年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

桜 早まる

2013-04-08 | フォトエッセイ&短歌

 新年度が始まり新入生・新社会人の旅立ちである。あるいはまた第二の人生に挑戦する新定年退職族の誕生でもある。学校も会社も何かと華やぐ時期だが、定年退職の夫を迎えた家庭の華やぎは数日で終わり、息の詰まるような日常が延々と始まる家庭が少なくないと聞く。かっての企業戦士はやることも行くところも失ってウロウロと目障りな存在となり、粗大ゴミと揶揄され蔑まされる。
 高度経済成長期を仕事一筋に生きて来た結果としては何とも侘びしい話だが、現況をみればそれはそれで良き時代の完結の仕方であるとも云える。昨今は定年まで会社に居られる保障は無く、肩叩きといわれる退職勧奨が普通だ。断れば「追い込み部屋」「追い出し部屋」等と呼ばれる地下倉庫に放り込まれ、精神的に追いつめ、自主退職を余儀なくされる。
 こんな事が罷り通るようでは日本の先行きに未来はない。明るい話に戻そう。8日は入学式でピカピカの新入生の誕生である。かって桜はこの日を待つように咲きほころび、盛り上がるピンクの峰からは花弁が吹雪となって舞い散る。自然の摂理は裏切る事はなかったが、今年は2週間も開花が早まったうえ、二度の暴風雨に見舞われ花びらはもぎ取られ、暖雨で若葉が開き始めている。
 気象的に爆弾低気圧とか。北からの寒冷前線と南からの温暖前線が列島近辺でぶつかり気候が大荒れになる。最近、特に東日本大震災の後、何か自然のサイクルがおかしくなっているのかという問いにぶつかる。確かに子供の頃の春夏秋冬と違う感じがする。
 しかし、地震に雷、津波に大雪は自然の産物である。火山列島であることは周知の事実、台風が襲って来るのも年中行事、遅霜で野菜が全滅すのも当たり前の自然の営みである。日本の国土はそういう処に位置しているのである。桜が2週間早まったとてどうって事ではないのだと思い知るべきだ。文明の機器に慣れ親しみ、自然を従わせられると考えるようになった人間の傲慢な奢りに気づいた方がいいのかも知れない。
 地震の津波に驚きと嘆き、この世の終わりかのように騒ぎ立てるが、思わぬ自然の反撃はこれからも100%の確実さで襲ってくるのだ。
 新入生を引き連れて桜吹雪の舞う桜並木を駅まで一緒に歩き駅前でサヨナラした過ぎ日を思う。

桜絨毯のなかでママたちの話が弾む。古木に花びらがしがみついている。

 

  桜散る御苑の弥生汗光る異国の言葉が落花となって

  老木の花弁に息を吹き掛けし老いの肺では飛ぶこともなし

  怪しげに桜吹雪舞う里山を安吾を想いて駆け抜けて行く

  低気圧花の名残もなんのその毟り運びて春終わりけり

  しばらくは花の上なるママたちの尽きぬ話は保育所無きを

  しなやかに春待ち生きて綻びぬ壊れし九段に糸桜あり