ヘビに似たヘビより小さな生き物が蟲むしの原義
虫 [蟲] チュウ・むし 虫部
解字 甲骨文は頭が丸くそこから長い胴がのび、先が曲がったへびの形を二匹えがく。その下は三匹のへびを描く。しかし[甲骨文字辞典]は、この字はへびを描いているのでなく、へびに似ているが相対的に小さなミミズやウジなどを描いているのであろう」とする。要するにヘビに似たヘビより小さな生き物が蟲むしの原義なのである。金文は先が矢印になったヘビらしきもの二つと三つになり、篆文は先が出るが後ろは丸みを帯びたヘビらしくないもの二つと三つになり、旧字は虫の字三つの蟲になった。
蟲は当初、ヘビに似た小さな子虫から始まったがその後、意味が広がり動物の総称としても言うようになり、羽蟲は鳥、毛蟲は獣、甲蟲は亀、鱗蟲は龍、裸蟲は人、などとも言われる程、意味がひろがった。これは虫の部首に現れている。
第二次大戦後の漢字簡素化(当用漢字表)により、蟲チュウ⇒虫となった。しかし虫はそれまで蟲とは別字で虫キとよばれ蝮まむしの古字とされていた。それがチュウの発音となり、蟲の字が担ってきた役割をすべて引き受けることになったのである。
虫は部首となり、また虫の意味で会意文字をつくるが、虫の音符字はほとんどない。わずかに「火蟲(これで一字)チュウ」(くすべる)という字があるが、現代の漢和辞典には入っていない。
意味 (1)むし(虫)。昆虫類の総称。小動物の総称。「虫媒花チュウバイカ」「毛虫ケムシ」「虫害チュウガイ」「益虫エキチュウ」「回虫カイチュウ」 (2)動物類の総称。羽虫は鳥、毛虫は獣、甲虫は亀、鱗虫は龍、裸虫は人。 (3)むし(虫)。子どもが起こす病気。「疳(かん)の虫」 (4)むし(虫)。ある事に熱中する人。「本の虫」
虫は部首「虫むし・むしへん」になる。部首としての役割が中心の文字。文字の左辺や下部に付いて、昆虫・爬虫類・貝類・いろんな動物などを表す。「新漢語林」では、313字が収録されている。主な字は以下のとおり。
常用漢字 10字
虫チュウ・むし (部首)
虹コウ・にじ(虫+音符「工コウ」)
蛍ケイ・ほたる(虫+音符「𤇾ケイ」
蚕サン・かいこ(虫+天の会意)
蛇ダ・へび(虫+音符「它タ」)
蛮バン・えびす(虫+音符「䜌(亦)バン」
蚊ブン・か(虫+音符「文ブン」)
蜂ホウ・はち(虫+音符「夆ホウ」)
蜜ミツ(虫+音符「必ヒツ」)
融ユウ・とける(虫+鬲レキの会意)
常用漢字以外
蝸カ・かたつむり(虫+音符「咼カ」)
蛾ガ・が(虫+音符「我ガ」)
蟹カイ・かに(虫+音符「解カイ」)
蟻ギ・あり(虫+音符「義ギ」)
蛤コウ・はまぐり(虫+音符「合コウ」)
蛭シツ・ひる(虫+音符「至シツ」)
蝉セン・せみ(虫+音符「単タン⇒セン」)
蝶チョウ(虫+音符「枼ヨウ⇒チョウ」)
蝮フク・まむし(虫+音符「复フク」)
蛙ワ・かえる(虫+音符「圭ケイ⇒ワ」)ほか
イメージ
虫は音符字を作らず会意文字となる。
「むし」(虫・繭・蠱)
音の変化 チュウ:虫 ケン:繭 コ:蠱
む し
繭 ケン・まゆ 糸部
解字 「桑の葉のかたち+糸+虫」 の会意。桑の葉を食べている虫が、糸を吐きだしてできるまゆ。
意味 まゆ(繭)。また、まゆからとった絹糸。「繭糸ケンシ」(きぬ糸)「繭玉まゆだま」(木の枝にまゆの形をした餅をつけた小正月の飾り物)
覚え方 くさ(艹)かぶせ(冂)いと(糸)ひく(|)むし(虫)がつくる繭まゆ
蠱 コ 虫部
解字 「蟲(多くの毒虫)+皿(うつわ)」の会意。深い皿の中に多くの毒虫を入れて共食いをさせ、最後に残った虫が呪霊をもつとされ、この虫をつかって呪いをおこなった。まじない・まどわす意となる。
意味 (1)まじない。また、それに用いる虫。「巫蠱フコ」(巫女とまじないの虫) (2)まどわす。「蠱女コジョ」(人をまどわす女)「蠱媚コビ」(なまめかしくまどわす)「蠱疾コシツ」(精神錯乱の病気) (3)害する。「蠱毒コドク」(人を害すること。蠱も毒も害する意) (4)穀物につく虫。害虫。
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
虫 [蟲] チュウ・むし 虫部
解字 甲骨文は頭が丸くそこから長い胴がのび、先が曲がったへびの形を二匹えがく。その下は三匹のへびを描く。しかし[甲骨文字辞典]は、この字はへびを描いているのでなく、へびに似ているが相対的に小さなミミズやウジなどを描いているのであろう」とする。要するにヘビに似たヘビより小さな生き物が蟲むしの原義なのである。金文は先が矢印になったヘビらしきもの二つと三つになり、篆文は先が出るが後ろは丸みを帯びたヘビらしくないもの二つと三つになり、旧字は虫の字三つの蟲になった。
蟲は当初、ヘビに似た小さな子虫から始まったがその後、意味が広がり動物の総称としても言うようになり、羽蟲は鳥、毛蟲は獣、甲蟲は亀、鱗蟲は龍、裸蟲は人、などとも言われる程、意味がひろがった。これは虫の部首に現れている。
第二次大戦後の漢字簡素化(当用漢字表)により、蟲チュウ⇒虫となった。しかし虫はそれまで蟲とは別字で虫キとよばれ蝮まむしの古字とされていた。それがチュウの発音となり、蟲の字が担ってきた役割をすべて引き受けることになったのである。
虫は部首となり、また虫の意味で会意文字をつくるが、虫の音符字はほとんどない。わずかに「火蟲(これで一字)チュウ」(くすべる)という字があるが、現代の漢和辞典には入っていない。
意味 (1)むし(虫)。昆虫類の総称。小動物の総称。「虫媒花チュウバイカ」「毛虫ケムシ」「虫害チュウガイ」「益虫エキチュウ」「回虫カイチュウ」 (2)動物類の総称。羽虫は鳥、毛虫は獣、甲虫は亀、鱗虫は龍、裸虫は人。 (3)むし(虫)。子どもが起こす病気。「疳(かん)の虫」 (4)むし(虫)。ある事に熱中する人。「本の虫」
虫は部首「虫むし・むしへん」になる。部首としての役割が中心の文字。文字の左辺や下部に付いて、昆虫・爬虫類・貝類・いろんな動物などを表す。「新漢語林」では、313字が収録されている。主な字は以下のとおり。
常用漢字 10字
虫チュウ・むし (部首)
虹コウ・にじ(虫+音符「工コウ」)
蛍ケイ・ほたる(虫+音符「𤇾ケイ」
蚕サン・かいこ(虫+天の会意)
蛇ダ・へび(虫+音符「它タ」)
蛮バン・えびす(虫+音符「䜌(亦)バン」
蚊ブン・か(虫+音符「文ブン」)
蜂ホウ・はち(虫+音符「夆ホウ」)
蜜ミツ(虫+音符「必ヒツ」)
融ユウ・とける(虫+鬲レキの会意)
常用漢字以外
蝸カ・かたつむり(虫+音符「咼カ」)
蛾ガ・が(虫+音符「我ガ」)
蟹カイ・かに(虫+音符「解カイ」)
蟻ギ・あり(虫+音符「義ギ」)
蛤コウ・はまぐり(虫+音符「合コウ」)
蛭シツ・ひる(虫+音符「至シツ」)
蝉セン・せみ(虫+音符「単タン⇒セン」)
蝶チョウ(虫+音符「枼ヨウ⇒チョウ」)
蝮フク・まむし(虫+音符「复フク」)
蛙ワ・かえる(虫+音符「圭ケイ⇒ワ」)ほか
イメージ
虫は音符字を作らず会意文字となる。
「むし」(虫・繭・蠱)
音の変化 チュウ:虫 ケン:繭 コ:蠱
む し
繭 ケン・まゆ 糸部
解字 「桑の葉のかたち+糸+虫」 の会意。桑の葉を食べている虫が、糸を吐きだしてできるまゆ。
意味 まゆ(繭)。また、まゆからとった絹糸。「繭糸ケンシ」(きぬ糸)「繭玉まゆだま」(木の枝にまゆの形をした餅をつけた小正月の飾り物)
覚え方 くさ(艹)かぶせ(冂)いと(糸)ひく(|)むし(虫)がつくる繭まゆ
蠱 コ 虫部
解字 「蟲(多くの毒虫)+皿(うつわ)」の会意。深い皿の中に多くの毒虫を入れて共食いをさせ、最後に残った虫が呪霊をもつとされ、この虫をつかって呪いをおこなった。まじない・まどわす意となる。
意味 (1)まじない。また、それに用いる虫。「巫蠱フコ」(巫女とまじないの虫) (2)まどわす。「蠱女コジョ」(人をまどわす女)「蠱媚コビ」(なまめかしくまどわす)「蠱疾コシツ」(精神錯乱の病気) (3)害する。「蠱毒コドク」(人を害すること。蠱も毒も害する意) (4)穀物につく虫。害虫。
<紫色は常用漢字>
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