「レコードの復活」だと言って、メーカーからレコードプレーヤーが発売されているが、どうも原理やメカニズムを紹介しているパンフレットはない。もちろんマニアでは常識だと言われそうだが、源太郎のように素人にもわかる解説をしてくれる書籍など現代では皆無だ。
「LPレコードの紹介」コーナーを暇にまかせてアップしているので、もしレコードプレーヤーを購入して、昔のレコードを聴きたい人もいるかもしれない、だから、ちゃんとした説明を掲載したほうがいいだろう。
と言っても源太郎が書いても信用度が低いので、一昨年音響メーカーから撤退したPioneer(日本でセパレートステレオという概念を作り上げた立役者)さんが、昭和41年3月初版(源太郎の手元には昭和46年3月10日発行本)した販促書籍「ステレオ読本」から引用したいと思う。
現代のインターネットはすごい技術だが、こういう古文書的な、当時の販促書籍などはまず見つけることができない。わかりやすく書かれているものをぜひデジタル人間に読んでいただきたい。それがアナログ人間の逆襲である。この本は、「音について」「ステレオとモノ」「ステレオ装置の形式」「ステレオの上手な聞き方」「ステレオ装置のすべて」「ステレオ・アンプ」「スピーカー及びカピーカーシステム」「テープレコーダー」「カタログの見方」「ズバリ解答」という構成で、192ページの本だ。
そして、ここで紹介する「ステレオ・レコード・プレーヤー」は第2章の「ステレオ装置のすべて」からの引用となる。図番号は、文章に合わせて番号を変えているので悪しからず(原本の番号は20番から始まっているが)
ステレオ・レコードについて
普通のモノーラルのレコードでは、音の波形にしたがって、音溝は横方向にカットされていて、ピックアップの針先が左右に振れたときに、音が出るようになっています。これに対して、ステレオ・レコードでは、図1に示すように、盤面に対して45度の角度の溝の両側壁に、それぞれ左右の音を録音してあります。図1Aは右側だけに音が入っている場合で、Bは左側だけのときです。そしてCとDは両側に録音されている音溝の状態を示したものです。また、レコードには録音されるときの回転速度が毎分33・1/3回転のものと、毎分45回転のものとがあります。従前は毎分78回転のも(SP盤)がありましたが,現在は製作されておりません。
図-1 45/45レコードの原理
ステレオ・レコード・プレーヤー
前述しましたステレオ・レコードに刻み込まれた左右の音を、レコードの音溝から拾い出して電気信号に変える働きをするのがステレオ・レコード・プレーヤーです。
レコード・プレーヤーの各部の名称
一般にレコード・プレーヤーは、モノ用、ステレオ用を問わず、図2に示すような部分で構成されています。
- ピックアップ
- フォノモーター
- ターンテーブル
- モーターの回転をターンテーブルに伝える機構(アイトラー,またはベルト)
図-2 レコード・プレーヤー
ピックアップ
普通にピックアップと総称される部分は、大きく分けてトーンアームとカトリッジになります。トーンアームには図2に示すように、カートリッジを取り付けるヘッド・シェル(アーム・ヘッド)と、アームの水平バランスをとったり、または、レコード面に適当な針圧を加える役目をするバランス・ウェイト(カウンター・ウェイト)が取り付けられています。
【カートリッジ】
レコード・プレーヤーの場合、ヘッド・シェルに取り付ける発電機構全体をカートリッジと呼んでいます。カートリッジに取り付けられている針がレコードの片溝にそって動きますと、針の動きの変化に応じて左右の音が電気信号に変換されて別々に取り出されます。カートリッジはレコード・プレーヤーの心臓部ともいうべきもので、カートリッジがレコードに刻まれた音を忠実に再生しなければ無意味です。優秀なカートリッジを使用すれば、それだけ良い音質を楽しむことができます。現在広く使われているカートリッジの種類には次のようなものがあります。
i 圧電型カートリッジ
クリスタル型やセラミック型はこの代表的なものです。クリスタル型やセラミック型は、それぞれのエレメント(ロッシェル塩やチタン酸バリウムなどの結晶体)に、針先の動きにしたがってねじれや曲げの力を加えると電圧を発生する性質を利用したもので、その構造は図3に示すようにいたって簡単です。この型は出力が大きく、かつ、レコードの録音特性(一般にレコードは、ある規格に従って高い音の部分を強め、低い音の部分を弱めるような特性で録音してある)を補正しているなどの特長があります。しかし、温度、湿度に弱く、高音域の再生特性が悪く、かつ、針先のうごきをやわらかくすることが困難で、針圧を軽くすると音がビリツキやすいなどの欠点があり、Hi-Fi再生用としては不適当なため、一般に普及型のレコード・プレーヤ一に使用されています。
図-3 クリスタル型カートリッジの構造
ii マグネチック型(電磁型)カートリッジ
ムービング・マグネット型およびムービング・コイル型カードリッジを総称して、マグネット型カートリッジ型といいます。この型には必ずマグネット(磁石)と鉄とコイルが用いられています。ムーピング・マグネット型は、図4に示すように針の動きに応じてマグネットが動き、これによってゴアーに巻いてあるコイルに発電させます。ムービング・コイル型は、図5に示すように針の動きに応じコイルが動きます。そして、コイルのそばにはマグネットがあるため、コイルに電圧が発生します。いずれも針先の動きがやわらかく、針圧が軽いため、再生音域が広く、音質が良いのが特長で、Hi-Fi再生用として広く使われています。しかし、この形式のものは出力電圧が小さく、かつ、レコードの録音特性を補正するための等化器(イコライザー)が必要です。この補正はアンプでおこなっていますので、この形式のカートリッジを使用する場合は、アップにそのためのヘッド・アンプ回路が必要となり、全体的に高級なものになります。ムービング・マグネット型は、ムービング・コイル型に比べて次のような利点があります。
図-4 ムービング・マグネット型カートリッジの構造例
図-5 ムービング・コイル型カートリッジの構造例
1)出力電圧が大きい
2)プラグイン式になっているので、針交換が容易
3)針を交換するごとにマグネットが新しくなり、マグネットの劣化による出力の低下がない
4)故障が少ない
この他、マグネチック型の一種にインデュースドマグネット型(IM型)と呼ぶカートリッジがあります。これはムービング・マグネット型の変形で、その構造を図6に示しておきます。図に示すようにマグネットをカートリッジ本体内、または針アッセンブリーの中に固定しておき、針の動きに応じて鉄片が動くと、マグネットから流入(インデュース)する磁束を変化させて、コアーに巻いてあるコイルに発電させます。
図-6 インデュースドマグネット型カートリッジの構造例
iii 半導体カートリッジ
半導体カートリッジは、新しいソリッドステート時代の花形として登場してきたもので、図7に示すようにエレメントにシリコン半導体を使用し、針の動きに応じた力をエレメントに加えてその抵抗値の変化を電気的な変化に変えるものです。この形のカートリッジの特性はすばらしいのですが、その使にくさが原因であまり普及されていませんが将来が期待されています。
図-7 半導体カートリッジの構造例
【針(スタイスラ)】
針には、材料にサファイヤ(ホワイト・サファイヤ)を使用したサファイヤ針と、ダイヤモンドを使用したダイヤ針の2種類が広く使われています。ダイヤ針はサファイヤ針に比べて高価ですが、硬度が高く、長時間の使用に耐える点から最近盛んに使われています。一般にサファイヤ針の寿命は約30時間、ダイヤ針の寿命は約200時間といわれています。針先の寸法は先端の曲率半径r(図8)でいいます。モノのLP用が1ミル(1/1,000インチ)、ステレオ用で0.5ミル、モノ・ステレオ兼用で0.7ミルが標準です。
図-8 針
【トーンアーム】
トーンアームは、カートリッジをレコードに対して正しい位置に保持しながら、針先とレコードとの間に適当な力を与えてやり、針先を常にレコードの溝の動きになじませてやるのがその役目です。トーンアームは、共振のない、軽く動作するものでなければなりません。悪いアームを使うと、音が悪かったり、レコードや針をいためることになります。現在多く使われている高級アームは、軽金属のパイプ・アームです。これは、1)質量が小さい、2)ネジレがない、3)加工しやすい、4)アームの共振をモーターの振動周波数からにげるための設計がしやすいなどの特長があるためです。
【アームの形状】
アームはその形状から、1)直線形(I型)アーム、2)J型(単純曲げ型)アーム、3)S型アームの3種類に分類できます(図9)。いずれの型でも、アーム中心軸と針先を結んだ軸上に対するヘッドの傾き角度αをオフセット・アングルと呼び、トラッキング・エラーを減少するために重要なものです。このように、オフセット・アングルをもった通常のアームを総称してオフセット・アームとも呼びます。また、ヘッド・シェルがアームに固定されていてアーム々ら取りはずしできないものをインテグレーテッド・アームと呼びヘッドシェルが4ピンのコネクターをもったプラグイン式になっていて、ヘッドが交換できるようになっているものをユニバーサル・アームと呼びます。ユニバーサル・アームは、いろいろのカートリッジを取り替えて視聴できるので便利です。パイオニアの単体レコード・プレーヤーは、すべてユニバーサル・アームを採用しています。
図-9 アームの形状
【アームのバランス】
レコード面に適当の針圧を加える方式に、ダイナミック・バランス型とスタティック・バランス型とがあります(図10,図11)。ダイナミック・バランス型は、カートリッジをアームに取り付けた状態で、アーム後部のウェイトを調整して完全に平衡をとり、針圧をいったんゼロにします。この状態から、スプリングの張力によって針圧を加える方式で、プレーヤーが多少傾いても針圧は変らず、安定したトレースできる特長があります(図10)。スタティックフバランス型はスプリングを使わず、アーム後部のウェイトを前後に動かして針圧を加えるようにしたもので、レコードがそったりしているときにもうまくトレースしてくれます。スタティック・バランスのほうが使いやすく、最近の高級アームの大勢はこのほうに移っているようです。(図11)
図-10,11 ダイナミックバランス型/スタティックバランス型
【インサイド・フォース・キャンセラー】
アームにオフセット・アングルをつけることにより、針をレコードの中心(内側)に引き込もうとする力が働きます。この力をインサイド・フォースと呼びます。インサイド・フォース(図12 インサイド・フォースキャンセラー)によって針は音溝の中心に保てず片方の壁に押しつけられ、このため、左右のトレース圧が不均等になってい右信号のビリッキ、カートリッジの動作点の移動、針先の片減りの原因となります。このインサイド・フォースを打消すために、アームに外側に向う力を加えようとする考えから、マグネットの反発力を利用したり、図12のように細いナイロン紐とおもりを利用したインサイド・フォース・キャンセラーがアームに取付けられています。このインサイド・フォースそのものは針圧の約12%程度ですから、針圧を調整することによって解決することができますので、特にインサイド・フォース・キャンセラーを設けないピックアップも多くあります。インサイド・フォース・キャンセラーは、レコード・プレーヤーの動作中はその力が常に一定でなければなりません。このような点から、紐とおもりを利用したものより、マグネットの反発力を利用したものの方がすぐれているといえます。
図-12 インサイド・フォース・キャンセラー
【ラテラル・バランサー】
ラテラル(水平)パランスとは、アームの前後方向のバランスと直角の左右方向のバランス、すなわち、アームの針先と支持軸の中心とを結ぶ線(中心線)を中心とした左右のバランスのことです。このバランスが不平衡になるとアームが友右何れかの方向に流れ、軸受けの摩擦が増し、アームを傾けた場合に不要なインサイドフォースを生じ、トレースの性能の大きな妨げになります。このバランスをとるため、図13のようなラテラル・バランサーをアームに取付けております。
図-13 ラテラル・バランサー
フォノモーター
フォノモーターは、ターンテーブルを規定の速度で回転させる働きをするもので、Hi-Fi用フォノモーターとして要求されることは,、次のような6項目に要約されます。
1)一回転数が一定していること。回転数がしじゅう変化しては、安定した状態でレコード演奏が聞かれない。
2)電源電圧変動の影響をうけないこと。電源電圧が変動しても、回転数などが変らない。
3)振動のないこと。モーターの振動がターンテーブルに伝わると、ランブル(ゴロゴロという音)を生じ、耳ざわりになる。特にピックアップがステレオ用のときには、上下振動に対しても感度があるため一層はなはだしくなる。
4)トルクが大きいこと。トルクが大きいと、モーターにかかる負荷の大小によって回転数が変らない。また、回転を始めてから短時間で一定の速度に到達する。
5)リーケージ・フラックスの少ないこと。リーケージ・フラックスをピックアップが拾うと、演奏中に「ブーン、ブーン」というハム音(誘導ハム)を発生する原因となる。
6)長時間の連続運転に耐えること。現在レコード・プレーヤーに主として用いられている交流電源用(単相100~250V、50~60サイクル、日本の家庭では単相100V、50~60サイクル)モーターは、インダクション・モニターとシンクロナス・モーターです。インダクション・モーターは、速度が負荷によって変りますから、速度調整が必要です。シンクロナス・モーターは、電源の周波数に同期して定速度で回転しますから、電源電圧が多少変動しても速度は変りません。また。インダクション・モーターに比べで負荷の変動による回転数の変化が非常に少ないため、速度調整の必要がありません。しがって、音響製品中においても、回転数不変を要求する比較的高価な製品には、このインダクション・モーターが使用されています。シンクロナス・モーターの一種に、ヒステリシス・シンクロナス・モーターと呼ばれるモーターがあります。これは、普通のシンクロナス・モーターに比べさらに1)振動が少ない、2)起動トルクが大きい、3)雑音が少ないなど、数多くの特長をもっているため、音響製品中で特に高級製品のみに使用されています。パイオニア・レコード・プレーヤーは、セット用から単体プレーヤーにいたるまで、すべてシンクロナス・モーターかヒステリシス・シンクロナス・モーターを使用しております。電源電圧が80V~120Vの間ならば、モーターの回転数は変りません。モーターの極数には、2極、4極、8極などがありますが、Hi-Fi用としては4極以上のものが使われています。極数が増えるほどモーターの巻線も複雑になり、形が大きくなると同時に、価格も高くなってきます。
ターンテーブル
ターンテーブルはフライホイール(はずみ車)効果をあげるための大きな役割を課せられています。ターンテーブルは直径の大きいほど、また重量が重いほど慣性が大きくなり、フライホイール効果があがり、ワウ・フラッターが少なくなりますから、良い音質でレコード演奏を楽しむことができます。しかしむやみに重量を重くすることは、ターンテフブルを支えて回転しやすいようにしている軸の部分に大きな負担がかかりますので感心できません。また、ターンテーブルには鉄板をプレスしたものと、軽合金鋳物(アルミニウムなどのダイキャスト)を加工したものとがありますが、精度の高い点,電気的な問題を起さない(リーケージ・フラックスの影響をうけない)点などから、軽合金鋳物のほうがすぐれています。パイオニアのレコード・プレーヤーが、セパレート・ステレオ用から単体プレーヤごにいたるまで、すべて30cmという大直径で、しかも、アルミ・ダイキャストの精密加工されたターンテーブルを採用しているのは、このような理由によるのです。
図-14 ターンテーブルのドライブ方式 モーターの回転の伝転機構
モーターの回転をターンテーブルに伝える機構には、リム・ドライブ方式(アイドラー・ドライプ方式)とベルト・ドライブ方式があります。
【リム・ドライブ方式】
図14(イ)に示すように、一般にアイドラーによってモーターの回転をターンテーブルに伝える方式で、アイトラードライプ方式とも呼ばれています。この方式は現在最も多く採用されている方式で、リム部(外緑部)を駆動する関係上、比較的トルクの小さいモーターが使用できること、また、速度切替えが簡単で、廉価に良質のフォノモーターができるのが特長です。
【ベルト・ドライブ方式】
図14(ロ)に示すように、1本または数本のベルトによってモーターの回転をターンテーブルに伝える方式で、モニターの振動がターンテーブルに伝わりにくいこと、雑音が少ないことなどから、高級品にはこの方式が採用されています。ベルト・ドライブ方式では、ベルトの材質の選択が重要です。パイオニアのベルト・ドライブ方式のべルトには、耐熱性、耐湿性、耐油性および伸縮性のすぐれた「ポリウレタン」系の材質の均一なベルトが使用されていますので、ベルト・ドライブ方式の特長を十二分に発揮しております。なおこのポリウレタン系のベルトの寿命は半永久的です。
レコード・プレーヤーの付属装置
【オートリターン】
レコードの片面の演奏が終ったとき、自動的にピックアップ・アームが上昇し、アームレストにもどる装置です。一般に演奏途中でもカットできるようにカット・ボタン(またはレバー)がついています。パイオニア・セパレート・ステレオ、ハイコンパクト・ステレオには、全製品この装置が使われています。
【オートプレーヤー】
オートリターン方式では、アームレストにもどったピックアップを次に演奏するときには、手でもっていかなくてはなりませんが、オートプレーヤーは全部自動でおこなうようになっています。すなわち、ターンテーブル上にレコードをのせてスタート・ボタンを押すと、ピックアップは自動的にレコードの大きさを選択して、針先をレコードの溝へおろし演奏を開始します。演奏終了後、また途中で演奏を中止したいときはオートリタンします。オート・プレーヤーや後述のオート・チェンジャーは、レコード・プレーヤーを操作する上には非常に便利ですが、ハイファイ用レコード・プレーヤーにこれらの機能をもたせることは、これらの機構の関係上いろいろと障害があるため、ハイファイ用のオート・プレーヤーやオート・チェンジャーはこれまで市販されておりませんでした。パイオニア・フルオート・プレーヤー”PL-A25”は、ハイファイ用としてパイオニアが開発した特殊な機構を使ったオート・プレーヤーです。なお,パイオニア・セパレート・ステレオには、このフルオート・プレーヤーを採用した機種もあります。
【オートチェンジャー】
オート・プレーヤーは、1枚のレコードの片面だけを自動演奏しますが,オートチェンヂャーは、数枚以上のレコードの連続演奏を可能にしたものです。これらの中には、レコードの両面が演奏できるものもあります。
【アームエレベーション】
針先をレコードの音溝上に下降させるどきに、オイルの粘性、スプリングの張力などを利用してアームを除々に下降させ、アームを上昇させるときは、レバーを利用して押し上げる装置で、直接手で操作する場合に比べてアームの上昇下降がスムーズにかつ振動なくおこなうことができ針先やレコードを傷める心配がなく、始めての人にも扱いやすいという利点があります。
レコードプレーヤーの取扱い上の注意
(1) 針交換の方法
MM型カートリッジの場合、針交換はプラグイン式になっていますから、針交換の際は、図15に示すようにノブの部分を矢印の方向(斜め下の方向)に軽く引き抜きます。差し込む際は、カートリッジ本体の受け穴に交換針のホルダーを軽ぐあてがい、矢印の方向と逆に軽く挿入します。このとき左右、上下方向に無理な力が加わりますと、ノブからホルダーが取れてしまいますので庄意してください。
(2) カートリッジの交換方法
カートリッジの交換は、針(1)の要領でまず抜いでから、次の順序でおこないます。
i カートリッジ本体を止めている2本のビスをはずします。
ii PUリード線をカートリッジ本体からはずす、このとき、リード線は手で引っぱらないで、図16のようにドライバーまたはピンセットでリード線の各チップを一つずつはずします。
iii カートリッジ本体を完全にはずしたら、今度は次の順序で取り付けをおこないます。カートリッジ本体の後側に記してある極性表示にしたがって、各リード線のチップをピンセットにはさんで端子に差し込みます。なお、リード線と端子との接続は図17のようにします。
(3) その他の注意点
i レコード・プレーヤーは,前後,左右の傾きがないごようにおく。
ii 回転中のターンテーブルを手でおさえない。
iii レコードに針をおろす場合、およびレコードから針を上げる場合は静かにおこなう。
iv 使用後は針先をやわらかい刷毛でブラッシングして針先のよごれを取っておく。
v 針先に指をふれたり、また強いショックを与えたりしない。
vi 適時針圧を測定し、適正針圧かどうかをチェックする。
vii 軽針圧のカートリッジを使用しているので,レコード演奏中はプレーヤーに振動を与えないように注意する。
viii モーターの注油は3か月に1回位、ただし夏季は1か月に1度位おこなう。注油量は1~2滴程度、その他、アイドラー軸には3か月に1回で1~2滴程度、ターンテーブル軸には半年に1回で5~6滴程度注油をおこなう。注油の際は、アイドラー、ベルト、キャプスタンなどに油が付着しないように注意する。
参 考
- ムーピング・マグネット型は略してMM型、ムービング・コイル型は略してMC型と呼んでいます。
- 針の寿命のためにも、レコードを傷めないために、軽針圧で使えることは必要です。しかし、針圧はむやみに軽くすればよいというものではなく、ステレオ用カートリッジの最適針圧としては、2~4グラム程度のものが多いようです。
- 針先の動きのやわらかい(コンプライアンスの高い)ものほど針先が音溝の変化によく追随するので、広い音域を再生すると同時に、針圧を軽くすることができます。
- トラッキング・エラー、アームの長さが有限長であるため,針先はレコードの外周から内周に向って円孤状に移動します。このため、針先の振れる方向はレコードの半径方向と一致しなくなります。これを「トラッキング・エラー」と呼び、歪の原因となります。通常トラッキング・エラーは、図に示すようにレコードの最内周音溝で最小(ゼロ)になるようにし、外側に向って最初はエラー角は負に、そして再びゼロの点があって、レコード最外周では正になるようにします。
- オーバー・バングトラッキング・エラーを最小にするために、アームにオフセット・アングルをつけるとともに、針先の位置をレコードの中心より多少先に出るようにしてあります。この中心からの針先のズレを「オーバー・ハング」といい、歪みの原因になります。