漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

紛らわしい漢字 「貨カ」 「賃チン」 「貸タイ」

2018年03月29日 | 紛らわしい漢字 
 貨カ」 「賃チン」 「貸タイ」は、上部左辺のイ(人)と下部の貝が皆同じで紛らわしい漢字である。ポイントは音符となる上部の「化カ」と「任ニン」と「代ダイ」の違いである。これらの違いがわかると、紛らわしくみえる漢字もたちまち理解できる。

 カ・ケ・ばける・ばかす  ヒ部          

解字 左は立った人、右は逆さになった人を合わせた会意。立った形から逆さへと姿を変えることを示す。部首は逆さになった人を示すヒ。化を音符に含む字は、「かわる・かえる」イメージを持つ。
意味 (1)ばける(化ける)。ばかす(化かす)。かわる。かえる。「化身ケシン」「変化ヘンカ」 (2)影響を及ぼす。「感化カンカ」「教化キョウカ」 (3)異なる物質が結合して新しい物質になる。「化合カゴウ
かわる・かえる
 カ・たから 貝部
解字 「貝(かい)+化(かわる)」 の会意形声。貝が値うちのあるものに変わること。
意味 (1)たから(貨)。価値のあるもの。「財貨ザイカ」 (2)おかね。「貨幣カヘイ」「金貨キンカ」 (2)しなもの。商品。「貨物カモツ」「雑貨ザッカ


 ニン・まかせる・まかす  イ部

解字 壬は甲骨文字で工具の省略形と同形であることから「工具の一種」とされる(具体的に何を表すかは不明)。任の甲骨文字は、「イ(人)+工(工具の一種)」で、工具を背負ったり、前でかかえる人を表す。工具を携えて定められた職務を行う人の意と思われる。[甲骨文字辞典]によると、意味は職名で地名に付す場合が多く、地方領主またはその副官と推定されるという。金文以降、工⇒壬に変化し 「イ(人)+壬ジン・ニン(工具の一種)」 の会意形声。意味は、①工具をになう・かかえる、②工具を用いての、つとめ・仕事、③つとめを、まかす・まかせる、意味となった。
意味 (1)になう。かかえる。「肩任ケンニン」(肩でになう)「重石を任(かか)える」(重い石をかかえる) (2)しごと。役目。「任務ニンム」「任命ニンメイ」「就任シュウニン」 (3)まかせる(任せる)。まかす(任す)。ゆるす。「任意ニンイ」「一任イチニン」 (4)任務をになう意気込み。おとこ気。「任侠ニンキョウ
しごと(任務) 
 チン  貝部
解字 「貝(財貨)+任(任務・しごと)」 の会意形声。お金を払って任務(しごと)をしてもらうこと。雇った人にはらう金銭をいう。
意味 (1)やとう。やとわれる。 (2)やとった人にはらうお金。代償としてはらう金銭。「賃金チンギン」(労働者が任務をして受け取る報酬)「運賃ウンチン」(運んだ代金)「賃料チンリョウ」(代償として払う料金)「賃貸チンタイ」(賃料をとって貸すこと)「賃貸住宅チンタイジュウタク」(家賃[賃料]をとって貸す住宅)「賃貸借契約チンタイシャクケイヤク」(家賃[賃料]をとって貸す方と借りる方が結ぶ契約)


 ダイ・タイ・かわる・かえる・よ・しろ  イ部

解字 弋ヨクは、杙ヨク(くい)の原字であるが、単独では、いぐるみ(紐をつけた矢)に仮借カシャ(当て字)して用いられる。音符「弋ヨク」を参照。鳥の群れに、いぐるみ(弋矢ヨクヤ)を放ち、紐を鳥に巻き付かせて捕獲する。鳥を捕獲すると鳥に巻き付いている紐が矢とつながっている箇所を外し、新しい紐に代えるので、「かえる」イメージがある。したがって、「イ(ひと)+弋ヨク(かえる)」 の会意は、人を新しくかえる意となり、人が交代すること、かわる・かえる意となる。
意味 (1)かわる(代わる)。かえる(代える)。「交代コウタイ」「代理ダイリ」(本人に代わって事を処理する) (2)代わりになるもの。「代価ダイカ」「代金ダイキン」「形代かたしろ」(神の代わりとなるもの) (3)王の一代の期間。年齢や年号の範囲。よ(世)。「唐代トウダイ」「上代ジョウダイ」 (4)[国]しろ(代)。田地。「苗代なわしろ・なえしろ」(稲の種をまいて苗を育てるところ)
入れかわる(代) 
 タイ・かす  貝部
解字 「貝(財貨)+代(入れかわる)」 の会意形声。お金(貝)を受け取り、代わりに物や場所を使わせてあげること。
意味 かす(貸す)。かし。「賃貸チンタイ」(家賃など[賃料]をとって貸す)「貸与タイヨ」(貸し与える。貸すこと)「貸付かしつけ
 タイ・ふくろ  衣部
解字  「衣(ぬの)+代(入れかわる)」 の会意形声。いろんな物を次々と入れかえて中につめる布のふくろ。袋の篆文は「帒」で、現代字は帒の字の巾(ぬの)⇒衣に変わった形。
意味 (1)ふくろ(袋)。「皮袋かわぶくろ」「袋綴ふくろとじ」(冊子本の綴じ方の一つ。紙の中央を折りたたんで綴じる)「有袋類ユウタイルイ」(母親のお腹の袋で子を育てる動物) (2)[国]行きづまり。「袋小路ふくろこうじ
<紫色は常用漢字>

参考  音符「化カ」へ
     音符「壬ジン・任ニン」へ
     音符「代ダイ」へ



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紛らわしい漢字 「執シツ」 と 「埶ゲイ」

2018年03月26日 | 紛らわしい漢字 
 「執シツ」と「埶ゲイ」は右側の字が丸で共通する。丸は丸い意でなく、人がひざまずいて両手を出しているさまで丮ケキという字が変化したかたち。では、人が両手を出すかたちの丮ケキ(=丸)に対して、その左辺にある幸と坴には一体どんな意味があるのだろうか。

               シツ <しっかりと捕まえる>
 シツ・シュウ・とる  土部     

解字 甲骨文字から篆文まで、「幸(手かせ)+丮ケキ(人が両手を出してひざまずいた形)」 の会意。幸は 「手かせ」 の形。(単独では手かせをされるのを免れて幸いの意になる)。丮ケキは後に丸となった。両者を合わせた執シツは、坐って手を出している人の両手に手かせをはめ、しっかりと捕まえたさま。罪人をとらえるが原義。しっかりと罪人をとらえる意から、「とる・手にとる」、捕まえて放さないことから「こだわる・しつこい」意となる。
意味 (1)とる(執る)。手にとる。とり行う。「執刀シットウ」「執筆シッピツ」 (2)あつかう。つかさどる。「執事シツジ」 (3)こだわる。しつこい。「執念シュウネン」「固執コシツ・コシュウ」「執心シュウシン

イメージ  「しっかりと捕まえる」 (執・摯・蟄)
音の変化  シツ:執  シ:摯  チツ:蟄
しっかりと捕まえる
 シ  手部
解字  「手(て)+執(しっかりと捕らえる)」 の会意形声。手でしっかりと捕らえること。転じて、しっかりと心に受け止めること。
意味 (1)とる。もつ。つかむ。 (2)まこと。まじめ。「真摯シンシ」「摯実シジツ」(まじめで誠実) 
 チツ・かくれる  虫部
解字 「虫(むし)+執(しっかりと捕らえる)」 の会意形声。虫が捕らえられたように土の中で冬ごもりすること。また、それを人に移していう。
意味 かくれる(蟄れる)。虫が地中にとじこもる。「蟄虫チツチュウ」(地中で冬籠りする虫)「啓蟄ケイチツ」(冬籠りの虫がはい出ること。啓は始める意)「蟄居チッキョ」(外出しないで家にこもること)


               ゲイ・セイ <人が草木を育てる>
 ゲイ・セイ  土部

解字 甲骨文は両手で苗木をもってひざまずく人の形で、木を植え育てる様子を表す。金文は左辺が、木の下に土を加えた形。篆文は、「坴(土の上に木がある形の変形字)+丮ケキ(人が両手を出した形)」の会意。ひざまずいた人が両手を出して土の上の木を手入れして育てている形。いずれも、「植物に手を加えて育てる」意となる。現代字は、篆文の右辺が、丮⇒丸に変化した。
※埶ゲイの左辺の「坴」は、陸の右辺と同じ形だが、成り立ちの違う字。「陸リク」を参照。
意味 (1)うえる。草木をうえる。 (2)いきおい。

イメージ  「草木を植え育てる」 (芸・熱・勢)
音の変化  ゲイ:芸  セイ:勢  ネツ:熱
草木を植え育てる
[藝] ゲイ・わざ・うえる  艸部
解字 旧字は 「艸(くさ)+埶(草木を植え育てる)+云(=耘ウン。雑草を取り除く)」 の会意形声。人が植物を植え、雑草を取り除いて草木を育てる意。のち、園芸の意味から転じて、人が身につけたさまざまな「わざ」の意になった。新字体は旧字から埶を省いた芸。これにより、この字の基本となる音符部分がすっぽり抜けてしまった。
意味 (1)わざ(芸)。身につけたわざ。技能。学問。「芸術ゲイジュツ」「芸能ゲイノウ」「芸苑ゲイエン」(学芸の世界) (2)うえる(芸える)。草木を植え育てる。「園芸エンゲイ」「農芸ノウゲイ
 セイ・いきおい  力部
解字 「力(スキ)+埶(草木を植え育てる)」 の会意形声。力は土を掘り起こすスキの象形。勢は、スキで土地を掘り起こし、草木を育てること。すると草木は「いきおいよく」成長する。また、植物が成長するいきおいを、人に例えていう。
意味 (1)いきおい(勢い)。さかんな力。「勢力セイリョク」「優勢ユウセイ」 (2)ようす。ありさま。「形勢ケイセイ」「情勢ジョウセイ」 (3)むれ。人の集まり。「軍勢グンゼイ
 ネツ・あつい  灬部
解字 「灬(火)+埶(草木を植え育てる⇒育てて大きくする)」 の会意。火を大きくしてゆくこと。草木を植え育てるように、たきぎに火をつけて、火をおおきくしてゆくこと。火が発するネツ(温かさやあつさ)をいう。初期の火は温かく、大きくなった火は熱い。
意味 (1)ねつ(熱)。ほてる(熱る)。人の体温およびそれを超える温かさ。「平熱ヘイネツ」「微熱ビネツ」「発熱ハツネツ」「熱病ネツビョウ」「熱帯ネッタイ」 (2)あつい(熱い)。高温で手を触れられない。「熱湯ネットウ」「灼熱シャクネツ」(焼けて熱い) (3)あつい(熱い)。夢中になる。心をうちこむ。「熱心ネッシン」「熱意ネツイ」「熱狂ネッキョウ
<紫色は常用漢字>

参考  音符「執シツ」へ
     音符「埶ゲイ」へ

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音符「桼シツ」 <うるし> と 「漆シツ」「膝シツ」

2018年03月22日 | 漢字の音符
 シツ・うるし  木部                 

解字 ウルシの木からウルシを採る形。篆文は、木に樹液の流れを示すハを三つ加えた形で、木の幹を傷つけ、漆液が流れる形の象形[字統]。うるし・ウルシの木(=漆)を意味する。現代字は「木+ハ+水」の形。

漆液の採取(「堤淺吉漆店 漆精製」より)
意味 うるし。うるしの木。
覚え方 (き)(ハ)みず()でシツ

イメージ 
 「うるしの木」
(漆)
 ウルシ液の性質から「ねばりのある・柔軟な」(膝)
音の変化  シツ:漆・膝

うるしの木
 シツ・うるし  氵部
解字 「氵(液体)+桼(うるしの木)」 の会意形声。ウルシの木から樹液をとること。
意味 (1)ウルシ(漆)。ウルシの木からとれる樹液。ウルシの木。「漆器シッキ」「漆工シッコウ」 (2)くろい。ウルシのように黒い。「漆黒シッコク」  (3)「漆喰シックイ」とは、「石灰」の唐音がシックイと発音されたことからの当て字とされる。瓦の目地の充填、壁の上塗りなどに使われる消石灰を主成分とした塗装剤。漆が喰い込むように隙間や表面を塗る意からの当て字。

ねばりのある・柔軟な
 シツ・ひざ  月部にく

解字 甲骨文は人の「ひざ」の部分に指事記号の丸印をつけて示した字[甲骨文字辞典]。篆文から人⇒ひざまずいて膝をまげた形である卩セツに変わり、それに音を表す桼シツをつけた。桼シツは、ねばりのある・柔軟なイメージがあり、自由に曲げ伸ばしできる柔軟なひざの部分の意味を表した。楷書から、卩⇒月にく(からだ)に変化した膝になった。「月(からだ)+桼(ねばりのある・柔軟な)」の会意形声。自由に曲げ伸ばしできる柔軟なひざの部分の意。
 音を表す桼シツについては、単に発音だけを表す形声字とも言えるが、桼シツ(うるし)の意味を考えて膝を理解したほうが覚えやすい。
意味 ひざ(膝)。「膝頭ひざがしら」「膝枕ひざまくら」「膝行シッコウ」(ひざまずいたまま進む)「膝下シッカ」(ひざもと)
<紫色は常用漢字>

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音符「亘セン・カン」 <めぐる>「垣エン」「恒コウ」 と 「亙コウ」

2018年03月18日 | 漢字の音符
 セン・カン・コウ・わたる  二部          

解字 甲骨文及び金文は、回りこむ形を表している。篆文で上下に囲みをあらわす二線が加えられ、隷書で回り込む形が日に変化した亘になった。回りこむ形から「めぐる」、篆文から囲みを表す二線が加えられ「めぐらす」意となるほか、同音である亙コウ(わたる)に通じ、わたる意も表わす。 
意味 (1)めぐる。めぐらす。 (2)わたる(亘)。人名に用いる。

イメージ 
 「めぐる・めぐらす」
(亘・桓・垣)
 「形声字」(恒)
 「その他」(亙)
音の変化  セン・カン・コウ:亘  エン:垣  カン:桓  コウ:恒・亙

めぐる・めぐらす
 カン  木部
解字 「木(き)+亘(めぐる)」の会意形声。旅人がめぐるときに目印となるように立てた木。要所や宿場に立てられた木。
意味 (1)漢代に宿場のしるしとして立てた木。しるしとして立てた木。「桓表カンピョウ」(要所や宿場の入口に立てた表木) (2)めぐる。「盤桓バンカン」(①あちこち歩き回る。②ぐずぐずして立ち去りにくい) (3)人名。「桓公カンコウ」(春秋時代の斉国の君主)
 エン・かき  土部
解字 「土(つち)+亘(めぐらす)」の会意形声。周囲にめぐらした土塀。日本では土塀だけでなく、かきねの意に用いる。
意味 かき(垣)。かきね。かこい。「垣根かきね」「柴垣しばがき」「垣内かいと」(垣根の中。小集落)「垣外かいと」(垣根の外)「垣籬エンリ」(竹や柴などで作った垣)

形声字
[恆] コウ・つね  忄部
解字 「忄(心)+亘(コウ)」の形声。コウは亙コウ(わたる・かわらない)に通じる。亙コウは、甲骨文・金文で、月が東から西へわたる形で、わたる意があるが、月の動きはいつも変わらないので、かわらない意も持つ。そこに心のついた恒は、変わらない心の意。恆は異体字。戦前までは恆が正字で、恒が俗字であったが、逆転した。
意味 つね(恒)。つねに。いつも。「恒久コウキュウ」「恒温コウオン」「恒産コウサン」(一定の財産)「恒心コウシン」(変わらない心)

<参考>
 コウ・わたる  二部

解字 甲骨文・金文は、「二(二つの線)+月(つき)」の会意。月が東から西へとわたるさまを表す。篆文は、二(両岸)と舟を描いて、舟でわたる意。現代字は舟が変化した亙になった。
意味 わたる(亙る)。一方の端から他方の端までとどく。つらなる。
<紫色は常用漢字>

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音符 「宜ギ」 <祭肉が盛大にのったさま>

2018年03月15日 | 漢字の音符
 ギ・よろしい・むべ  宀部

解字 甲骨文・金文は、且(肉をのせた供物台の象形)の中に、さらに夕や月(いずれも肉)を描いた形で、俎(肉をのせた供物台にさらに肉を描いた形)と同じ成り立ちの字。俎が、祭肉がのった供物台、のちに俎板(まないた)の意になったのに対し、宜は祭肉が盛大にのったさまを表し、準備が整い神祭りが「よろしい」意となる。字形は篆文から外側の線と肉(夕・月)が分離し、現代字は外側の線が宀(建物)となり、内側の肉が且に変化した宜となった。
意味 (1)よろしい(宜しい)。「宜春ギシュン」(よろしい春の意で、立春をいう)「時宜ジギ」(時がよい) (2)都合がよい。「適宜テキギ」(その場・状況に合わせて)「便宜ベンギ」(便利なこと) (2)むべ(宜)。うべ(宜)。もっともなこと。「宜(むべ・うべ)なるかな」(もっともなことだなあ) (3)助字。よろしく~べし。
覚え方 (建物)の中に肉をのせたが置かれ、祭りがすべて(よろ)しい。

イメージ  「よろしい」 (宜・誼)
音の変化  ギ:宜・誼    

よろしい
 ギ・よしみ  言部
解字 「言(いう)+宜(よろしい)」の会意形声。よろしいと言うこと。正しいすじみちの意。のち、人が他人に「よろしい」と言って好意をしめす意となり、親しいつきあいを言う。
意味 (1)よい。正しいすじみち。「仁誼ジンギ」(いつくしみの心とただしいすじ道=仁義) (2)よしみ(誼)。親しいつきあい。「友誼ユウギ」(友だちのつきあい)「厚誼コウギ」(親しいつきあい)
<紫色は常用漢字>

<関連音符>
 ショ・ソ・かつ  一部
解字 犠牲の肉をのせた供物台の象形。
意味 (1)かつ(且つ)。 (2)まさに~す。 音符「且」を参照。

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紛らわしい漢字 「旅リョ」 と 「斿ユウ」

2018年03月11日 | 紛らわしい漢字 
 「旅リョ」と「斿ユウ」(遊ユウの原字)は、ともに旗の略体である「方𠂉」を持つ字。違うのは旗の下に来る字だ。旅は人が二人、斿は子である。

               リョ <旗について人々が行く>
 リョ・たび  方部

解字 甲骨文字は、旗棹を持った人のあとに人がついている形。金文第一字も同じ形だが、第二字は下に車が描かれており軍の行進を表している。篆文から「方人(旗の略体)+从(人がならぶ)」の形になり、現代字で旅となった。旅の右下は从(ふたりの人)の変形である。旅は人々が軍旗の下に隊列を組んで出行すること。もと軍の移動をいい、五百人の軍団を旅といった(字統)。のち、「たび」の意となった。
意味 (1)軍隊。「旅団リョダン」(二、三個連隊からなる陸軍部隊の編成単位) (2)たび(旅)。たびをする。「旅行リョコウ」「旅館リョカン」「旅路たびじ

               ユウ <旗竿のまわりであそぶ子供>
 ユウ  方部

解字 甲骨文から金文まで「吹き流しのついた旗竿+子(こども)」の会意。篆文から吹き流しが「方𠆢」の形に変化した。現代字は、𠆢⇒𠂉に変化した斿となった。斿は、旗竿のまわりで遊ぶ子供たちの意となる。(篆文の斿は、游から抜きだして作成)
意味 はた。ふきながし。あそぶ。

イメージ   子供たちが旗竿のまわりで「あそぶ」 (斿・遊)
音の変化  ユウ:斿・遊
あそぶ
 ユウ・ユ・あそぶ  之部
解字 「之(ゆく)+斿(あそぶ)」 の会意形声。あそんで歩くこと。
意味 (1)あそぶ(遊ぶ)。楽しむ。「遊戯ユウギ」「遊興ユウキョウ」(遊び興ずる)「遊山ユサン」(山野に遊びに出る) (2)旅をする。勉学に他国へ行く。「漫遊マンユウ」(心のままに諸国をめぐり旅をする)「遊学ユウガク」(よその土地で学問をする) (3)自由に動きまわる。「遊撃ユウゲキ」(戦況に応じて敵を攻撃したり、味方をたすけること)「遊軍ユウグン」(遊撃する軍隊) (4)すさぶ(遊ぶ)。すさび(遊び)。きのむくまま。「手遊(てすさ)び」「遊(すさ)び事」(なぐさみごと) (5)使われずにいる。「遊休地ユウキュウチ
<紫色は常用漢字>

参考  音符「旅リョ」
     音符「斿ユウ」


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紛らわしい漢字 「未ミ」 と 「末マツ」

2018年03月09日 | 紛らわしい漢字 
 「未」と「末マツ」は、木の上が短い横線か長い横線のちがいである。しかし、成り立ちはまったくちがう。未は木の先端の枝がのびる様子を表した象形文字なのである。一方、末は木の上部に一印をつけ、木の最も遠い部分をしめす指事文字で、物の末端、行く末、重要でない部分などの意味になる。

    ミ <木のこずえの枝葉>
 ミ・ビ・いまだ・ひつじ  木部

解字 甲骨文から篆文まで、木のこずえの枝葉が上にのびてゆく形の象形で、わかい・まだのびきらない意から、「いまだ・まだ」の意味をしめす。また、「いまだ~せず」の否定の意にもなる。また、これらの意味と関係なく、十二支の八番目(ひつじ)に仮借カシャ(当て字)された。現代字は上の枝葉が短い一で表されている。
意味 (1)いまだ(未だ)。まだ。いまだ~せず。いまだし。「未開ミカイ」「未熟ミジュク」「未詳ミショウ」「未来ミライ」(まだ来ていないとき(時)。過去・現在とともに時の流れを区分した言い方) (2)ひつじ(未)。十二支の第八位。「未申ひつじさる」(十二支で表した方角で、南西をいう)

イメージ 
 「いまだ~せず」
(未・昧・妹) 
  こずえの枝は下から見上げると「かすか・はっきりしない」(味・魅)
音の変化  ミ:未・味・魅  マイ:昧・妹
いまだ~せず
 マイ・くらい  日部  
解字 「日(ひ)+未(いまだ~せず)」の会意形声。日がまだ昇ってこない。即ち暗い意となる。
意味 (1)くらい(昧い)。夜明けのうす暗いとき。「昧旦マイタン」(夜明け) (2)はっきりしない。「曖昧アイマイ」 (3)おろか。「愚昧グマイ」「蒙昧モウマイ」(物事の道理にくらい)
 マイ・いもうと  女部
解字 「女(おんな)+未(いまだ~せず)」 の会意形声。姉とくらべまだ成育していない女。
意味 (1)いもうと(妹)。年下の女きょうだい。「姉妹シマイ」 (2)年少の女性や妻を呼ぶ言葉。いも(妹)。「妹背いもせ」(愛し合う男と女。夫婦)

かすか・はっきりしない
 ミ・あじ・あじわう  口部
解字 「口(くち)+未(かすかな)」 の会意形声。食べたとき口の中で感じるかすかで微妙な味わい。
意味 (1)あじ(味)。あじわう(味わう)。「味覚ミカク」「五味ゴミ」「珍味チンミ」 (2)物事のおもむき・あじわい。「趣味シュミ」「玩味ガンミ」(十分にあじわう)
 ミ  鬼部
解字 「鬼(おに)+未(はっきりしない)」の会意形声。何とも得体のしれない妖怪。
意味 (1)もののけ。すだま。ばけもの。「魑魅チミ」(山の怪物。すだま)「魑魅魍魎チミモウリョウ」(山の怪物や川の怪物。さまざまのばけもの) (2)みいる(魅入る)。人の心を惹きつけて迷わす。「魅惑ミワク」「魅了ミリョウ」「魅力ミリョク


    マツ <木の最も遠い部分>
 マツ・バツ・すえ  木部

解字 木の上部に肥点(金文)や、一印(篆文)を加えて、木の最も遠い部分を示した指事文字。「本」が木の下部に一を加えたのに対応した文字[字統]。物の末端、行くすえ、終り、重要でないこと等の意となる。
意味 (1)すえ(末)。物のさき。「末端マッタン」「末子バッシ・マッシ」 (2)行く先。将来。「行く末(すえ)」 (3)子孫。「末代マツダイ」 (4)終り。はて。「年末ネンマツ」「週末シュウマツ」 (5)しも。ひくい。「末席マッセキ」「末座マツザ」 (6)こまかい。こな。「粉末フンマツ

イメージ 
 「木の末端」
(末)
  意味の(6)の「こまかい・こな」(抹)
音の変化  マツ:末・抹
こまかい・こな
 マツ  扌部
解字 「扌(手)+末(こまかい・こな)」の会意形声。手でこすって粉にする。また、粉をこすりつけること。
意味 (1)する。こする。粉にする。なする。「抹茶マッチャ」(臼で挽いて粉末にした茶)「抹香マッコウ」(粉末の香)「一抹イチマツ」(ひとなすり) (2)ぬりつぶす。消す。「抹消マッショウ」(ぬりけす)「抹殺マッサツ」(こすり消してなくす)
<紫色は常用漢字>

参考 
音符「未ミ」へ   
音符「末マツ」

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特殊化した部首 「阝こざと」 と 「阝おおざと」

2018年03月07日 | 特殊化した部首
 「阝」は不思議な部首である。これは漢字か?というと漢字ではない。なぜなら、名称と意味はあるが発音がないからだ。しかも、漢字の左辺にある時と、右辺にある時で名称と意味が異なる。すなわち、左辺にあるとき「こざと」と呼ばれ、右辺におかれると「おおざと」と呼ばれるのである。意味も「こざと」が主に丘を表すのに対し、「おおざと」は人々がまとまって住む土地を表す。
 結論をいうと、阝(こざと)は阜の省略形、阝(おおざと)は邑ユウの省略形ということになっている。いったい何故この2字は同じ形になってしまったのか?


   フ <阝(こざと)の原字>
 フ・おか  阜部 
阜にあたる字形の甲骨文
 阜の古代文字は篆文まで遡れるが、この文字にあたる字形として甲骨文は2つの系統がある。一つはAで梯子(はしご)、もう一つはBで丘の向きを変えた形である。後代には両者が混同したが、甲骨文字では使い分けられており、Aは梯子を用いた動作や上昇の象徴として使われ、Bは丘陵に関係する文字に使われている[甲骨文字辞典]。金文の阜にあたる字形は、甲骨文字とほぼ同じ形のA 梯子(はしご)と、B 丘が使われるが、両者が混同して使われることがある。
上が阜、下が部首の阝
 篆文にいたり字体が統一された。次の隷書レイショ(漢代の役人などが主に使用した書体)で上部と下部に変化がおこり、楷書で現在の字体である阜になった(図の上部)。一方、漢字の右辺に付いた字体は、独自な変化をたどった。隷書で三つの山をもつ形⇒二つ山になり、ほぼ現在の阝に近い形に変化したのである(図の下部)。こうして、阜と部首の「阝」は、隷書で分離した。阜は現在では梯子の意味はなく、丘や大きい・さかん・多い意になっている。
阜の意味 (1)おか(阜)。大きな丘。台地。 (2)大きい。大きくなる。「阜成フセイ」(立派にしあげる) (3)さかん。さかんにする。 (4)多い。豊か。豊かにする。「阜財フザイ」(財産を増やす。また、豊かな財産) (5)地名。「岐阜ギフ」(岐阜県および岐阜市の名称)

部首の「阝こざと」 
阝[阜] こざと偏
 阜が漢字の左側(偏)にきたとき「阝」の形になり「こざと偏」と呼ばれる。「こざと」は里と関係なく、本来の意味である丘や山の意、さらに壁や土塁の意。また、ハシゴ(梯子)の意などで用いられる。「こざと」の名称は、「むら」や「まち」を表す部首の「おおざと(阝)」が同じ形であるため、おおざと(大里)と区別するため、こざと(小里)と呼んだものと思われる。
 阝(こざと)偏は、常用漢字で30字(19位)、約14,600字を収録する『新漢語林』では121字が収録されている。主な字は以下のとおり。
丘や山の意
 ソ・はばむ(阝+音符「且」)
 ショウ・さわる(阝+音符「章ショウ」)
 リョウ・みささぎ(阝+音符「夌リョウ」)
 ヨウ・ひ(阝+音符「昜ヨウ」)
 グウ・すみ(阝+音符「禺グウ」)
 トウ(阝+音符「匋トウ」)
土壁や土塁の意
 イン(阝+音符「完カン」)
 リン・となり(阝+音符「粦リン」)
 ゲキ・すき(阝+小+日+小の会意)
ハシゴ・階段の意
 コウ・おりる(阝+音符「夅コウ」)
 ゲン・かぎる(阝+音符「艮コン」)
 カイ・きざはし(阝+音符「皆カイ
 サイ・きわ(阝+音符「祭サイ」)
 チン・つらねる(阝+東の会意)・
 カン・おちいる(阝+音符「臽カン」)

コウ・おりるに見る阝の形成過程    

 ここで、降の字で阝の変遷をたどってみよう。降は、はしごに左右の下向きの止(あし)を配し、はしごを降りる形である。甲骨文はA梯子(はしご)の2タイプが使われ、金文は1タイプ、篆文で統一され、隷書から阝が成立したことがわかる。

   ユウ <阝(おおざと)の原字> 
 ユウ・むら  邑部 

解字 「 囗(かこい)+卩セツ(人のひざまずいた形)」の会意。囗は外囲いを表し、都市の城壁をめぐらした形。卩セツは人のひざまずいた形で、のちに巴に変化した。両者を合わせた邑ユウは、城壁の中に人がひざまずいている形で、人々が住む城市を表す。中国では人々が集まって住むとき城壁で囲うことが多く、城市のほかに一般の村里の意でも使われる。邑は漢字の右辺に位置するとき、阝(おおざと)の形になる。
意味 (1)みやこ。くに。諸侯の領地。「大邑ダイユウ」(王都。殷の都)「都邑トユウ」(①みやこ。②みやこと、むら)「城邑ジョウユウ」(都会・みやこ) (2)むら(邑)。さと。「邑宰ユウサイ」(村長)「邑里ユウリ」(むらざと)「邑落ユウラク」(むらざと) (3)うれえる。(=悒)

部首「阝おおざと」

郡にみる邑ユウの変遷
 邑ユウは組合せ漢字の右側(旁つくり)に置かれたとき阝のかたちに変化する。邑⇒阝への変化をたどる一例として郡グンの篆文テンブンと隷書レイショ(漢代の役人などが主に使用した書体)を上に挙げた。篆文の邑は「口+卩セツ」の形だが、隷書第一字で「口+巴」になり、第二字で「口二つがタテ線でつながった形」になり、第三字で阝になった。すなわち、隷書の時代に邑⇒阝への変化は完成している。
 部首「阝おおざと」は、邑ユウの意味である、みやこ・くに・むら・さと等、人が住む比較的大きな場所や領域を示す。このため日本で「おおざと(大里)」と名付けられたと思われる。漢字の左側にきたときも同じ形になるが、これは阜(おか)の簡略形で、「こざと」と呼んで区別される。
 常用漢字には12字があり、約14,600字を収録する『新漢語林』では116字を収録している。主な字は以下のとおり。
 コウ(阝+音符「交コウ」)
 グン・こおり(阝+音符「君クン」)
 ロウ・おとこ(阝+音符「良リョウ」)
 ブ・わける(阝+音符「咅バイ」)
 ト・みやこ(阝+音符「者シャ」)
 ユウ(阝+垂の会意)
 ホウ・くに(阝+音符「丰ホウ」)
 ジャ・よこしま(阝+音符「牙ガ」)
 テイ・やしき(阝+音符「氐テイ」)など。
 

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紛らわしい漢字 「瓜うり」 と 「爪つめ」 

2018年03月01日 | 紛らわしい漢字 
 瓜と爪をくらべて、その違いをいう句に 「瓜(うり)にツメあり、爪(つめ)にツメなし」という言葉がある。この句のツメとは瓜の下部に付いているムの下の部分をいう。瓜に付いているムが、爪にはついていない、というのである。この句を覚えておくと、瓜と爪の区別は簡単にできる。しかし、字の成り立ちからいうと瓜のツメとは、瓜の実そのものを指しているのである。

                カ  <つるのあいだに実ったうり>
 カ・うり  瓜部
   
解字 金文・篆文とも、つるの間にまるい瓜の実がたれた形の象形。瓜は、つるから少し離れて一つずつ果実がなる。瓜の字はその特徴をよくとらえている。現代字は瓜になった。上と左右がつる、中央下部のムのような形がウリである。
意味 うり(瓜)。ウリ科のつる性一年草の総称。つるに一つずつ果実がなる。「西瓜スイカ」「冬瓜トウガン・トウガ」「胡瓜きゅうり」「南瓜かぼちゃ」「糸瓜へちま」「瓜田カデン」(瓜を作っている畑)「瓜実顔うりざねがお」(瓜の種のように色白で面長な顔)
参考 瓜は部首「瓜うり」になり、瓜の意味を表す。主な字は、瓢ヒョウ・ひさご(瓜+音符「票ヒョウ」)・瓠コ・ひさご(瓜+音符「夸」)」の2字がある。 

イメージ 「うり」 (瓜・孤・弧)
音の変化  カ:瓜  コ:孤・弧

う り
 コ・みなしご・ひとり  子部
解字 「子(こども)+瓜(一つのうり)」 の会意形声。瓜は一つ一つが離れて独立して実ることから、一人ぼっちの子どもの意。
意味 (1)みなしご(孤)。親をなくした子。「孤児コジ」 (2)ひとり(孤り)。ひとりぼっち。「孤独コドク」「孤立コリツ」「孤塁コルイ」(孤立したとりで)
 コ  弓部
解字 「弓(ゆみ)+瓜(うり状の)」 の会意形声。瓜のような曲線をみせる弓。(写真は古代から瓜の産地として有名な中国・敦煌瓜)
 切った敦煌瓜は弓の曲線に似ている。
意味 (1)ゆみ。木の弓。また、強い弓。「弧矢コシ」(弓と矢)「桑弧蓬矢ソウコホウシ」(桑の弓と蓬よもぎの矢。男子が生まれた時、これで天地四方を射て将来の雄飛を祈る中国の古俗) (2)弓なりに曲がった線や物。「括弧カッコ」「弧状列島コジョウレットウ


                ソウ <つめ>
 ソウ・つめ・つま  爪部  
 鷹の爪    
解字 金文は三本指の手の先にツメのでている形の象形。鳥獣のツメを描いている。篆文は三本指の手を下に向けた形に変化し、指の先のツメも消えたが、意味は鳥獣、また人のツメを表す。現代字の爪は篆文を引き継いだかたち。
意味 つめ(爪)。手足のつめ。つめの形をしたもの。「爪先つまさき」「爪弾(つまはじ)き」「琴爪キンソウ」(琴をひくときに指先にはめるつめ)
<紫色は常用漢字>

参考 音符「瓜カ」へ
    音符「爪ソウ」へ


コメント (1)
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