだんとわからなくなる

50万人 100万人 200万人達成!
チャンネル登録者数が次々と発表される
ネットビジネスだろうか……

疲れを覚えて僕はサイトを抜けた


SNSで#を追っていると興味深い詩をみつけた

作者のホームを訪ねると読者は2人だった

現在から過去へたどる内に興味は増した

やっぱり面白いものは面白い

まだ登録はしなかった

「また来よう」

リンクはなくても、道は覚えた


まわる助け船「X」

2020-07-10 09:07:00 | 忘れものがかり
元気な時は踊ることができた
元気がなくなって踊ることを忘れてしまった

「踊ることによって元気が出ます」
と学者は言った

だけど、矢印を逆にするためには
「元気」と「踊る」だけでは足りていない

その時、あの「歌」が流れてきた
踊らずにはいられなくなるような、あの歌が

それは親でも先生でも友達でもない
全く別の力を持った未知のXだった

まわりまわって 音楽をつくる人は
医者と同じように 治しているのだ


あなたのしている仕事/仕草だって

まわりまわって 
誰かを助けているのかもしれない

まわりまわって
誰かを救うのかもしれない

まわりまわって
僕がいま 笑えたように



地球時代劇

2020-07-02 22:37:00 | 忘れものがかり
「そちらはちょっと」
「この刀は缶詰みたいなもんでさあ」
「はい?」
「抜くかどうかは別にして、ないと不安ですから」
「しかしこちらでは置いていただかないと」

「私は侍なもので」
「お侍さんというのは皆そうなのですか」
「ずっとそうなんでさー」
「そういうものなんですね」
「そうなんでさー」

カット!


先生から裏金が出て

教科書からはあくびが出た

冷蔵庫からは太古の野菜

キッチンからは夏の魔物

わんわんわんと涙が出て

君は家を出て行った


何が出るかは

最初から決まっていた

最後の瞬間まで

『地球の物語』に綴られている

異分子の訪れ

2020-07-01 22:21:00 | 忘れものがかり
 子供の頃、僕は強い人でありたかった。人前で弱いところをみせるのは絶対に許せなかった。(何より自分を一番よく知る人の前では)
 上級生なんかに負けはしない。自分が悪くないのに謝ったりなんてしない。罵られたって平気だ。言葉で負けるものか。
「こいつ泣くぞ」もう泣くぞ
 周りは敵ばかり。だけど、僕は負けない。誰より僕は強いから。
「泣くぞ」
 言わせておけばいい。僕は痛くない。

「もうやめておけよ。かわいそうだろ」
 ??????????????
 何だ? それはどういうことだろう。
 張り詰めていた僕の胸の中に、異分子が入り込んでくる。
 何だよ? 現れるなよ。
「大丈夫だからね。泣かなくていいからね」
 感情がコントロールできない。

わーーーーーーーーーーーーーーーーっ

 負ける時は簡単にやってきた。
 急に来るなよ。
(敵ばかりなら、僕は平気だったのに)