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漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

漢和辞典 使った感想(6) 「新潮日本語漢字辞典」(新潮社)

2025年03月30日 | 漢和字典・使った感想

 「新潮日本語漢字辞典」は、新潮社が初めて作った漢和辞典である。書名が「日本語漢字辞典」というユニークな名前になっている。この辞典の編集代表者の小駒勝美氏はその著書「漢字は日本語である」(新潮新書  2008年)のなかで従来の漢和辞典に対する不満を以下のように書いている。

 たとえば、「海」という字をある漢和辞典で引いてみよう。「カイ」という音読みと、「うみ」「わたつみ」などの訓読が書いてあるだけで、この字の意味についてはまったく説明がない。中国語を日本語に対訳できればそれで漢和辞典の役目は終わりです、と言わんばかりである。発想は英和辞典と変わらない。日本語に翻訳できればいいという考え方なのだ。

 また、その字を使った熟語も、漢籍から取っているために、困ったことが起きる。漢和辞典には、訓読する熟語もほとんど載っていない。「秋桜」(コスモス)を何と読めばいいのかわからなくて「秋」の項を引いても「桜」の項を引いても出てこないのである。「公孫樹」を「いちょう」と読むのだということも、漢和辞典ではわからないことが多い。

 訓読とは日本で意味をあてた日本だけの読み方だ。中国には訓読などないので、訓読の熟語は原則として載っていない。訓読文字同士の「鍋物(なべもの)」とか、音読と訓読がごちゃ混ぜになった「団栗(どんぐり)」という言葉は、漢和辞典で調べることができないのが普通である。(中略)それなら、そういう漢和辞典に載っていないことは、国語辞典で調べればいいではないか、という考え方も当然あるだろう。しかし、五十音順に言葉を収録してある国語辞典には、「読めない字は引けない」という弱点がある。その上、漢字一字単独の意味は国語辞典には書いてないのが普通である。

 こうした漢和辞典の欠点をおぎない、現代の日本人が使うための、漢字の辞典。漢和辞典と国語辞典のいいところをあわせ持った辞典。そんな辞典が欲しいと私はかねてから思っていた。しかし、いつまでたってもそんな辞典が出ない。それなら作るしかないだろう、というわけで、このたび、私たちは『新潮日本語漢字辞典』を刊行した。

どんな辞典が誕生したのか!!                                     例によって午のページを見てみる。上の図版が意味と解字。下の図版が熟語である。                               

以下の順序で構成されている。
(1)「意味」として、①うま。十二支の七番目、の説明、②ひる。の説明、③陰暦の五月、などの説明がある。簡潔な説明で分かりやすい。ひる(午)の使用例に夏目漱石の「三四郎」からの引用例がある。
(2)[解字]として、ト文・金文・篆文の字体を表示し杵の形の象形とする。      (3)続いて熟語を19語取り上げて解説している(図版は全部入っていない)。これは他の字典とくらべると非常に多い。加えて、熟語の使用例を含む文を例示している。

全体の配列は部首順で、索引は音訓索引と画数索引がつく                   内容面では、大きな改革を試みたが、ただ一点だけ従来の漢和辞典のやり方をあえて踏襲した部分がある。それは、部首の分類と配列である。その理由は混乱を招かないためだ。検索の方法を変えてしまうと、まずそこから覚えなければならない。読者にそういう手間をかけさせずに、今までどおりの引き方で、今までとは違う内容に出会える、ということでよいのではないか、と考えた。」(同書)                                      したがって本辞典の体裁は、表紙・見返しに部首索引、続くページに音訓索引・総画索引があり、通常の漢和辞典と変わらない。そして巻末に熟語索引がつくのは、国語辞典としての機能を高めるためであろう。収録した親字項目は15,375字、本文は2557頁、A5判(高さ21㎝)

使った感想                                              (1)通常の漢和辞典はページ数の表示が上段にあるが、この辞典は下段にあるので、少しとまどう。上段は個々の漢字番号になっている。慣れれば問題ない。                      (2)ブログ「漢字の音符」を編集するに際して、この辞書を参照すると、他の漢和辞典にない表現や熟語例があり、参考になる。                           (3)本文は2557頁もあるが、A5判(高さ21㎝)と比較的小型であるため、手に取って見やすい。

『新潮日本語漢字辞典』  2007年9月25日発行
 編集:小駒勝美 坂田博昭 大倉香織 林原 聡

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