漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「黹チ」<ぬいとり・刺繍をする>と「黼フ」「黻フツ」

2022年01月31日 | 漢字の音符
 チ・ぬいとり・ぬう  黹部

解字 甲骨文は巾(きれ)に刺繍(ぬいとり)をした形の象形。第1・2字とも糸を通した針の動きと縫目を描いている。金文1・2字とも縫目と針の進行状況だが、第2字の上部に4つの縫目がある形が、篆文で「ギョウの上部+敝ヘイの左辺」のかたちになり、現在の黹になった。
覚え方 
(ギョウ)の上と(ヘイ)の左で
(ギョウ)の上と、ハ巾(キン)
意味 (1)ぬいとり(黹)。刺繍をする。刺繍をした衣。「鍼黹シンチ」(裁縫や刺繡などの針仕事。鍼は針) (2)ぬう(黹う)。刺繍をする。
参考 黹チは部首「ち・ぬいとり」になる。黹部の主な字は以下のとおり。

 フ・ホ  黹部

解字 「黹(ぬいとり)+甫(フ)」の形声。フは斧フ・おのに通じ、斧をかたどった刺繍をいう。天子が祭りごとをするときの衣装に刺繍された十二章紋のひとつ。
意味 (1)天子の祭礼衣装のなかの斧をかたどった刺繍。また、その衣装。「黼黻フフツ」(①(斧)と(背中合わせ弓)の刺繍紋が入った大礼服。②美しい文章のたとえ)「黼座フザ」(天子の御座所。天子の座の後ろに黼紋の屏風があったため)
 フツ・ホチ  黹部

解字 「黹(ぬいとり)+犮ハツ(とりのぞく)」の会意形声。犮ハツは犬にノを加えて犬を犠牲にして神にそなえ災いを取り除くかたち。フツは災いをとりのぞく黹(ぬいとり)の意味で、弓を背中合わせにした模様の黹(ぬいとり)をいう。左右に弓を背中合わせに配し、左右の邪悪を弓で祓う意味がある。天子が天を祭る祭礼で着る衣装の12章の一つ。発音は、ハツ⇒フツに変化。また、フツ(ひざかけ)に通じ、ひざかけをいう。
意味 (1)天子の礼服の模様。弓を背中合わせにした図章の黹(ぬいとり)をいう。また、その礼服。「黻衣フツイ」(古代の祭礼服)「黻冕フツベン」(①斧の形をぬいとりした礼服と礼冠。②古代の礼装) (2)ひざかけ()。礼装用のひざかけ。

皇帝十二章とは
 古代の中国および東アジア諸国の王・皇帝の礼服である袞衣(コンイ)に用いられる模様。日、月、星辰(星座)、山、龍、華虫(美しい華と美しい羽の雉)、宗彝ソウイ(宗廟の儀式用の酒器。虎と猿の図柄)、藻(水と清浄)、火、粉米(米粒)、(斧図)、フツ(背中合わせ弓図)の12章。この十二種類は古代の天子の冕服ベンプク(王冠をつけた服装)に用いられる模様であった。
竜袍(天子の礼服)12章
https://baike.baidu.com/item/黻黼/4759858

皇帝の礼服
一番下にフツ、その上にが左右にぬいとりされている。
(百度の検索サイトの画像から)





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音符「兇キョウ」 と「凶キョウ」「匈キョウ」「胸キョウ」 

2022年01月28日 | 漢字の音符
  解字をやり直しました。
 キョウ・わるい  儿部

解字 甲骨文字は「禽キンの甲骨文字である鳥網の上部+座った人(卩セツ)」の形。楚簡(=戦国)も「鳥網の略体+ひざまずく人」と見ることができる。[甲骨文字辞典]は、「甲骨文字では吉の意味で用いられているが、理由は不明」としている。古くから鳥網は敵を捕獲する目的でも使われており、捕獲した側は敵の要人を捕獲したので吉としたのではないだろうか。楚簡の意味は不明であるが、[説文解字]の篆文は、著者の許慎が「擾恐ジョウキョウ(おそれる)なり。儿(人)が凶の下に在る。春秋伝曰く、曹国の人、恐懼キョウク(おそれる)す」とあり、おそれる意。
下図は禽キン(とり)の変遷図であるが、

 甲骨文の禽キンは、第1字が取っ手のある鳥網で、第2字が網の上に捕まえた隹(とり)を描いている(金文以降は発音をあらわす今キンを上に付けた)。
 この字から凶が分離し、意味も①わるい。②わざわい、となったため、兇には、わるい・わるもの、の意が追加された。
意味 (1)おそれる(兇れる)。「兇懼キョウク」(おそれる) (2)おそろしい。悪者。「兇犯キョウハン」(悪者の犯罪。殺人犯)「兇険キョウケン」(心が悪く腹黒いさま)「兇悪キョウアク」(=凶悪)「兇行キョウコウ」(=凶行)
 キョウ・わるい  凵部かんにょう

解字 ここも[説文解字]から説明させていただく。許慎は篆文の字形を「悪なり。地面が掘られ、その中に陥るさま(✕)」とし、落とし穴に落ちた状態で、わるい意味とする。しかし、戦国期の第一字は篆文と似ているが、第2字は落とし穴と✕が連続しており落し穴に落ちた形ではない。私は凶は兇キョウから分離した字だと考える。したがって字源は鳥網のあみの部分であるが、意味も兇をひきついでおり、おそれる意である。しかし、許慎が解字で「悪なり」としたので悪い意味も加わり、これが主流となった。
意味 (1)わるい(凶い)。わるもの。「元凶ガンキョウ」「凶行キョウコウ」 (2)わざわい。不吉。「大凶ダイキョウ」「吉凶キッキョウ」「凶事キョウジ」 (3)ききん(飢饉)。作物の出来が悪い。「凶作キョウサク」「凶荒キョウコウ」 (4)おそれる。「凶凶キョウキョウ」(おそれるさま)

イメージ 
 「わるい・わるもの」
(兇・凶・酗)
 「形声字」(匈・胸・恟)
音の変化  キョウ:兇・凶・匈・恟・胸  ク:酗

わるい
 ク  酉部
解字 「酉(さけ)+凶(わるい)」の会意形声。酒を飲みすぎて荒々しくなること。凶キョウ・匈キョウの呉音にクがある。
意味 酒に酔って荒れる。酒乱。「酗酒クシュ」(酒乱)「酗淫クイン」(酒を飲みすぎて淫楽にふける)「沈酗チンク」(酒乱にはまる)

形声字
 キョウ・むね  勹部

解字 戦国期は「人がうつむいた形+凶(キョウ)」の会意形声。人がうつむいた形の胸部にあたる部分の発音がキョウであることを示した字で、胸の原字。第2字は「月(にく・からだ)+凶(キョウ)」の会意形声で、キョウという身体の部分を指しており胸の意。篆文は「勹+凶(キョウ)」となり、現代字の匈になった。本来の意味は胸だが、北方遊牧民の名前に当てられた。
意味 (1)むね(匈)。「匈臆キョウオク」(心のうち。胸のうち)(2)中国西北方の異民族の名。「匈奴キョウド」(秦代から漢代にかけて中国西北方に根拠地を持っていた遊牧騎馬民族)
 キョウ・むね・むな  月部にく
解字 「月(からだ)+匈(むね)」の会意形声。匈は、もともと胸の意だが、匈奴の意味に用いられたので、月(からだ)をつけて胸の意を表す。
意味 (1)むね(胸)。むな(胸)。「胸板むないた」「胸騒(むなさわ)ぎ」 (2)こころ。こころのうち。「胸中キョウチュウ」「度胸ドキョウ」(物事に動じない心)
 キョウ・おそれる  忄部
解字 「忄(心)+匈(キョウ)」の形声。キョウは兇キョウ・凶キョウに通じる。兇・凶の本来の意味は「おそれる」であり、この意味を忄(心)を付けて表した。
意味 おそれる(恟れる)。びくびくする。「恟恟キョウキョウ」(びくびくする)「恟然キョウゼン」(おそれるさま)
<紫色は常用漢字>

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音符「囷キン」<まるい屋根の穀物くら> と「菌キン」

2022年01月25日 | 漢字の音符
 キン  囗部           
四庫全書の囷  穀物倉(囷)
解字 「囗(まるいかこい)+禾(穀物)」の会意。まるく取り囲んで収穫物を保存するくら。

意味 (1)くら(囷)。米ぐら。まるい形の米ぐら。円形の穀物倉。「囷倉キンソウ」(穀物倉)「囷廩リンキン」(穀物倉) (2)まるい(囷い)。まるく取り囲む。「囷囷キンキン」(まるく取り巻いたさま)

イメージ 
 穀物倉の形から「まるいやね」(囷・菌)
 穀物倉に穀物が「あつまる」(箘・
音の変化  キン:囷・菌・箘・

まるいやね
 キン・きのこ  艸部
解字 「艸(くさ)+囷(まるいやね)」の会意形声。先がまるいやねのように広がる植物。きのこを意味したが、近代になり菌類キンルイという言葉で、きのこ類似のグループをさすようになり、さらに、かびやバクテリアを指すようになった。
意味 (1)きのこ(菌)。たけ。「菌芝キンシ」(ひじりだけ。霊芝)「菌褶キンシュウ」(キノコの傘の裏側のひだ) (2)かび。バクテリア。「細菌サイキン」「殺菌サッキン」「菌糸キンシ

あつまる
 キン  竹部
ヤダケ(ウィキペディアより)
解字 「竹(たけ)+囷(あつまる)」の会意形声。密集する細い竹の意で、ヤダケ(矢竹)をいう。
意味 (1)やだけ(箭竹・矢竹)。タケ亜科ヤダケ属の幹が細長い竹。矢柄(やがら)として用いる。「箘簬キンロ」(矢竹) (2)たけのこ。 (3)「箘桂キンケイ」とは、古書に書かれた肉桂(=桂皮。シナモン)の古称。健胃剤・香辛料などに供する。
 キン・クン 鹿部
解字 「鹿(しか)+囷(あつまる)」の会意形声。群れで生活する鹿。ノロジカをいう。
意味 (1)のろ()。ノロジカ。シカの一種。肩高約75センチ。雄は3本に枝分かれした角をもつ。ユーラシア大陸に分布。「のろ」の名前は朝鮮語のノルに由来する。 (2)むらがる(がる)。発音はクン。「麕集クンシュウ」(あつまる。むらがる)
<紫色は常用漢字>

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音符「斤キン」<おの>と「近キン」「祈キ」「匠ショウ」「兵ヘイ」

2022年01月22日 | 漢字の音符
  キン・ちょうなを追加しました。
 キン・おの  斤部       

解字 「ちょうな」と呼ばれる手斧の形の象形。甲骨文は可から口をとった丁と形が似ており、曲がった木の先に石斧を付けたかたちと思われる。金文から形が変化し、現代字は斤になった。また、斧は、はかりの分銅に用いて物の重さをはかったため、目方の単位となった。斤が音符となる時、斧の刃を「ちかづける」イメージを持つ。
 おの(検索サイトから)
意味 (1)おの(斤)。ておの。「斧斤フキン」(おの) (2)重さの単位。1斤は500グラム(現代中国)。「斤量キンリョウ」(目方)

イメージ 
 「おの」
(斤・兵・匠・釿)
 オノを「ちかづける」(近・圻・祈・芹)
 「形声字」(欣・忻・听・沂・鋲)
音の変化  キン:斤・釿・近・芹・欣・忻・听  キ:祈・圻  ギ:沂  ショウ:匠  ヘイ:兵  びょう:鋲

お の
 ヘイ・ヒョウ・つわもの  ハ部 

解字 甲骨文から篆文まで、「斤(おの)+両手」の会意。武器として使う斤を両手で持つさま。現代字では両手が「一+ハ」に変化した。漢字検索のための部首は「ハ」だが、成立ちとは関係ない。
意味 (1)つわもの(兵)。軍人。「兵士ヘイシ」「挙兵キョヘイ」 (2)武器。「兵器ヘイキ」 (3)いくさ。戦争。「兵法ヘイホウ」「兵火ヘイカ」「兵糧ヒョウロウ
 ショウ・たくみ  匚部
解字 「匚(はこ)+斤(おの)」の会意。箱に大工道具の斤を入れる大工。
意味 (1)たくみ(匠)。大工や指物師のこと。 (2)手細工をする職人。「石匠セキショウ」 (3)技芸の巧みな人。「巨匠キョショウ」「宗匠ソウショウ」「名匠メイショウ」 (4)装飾的なデザイン。「意匠イショウ
 キン・ちょうな  金部
解字 「金(金属)+斤(おの)」の会意。斤(おの)に金属をつけて金属製のオノ(斤)であることを確認した字。
意味 (1)ちょうな(釿)。おの(釿)。ておの。「釿鋸キンキョ」(手斧とノコギリ) (2)きる(釿る)。たつ(釿つ)。たちきる。

ちかづく
 キン・ちかい  辶部
解字 「辶(ゆく)+斤(ちかづく)」の会意形声。そばに近寄る意。
意味 (1)ちかい(近い)。「近接キンセツ」「近隣キンリン」 (2)時間がちかい。「近況キンキョウ」「近来キンライ」(ちかごろ) (3)にている。「近似キンジ」 (4)身近。「近親キンシン
 キ  土部
解字 「土(土地)+斤(=近。ちかい)」の会意形声。都に近い土地で、方千里(=畿)をいう。
意味 (1)王城の方千里をいい、王畿オウキ(王城から四方へ500里、すなわち方千里)のこと。「圻父キホ」(王畿を警備する司馬職)「圻田キデン」(王領地)「圻内キナイ」(王畿の内) (2)へり。さかい。かぎり。「圻界キカイ」(境界)
 キ・いのる  ネ部
解字 旧字は「示(祭壇)+斤(ちかづく)」の会意形声。祭壇に近づいて神に祈ること。新字体は示⇒ネに変化する。
意味 いのる(祈る)。いのり(祈り)。「祈念キネン」「祈雨キウ」「祈年キネン」(その年の豊作を祈る)
 キン・せり  艸部
解字 「艸(くさ)+斤(ちかい)」の形声。田の畔・湿地に自生する草で、水辺の近くで生える草の意。日本ではセリをいう。中国ではキンサイ(セロリに似たセリ科の植物)をいう。
意味 せり(芹)。セリ科の多年草。春の七草のひとつ。水辺の近くで生える草の意で、中国では水芹と書く。「献芹ケンキン」(つまらない野草のセリを差し上げる意で、物を贈ることをへりくだっていう語)「和蘭芹オランダゼリ・パセリ

形声字
 キン・ゴン・よろこぶ  欠部
解字 「欠(人が口をあける)+斤(キン)」の形声。キンは喜キ(よろこぶ)に通じ、口をあけて喜ぶさま。キはキンの語尾が消えた音で、斤キンに祈の音がある。[説文解字]は「笑い喜ぶ也(なり)。欠に従い斤の聲(声)。発音は許斤切(キン)」とする。
意味 よろこぶ(欣ぶ)。たのしむ。「欣然キンゼン」(よろこんで行うさま)「欣喜キンキ」(大喜びする)「欣喜雀躍キンキジャクヤク」(雀がおどるように喜ぶ)「欣求ゴング」(喜んで仏の道を求める)「欣求浄土ゴングジョウド」(喜んで浄土にゆくことを求める)
 キン・よろこぶ  忄部
解字 「忄(こころ)+斤(=欣。よろこぶ)」の形声。心でよろこぶこと。欣キンと通用する。
意味 よろこぶ(忻ぶ)。たのしむ。「忻然キンゼン」(こころよろこぶ)「忻慕キンボ」(よろこびしたう)
 キン・わらう・ポンド  口部
解字 「口(くち)+斤(=欣。よろこぶ)」の形声。よろこんで口から声をだすこと。転じて、わらう意となる。日本ではポンドの意味で使う。
意味 (1)わらう(听う)。「听然キンゼン」(大いにわらうさま) (2)きく。聴チョウの俗字。現代中国でも簡体字で、聴く意味になっている。 (3)日本では「口(くちまね)+斤(1斤の重さ)」で、1斤の重さに当たる英語を口真似する意で、ポンド(pound)をいう。1ポンドは453グラム。
 ギ・キ・ギン  氵部
解字 「氵(みずの流れ)+斤(キン⇒ギ)」の形声。ギという名の川。また、川のふち・ほとりの意味がある。
意味 (1)川の名。「沂水ギスイ」(山東省に源を発し、泗水に注ぐ川。沂河とも) (2)地名「臨沂リンギ」(沂河が市内を流れる市。山東省内で最も面積が広く人口も最大で、1,101万人(2020年)。歴史が古く新中国建国後の十大発見の一つと呼ばれる孫子竹簡が出土した銀雀ギンジャク山漢墓があることで知られる。 (3)川のふち。ほとり。きし。「鴨沂オウキ高校」(京都の鴨川の沂(ほとり)にある府立高校)
<国字> びょう  金部
解字 「金+兵(ビョウ)」の形声。ビョウと言う頭の大きな金属のくぎ。室町末期の国語辞書である伊京集に「鋲」を「金平(これで一字)」と表記していることから、ビョウ(平:たいら)に通じ、頭が平らで大きな釘の意。
意味 頭の大きな釘(くぎ)。リベット。おしぴん。「画鋲がびょう」「鋲打ち機びょううちき
<紫色は常用漢字>

参考 キンは部首「斤おの・きん」になる。漢字の右辺(旁)や下部に付いて、①おの、②おのを持つ行動、などを表す。常用漢字で5字。約14,600字を収録する『新漢語林』では22字が収録されている。主な字は以下のとおり。
常用漢字 5字
 キン・おの(部首)
 ザン・きる(斤+車の会意)
 シン・あたらしい(斤+音符「亲シン」)
 セキ・しりぞける(斤を含む会意) 
 ダン・たつ(斤を含む会意)
常用漢字以外
 シ・これ(斤+其の会意)
 フ・おの(斤+音符「父フ」)ほか 
 ※なお、斤キン・新シン・斬ザン・斥セキ・斯シ、は音符になる。

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音符「火カ」<ひ> と「灰カイ」「恢カイ」「耿コウ」「炭タン」

2022年01月19日 | 漢字の音符
 カ・ひ・ほ  火部
 
解字 火の燃える形の象形(金文は単独字としては存在しないが、炎から1字を抜き出した)。「ひ」の意味を表わす。火は部首となり、火の意味で会意文字となる。
意味 (1)ひ(火)。ほのお。「火力カリョク」(2)かじ。「火災カサイ」「失火シッカ」(3)光りのあるもの。明かり。「灯火トウカ」(4)五行(木・火・土・金・水)の一つ。「火星カセイ」(5)七曜の一つ。「火曜日カヨウビ
参考 火は部首「火ひ・ひへん」になる。漢字の左辺(偏)や下部に付いて、火や火の状態を表す。常用漢字は14字、約14,600字を収録する『新漢語林』では194字が収録されている。主な字は以下のとおり。
 火[部首]:
 灯[燈]トウ(火+音符「登トウ」) 
 焼ショウ(火+音符「尭ギョウ」)
 煙エン(火+音符「垔イン」)
 燃エン(火+音符「然ゼン」)
 燥ソウ(火+音符「喿ソウ」)
 爆バク(火+音符「暴ボウ」)
 煩ハン(火+頁の会意)
 炉[爐](火+音符「盧ロ)
 灰カイ(火+又の会意)
 災サイ(火+音符「巛サイ」)
 炎エン(火+火の会意)
  このうち、灰カイ・炎エン、は音符になる。

火が下部に付いたとき、多くが部首「灬れっか・れんが」に変化する。常用漢字で12字、『新漢語林』では45字が収録されている。主な字は以下のとおり。
 灬れっか・れんが[部首]:
 点テン(灬+音符「占セン」)
 烈レツ(灬+音符「列レツ」)
 煎セン(灬+音符「前ゼン」)
 照ショウ(灬+音符「昭ショウ」)
 煮シャ(灬+音符「者シャ」)
 熟ジュク(灬+音符「孰ジュク」)
 熱ネツ(灬+音符「埶ゲイ」)
 熊ユウ・くま(灬+能の会意)
 焦ショウ(灬+隹の会意)
 為(灬を含む会意)
  このうち、焦ショウ・為、は音符になる。

イメージ   
 「ひ」
(火・灰・炭・耿)
 「形声字」(恢・詼)
音の変化  カ:火  カイ:灰・恢・詼  コウ:耿  タン:炭


 カイ・はい  火部    

解字 篆文は「又(て)+火」の会意。手であつかえるようになった火。つまり火が燃えつきて粉状になり手であつかえることのできる灰を表している。この字の面影は旧字に残っている。旧字のナの部分は手の形。現代字は、ナ⇒厂に変化した灰になった。
意味 (1)はい(灰)。もえがら。はいにする。「灰汁あく」(灰を水に溶いた上澄み液)「灰燼カイジン」(灰ともえかす。ほろびる)「灰塵カイジン」(灰とちり。値打ちのないもの)(2)活気がないもの。静かなさま。「灰心喪気カイシンソウキ」(失意のあまり元気をなくす)
 タン・すみ   火部
解字 「山(やま)+灰(もえがら)」の会意。ここで灰は、完全に燃え尽きた灰(はい)でなく、酸素の供給を断たれて燃え尽き、炭素のかたまりとなった「すみ」である。炭は、山中のカマでむし焼きされてできた燃えがら。即ちすみ。「すみ」は原料の木がすぐ取れる山で作られる。部首は火部になっているので注意。
意味 (1)すみ(炭)。木をむし焼きにして作った燃料。「木炭モクタン」「薪炭シンタン」(まきと炭)(2)石炭のこと。「炭坑タンコウ」(3)元素の一つ「炭素」のこと。炭素は非金属元素のひとつ。「炭化タンカ」(有機物が化学変化により炭素分が大部分を占めるようになること)「炭酸タンサン」(二酸化炭素が水に溶けた時できる弱い酸)
 コウ・ケイ・あきらか  耳部 gěng
解字 「耳(みみ)+火(ひ)」の会意。[字通]によると「耳は聖セイ・聡ソウの意。火は聖火。これを以て清める意であろう」とする。私はこの解字にヒントを得て「耳は聖の略体で天子(聖王)の意。火は明るい意。合わせて天子の徳がかがやいて、①あきらか、②あかるい」の意としたい。また、梗コウ・硬コウに通じ、かたい意がある。
意味 (1)あきらか。あかるい。「耿光コウコウ」(①明らかな光。②徳のさかんなさま)「耿耿コウコウ」(①光が明るく輝くさま。② 気にかかり心が安らかでないさま) (2)かたい。かたく志を守る。「耿介コウカイ」(節操がかたく俗世間にまじわらない)

形声字
 カイ・ひろい  忄部
解字 「忄(こころ)+灰の旧字(カイ)」の形声。カイは傀カイ・魁カイ(おおきい)に通じ、心が大きく広いこと。心にかぎらず、ひろい・おおきい意で使われる。
意味 (1)ひろい(恢い)。おおきい。「恢恢カイカイ」(広く大きいさま)「天網恢恢テンモウカイカイにして漏らさず」(天の網は広く目は粗いが何一つ取りこぼすことはない。悪事をはたらいた者は必ずその報いがある<老子>。)「恢宏カイコウ」(ひろいさま。事業などをおしひろめる。=恢弘カイコウ) (2)かえる。もどる。「恢復カイフク」(失ったものをとりもどす。=回復)
 カイ・たわむれる  言部
解字 「言(いう)+灰の旧字(カイ)」の形声。[広雅、釈詁四]に「調(たわむ)るるなり」とあり、詼謔カイギャク(ざれごと)をいう。
覚え方 カイは諧カイ(たわむれる)に通じ、たわむれる意。(注:詼カイ(クワイ)と諧カイは日本語では同音だが、中国語の古代音および現代音ともに異なるので同音代替にならないので「覚え方」として)
意味 たわむれる(詼れる)。おどける。からかう。「詼諧カイカイ」(おどけ)「詼謔カイギャク」(ざれごと)「詼調カイチョウ」(ふざけかう)「詼笑カイショウ」(おどけてわらう)
<紫色は常用漢字>

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音符「夗エン」<まるくかがむ> と「怨エン」「宛エン」「腕ワン」

2022年01月16日 | 漢字の音符
 エン  夕部 

解字 金文・篆文は「タ(=月にく。からだ)+卩(ひざまずく人)」 の会意。人がひざまずいて身体をまげている形。まがる意を表す。現代字は卩の下部が湾曲して夗となった。単独で使われることはない。音符に用いられると「まがる」「くぼんでまがる」イメージを持つ。
意味 ころがりふす。

イメージ 
 「まがる」
(怨・宛・婉・腕・蜿)
 「くぼんでまがる」(鴛・盌・椀・碗・鋺)
 「形声字」(豌・苑)
音の変化  エン:怨・宛・婉・蜿・鴛・豌・鋺・苑  ワン:盌・腕・椀・碗

まがる
 エン・オン・うらむ  心部
解字 「心(こころ)+夗(まがる)」の会意形声。押し曲げられたような心の状態。抑圧されて相手をうらむ意となる。
意味 うらむ(怨む)。うらみ。あだ。かたき。「怨恨エンコン」「憤怨フンエン」「怨念オンネン」「怨霊オンリョウ」(怨みを抱いてたたりをする霊魂)「怨嗟エンサ」(うらみなげく)
 エン・あて・あてる・あたかも  宀部
解字 「宀(建物)+夗(まがる)」の会意形声。祖先をまつる廟屋のなかで、ひざまずいて身体をまげて祈るさま。その姿がおごそかなさまから、副詞化し「あたかも・さながら」の意を生じた。なお、日本では宛先・宛名などの意味に仮借カシャ(当て字)される。
意味 (1)まがる。かがむ。「宛延エンエン」(うねうねと長くつづく)「宛転エンテン」(①言葉・声などがなめらかに出る。②ゆるやかな曲線を描くさま) (2)あたかも(宛も)。さながら(宛ら)。「宛然エンゼン」(あたかも) (3)[国]あて(宛て)。あてる(宛てる)。あてはめる。「宛先あてさき」「宛名あてな
 エン  女部
解字 「女(おんな)+宛(身体をまげて祈る)」 の会意形声。宛は、廟屋のなかで身体をまげて祈る形。そこに女をつけた婉は、うずくまって祈る女を表し、祈る姿から、したがう・おだやか・しとやかの意となる。
意味 (1)したがう。すなお。「婉順エンジュン」 (2)おだやか。遠まわし。「婉曲エンキョク」「婉語エンゴ」(遠まわしに言う言葉) (3)うつくしい。しなやかで美しい。しとやか。「婉然エンゼン
 ワン・うで  月部にく
解字 「月(からだ)+宛(まがる)」の会意形声。上半身で曲がる部分がある肩口から手首までの部分。中国では手首のつけねをいう。
意味 (1)うで(腕)。かいな(腕)。肩から手首までのあいだ。また、肩から肘までのあいだ。「腕章ワンショウ」「上腕ジョウワン」(肩関節と肘関節のあいだ。二の腕) (2)うでまえ。はたらき。「手腕シュワン」「辣腕ラツワン」 (3)手首のつけね。「腕骨ワンコツ」(手首の骨。手根骨。8個からなる)
 エン  虫部
解字 「虫(へび)+宛(まがる)」の会意形声。蛇などがまがりくねるさま。
意味 蛇や虫がからだをくねらせるさま。「蜿蜿エンエン」(蛇や竜がうねりながら動くさま。=「蜿蜒エンエン」)

くぼんでまがる
 エン・おしどり  鳥部
 鴛鴦(左がオス、右がメス)
解字 「鳥(とり)+夗(くぼんでまがる)」の会意形声。背がくぼんでまがる鳥。
意味 「鴛鴦エンオウ・おしどり」に使われる字。鴛鴦はカモ目の水鳥。鴛エンは、後方のイチョウ葉形の羽が立つので背がくぼんで見えるオスの水鳥。鴦オウは、中央が少しふくらんでみえるメス鳥。雄雌むつまじく離れないので、夫婦仲のむつまじいことに例える。「鴛鴦夫婦おしどりふうふ
 ワン  皿部
解字 「皿(さら。食物を盛る鉢)+夗(くぼんでまがる)」の会意形声。食物・汁などを盛るまるい小鉢をいう。
意味 食物・汁などを盛る小鉢。中国で古くは盌が使われ、のち椀・碗ができた。現在は、椀・碗の異体字となっている。「茶盌チャワン」(茶道の抹茶碗に使われる)
 ワン  木部
解字 「木(き)+宛(ワン)」の形声。ワンは盌ワン(おわん)に通じ木製のわんをいう。
意味 わん(椀)。食物・汁などを盛る、まるく刳りぬいた木製の食器。木製に限らず用いられる。「膳椀ゼンワン」(お膳とお椀。また、食器類の総称)「飯椀めしわん
 ワン  石部
解字 「石(磁器)+宛(ワン)」の形声。ワンは盌ワン(おわん)に通じ磁器製のわんをいう。
意味 わん(碗)。食物・汁などを盛る、まるい形の陶磁器製の食器。「茶碗チャワン
 エン・かなまり  金部
解字 「金(金属)+宛(=椀・碗)」の会意形声。日本では椀・碗に通じ、金属製の盌(おわん)をいう。中国では夗エン(くぼんでまがる)に通じ、秤(はかり)の皿を言った。したがって発音はエン。
意味 (1)[国]かなまり(鋺)。金属製のわん。「銀(しろがね)の鋺(かなまる)を持ちて水を汲みありく」(竹取物語)。 (2)秤(はかり)の金属製の皿。「秤鋺ショウエン」(はかりの皿)

形声字
 エン  豆部

豌豆(「タネ(種)の販売広告」から)
解字 「豆(まめ)+宛(エン)」の形声。エンという名のマメ科の二年生または一年生作物。原産地は未詳。中国へ伝来する際の経由地である大宛エン国(中央アジア・ウズベキスタンのフェルガナ地方)から伝わったとされる豆。日本へは中国から渡来した。
意味 「豌豆エンドウ」に用いられる字。豌豆とは、マメ科の二年草。若いサヤと種子は食用となる。未熟の種子をグリンピースといい形がまるい。エンドウマメ。「莢豌豆さやエンドウ」(若いエンドウで、莢ごと食用にする)
 エン・オン・その  艸部
解字 「艸(草)+夗(エン)」の形声。エンは園エン(その・庭園)に通じ、草木の生えた庭園。
意味 (1)その(苑)。庭園。「神苑シンエン」(神社の境内の庭園)「外苑ガイエン」(神社などの外側にある広い庭園)「苑囿エンユウ」(鳥やけものを放し飼いにしてある苑)「鹿苑ロクオン」(釈迦が悟りをひらいた後、鹿が多く住む林の中ではじめて教えを説いたという所=鹿野苑ロクヤオン) (2)特定の場所。文学者・芸術家の集まり。「芸苑ゲイエン」(学芸の社会)「文苑ブンエン」(文学者の世界。文壇)
<紫色は常用漢字>

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音符「育イク」「棄キ」 と「㐬リュウ」 「流リュウ」「硫リュウ」

2022年01月13日 | 漢字の音符
𠫓  トツ  ム部          

解字 子の生まれ出る形の象形。赤子が頭を下にした正常な姿で生まれるさま。篆文の一字は、生まれ出るときの羊水を描いている。この字が単独で使われることはなく、生まれ出た子の意で会意文字を作る。

イメージ  「生まれ出た子」(育・棄)
音の変化  イク:育  キ:棄

生まれ出た子
 イク・そだつ・そだてる・はぐくむ  月部にく
解字 「𠫓(生まれ出た子)+月(からだ)」の会意。生まれ出た子のからだを表す。生まれた子は日一日と大きくなるので、子が育つ・育てる意となる。
意味 (1)そだてる(育てる)。はぐくむ(育む)。やしなう。「育成イクセイ」「養育ヨウイク」「育英イクエイ」(才能ある青少年を教育すること)「育苗イクビョウ」(苗を育てる)(2)そだつ(育つ)。成長する。「発育ハツイク
 キ・すてる  木部

甲骨文は、「生まれた子(まわりに羊水を描く)+箕(み)+両手」の会意形声。生まれた子を両手で持った箕に受ける形で、捨て子(棄子)の意。[字統]は、生まれた子を一旦すてた形にして他人に拾わせる「捨て子」の習俗と解釈している。篆文は、生まれる子の頭を下にし、甲骨文の箕⇒柄の出たチリトリの形に変えた。箕の形がなくなったので会意となる。現代字は子の羊水を省く。また、両手と柄の一部が合わさり「木」の形になった。覚えにくいので、下記のごろ合わせを使うと便利。
意味 すてる(棄てる)。ほうり出す。しりぞける。「廃棄ハイキ」「棄権キケン」(権利を棄てて行使しない)「選挙を棄権する」
覚え方 なべぶた()を、()りに31(卅一)こ、き()でつくって廃する。

棄キの筆順  棄キの正しい書き順 


    リュウ <ながれ出る>
 リュウ  川部      

解字 「頭を下にした胎児+ながれる水」の象形。出産の際、羊水が出るさま。流れ出る意を表す[学研漢和]。

イメージ  
 「ながれ出る」
(流・硫・旒)
 「リュウの音」(琉)
音の変化  リュウ:流・硫・旒・琉

ながれ出る
 リュウ・ル・ながれる・ながす  氵部
解字 「氵(水)+㐬(ながれ出る)」の会意形声。水がながれ出ること。
意味 (1)ながれる(流れる)。ながす(流す)。「流水リュウスイ」「海流カイリュウ」(2)広まる。ゆきわたる。「流行リュウコウ」「流布ルフ」(3)さすらう。さまよう。「流民リュウミン」「流浪ルロウ」(4)しかた。やりかた。「流儀リュウギ」「亜流アリュウ」 (5)根拠のない。「流言リュウゲン
 リュウ  石部
解字 「石(鉱物)+㐬(ながれ出る)」の会意形声。火山の噴火により流れ出てできた石(鉱物)。
意味 「硫黄いおう」に使われる字。硫黄とは火山の噴火で流れ出る黄色の鉱物。また、硫リュウだけでも硫黄を表す。「硫化水素リュウカスイソ」(硫黄と水素の化合物)「硫酸リュウサン」(硫黄・酸素・水素が化合した強い酸性の液)
 リュウ・ル  方部
旒旗  旒冕
旒旗 http://www.zgshoes.com/news/m/view-879.html
旒冕 https://www.duitang.com/blog/?id=1145353977
解字 「方𠂉(旗の略体)+㐬(ながれる)」の会意形声。旗の横や下からいくつも流れるように出る細長い装飾がついたもの。また転じて、流れるような装飾がついた冠をいう。
意味 (1)はたあし(旒)。旗の縁に装飾の布を付けたもの。「旒旗リュウキ」(いくつもの細長い縁飾りがついた旗)(2)冠の前後に流れるように垂らした玉飾り。「旒冕リュウベン」(前後に玉飾りを垂らした冠。身分の高い人が用いる)

リュウの音
 リュウ・ル  王部
解字 「王(たま)+㐬(リュウ・ル)」の形声。リュウ・ルという名の宝石。
意味 (1)宝石の名前。「琉璃ルリ=瑠璃」(美しい青色の宝石。ガラスの古称)(2)地名。「琉球リュウキュウ」(沖縄の別称)「琉金リュウキン」(金魚の一品種。琉球から渡来した金魚の意)
<紫色は常用漢字>

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音符「昔セキ」<洪水による水害>「惜セキ」「籍セキ」「錯サク」「借シャク」「措ソ」

2022年01月10日 | 漢字の音符
 セキ・シャク・むかし  日部

解字 甲骨文は、「キザキザ印二つ(水害)+日(日数)」の会意。キザキザ印の重なりは災の異体字で水害を表す。日は日数を意味し、これにギザギザ印を加えた「昔」は、水害のあった数日前のむかしの意。甲骨文字では数日から十数日前を指すという[甲骨文字辞典]。字形はほぼ同じ形を保って金文まで続き、篆文でギザギザ印がVの左右に横線がついた形2つになり、これが現代字では龷に変化し昔になった。意味は、甲骨文字の数日前から、過去・いにしえの意となった。
意味 (1)むかし(昔)。いにしえ。「今昔コンジャク」(今とむかし)「昔時セキジ」(いにしえ) (2)さきごろ。きのう。「昔日セキジツ」(①むかし。②昨日)「昔年セキネン」(①むかし。②前年。去年) (3)夜。「昔昔セキセキ」(夜ごと)

イメージ 
 「水害・洪水」
(昔・借・惜・鵲)
 水害で土砂が「かさなる」(錯・醋・措・耤・籍・藉)
音の変化  セキ:昔・惜・耤・籍・藉  サク:錯・醋  シャク:借  ジャク:鵲  ソ:措

水害・洪水
 シャク・シャ・かりる  イ部
解字 「イ(人)+昔(水害)」 の会意形声。水害にあい他人の力をかりること。
意味 かりる(借りる)。物や力をかりうける。「借金シャッキン」「拝借ハイシャク」「借財シャクザイ」「貸借タイシャク」(貸し借り)
 セキ・シャク・おしい・おしむ  忄部
解字 「忄(心)+昔(水害)」の会意形声。水害にあい失ったものを名残おしく思うこと。
意味  おしい(惜しい)。おしむ(惜しむ)。「惜別セキベツ」「哀惜アイセキ」(悲しみ惜しむ)「惜敗セキハイ」「不惜身命フシャクシンミョウ」(仏法のため身命を惜しまず、ささげる)
 ジャク・かささぎ  鳥部
解字 「鳥(とり)+昔(洪水)」の会意形声。洪水で渡れない天の川に鳥の橋を掛け渡し織姫と彦星を会わせた伝説をもつ鳥。
意味 かささぎ(鵲)。スズメ目カラス科の鳥。烏鵲ウジャクともいう。「鵲かささぎの橋」(陰暦7月7日の夜、牽牛星と織女星を会わせるため、鵲が翼をならべて天の川に渡す伝説上の橋)

かさなる
 サク・シャク・あやまる・まじる  金部
解字 「金(金)+昔(かさねる)」の会意形声。清代の[説文解字通訓定聲]は「金を涂(=塗)る也。今のいわゆる(所謂)鍍金トキン(メッキ)。俗字は鍍に作る」とする。青銅などの器の表面に金メッキ(金の膜を塗る)をすること。金メッキをすると下地の金属が隠されるので見誤る意となる。また、金メッキは薄い膜なので、器が物に強く触れたときなどにメッキの一部がはがれるので、はがれた部分が、まじる意となる。
古代の金メッキはどのように行われたか。
 メッキは水銀に金を溶かし(水銀の金アマルガム)それを表面に塗ったのち、熱によって水銀を蒸発させる方法で行われた。中国では、紀元前500年ごろに青銅器に「金めっき」を施したとされ、それ以降盛んに行われた。日本では奈良の大仏の造営で用いられた(この時、水銀中毒の可能性があることが研究者により指摘されている)。なお、メッキとは外来語ではなく、水銀に金がとけて消えることから「滅金メッキン」という言葉の省略語。
意味 (1)あやまる(錯まる)。まちがえる。「錯覚サッカク」「錯誤サクゴ」 (2)まじる(錯じる)。まざる。入り乱れる。「錯綜サクソウ」「交錯コウサク」「錯乱サクラン」 (3)「介錯カイシャク」とは、①付き添って世話をすること。②切腹する人のそばに付き添い、首を斬り落とすこと。
 サク・ソ・す  酉部
解字 「酉(さけ)+昔(時をかさねる)」の会意形声。できあがった酒に古い酢を種として少し入れ日をかさねて発酵させるとできる酸っぱい液体。また、「酉(さけ)+昔(かさねる)」で、酒の杯のやりとりをかさねる意から、むくいる意味となる。
意味 (1)す(醋)。日本では同音の酢サクを用いる。酸味のある液体の調味料。「醋酸サクサン」(臭気と酸味をもつ無色の液体。酢の酸味の主成分。=酢酸) (2)すい。すっぱい。 (3)むくいる。杯をやりとりする。「酬醋シュウサク」(酒杯のやりとり)
 ソ・おく  扌部
解字 「扌(手)+昔(かさねる)」 の会意形声。かさねる動作を手をつけて表し、置く意。また置いたものをうまく配置すること。
意味 おく(措く)。すえおく。とりはからう。「措辞ソジ」(文字や言葉の配置のしかた)「措置ソチ」(うまく置く。とりはからう)「挙措キョソ」(挙は手をあげる、措は手をおく、手の動作から立ち居ふるまいをいう)
 セキ・ジャク  耒部
解字 「耒(スキ)+昔(かさねる)」の会意形声。スキで土を起こして重ねること。
意味 田畑をたがやす。「耤田セキデン」(耕作地)
 セキ・ジャク・ふみ  竹部
解字 「竹(竹簡)+耤(=昔。かさねる)」の会意形声。文字を書いた竹簡を重ねて保存すること。
意味 (1)ふみ(籍)。文書。「漢籍カンセキ」「書籍ショセキ」 (2)役所の人別・戸別の文書。「戸籍コセキ」「本籍ホンセキ」「入籍ニュウセキ
 セキ・シャ・しく  艸部
解字 「艸(くさ)+耤(=昔。かさねる)」の会意形声。草をかさねるように編んだ敷物のゴザをいう。また、耤の本来の意である「耕す」に艸をつけて、特に天子が祭礼で自ら耕す意に用いる。
意味 (1)しきもの。草で編んだ敷物。(2)(敷物を)しく(藉く)。(敷物の上を)ふむ。(転じて)ふみにじる。「狼藉ロウゼキ」(狼がふみにじる意から、①乱雑なさま。②理不尽に暴行する) (2)天子が自らたがやす。「藉田セキデン」(天子が祖先の祭礼に用いる米をつくるため自ら耕す田。およびその儀式。=籍田) (3)(敷き物を敷いて相手を)いたわる。「慰藉イシャ」(なぐさめ、いたわる。=慰謝)
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音符 「伏フク」 <ふせる>  と 「袱フク」

2022年01月07日 | 漢字の音符
 フク・ふせる・ふす  イ部

解字 金文は、人の後ろの下方に犬を描いた形。意味は分からないが、史伏尊という器に「史伏が作る」とあることから姓か人名と思われる。篆文は「人+犬」の会意。後漢の[説文解字]は「司(=伺う)なり」とし、犬が人の様子を伺う、とするが納得できる説明ではない。[字統]は「墓で人を収めた棺の下に殉死させた犬を埋葬した殉葬の形」とする。伏流水や潜伏など、地下にもぐるイメージの熟語があることを考えると、金文の解字として独創的だと思われる。こうした説も念頭に私は『「イ(人)+犬(いぬ)」の会意。犬が人につき従い、飼い主の横で姿勢を低くしているさま、犬が伏せている姿を人にも及ぼしていう。また、犬が人に服従する意となる。さらに、転じて伏せてかくれる。ひそむ意味ともなる』との解字としたい。
意味 (1)ふせる(伏せる)。ふす(伏す)。うつむく。「伏臥フクガ」(ふす。ねる。伏も臥も、ふす意) (2)したがう。服従する。「屈伏クップク」「伏罪フクザイ」(罪に伏する) (3)ふせてかくれる。ひそむ。「伏兵フクヘイ」「潜伏センプク」「伏流フクリュウ」「伏魔殿フクマデン」 (4)姓のひとつ。「伏羲フクギ」(古代中国神話に登場する神または伝説上の帝王、文化をはじめてつくった存在として語られる) (5)地名。「伏見ふしみ」(京都市南東部にある地名。伏見区、伏見稲荷、伏見山(明治天皇陵墓)、などがある。語源は断層崖などの上から伏して見る(俯瞰する)意らしい。すると京都の場合、宇治・巨椋池を俯瞰できる伏見山が語源としてふさわしい。)

イメージ
 「ふせる」(伏・袱・茯・鮲)
音の変化 フク:伏・袱  ブク:茯  こち:鮲

ふせる
 フク・ふくさ  衤部
 
進物を載せる盆の上に掛けた袱紗 
【京都西陣】織屋ぼちぼちブログから
解字 「衤(ぬの)+伏(ふせておおう)」の会意形声。物の上にふせる(おおう)ぬの。物をおおいかくす布をいう。
意味 ふくさ(袱)。絹などの小形のふろしき。「袱紗フクサ=袱」(①進物などの上に掛ける小型のふろしき。②茶の湯で使う絹布)
 ブク・フク  艸部

ブクリョウ(茯苓)「生薬図鑑」(大正製薬情報サイト)より
解字 「艸(くさ)+伏(ふせる)」の会意形声。地中に伏せている植物(菌類)の意。
意味 「茯苓ブクリョウ」に使われる字。茯・苓ともに地中にある根を利用する生薬を意味する。赤松や黒松の切り株から3~5年を経た根の周囲の土中に生ずるマツホド(松塊)の菌核の外装を除いて乾燥させたもの。鎮静、利尿薬として、多くの漢方薬の要薬として使用される。
 なお、苓レイ・リョウはマメ科カンゾウ属の多年草。根は赤褐色で甘根・甘草とよび生薬として鎮痛・鎮咳薬剤として使われる。
鮲[国] こち  魚部

マゴチ(ウィキペディアより)
解字 「魚(さかな)+伏(ふせる)」の会意の国字。砂地のなかに伏せるようにして生息する魚で、コチをいう。
意味 こち(鮲)。鯒とも。上から押しつぶされたような平たい体と大きなひれをもち、海底に腹ばいになって生活する海水魚の総称。口は大きく尾は細い。ネズミゴチ、マゴチ、メゴチなどがいる。 
<紫色は常用漢字>

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音符「丞ジョウ」<人を穴からひきあげる>「蒸ジョウ」 と 「承ショウ」

2022年01月04日 | 漢字の音符
 ジョウ・ショウ・たすける  一部         

解字 甲骨文・篆文ともに「両手+ひざまずく人+凵(穴)」の会意。篆文は人の足と、凵(穴)の底が連続したので山に見えるが山ではない。意味は、深い穴に落ちた人を両手で助け上げる形。助ける意を表わす。現代字は、ひざまずく人(卩セツ)⇒了、両手⇒水の両側、凵(穴)⇒「一」に変化した丞になった。部首は一部いち
意味 たすける(丞ける)。助け役。副官。「丞相ジョウショウ」(天子を助けて国政を行なった最高位の官)「県丞ケンジョウ」(県の副官)

イメージ 
  穴から「たすける」(丞・拯)
  穴から助けあげるので「あがる」(烝・蒸)
音の変化  ジョウ:丞・拯・烝・蒸

たすける
 ジョウ・すくう  扌部
解字 「扌(手)+丞(たすける)」 の会意形声。丞は助けあげる意だが、丞相などの役職名になったので、手をつけて、たすける動作を表す。
意味 すくう(拯う)。すくいあげる。たすける。「拯救ジョウキュウ」(拯も救もすくう意)「拯難ジョウナン」(救難)「拯済ジョウサイ」(救済)

あがる
 ジョウ・ショウ  灬部
解字 「灬(火)+丞(あがる)」の会意形声。火気がのぼる意で火の熱気が上がる意。
意味 (1)火の熱気が上げる。冬の祭り。「烝祭ジョウサイ」(冬の祭り)「烝騰ジョウトウ」(熱気が上昇する)「烝矯ジョウキョウ」(熱気に当てて曲がりを矯正する) (2)さかんにおこり立つさま。数が多いさま。「烝雲ジョウウン」(立ち昇る雲)「烝民ジョウミン」(もろもろの民。庶民)「烝徒ジョウト」(徒党) (3)むす(=蒸す)。
 ジョウ・むす・むれる・むらす  艸部

麻蒸し桶(青森県立郷土資料館)
https://kyodokan.exblog.jp/30367045/
解字 「艸(くさ)+烝(火気がのぼる)」の会意形声。後漢の[説文解字]は「析(さ)きたる麻中の幹なり」として、麻の皮をはいだ「おがら」としている。麻の皮をはぐとき、青森県立郷土資料館の麻蒸し桶の説明に「下の大きな釜でお湯を沸かし、切った麻を縦に並べこの木製の桶をかぶせて蒸した。堅い麻はこの麻蒸し桶を使って蒸すことで柔らかくなり、そこから麻糸となる皮を取った。」(ふるさとの宝物189回 麻蒸し桶)とあり、蒸すのに使用しているので、「おがら」は結果的にできたのであり、皮をとるために蒸す意と思われる。この場合の艸(くさ)は麻になる。
 しかし、私はむしろバナナの葉などに食材を包んで括り、焼いた多くの石の上に置き、その上にさらにバナナの葉をかぶせる南方の「石蒸し料理」が、現代ではこの字の説明に合うと思う。「石蒸し料理」は葉で密閉して熱を加えるので、中の食材は蒸されて水分が蒸発してくる。湯気が立ち昇るから蒸気の意味ともなり、転じて蒸し暑い意ともなる。
意味 (1)むす(蒸す)。むらす(蒸らす)。水蒸気が立ち昇る。「蒸気ジョウキ」「蒸発ジョウハツ」「蒸留ジョウリュウ」(蒸気を留める。蒸気を冷やして液体にすること)「蒸籠せいろ・せいろう」(蒸し器) (2)むれる(蒸れる)。蒸し暑い。「蒸暑ジョウショ」「蒸湿ジョウシツ」(蒸し暑く湿気がある) (3)もろもろ。おおい。「蒸民ジョウミン」(=烝民)

      ショウ <人を持ち上げる>
 ショウ・うけたまわる  手部          

解字 甲骨・金文は両手でひざまずいた人を持ち上げている形。篆文ではさらに中央にもう一つ手が描かれ、三つの手で持ち上げている。いずれも尊者を奉(たてまつ)る形であるが、字の意味は尊者を持ち上げている側にある。持ち上げている側にとって、尊者の言うことを、受ける・受け入れる意となり、また受けたものを「ひきついでゆく」意となる。現代字の承は、三つの手が「水の両側+手」に、ひざまずいた人は「了(手と一部重複する)」に変化した。丞ジョウと似ているが、丞は穴から人を引き上げて助ける形で、承は人を捧げ上げている形である。
意味 (1)うける。受け入れる。「了承リョウショウ」「承認ショウニン」 (2)つぐ。ひきつぐ。「継承ケイショウ」「口承コウショウ」 (3)[国]うけたまわる(承る)。聞くの敬語。
<紫色は常用漢字>

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