漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「鼎テイ」<かなえ> と「貞テイ」「偵テイ」「禎テイ」「幀テイ」

2023年06月30日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 テイ・かなえ  鼎部


大克鼎(上海博物館蔵)内側に銘文が鋳込まれ、足に盛り出た装飾部がある。(「細講中国歴史15」より)
解字 食べ物を煮炊きする三本足の円形の器具。もと土器だったが宗廟において祖先神を祀る際の礼器として青銅製のものが作られた。甲骨・金文は青銅製をかたどったもので、上の猫の耳のようなものは鼎を移動させるとき、鉤などを引っ掛ける耳で、下部は足を二本描く。[甲骨文字辞典]によると、足の横に描かれている二本の短線は、おそらく扁足鼎と呼ばれる足部分の装飾に対応する(大克鼎にもある)、としている。篆文から上部が目となり下部が二本のタテ線の両側から手足が伸びたような形になり、現代字の鼎となった。
 宗廟において礼器の地位に高められた鼎は、一族(宗族)の者が手柄を立てたとき、その内容を鼎に記して残したので金文が発達した。また、精巧に作られた青銅器の鼎は国家の君主や大臣などの権力の象徴として用いられた。
意味 (1)かなえ(鼎)。「鼎爼テイソ」(鼎とまないた)「鼎沸テイフツ」(鼎の沸くが如し。わきかえる) (2)王位。また王を支える大臣。「鼎祚テイソ」(帝位)「鼎臣テイシン」(三公の位にある臣。大臣) (3)(三本足から)三つのものが並び立つ。「鼎立テイリツ」「鼎談テイダン」(三人が向かい合って話す)


   テイ <占って神意をきく>
 テイ・ジョウ・ただしい  貝部

解字 甲骨文は鼎テイ(かなえ)の省略形。テイという発音を借りて(仮借カシャ)、亀の腹甲に刻んだ占いの内容を示して、その結果を問いかける(=神意をきく)意味で用いられ、文章の前に置かれ「とう(問う)」と訳される。金文は「ト(占う)+鼎テイ(テイ)」の形声で、テイという発音で問う・聞く意。これまで、鼎(かなえ)を用いて占いが行われたとする説があったが鼎テイは発音だけを表す。字形は篆文から鼎⇒貝に変化し、現代字の貞となった。貞は占いの内容を提示して問う意味から、①占って神意をきく。②神意をきいた結果が正しい。③「まこと」などの意味へと拡がった。
意味 (1)問う・きく。占って神意をきく。「貞吉テイキチ」(貞して吉なり) (2)[占った結果が]ただしい(貞しい)。心が正しい。まっすぐである。「貞士テイシ」(正義を守る人)「貞潔テイケツ」「貞固テイゴ」(固く正道をまもる) (3)女子がみさおを守る。「貞淑テイシュク」(女性がしっかりしてしとやか)「貞女テイジョ」(堅く行儀を守る女)「貞操テイソウ」(貞も操も、みさおの意。みさおとは真青みさおの義で、松などの常葉の色に例えて云う(大言海) (4)「貞観ジョウガン」とは、清和・陽成天皇朝の年号(859~877)

イメージ 
 占うことから「神意をうかがう」(貞・偵・遉・禎)
 「形声字」(幀・赬)
音の変化   テイ:貞・偵・遉・禎・幀・赬

神意をうかがう
 テイ・うかがう  イ部
解字 「イ(人)+貞(神意をうかがう)」の会意形声。神意をうかがう人の意。
意味 (1)うかがう(偵う)。ようすを探る。「偵察テイサツ」「内偵ナイテイ」 (2)ようすを探る者。「探偵タンテイ」「密偵ミッテイ
 テイ・チョウ・さすが  辶部
解字 「辶(ゆく)+貞(神意をうかがう)」の会意形声。神意をうかがいに行く意で、古くは偵と同字とされた字。日本では「さすが」「さすがに」の意味で用いられる。
意味 (1)うかがう(遉う)。さぐる。ようすを見る。 (2)[国]さすが(遉)。「彼の働きは遉(さすが)だ」。さすがに(遉に)。「人々は、遉(さすが)に振向きもしなかつた」
 テイ・さいわい  ネ部
解字 「ネ(示:祭壇・神)+貞(神意をうかがう)」の会意形声。神のお告げが神意にかなうこと。めでたいしるしの意になる。
意味 さいわい(禎)。めでたいしるし。「禎瑞テイズイ」(めでたいしるし)「禎祥テイショウ」(めでたいしるし)

形声字
 テイ・トウ  巾部
解字 「巾(ぬの)+貞(テイ)」の形声。北宋の字書の「類篇ルイヘン」は「張りたる画繒えぎぬ也(なり)」とし、枠などに画繒を張り付けたものの意。のち、掛軸風の装幀がされたため、掛物を数える助数詞ともなる。
意味 (1)枠に張った絵ぎぬ。 (2)絵ぎぬを枠に張る。掛け物に仕立てる。「装幀ソウテイ」(=装丁)「幀首テイシュ」(軸物の上部)(3)掛物を数える助数詞。「一幀イットウ」(=一幅)
 テイ・あか  赤部
解字 「赤(あか)+貞(テイ)」の形声。テイという発音の赤い色をいう。中国最古の字書である「爾雅ジガ」は、「再び染める、之を赬と謂う」とし二度染めた赤色とする。
意味 あか(赬)。色を重ねた赤。二度染めた赤色。「赬尾テイビ」(魚の赤い尾。魚は泳ぎ疲れると尾が赤くなるといい、転じて、君子が治政に苦労することをいう)「赬楣テイビ」(赤く塗った楣ひさし
<紫色は常用漢字>

≪参考≫ 鼎が貝に変化した字
 イン・かず  口部           

解字 食物を煮炊きする器である鼎(かなえ)の上に口(くち)の円いことを示す〇形を加え、まるい鼎であることを示した会意。まるい意で使われた。また、鼎の数をかぞえるのに用いたことから、員数(人や物の数)の意となった。篆文以降、鼎の部分が貝に変化した。また、上の〇形は横長の口になった。員を音符に含む字は、「かなえ」「まるい」イメージを持つ。
意味 (1)かず(員)。人や物のかず。「員数インズウ」「員外インガイ」(2)まるい(=円)。「方員ホウエン」(四角と、まる)(3)一定の枠のなかにはいる人。「職員ショクイン」「定員テイイン」「冗員ジョウイン」(余った人員)(3)はば。まわり。周囲。「幅員フクイン
音符「員イン」へ

 ソク・のり・のっとる  刂部

解字 金文は「鼎(かなえ)+刂(刀)」の会意。鼎の側面に刀で刻まれた文字のこと。重要な契約は鼎に文字で残したことから、のり(一定のきまり)の意味を表わす[字統]。実際に文字があるのは鼎の内側の側面である。篆文から鼎が貝に変化した。
意味 (1)のり(則)。きまり。「規則キソク」「法則ホウソク」(2)のっとる(則る)。手本とする。「則天去私ソクテンキョシ」(私心を捨てて自然の道理に従って生きる)(3)すなわち(則ち)。接続の助字。
音符「則ソク」へ

 ゾク  貝部

解字 金文は左から、「逆向きの刀+鼎(かなえ)+戈(ほこ)」の形。「刀+鼎(かなえ)」は鼎に刀で刻した銘文のことで則ソク(のり・規範)を表す。篆文は鼎⇒貝になった、「則(貝+刀)+戈(ほこ)」の会意形声。世の中の規範(則)を戈(ほこ)で打ち破ること。世の中の秩序を武力でそこなう悪者の意。そこなう・秩序に刃向かう悪者・どろぼう、の意となる。現代字は、篆文の刀⇒十に変化した賊になった。篆文から形が大きく変わったので戎と結びつけて覚えると便利。ただし、発音は則ソクが濁音になったゾクである。
意味 (1)そこなう。傷つける。「賊害ゾクガイ」(そこなう)(2)ぞく(賊)。国家や君主にそむく。「国賊コクゾク」「賊臣ゾクシン」(3)ぬすむ。どろぼう。「山賊サンゾク」「盗賊トウゾク」 
「賊ゾク」へ

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音符「尼ニ」 <二人の人がもたれあう> と 「泥デイ」「怩ジ」「昵ジツ」

2023年06月28日 | 漢字の音符
 ニ・ジ・ジツ・あま  尸部

解字 篆文は上の人と下の人がもたれあっている形で二人が相親しむさまを示す。隷書(漢代)は上の人が腰掛けているような形、下の人はヒになった。現代字は、上が尸(ひと)下がヒ(ひと)の尼になった。近づき親しむ意だが、のち、梵語を漢字音訳した比丘尼bhikṣuṇīビクニ(出家して戒をうけた尼僧)の略称から尼(あま)の意に用いる。
意味 (1)ちかづく。ちかづきしたしむ。 (2)あま(尼)。女の僧。出家した女性。「比丘尼ビクニ」(①出家して戒をうけた女子)の略称。②鎌倉・室町以降、尼の姿をして遊行した芸人)「尼僧ニソウ」(出家した女僧侶)「尼寺あまでら」「尼削(あまそ)ぎ」(女性の髪を尼のように肩のあたりで切り揃えること) (3)地名。「尼山ジサン・ニサン=尼丘」(山東省曲阜キョクフ市にある孔子の出身地)「尼父ジホ」(孔子のおくり名)

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 梵語の音訳から「あま」(尼)
 二人が相親しむ形から「ちかづく」(昵)
 二人が相親しむ形から「くっつく」(泥)
 「形声字」(怩)
音の変化  ニ:尼  ジ:怩  ジツ:昵  デイ:泥

ちかづく
 ジツ・ちかづく・なじむ  日部
解字 「日(一日中)+尼(ちかづく)」の会意形声。一日中お互い近づきしたしむこと。
意味 ちかづく(昵づく)。なじむ(昵む)。なれしたしむ。「昵懇ジッコン」(親しくつきあう)「昵近ジッキン」(親しく近づく)

くっつく
 デイ・どろ  氵部
解字 「氵(水)+尼(くっつく)」 の会意。水分を含んでねちねちとするもの。異体字であるデイ(水分を含んでねちねちする土)の略体といえる。
意味 (1)どろ(泥)。水がまじってやわらくなった土。「泥水デイスイ」「泥沼どろぬま」「汚泥オデイ」(きたない泥)「泥酔デイスイ」(酔って泥にはまったようになる) (2)どろ状のもの。「金泥キンデイ」「印泥インデイ」(印鑑を押すとき用いる朱色の泥) (3)くっついて動きがとれない。こだわる。なずむ(泥む)。「拘泥コウデイ」(こだわること)「暮くれなずむ」(日が暮れそうで暮れない) (4)[国]「泥棒どろぼう」(ぬすびと。盗みをする)「泥縄どろなわ」(泥棒が入ってから縄をなう)

形声字
 ジ・ニ・はじる  忄部
解字 「忄(心)+尼(ジ)」の形声。ジは耳(みみ。やわらかい耳たぶ)に通じ、やわらかい心の意。感受性のよいやわらかい心で、はにかむ・はじらうこと。恥(やわらかい心⇒はじる)と同じ構造になる。
意味 はじる(怩じる)。はじらう。「忸怩ジクジ」(恥じ入ること。忸も怩も、はじる意)「怩恨ジクコン」(はじて恨む)
<紫色は常用漢字>

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音符「彖タン」<ブタが囲いの周辺を走る> と「縁エン」「掾エン」「篆テン」

2023年06月26日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 タン  彑部けいがしら 
      
解字 豕シ(ぶた)の上に横向きのあしを付けた象形。豚が前方でなく横に走る形で、放し飼いされている豚が、囲いの柵にそって走りまわる意から、囲いの内側の周辺を意味する。
現代字は、「彑(けいがしら)+豕(上部は重複する)」に変化した。音符となって「へり・ふち」「わくにおさまる」のイメージがある。新字体では、上部の彑がヨの下が出た形の⇒縁の右辺に変化する。
意味 はしる。めぐる。

イメージ  
 「へり・ふち」
(縁・椽・掾・喙)
 「わくにおさまる」(篆・蠡)
音の変化  エン:縁・掾  カイ:喙  テン:篆・椽  レイ:蠡

へり・ふち
[緣] エン・ふち  糸部
解字 旧字は緣で「糸(ぬの)+彖(へり)」の会意形声。布のへり・はしの意。現代字は右辺が変化した縁。意味の(3)~(5)は仏教用語のため本来の意味から変化している。 
意味 (1)ふち(縁)。へり(縁)。「崖っ縁がけっぷち」「額縁ガクぶち」 (2)[国]座敷の外側の板敷。えん(縁)。「縁側エンガワ」 (3)よる(縁る)。ちなむ。 (4)えにし(縁)。ゆかり(縁)。かかわりあい。「所縁ショエン・ゆかり)。「縁故エンコ」(①血縁・姻戚。②故(ゆえ)ある縁。つて)「由縁ユエン」(事の由来。ゆかり) (5)めぐりあわせ。「因縁インネン」 
 テン・たるき  木部
解字 「木(まるた)+彖(へり)」の会意形声。屋根のへりとなる軒(のき)に突き出ている木。屋根の棟木(むなぎ)から軒まで屋根板をささえるために架ける垂木をいう。垂木は外からみると屋根のへりを取り巻くようにみえる。また、大きな建物では軒だけ別の垂木を架けることがあった。椽の垂木は丸い木を用いたものとされた。※四角なたるきを「桷カク」という。

軒の椽(たるき)(中国の検索サイトから。原サイトなし)
意味 (1)たるき(椽)。屋根の棟から軒にわたす丸太の材。「屋椽オクテン」(屋根のたるき)「椽竹テンチク」(竹のたるき) 「采椽サイテン=採椽」(山から切り出したままの木を用いた垂木。また、飾らない質素な家の例え)「椽大テンダイの筆」(軒の丸いたるきのように太く立派な筆。立派な文章)
 エン・じょう  扌部
解字 「扌(て)+彖(へり)」の会意形声。中心でなく組織のへり(周辺)にいて手を動かして仕事をする小役人。
意味 (1)下役。小役人。「掾史エンシ」(下級の役人=掾吏エンリ)「陳掾チンテン」(小役人が陳情し走り回る) (2)たすける。 (3)[国]じょう(掾)。律令制の国司の三等官。
 カイ・くちばし  口部
解字 「口(くち)+彖(へり)」の会意。口の周りのへり。人では唇(くちびる)だが、特に先がとがる鳥のくちばしをいう。また、獣のくちにも用いる。
意味 くちばし(喙)。鳥のくちばし。けものの口。「鳥喙チョウカイ」(鳥のくちばし)「烏喙ウカイ」(カラスのくちばし。欲の深い人相のたとえ)「長頸烏喙チョウケイウカイ」(首が長くカラスのように口がとがった人相のこと。残忍・強欲で疑い深い人)「喙長カイチョウ」(くちばしが長い。口八丁)「喙息カイソク」(口で息をする)「跂行喙息キコウカイソク」(跂行は虫がはう、喙息は鳥が喙(くちばし)で息をする。動物一般・いきものをいう)「容喙ヨウカイ」(くちばしを容(い)れる。横から口を出す)「容喙ヨウカイを許す」(口出しをさせてしまう)

わくにおさまる
 テン  竹部
解字 「竹(竹簡)+彖(わくにおさまる)」の会意形声。竹簡に書かれる文字で、枠に収まるように書かれた文字の種類。
意味 (1)古代漢字の書体の名。長方形の枠におさまるよう書かれた書体。印章に多く使われる。「篆書テンショ」(漢字の書体の一つ、周代の大篆と秦代の小篆がある)「篆刻テンコク」(石や木などに文字を刻むこと。多く篆書体を使ったことから)「篆文テンブン」(篆書体の文字)
 レイ・ライ・リ・にな・ひさご  虫部
解字 「虫虫(むし)+彖(わくにおさまる)」の会意。①木の芯をくう虫で、木くい虫をいう[説文解字]。②虫を貝の意味にとり、一つの貝殻のわくにおさまっている虫の巻貝(ニナ)をいう。③転じて、中が空洞で外側だけがある瓢(ひさご)をいう。
意味 (1)木くい虫。むしばむ。虫が木の芯をくう。 (2)にな(蠡)。巻貝の一種。蜷ケン、螺、とも書く。「蠡殻レイカク」(貝殻) (3)ひさご(蠡)。ひょうたんの水くみ。「蠡酌レイシャク」(ひさごで水をくむ)「以蠡測海イレイカイソク」(蠡ひさごを以(も)って海を測る。ひょうたんで海の水をはかる例え。狭い見識で大事を測る=蠡測レイソク) (4)「蠡蠡レイレイ」とは、つらなるさま。
<紫色は常用漢字>

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音符「留リュウ」<とどまる・たまる>と「瘤リュウ」「柳リュウ」「聊リョウ」「瑠ル」

2023年06月24日 | 漢字の音符
<畱> リュウ・ル・とめる・とまる  田部

解字 篆文は、「丣リュウ+田」の会意。丣リュウは金文で分かるように川の流れの両わきに溜り水ができている形。畱リュウは、これに田を加え、水が田地にとどまること。とどまる。とまる意となる。楷書から、畱⇒留に変化した。
意味 (1)とまる(留まる)。とどまる(留まる)。「留鳥リュウチョウ」「居留キョリュウ」「留守ルス」 (2)とめる(留める)。とどめる(留める)。「留置リュウチ」「留意リュウイ

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 水が田地にたまる意から「とどまる・たまる」(留・溜・瘤・榴・聊)
「形声字」(瑠・柳)
音の変化  リュウ:留・溜・瘤・榴・柳  リョウ:聊  ル:瑠

とどまる・とまる
 リュウ・たまる・ためる・ため  氵部
解字 「氵(水)+留(とどまる)」の会意形声。水がとどまってたまること。水以外にもいう。
意味 たまる(溜る)。ためる(溜める)。「溜め池」「溜息ためいき」「溜飲リュウイン」(胃の具合が悪く、食べた物が溜ること)「溜飲が下がる」(つかえがとれてすっきりする)
 リュウ・こぶ  疒部
解字 「疒(やまい)+留(たまる)」の会意形声。皮膚に盛り上がってできたしこり。
意味 (1)こぶ(瘤)。はれもの。「動脈瘤ドウミャクリュウ」(動脈にできるこぶ)「瘤(こぶ)取り爺さん」(日本の民話) (2)じゃまなもの。「目の上の瘤こぶ
 リュウ・(ザクロ)  木部
解字 「木(き)+留(=瘤。こぶ)」の形声。古木になると幹に瘤のようなふくらみが多く出る木。

ザクロ古木の幹のふくらみ(ブログ「里山悠々録」より)
意味 「石榴ざくろ・セキリュウ」に使われる字。石榴とは、漢名の安石榴アンセキリュウの略で、安石国(安国はイラク一帯、石国はウズベキスタン)方面から渡ってきた幹に瘤(こぶ)のようなふくらみがある木の意。ザクロ科の落葉高木。ペルシャ・インド原産。果実は大きな球形で、熟すると裂けて多数の赤紫色の種子を一部露出する。「榴華リュウカ」(ザクロの華)「榴散弾リュウサンダン」(弾の中にザクロの実のようにたくさんの散弾を詰めた砲弾)
 リョウ・いささか  耳部
解字 「耳(みみ)+卯(留の略体・とどまる)」の会意形声。聞いたことが耳にとどまって、奥へすこししか伝わらないこと。すこし・いささかの意となる。
意味 (1)いささか(聊か)。すこし。「聊表リョウビョウ」(表にすこしあらわす)「聊表寸心リョウビョウスンシン」(一寸の気持ちをすこし表す。心ばかりの祝い) (2)「無聊ブリョウ」とは、(いささかも無しの意で、たいくつで、つまらないこと) (3)「聊斎志異リョウサイシイ」とは、中国清代の怪異短編小説集。聊斎とは作者の号で、題名は「聊斎が怪異を記す」の意。

形声字
 ル  玉部
解字 「王(玉:宝石)+留(ル)」の形声。ルという名の宝石で瑠璃ルリを表わす言葉に使う。
意味 「瑠璃ルリ」とは、梵語の「vaiduryaベイルリ(吠瑠璃)」の音訳語の略で、深い青色の宝石をいう。琉璃ルリとも書く。仏教の七宝のひとつ。「瑠璃色ルリいろ」「浄瑠璃ジョウルリ」(①清浄透明の瑠璃。②三味線を伴奏とする語り物の一つ。室町末期に始まり、江戸時代に大いに流行した)
 リュウ・やなぎ  木部
解字 篆文は桺リュウで「木(き)+丣(リュウ)」の形声。李時珍の[本草綱目]は「柳枝は弱くして垂れ流れる。故に之を柳と謂う」とし、丣リュウを流リュウに通じるとしている。現在の字は、丣⇒卯に変化した柳となった。

水郷・周庄の水路の柳(上海近郷・筆者撮影)
意味 (1)やなぎ(柳)。しだれやなぎ。「川柳かわやなぎ・センリュウ」(①川辺に生える柳。②俳句と同じ17字の短詩。内容は機知・風刺が特色)「柳に風」(逆らわずに受け流すこと)「楊柳ヨウリュウ」(やなぎの総称。楊は枝が垂れないヤナギ、柳は枝のたれるヤナギ)(2)柳の枝や葉・種子の綿毛など。「柳腰やなぎごし」(枝が細くしなやかな例え)「柳絮リュウジョ」(柳の種子の綿毛が飛び散る。春の季語)「柳葉魚シシャモ」「柳営リュウエイ」(将軍の陣営。西柳という地に陣した名将にちなむ) (3)地名「柳川やながわ」「柳町やなぎまち」 (4)姓のひとつ。「柳やなぎ」「柳田やなぎだ」「柳沢やなぎさわ
<紫色は常用漢字>

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音符 「易エキ」 <かわる> と 「賜シ」「錫シャク」「剔テキ」

2023年06月21日 | 漢字の音符
 セキ・鶍いすか、を追加しました。 
 エキ・イ・かえる・かわる・やさしい・やすい  日部

解字 甲骨文は雲間の太陽から光(彡)が差す形。曲線が雲、半円が太陽、彡が日光で、穏やかな天候、および、曇りの意の天候用語[甲骨文字小事典]。金文第一字もほぼ同じ形。第二字は雲のかたちがS状に湾曲し太陽に点が描かれた。篆文から日(太陽)が上に独立した易の形となり現代にいたる。意味は雲間からでる太陽の光が変化すること。かわる・かえる意となる。また、雲の状況から天気をうらなうことから、うらないの意となった。やさしい意は、仮借カシャ(当て字)の用法。
意味 (1)かえる(易える)。かわる(易わる)。あらためる。とりかえる。「改易カイエキ」(官職をやめさせて他の人に替える。)「貿易ボウエキ」(外国と品物をとりかえて通貨で決済する取引)「易姓エキセイ」(統治者の姓が易(かわ)ること。王朝の交代。)「易姓革命」(革命とは天命(天の命令)が革(あらた)まること。これに易姓がつき、天命で王朝の姓が易(かわ)ること。王朝の交代に対する中国の伝統的思想)(2)占い。筮竹ゼイチクなどによる占い。「易者エキシャ」「易占エキセン」(筮竹ゼイチクなどを使う易の占い) (3)やさしい(易しい)。やすい(易い)。「安易アンイ」「容易ヨウイ

イメージ 
 「かわる」
(易・蜴・錫・鯣・裼・剔・鶍)
 「同体異字」(賜)
音の変化  エキ:易・蜴・鯣  シ:賜  シャク:錫  セキ:裼  テキ:剔  いすか:鶍

かわる・かえる
 エキ  虫部
解字 「虫(小動物)+易(かえる)」の会意形声。体の色を変える能力を持っているトカゲ。
意味 「蜥蜴とかげ・セキエキ」を表す字。身体の色を変えたり、尻尾を切り離して「虫+析(別々にはなす)」逃げるトカゲ。
 シャク・セキ・すず  金部
解字 「金(金属)+易(かわる)」の会意形声。適当な硬さがあり、加工(かわる)も容易な金属。
意味 Ⅰ. すず(錫)。銀白色で光沢をもち、展性に富む金属。鉛に似ているがやや硬い。「錫箔すずはく」(錫を紙状に薄くのばしたもの)「鉛錫エンシャク」(鉛と錫) Ⅱ. シャク(錫)。「錫杖シャクジョウ」(僧侶・修験者の杖。名称の由来は、頭部を銅や鉄で作り数個の鐶を掛け、その音がシャク・シャクと鳴るからとされる)
 エキ・するめ  魚部
解字 「魚(さかな)+易(かわる)」の会意形声。日本では、イカを切りひろげて干したスルメをいう。イカからスルメにかわった魚(海にすむ生き物)の意。中国では古書に魚の一種とある字。
意味 [国]するめ(鯣)。イカの胴を縦に切り内臓をとり去って天日に干したもの。「鯣烏賊するめいか」(スルメや刺身・塩辛にするイカ)
 セキ・テイ・はだぬぐ  衤部
解字 「衤(ころも)+易(かえる)」の会意形声。上衣を易えるため肌(はだ)ぬぐこと。はだぬぐ・かた(肩)ぬぐ意。発音はエキ⇒セキに変化。また、テイの発音でむつき(産着)の意味になる。
意味 (1)はだぬぐ(裼ぐ)。かたぬぐ。上着をぬいで肩をだす。「袒裼タンセキ」(袒も裼も、はだぬぐ意) (2)ひとえの皮の上衣。「裼衣セキイ」(皮の上衣) (3)むつき。ねまき。夜着。「之(これ)に裼衣テイイを衣(き)せしむ(「詩経・小雅」)
 テキ・テイ・えぐる  刂部
解字 「刂(かたな)+易(かえる)」の会意形声。[説文解字]は「骨を解(わけ)る也(なり)」とする。本義は刀で骨と肉を解(わけ)て、元の骨付き肉を易(かえる)こと。意味は、骨と肉を切りわけることで、そぐ意だが、骨の形によっては「えぐりとる」作業があり、この意味が主に用いられる。
意味 (1)えぐる(剔る)。えぐりとる。くじる。「剔出テキシュツ」(えぐり出す)「剔抉テッケツ」(えぐりだす。剔も抉も、えぐる意)「刳剔コテキ」(えぐりだす。刳も剔も、えぐる意) (2)そぐ。そる。「剔去テッキョ」(そいで取り除く)
<国字> いすか  鳥部

イスカ(鶍)(ウィキペディア「イスカ」より)
解字 「鳥(とり)+易(かわる)」の会意。嘴(くちばし)が上下で方向がかわっている鳥。
意味 (1)鶍(いすか)。アトリ科の鳥。上下のくちばしが湾曲してくいちがっている。スズメよりやや大きく、両くちばしは褐色で湾曲交差し、松など針葉樹の実をついばむのに適するという。渡り鳥で、日本には秋の末、北部地方に来る。(ウィキペディアより) (2)物事がくいちがって、思いどおりにならないたとえ。「鶍いすかの嘴(はし)の食い違い」

同体異字
 シ・たまう・たまわる・たまもの  貝部            
 
解字 金文第一字は、酒器から杯に酒を注ぐ形で、それぞれの下に手が描かれている。目上の者が酒をたまう意。第二字は、酒器だけを描いたもので、たまう意。酒器の取っ手周辺と中身の酒をしめす彡が第三字で、「酒器の変化した形」になり、これに貝(財貨)がついて、目上から財貨をたまう意となった。篆文は金文第三字の酒器が変化した形⇒易となり、「貝(財貨)+易(たまう)」の賜となった。賜とは、目上より下の者に財貨等を与えること。目下の者は、あたえられる(たまわる)意となる。この字の易は、酒器の部分象形であり、交易の易とは異なる字である。
意味 (1)たまう(賜う)。目上の人が目下の者へ物を与える。「下賜カシ」(高貴の人が下の者に物を与えること)「賜杯シハイ」(臣下に杯をあたえること。天皇・皇族から競技の勝者に贈られる優勝杯) (2)たまわる(賜る)。目上の人から物をいただく。「恩賜オンシ」(恩も賜も、たまわる意。天皇や主君から物をたまわること) (3)たまもの(賜)。いただきもの。「賜物たまもの=賜」(たまわった物。他者から受けた恩恵の結果)
<紫色は常用漢字>

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音符「疑ギ」<振り向いて立ち止まる> と「擬ギ」「凝ギョウ」

2023年06月19日 | 漢字の音符
 増補改訂しました。
 ギ・うたがう  疋部ひき

解字 甲骨文は、人が後ろを向いて立ち止まり、杖を立てて進退を定めかねている形で、心が迷いうたがっているさまを示す[字統]。金文で足の形や彳(路上)などが付き、篆文では、向きを変えたヒ・矢・子・止(足のかたち)からなる字となり、現代字の疑となったが、初形とはかなり変化している。意味は、うたがう意となる。字形の変化がはげしいので語呂合わせで覚えると便利。
覚え方 
①ひやま(ヒ矢マ)さん、ふと(フト)ひと()をった。
②ひやま(ヒ矢マ)ひき()で、
意味 うたがう(疑う)。うたがい(疑い)。あやしい。「疑念ギネン」「疑惑ギワク」「容疑ヨウギ」(疑いを容れる。罪を犯したのではないかという疑い)

イメージ 
 「うたがう」
(疑・擬・癡)
  甲骨文の形である後ろを向いて「立ち止まる」(凝・礙)
 「形声字」(嶷)
音の変化  ギ:疑・擬・嶷  ギョウ:凝  チ:癡  ガイ:礙

うたがう
 ギ・なぞらえる  扌部 
解字 「扌(手)+疑(うたがい)」の会意形声。本物かどうか疑うほど似ている物を手でつくること。
意味 なぞらえる(擬える)。まねる。似せる。「擬音ギオン」(ある音に似せて作る音)「擬似ギジ」(よく似ていて区別がつきにくい。擬も似も、にる意)「模擬試験モギシケン」(本物を真似た試験) まがい(擬)。もどき(擬)。「擬(まが)い物」(にせもの)「雁擬(がんもど)き」(油揚げの一種。雁の肉に味を似せたものの意)
[痴の旧字] チ・おろか  疒部
解字 「疒(やまい)+疑(うたがう)」の会意。疑い深くなることが病的になること、おろか・くるう意となる。なお、は仏教用語として悟りをさまたげる三つの煩悩である「三毒」(貪ドン・よくぶかい・瞋シン・いかる・癡チ・おろか)の一つとされ、 は妄想 、混乱、鈍さを指す。発音のチを借りた痴は癡の俗字であったが、常用漢字として用いられるようになった。は現在でも仏教用語として用いられる。
意味 [仏教]悟りをさまたげる三つの煩悩である三毒(貪・瞋・癡)のひとつ。妄想 、混乱、鈍さを指す。「愚グチ」(理非の区別のつかないおろかさ=愚痴)「我ガチ」(我執ガシツの心。現在の自分の枠から外れることを恐れること)

立ち止まる
 ギョウ・こる・こらす  冫部
解字 「冫(こおり)+疑(立ち止まる)」の会意形声。じっと立ち止まって動かないさまを、氷のかたまるさまに移した字。かたまる意と、人がじっと動かない意とある。
意味 (1)こる(凝る)。かたまる。「凝固ギョウコ」「凝縮ギョウシュク」 (2)こらす(凝らす)。気持ちを集中する。「凝視ギョウシ」 (3)とどこおる。動かなくなる。「凝然ギョウゼン」(じっとして動かない)「凝滞ギョウタイ」(滞って動かない)
[碍の旧字] ガイ・ゲ・さまたげる  石部
解字 「石(いし)+疑(たちどまる)」の会意。大きな石にさえぎられて立ち止まる意。さまたげる・さまたげの意。この字は疑を得に置きかえた碍ガイ・ゲが常用漢字になっている。しかし、仏教用語では旧字が用いられることがある。
意味 (1)[仏教]さまたげる。「無礙ムゲ」(さまたげがないこと。とらわれがなく自由自在なこと=無碍ムゲ)「融通無礙ユウズウムゲ」(一定の考えにとらわれず、どんな事でも対応できること=融通無碍)

形声字
 ギ・ギョク・たかい・さとい  山部
解字 「山(やま)+疑(ギ)」の形声。ギは巍(たかい)に通じ、山が高い意。また、山が高く、ぬきんでる意から、さとい意となる。
意味 (1)地名。「九嶷キュウギ」(湖南省にある山の名。帝舜を葬った所と伝える) (2)たかい(嶷い)「嶷立ギョクリツ」(①たかくそびえたつ。②ぬきんでる)「嶷然ギョクゼン」(①高くそびえてるさま。②ぬきんでるさま) (3)さとい(嶷い)。かしこい。「英嶷エイギョク
<紫色は常用漢字>

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音符「壬ジン」<工具の一種>と「任ニン」「妊ニン」「賃チン」

2023年06月17日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 ジン・ニン・みずのえ  士部さむらい     

解字 甲骨文字は工具のノミを象った工の省略形と同形。甲骨文字では仮借カシャ(当て字)で十干としてのみ用いられている[甲骨文字辞典]。字形は金文で縦線に丸印がつき、この丸が篆文で長い横線になり、現代字は上部が斜線になった。意味は、十干(甲コウ・乙オツ・丙ヘイ・丁テイ・戊・己・庚コウ・辛シン・壬ジン・癸)の第九番目の壬(みずのえ)の意で使われる。イメージは壬が工具の省略形と同形であることから「工具の一種」。具体的に何を表すかは不明。
意味 みずのえ(壬)。十干の第九。「壬申ジンシン」(干支のひとつ。みずのえさる。)「壬申の乱」(672年、壬申の年に起こった戦乱)「壬生みぶ」(京都の地名)

十干の読み方(オンライン無料塾「ターンナップ」より)

イメージ 
 「工具の一種」
(壬・任・賃・凭・妊・衽・恁)
 「形声文字」(荏)
音の変化 ジン:壬・衽・荏・恁  チン:賃  ニン:妊・任  ヒョウ:凭 
 
工具の一種
 ニン・まかせる・まかす  イ部

解字 甲骨文字は、「イ(人)+工(工具の一種)」で、工具を背負ったり、前でかかえる人を表す。工具を携えて定められた職務を行う人の意と思われる。[甲骨文字辞典]によると、意味は職名で地名に付す場合が多く、地方領主またはその副官と推定されるという。金文以降、工⇒壬に変化した「イ(人)+壬ジン・ニン(工具の一種)」の会意形声。意味は、①工具をになう・かかえる、②工具を用いての、つとめ・仕事、③つとめを、まかす・まかせる、意となった。
意味 (1)になう(任う)。かかえる。「肩任ケンニン」(肩でになう)「重石を任(かか)える」(重い石をかかえる) (2)しごと。役目。「任務ニンム」「任命ニンメイ」「就任シュウニン」 (3)まかせる(任せる)。まかす(任す)。ゆるす。「任意ニンイ」「一任イチニン」 (4)任務をになう意気込み。おとこ気。「任侠ニンキョウ」 (5)たえる(任える)「病(や)みて、行(ゆ)くに任(た)え不(ず)」(史記・王箭伝)「軍旅(出征)に任(た)え不(ず)」(後漢・王覇伝)
 チン  貝部
解字 「貝(財貨)+任(任務・しごと)」の会意形声。お金を払って任務(しごと)をしてもらうこと。雇った人にはらう金銭をいう。
意味 (1)やとう。やとわれる。 (2)やとった人にはらうお金。代償としてはらう金銭。「賃金チンギン」「運賃ウンチン」(運んだ代金)「賃料チンリョウ」(代償として払う料金)「賃貸チンタイ」(賃料をとって貸すこと)「賃貸住宅チンタイジュウタク」(家賃[賃料]をとって貸す住宅)「賃貸借契約チンタイシャクケイヤク」(家賃[賃料]をとって貸す方と借りる方が結ぶ契約)
 ヒョウ・よる・もたれる  几部
解字 「几(つくえ・ひじかけ)+任(まかせる)」の会意。几(ひじかけ)に身をまかせること。もたれる・よりかかる意となる。会意文字なので発音が大きく変わる。
意味 よる(凭る)。もたれる(凭れる)。よりかかる。「凭几ヒョウキ」(ひじかけ・脇息のこと)「凭欄ヒョウラン」(欄干(てすり)に凭れる)
 ニン・はらむ  女部
解字 「女(おんな)+壬(ニン=任。かかえる)」の形声。壬ニンは任ニン(かかえる)に通じ、子をかかえる女から転じて孕(はら)む意となったと思われる。この用法は篆文からであり、甲骨文の意味は女性の名[甲骨文字辞典]。金文は姓のひとつとして用いられており、壬ニンの発音を用いた形声の用法である。本来の妊娠する意味の象形文字は孕ヨウで甲骨文字からある。
意味 はらむ(妊む)。みごもる。「妊娠ニンシン」「懐妊カイニン」「不妊フニン」 
衽[袵] ジン・ニン・えり・おくみ  衣部
解字 「衣(ころも)+壬(ジン=任。かかえる)」の会意形声。衣の部分で、本来の布地のほかに、かかえている部分をいい、後で布を追加して作る「えり」をいう。日本の和服では「おくみ」の意となる。
意味 (1)えり(衽)。「左衽サジン」(左のえり。衣服を左前に着ること。左衽は中国で北方異民族の習俗であるとされた) (2)おくみ(衽・袵)。襟から裾にかけて縫いつけた半幅の細長い布。胴回りを表(おもて)で重ねるため追加する。 (3)しとね。しきもの。

衽(おくみ)(「きものレンタリエのきもの豆知識」より)
 ジン・二ン  心部
解字 「心(こころ・おもう)+任(かかえる)」の会意形声。心にかかえる思いで、思う意。のち、俗語として、「かく」「このように」「このような」の意味に用いられた。
意味 (1)おもう。思う。念じる。「勤恁キンニン」(つねにおもう) (2)かく・このような・このように。「恁生ジンセイ」(このような)「恁地ジンチ」(このような。このように。=如此かくのごとく。)「恁麼ジンマ・二ンモ」(①いかん。いかに。②このような)

形声文字
 ジン・ニン・え  艸部
解字 「艸(草)+任(ジン・ニン)」の形声。ジン・二ンという名の草。①シソ科の一年草で種子から油をとる。②まめ。③栠ジン・二ンに通じ、やわらかい。④地名、の意味がある。

エゴマ(荏胡麻)(「薬草と花紀行のホームページ」より)
意味 (1)え(荏)。えごま(荏胡麻)。シソ科の一年草。日本で中世末期に菜種油が普及するまでは植物油と言えばエゴマ油であり、灯火にもこれが主に用いられた。しかし、菜種油の普及と共に次第にエゴマ油の利用は衰退した。「荏子ジンシ」(えごまの実)「荏油ジンユ」(えごま油) (2)まめ。そらまめ。「荏菽ジンシュク」(そらまめ。まめ) (3)やわらかい。栠ジン・二ン(やわらかい)に通じ、やわらかい。「荏弱ジンジャク」(柔軟) (4)地名「荏原えばら」(エゴマの栽培地であったことに由来する)
<紫色は常用漢字>

※本稿の執筆にあたり、壬・任・妊の各文字について、落合淳思著『甲骨文字辞典』から引用させていただきました。御礼を申し上げます。
                
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音符「高コウ」<たかい>と「稿コウ」「膏コウ」「嵩スウ」「塙はなわ」「縞しま」

2023年06月15日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 コウ・たかい・たか・たかまる・たかめる  高部

解字 甲骨文・金文は、屋根のある2階ないし3階建ての建物の象形。下部の口は入り口か窓を表すと思われる。高い建物なので、たかい意を表わす。高は部首となるが、音符ともなる。
意味 (1)たかい(高い)。たかさ。「高所コウショ」「標高ヒョウコウ」 (2)程度がたかい。「高級コウキュウ」 (3)けだかい。すぐれている。「高貴コウキ」「高潔コウケツ」 (4)思い上がる。「高慢コウマン」 (5)敬う気持ち。「高説コウセツ

イメージ 原義の「たかい」意のほか、「かわく」イメージがある。これは高いところは乾く意からと思われる。 
 原義の「たかい」(高・嵩・鎬・蒿・嚆・毫) 
 高い所は「かわく」(稿・槁・藁)
 「形声字」(膏・縞・敲・塙)
音の変化  コウ:高・鎬・蒿・嚆・稿・槁・藁・敲・膏・縞  ゴウ:毫  カク:塙  スウ:嵩

たかい
 スウ・たかい・かさ・かさむ  山部
解字 「山(やま)+高(たかい)」の会意。山の高いこと。日本では、かさばる意で使う。
意味 (1)たかい(嵩い)。山の高いさま。「嵩高スウコウ」(①山が高い。②嵩山のこと) (2)山の名。「嵩山スウザン」(中国五岳のひとつ。河南省登封市にある山岳群。少林寺や中岳廟がある。=崇山)「嵩峰スウホウ」(嵩山の峰) (3)[国]かさ(嵩)。分量。かさむ(嵩む)。かさばる(嵩張る)。「水嵩みずかさ」「嵩上(かさあ)げ」
 コウ・よもぎ  艸部
解字 「艸(くさ)+高(たかい)」の会意形声。背の高い草で、よもぎを表す。
意味 よもぎ(蒿)。キク科の多年草。山野に自生し高さ約1メートル余になる。蓬・艾とも書く。「蓬蒿ホウコウ」(蓬も蒿も、よもぎの意)「蒿艾コウガイ」(蒿も艾も、よもぎの意)「蒿里コウリ」(墓地。また、挽歌)
 コウ  口部
解字 「口(こえがでる)+蒿(コウ)」の形声。コウは哮コウ(うなる)と同じく、うなる音の擬声語で、特にかぶら矢のうなる音をいう。
意味 (1)高く鳴る。「嚆矢コウシ」(①かぶら矢。鳴り響く矢。②昔、中国で戦いを始めるとき、敵陣にかぶら矢を射たことから、物事の始まり)「嚆矢濫觴コウシランショウ」(嚆矢も濫觴も、物事の始まりの意)(2)さけぶ。
 ゴウ  毛部
解字 「毛(細い毛)+高の略体(たかい⇒長い)」の会意形声。長くて細い毛をいう。
意味 (1)細くて長い毛。「白毫ビャクゴウ」(仏の眉間にある白い毛)「毫毛ゴウモウ」(毛先の細いところ) (2)筆の先。「揮毫キゴウ」(筆をふるう意で書画を書くこと。特に知名人が頼まれて書をかくこと) (3)わずか。すこし。「毫末ゴウマツ」(わずか)「毫もない」(すこしもない)

かわく
稿 コウ・したがき  禾部
解字 「禾(いね)+高(かわく)」の会意形声。かわいた稲わら。下書きの意は、稲わらを材料にした粗末な紙に書くことから。
意味 (1)わら(稿)。(2)したがき(稿)。詩や文章の原案。「稿本コウホン」「草稿ソウコウ」「原稿ゲンコウ
 コウ・かれる  木部
解字 「木(き)+高(かわく)」の会意形声。木が乾いて枯れること。
意味 かれる(槁れる)。草木がかれる。「槁木コウボク」(枯れた木)「枯槁ココウ」(①草木がかれる。②やせ衰える)「形容枯槁ケイヨウココウ」(その顔かたちはやせ衰えている)
 コウ・わら  艸部
解字 「艸(草)+槁(かれる)」の会意形声。枯れた草でわらの意(=稿)。この字で木は下につく。
意味 (1)わら(藁)。「藁葺(わらぶ)き」(屋根を藁で葺く)「藁半紙わらばんし」(藁の繊維を中心に漉いた安価な紙。ざら紙)(2)下書き。(=稿)。

形声字 
 コウ・しのぎ  金部
解字 「金(金属)+高(コウ)」の形声。[説文解字]は「鎬は温器」とし金属製のストーブのようなものとする。日本の字典は「なべ」と訳しているが、中国・日本とも熟語はなく詳細は不明。中国では主に地名に用いられており西周初年の首都をいう。日本では「金(金属の刀)+高(たかい)」と解釈し、刀剣の刃と峰(背)との間を走り稜線状に高くなったところを言う。
意味 (1)なべ(鎬)。 (2)地名。「鎬京コウケイ」(陝西省西安市の西南。周の武王の都) (3)[国]しのぎ(鎬)。刀の刃と峰との間の稜線状の盛りあがり。「鎬しのぎを削る」(はげしく争う。鎬が削りとられるほど激しく刀を合わせるから)

鎬(しのぎ)(「刀剣ワールド」より)
 コウ・あぶら・こえる  月部にく
解字 「月(にく)+高(コウ)」の会意形声。[説文解字]は「肥(こえ)る也」とし、[同注]は「按ずるに肥は脂に作るに当たる」とし、肥の字は脂に当たるとする。人が肥(ふと)るのは食べすぎたエネルギーが消費されず脂肪のかたちで体内でたまり肥満となるからである。意味は(1)あぶら。(2)あぶらぐすり。(3)こえる。肥える。(4)あぶらさす。(5)その他、となる。なお肥える意味は、「月(にく)+高(たかい)」で、人の月(にく)が高く盛り上がり肥える、と解釈することも可能。
意味 (1)あぶら()。脂肪。「あぶらあせ」「コウケツ」(①人のあぶらと血。②苦労して得た利益、また財産)「血を絞る」(人民から重税を絞り取る)「膏粱コウリョウ」(あぶらののったうまい肉と、味のよい穀物。美食をいう) (2)あぶらぐすり。「コウヤク」「軟ナンコウ」「絆創バンソウコウ」 (3)こえる(膏える)。ふとる。うるおす。「コウヨク」(土地が肥えている)「コウデン」(地味の肥えた田) (4)あぶらさす。「コウシャ」(車の軸受けに膏をぬって動きをなめらかにする) (5)むなもと。心臓の下の部分。「コウコウ」(膏と肓コウの間は薬も針も届かず治りにくい。膏肓コウモウは慣用よみ))「病(やまい)膏肓に入る」(病が重くなって医者の手の下しようがない) (5)「石セッコウ」とは、いしあぶら。白色原料や陶器の型、彫刻の材料等に使う、硫酸カルシュウムから成る鉱物。
 コウ・しま  糸部
解字 「糸(いと)+高(コウ)」の会意形声。糸は絹糸を表しコウの発音で、染めていない絹糸または絹織物をいう。日本では縞(しま)がらの布の意に使われる。
意味 (1)しろぎぬ(縞)。白い絹。ねりぎぬ。「縞衣コウイ」(白絹の着物) (2)[国]しま(縞)。しまがら。縦または横に織り出したすじ。また、その布。「縞柄しまがら」「縞馬しまうま
 コウ・たたく  攴部ぼく
解字 「攴ボク(たたく・うつ)+高(コウ)」の形声。攴ボクは甲骨文字からある字で、手に棒や木の小枝を持って、たたくさまの象形。たたく・うつ意を表す。攴が正字だが、楷書では「攵ボク」に変わることが多い。したがって攴と攵は同字である。音符「攵(攴)ボク]を参照。敲コウは、たたく・うつ意の発音がコウ(高)であることを示した字。
意味 (1)たたく(敲く)。うつ。「敲門コウモン」(門をたたく)「推敲スイコウ」(唐の詩人が、「僧は推(お)す月下の門」の句を作ったが、「推す」を改めて「敲(たた)く」にしようか迷って先輩に問い、助言を受けて「敲く」に決めた故事に由来し、詩文を作るのに字句をさまざまに考え練ること) (2)たたき(敲き)。たたくこと。たたいたもの。「カツオの敲き」
 カク・コウ・かたい・はなわ  土部
解字 「土(つち)+高(カク・コウ)」の形声。宋代の[集韵]は「音は埆カク。土高き也。一に曰く土堅く拔(抜き出すこと)不可也。磽コウ(石の多いやせ地)也。」とし、堅く高い土地で掘り起こすこと不可な石の多いやせ地とする。
意味 (1)かたい(塙い)。土がかたい。 (2)確カクと通用する。「塙切カクセツ」(的確で切実=確切)「塙然カクゼン」(明確) (3)[国]はなわ(塙)。山の突き出た所。山の小高い所。語源については、①山の岬のさし出た所を人の鼻になずらえたもの(菅江真澄)。②山の鼻を廻る所の意で鼻廻(はなわ)の義か(東雅)③アイヌ語で上の平らな丘の意のパナワから(柳田国男)などがある。(日本国語大辞典による) (4)地名。①福島県「塙はなわ町」(福島県東白川郡にある町)②茨城県の大字「稲敷郡阿見町塙・塙城跡」「久慈郡大子町塙」 (4)姓のひとつ。「塙保己一はなわほきいち」(江戸時代後期の国学者)
(5)関連地形「岩鼻いわばな」

長野県上田市の岩鼻(「上田 道と川の駅・おとぎの里」より)
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音符「来ライ」と 「徠ライ」「莱ライ」「賚ライ」「麦(麥)バク」

2023年06月13日 | 漢字の音符
   来[來] ライ <本来は「むぎ」の象形>
[來] ライ・くる・きたる・きたす  木部

解字 穂がたれて実ったムギの象形。発音が「くる(来る)」と同じだったので「来る」意に仮借カシャ(当て字)された。甲骨文の時から「くる」意味で使われた。新字体は、來⇒来に変化。音符で用いられるとき、ムギの意味が残っている。漢字検索のための部首は木であるが、成立ちとの関係はない。
意味 (1)くる(来る)。きたる(来る)。やってくる。「来客ライキャク」「来襲ライシュウ」 (2)いままで。その時から。「以来イライ」「来歴ライレキ」 (3)これから先。「来週ライシュウ」「来春ライシュン

イメージ 
 仮借された意味である「くる」(来・徠・賚)
 本来の意味である「むぎ」(麦・莱)
音の変化  ライ:来・莱・徠・賚  バク:麦

く る
 ライ・くる  彳部
解字 「彳(路上)+來(くる)」の会意形声。彳は、行の左辺の字だが、ここでは路上の意。徠は路上を来る意で、来ライと同じ意味である。
意味 (1)くる。きたる。「徂徠ソライ」(徂はゆく、徠はくる。ゆきき。往来) (2)人名。「荻生徂徠オギュウソライ」(江戸中期の儒学者)
 ライ・たまう・たまもの  貝部
解字 「貝(財貨)+來(くる)」の会意形声。財貨が来ること、すなわち、たまわった財貨の意で、たまう・たまものを表す。
意味 たまう(賚う)。たまわる。たまもの(賚)。くだされもの。「賚賜ライシ」(①たまう。②たまわりもの。賚も賜も、たまわる意。=錫賚シライ)「得る所の錫賚シライ(=賚錫ライシ)、盡(ことごと)く文籍を市(か)い、海に泛(うか)び而(そして)還(かえ)る『旧唐書 倭国日本国伝』」(初期の頃の遣唐使は)「手にした、たまわりもので尽く書物を買い集め船に積んで帰った」

む ぎ
[麥] バク・むぎ  麦部           

來(むぎ)になぜ下向きの足を付けたのか?
解字 甲骨文字から旧字まで麥で「來(むぎ)+夂(下向きの足)」の会意。來(むぎ)になぜ下向きの足を付けたのかについて、日本では、夂(下向きの足)は麦踏みをする様子を表しているという説が多かった。しかし、麦踏みは日本の方法であり、中国で行われたかどうか調べてみたが、分からなかった。中国では、「夂(下向きの足)は天から下る意で、天から賜った貴重な麦を意味する」とする説が主流である。私もこの説がいいと思う。
 本来の麦の字である来ライが「来る」意味に仮借(当て字)されたので甲骨文字の時代から夂(下向きの足)をつけて麥の字が作られ、現代字は麦になった。発音もライ⇒バクに変化。最初に中国に伝わった麦は、蒸して粒食できる大麦であったと考えられている。のち、石臼の発達により粉食できる小麦が普及した。
意味 むぎ(麦)。大麦・小麦などの総称。「麦芽バクガ」(大麦を発芽させたもの。ビール・ウィスキーなどの製造に用いる)「麦秋バクシュウ」(麦の実る初夏のころ。むぎあき)「麦藁むぎわら」「麦茶むぎちゃ
麦は部首「麦むぎ」になる。主な字は以下のとおり。
バク・むぎ (部首)
 メン(麦+音符「面メン」)
 麩(麸)フ・ふすま(麦+音符「夫フ」)
 麴(麹)キク・こうじ(麦+音符「匊キク」)など

萊[莱] ライ・あかざ  艸部
解字 「艸(くさ)+來(むぎ)」の会意形声。來(むぎ)の畑などに混じって生える雑草で、アカザをいう。新字体に準じた莱も通用する。[玉篇]に「藜草レイソウなり」とあり、藜レイとも書く。
莱(あかざ)
野草教室(「あかざ」より)
意味 (1)あかざ(萊)。路傍や畑地に自生するアカザ科の一年草。若芽が赤くなるのでアカザの名がある。若葉は食用となる。アカザが成長すると、人の背丈より大きくなる。「蓬萊ホウライ」(蓬よもぎと萊あかざの茂る地の意であるが、中国の伝説で東方海上にあり、不老不死の薬を持つ仙人が住む山と考えられた。蓬萊山。蓬萊島) (2)荒れ地。くさむら。「草萊ソウライ」(くさむら。荒地)「萊蕪ライブ」(土地が荒廃していること) (3)「萊菔ライフク」とは、大根の別称。
<紫色は常用漢字>

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音符「十ジュウ」<とお>と「汁ジュウ」「針シン」「計ケイ」

2023年06月11日 | 漢字の音符
 増補・改訂しました。
 ジュウ・ジッ・とお・と  十部


解字 数字の十をあらわす指示文字。漢字は十進法を採用しており、甲骨文では一から四まで横線をかさねた形で表し、五~九までは上記のような形で表した。十は桁がかわる数字であり、一をタテにして十および十の位を表した。金文はタテ線に肥点を加えた形。篆文から十字形になった。
意味 (1)とお(十)。数の名。「十指ジッシ」「十階ジッカイ」 (2)満ち足りているさま。「十分ジュウブン」「十全ジュウゼン」 (3)数の多いこと。「十把一絡(じっぱひとから)げ」

イメージ 
 「とお」
(十・什・廿・卅・計・汁)
 意味(2)の「満ち足りる」(汁)
 「十字形」(辻) 
 「形声字」(叶)
 「その他」(針)
音の変化  ジュウ:十・什・廿・汁  シン:針  キョウ:叶  ケイ:計  ソウ:卅  つじ:辻

とお
 ジュウ  イ部
解字 「イ(人)+十(とお)」の会意形声。十人のひと。また、十人一組の単位をいう。
意味 (1)とお(什)。数の十。 (2)十で一組のもの。「什伍連坐ジュウゴレンザ」(十家または五家の組の中から罪を犯せば、組の全戸が処罰される制度。連帯責任を負わせた) (3)さまざまな物。「什器ジュウキ」(日常生活の家具・道具類)「什宝ジュウホウ」(秘蔵する器物)
廿 ジュウ・にじゅう  十部
解字 「十(とお)+十(とお)」 の会意形声。十を二つ下部でつないだ形。二十を表わす。
意味 にじゅう(二十)。はたち。「廿日はつか
卅[丗] ソウ  十部
解字 「十(とお)+十(とお)+十(とお)」の会意。十を三つ合わせた形。三十を表す。丗は俗字。
意味 卅(さんじゅう)。三十。
 ケイ・はかる・はからう  言部
解字 「言(いう)+十(とお)」 の会意。一から十までの数字を言いながら、ものを数えること。
意味 (1)かぞえる。量をはかる。「計算ケイサン」「集計シュウケイ」 (2)はかる(計る)。くわだてる。「計画ケイカク」「計略ケイリャク」 (3)数量を計る器具。「時計トケイ

満ち足りる
 ジュウ・しる  氵部
解字 「氵(水)+十(満ち足りる)」 の会意形声。満ち足りている物の中から出てくる水分で、物体からしみ出る液や、しぼりとった液体をいう。
意味 (1)しる(汁)。物体からしみ出る液。しぼりとった液。「胆汁タンジュウ」(胆臓から分泌される液)「果汁カジュウ」(果物をしぼった汁。ジュース)「肉汁ニクジュウ」(①肉を煮だしたスープ。②肉を焼くときにじみ出る汁) (2)[国]つゆ(汁)。吸い物。
十字形
<国字> つじ  辶部
解字 「辶(ゆく)+十(十字形)」の会意。十字形の道。
意味 つじ(辻)。十字路。交差点。また、道端もいう。「辻占つじうら」(辻に立って占いをした人)「辻説法つじせっぽう」(道端で通行人に説教すること)「辻斬つじぎり」(夜、街頭で武士が通行人を刀で斬ること)
形声字
 キョウ・かなう  口部
解字 「口(くち)+十(キョウ)」の形声。キョウは協キョウ(あわせる)に通じ、口をあわせて相談し、うまくまとめること。日本では、思い通りになる意もある。
意味 (1)かなう(叶う)。=協。調和する。うまく合う。「条件に叶う」(2)[国]かなう(叶う)。①思いどおりになる。「願いが叶う」②匹敵する。「彼には叶わない」
その他
 シン・はり  金部
解字 「鍼シン・はりの俗字。鍼シンの咸⇒十に置きかえた字。[説文解字]は鍼シンを「縫う所以(ゆえん)也。金に从(したが)い咸シンの聲(声)とする。そして「今、俗に針に作る」とし、針という俗字ができていることを述べている。[説文解字]は、縫い鍼(はり)の意としているが、鍼(はり)には砭鍼ヘンシンと呼ばれた治療用の石針があった。そして、以後は俗字としてできた針が縫い針の意味に定着し、鍼(はり)は治療用の石針から進化した金属製の治療針の意味に用いられるようになった。
意味 (1)はり(針)。縫い針。「運針ウンシン」(裁縫での針の使い方) (2)針のように先が細い。「針葉樹シンヨウジュ」「針小棒大シンショウボウダイ」 (3)羅針盤のはり。方向。「針路シンロ」(船や飛行機が進む方向)「指針シシン」 (4)治療用の針。「石針いしばり」(鍼術で用いる石で作った針。砭石ヘンセキ

数字の10
<国字> デカメートル  米部
解字 「米(メートル)+十(10)」の会意。米は長さの単位であるメートル()を表し、10メートルの意。
意味 什(デカメートル)。長さの単位。1メートルの10倍。「五什ゴデカメートル」(50メートル=50m)
<国字> デカグラム  瓦部
解字 「瓦(かわら)+十(10)」の会意。重さの単位。1グラムの10倍。瓦は一枚一枚の重さが同じであることから、重さの単位に当てた。「五瓧ゴデカグラム」(5グラム=5g)
<国字> デカリットル  立部
解字 「立(リットル)+十(10)」の会意。容量の単位。1リットルの10倍。立は立体のイメージから容量の単位に当てた。「五竍ゴデカリットル」(50リットル=50ℓ)
<紫色は常用漢字>

参考 部首「十じゅう」。十は、数の十や、多い・集まる意で部首となる。常用漢字で12字ある。
おおい・あつまる意
 十ジュウ・とお  (部首)
 協キョウ・かなう(十+音符「劦キョウ」)
 博ハク・ひろい(十+音符「尃フ⇒ハク)」
字体に十が含まれるため便宜的に十部に属しているもの
 千セン・ち(会意)
 午ゴ・うま・ひる(象形)
 升ショウ・ます(象形)
 半ハン・なかば(会意)
 卒ソツ・おわる(象形)
 卓タク・つくえ・すぐれる(象形)
 単タン・ひとつ・ひとえ(象形)
 南ナン・みなみ(象形)
 卑ヒ・いやしい(会意)
※なお、千 午 升 半 卒 卓 単 南 卑 は、すべて音符となる。

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