年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

劇的な一打

2015-08-21 | 俳句&和歌

◇◇◇  劇的な一打

 100年を迎えた全国高校野球選手権大会は東海大相模高校が45年ぶり、仙台育英を10対6で撃破して2度目の優勝を飾った。奇しくもPL学園を破って初優勝した45年前と同じスコアである。珍しい優勝記録である。
 記録と言えば、投手による決勝ホームランは大会史上初の記録であり、小笠原慎之介投手にとっても初のアーチであったという。一塁を回った時の本人の「ウン?何だ」という顔のアップ、チームメイトも4万観衆も驚愕の一瞬で97回大会の掉尾を飾るワンシーンであった。死んでも忘れないという。
 しかし、この劇的な一打を 門間監督は見ていない。ベンチで9回裏から登板予定の吉田凌投手と長倉蓮捕手に細かな指示を出していたのである。グラウンドの歓声でベンチを飛び出した監督はホームを駆け抜けて来た小笠原投手を抱きしめた。
 ドラマのようなV弾とは云え試合の途中で斯くもがっちりと監督が選手を抱き締める場面は皆無である。これも「名」というか「迷」記録である。小笠原投手は完投V投手になった。
「最終回投げる予定だったけど小笠原に持っていかれた」と吉田投手は苦笑いしたと新聞は報じた。試合にも人生にも光と影は付きものである。
 何年後か、プロの世界でどんな形で二人が相見えるのだろうか。

  センターを切り裂くボールは4万のひとみを一つに炎暑の空を
 
  慟哭に並ぶナインのベンチにも勝者の校歌清しく流れ

 

     送り火も文化財なりナスの牛
   
     こんちくしょう!打つことならぬ鼻刺す蚊
   
     潮見坂燃える炎暑をゆきゆきて

 


※掉尾(ちょうび)= 慣用読みで(とうび)。物事の最後を立派にしめくくること。
※送り火(おくりび)=盂蘭盆の終わりに祖先の霊を送るために、たく火
※潮見坂(しおみさか)=谷間の霞ケ関から議事堂に通じる急坂