漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「脊セキ」<せぼね> と 「瘠セキ」「鶺セキ」「蹐セキ」

2014年07月30日 | 漢字の音符
 セキ・せ  月部にく  

解字 篆文は、「背中の骨+月(からだ)」の会意。上部は、まっすぐタテに通る背骨と、そこから左右にでる肋骨(あばら骨)を描いた象形で、背中の骨格を表す。そこに月(からだ)のついた脊は、人や動物の背中、および背中の骨を表す。医学では、脊椎骨セキツイコツがつみ重なった背骨の意で使われる。現代字は「二+二+人+月」の形となった。
意味 (1)せ(脊)。せぼね。せなか。「脊柱セキチュウ」(背骨のひとつひとつが柱のようになっている骨格)「脊椎セキツイ」(脊柱を形成する一つ一つの骨)「脊髄セキズイ」(背骨の中を通っている神経組織)「脊梁セキリョウ」(①せぼね。せすじ。②馬の背筋の中央部)「脊梁山脈セキリョウサンミャク」(長く連なり左右を分ける山脈)
覚え方 に()に()ひと()つき()で、セキ
イメージ 
 「せぼね」
(脊・瘠)
 「せすじ」(鶺・蹐)
音の変化  セキ:脊・瘠・鶺・蹐

せぼね
 セキ・やせる  疒部
解字 「疒(やまい)+脊(せぼね)」の会意形声。馬や牛などが病気になったように背骨がごつごつと目立つほどやせること。
意味 (1)やせる(瘠せる)。やせ細る。「瘠馬セキバ」 (2)やせた土地。地味が悪い。「瘠地セキチ」(やせた土地)

せすじ
 セキ  鳥部
解字 「鳥(とり)+脊(せすじ)」の会意形声。背すじのきれいな鳥。
意味 鶺鴒セキレイに用いられる字。鶺鴒とは、水辺にすむ小鳥。背すじから続く長い尾を上下に振って歩く。
 セキ  足部
解字 「足(あし)+脊(=脊梁。馬のせすじ)」の会意形声。馬の背すじのような左右に落ち込む所をびくびくしながら歩くこと。
意味 ぬきあし、さしあし。音をたてないように歩く。こきざみにそっと歩く。「跼天蹐地キョクテンセキチ」(天は高いのにかがんで歩き、地は厚いのにぬきあし、さしあしで歩くこと。ひどく恐れること。=跼蹐キョクセキ) ※跼キョクとは、かがむ・かがんで歩くこと。
<紫色は常用漢字>


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音符「歹ガツ」<死者の骨>と「死シ」「葬ソウ」 

2014年07月29日 | 漢字の音符
 ガツ・タイ  歹部

解字 甲骨文第1字は、死者の骨が肉片から出た形で、死者の骨の一部を表す。第2字は、肉のまわりに点を配しており血がついたかたち。いずれも死者の骨を表している。甲骨文第1字の形を篆文がほぼ引き継ぎ、現代字の歹になった。歹は部首になる。
意味 (1)死者の残骨。 (2)わるい。
参考 歹は部首「歹がつ・がつへん」になる。漢字の左辺(偏)に付いて、死ぬ・よくないこと、を表す。常用漢字は5字、約14,600字を収録する『新漢語林』では42字が収録されている。主な字は以下のとおり。
 歹ガツ(部首)、死(歹+ヒの会意)、殉ジュン(歹+音符「旬ジュン」)、殊シュ(歹+音符「朱シュ」)、殖ショク(歹+音符「直チョク」)、残[殘]ザン(歹+音符「戔セン」)、殆タイ(歹+音符「台タイ」)、殲セン(歹+音符「韱セン」)など。


    シ <人がしぬ>
 シ・しぬ  歹部がつ

解字 甲骨文字第1字は、「人+井(墓穴)」の形で、人為的に掘られた穴に人が入ることから死を意味する。第2字は、「歹ガツ(死者の骨)+人」の会意で、人が死者を見て悼んでいる形[甲骨文字小字典]。この形が金文・篆文と続いており、現代字は篆文の人⇒ヒに変化した死になった。
意味 (1)しぬ(死ぬ)。「死去シキョ」「生死セイシ」 (2)おわる。活動がやむ。「死語シゴ」 (3)いのちがけ。「死守シシュ」「死闘シトウ

イメージ 「しぬ・死者」(死・屍・葬)
音の変化  シ:死・屍  ソウ:葬

しぬ・死者
 シ・しかばね  尸部

解字 甲骨分と金文は尸で、足が不自然に曲がった人の側面形であり、人間の屍体を表す。篆文になり、尸に死がついた屍ができた。屍は死者のからだ・しかばねの意を表す。
意味 しかばね(屍)。なきがら。死体。「屍骸シガイ」(=死骸。死者の骨の意だが、人や動物の死体の意で使われる)
 ソウ・ほうむる  艸部

解字 甲骨文字は、墓穴に入れた死体の周りに点をたくさん描いて、土をかけて埋めるさまを表す。篆文は「艸(くさ)+死(死体)+一(敷物)+艸(くさ)」 の会意。草むらの中に死体を敷物の上に置いてほうむること。甲骨文字の時代と比べて簡単な埋葬方法だが、戦乱や飢饉で死者が多かった時の葬り方か。現代字は、一(敷物)がとれ、上の艸⇒艹、下の艸⇒廾に変化した葬になった。
意味 ほうむる(葬る)。(1)死体・遺骨を墓所などにおさめる。「埋葬マイソウ」「葬列ソウレツ」「葬式ソウシキ」(2)世間から覆いかくす。「社会から葬られた」
<紫色は常用漢字>

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音符 「要ヨウ」 <女の腰> と 「腰ヨウ」

2014年07月24日 | 漢字の音符
 ヨウ・かなめ・いる  覀部

解字 金文の上半部は、腰盤に両手を当てている形の象形。下半部に女を加え女性の腰を示す。篆文は腰の形が糸の上部、下部が二本脚で立つ形に変化している。現代字は、腰の部分が覀に、下部が女にもどり「要」となった。女性の腰の意。腰は人体のかなめであることから、かなめ・かかせない意となった。
意味 (1)かなめ(要)。大切なところ。「要点ヨウテン」「重要ジュウヨウ」 (2)いる(要る)。入り用である。「必要ヒツヨウ」「要求ヨウキュウ」 (3)まとめる。あらまし。「要旨ヨウシ」「概要ガイヨウ

イメージ 
 「こし」
(要・腰)
音の変化  ヨウ:要・腰
こし
 ヨウ・こし  月部にく
解字 「月(からだ)+要(こし)」の会意形声。要は本来「こし」の意味だが、「かなめ」「いる」の意味になったので、月(からだ)をつけて「こし」の意味を表した。
意味 (1)こし(腰)。「腰痛ヨウツウ」「中腰チュウごし」「丸腰まるごし」 (2)身構え。「弱腰よわごし」「物腰ものごし
<紫色は常用漢字>

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音符「喿ソウ」<やかましい・せわしない>「操ソウ」「燥ソウ」「繰ソウ」「藻ソウ」

2014年07月19日 | 漢字の音符
 ソウ  口部

解字 「口(鳴く)+口(鳴く)+口(鳴く)+木(き)」の会意。木の上に口を三つ描き、鳥が木の上でやかましく鳴き、また枝を飛び回って騒ぐさま。「やかましい」「せわしない」イメージを持つ。噪ソウ(さわがしい)の原文。

イメージ 
 「やかましい」
(噪)
  木の上で鳴く鳥が枝を飛び回って「せわしない」(操・燥・繰・藻・澡・躁)
音の変化  ソウ:噪・操・燥・繰・藻・澡・躁

やかましい
 ソウ・さわぐ  口部
解字 「口(くち)+喿(やかましい)」の会意形声。口やかましく声をだしてさわぐ。
意味 さわぐ(噪)。さわがしい。「喧噪ケンソウ」(人声や物音でさわがしいこと)

せわしない
 ソウ・あやつる・みさお  扌部
解字 「扌(て)+喿(せわしない)」の会意形声。手をせわしなく動かすこと。
意味 (1)あやつる(操る)。「操縦ソウジュウ」「操作ソウサ」「体操タイソウ」(体を操る) (2)体や心をコントロール(あやつる)すること。みさお(操)。「節操セッソウ」(信念を固くまもる)「志操シソウ」(自分の考えを固くまもる気持ち)
 ソウ・かわく  火部
解字 「火(ひ)+喿(せわしない)」の会意形声。火にせわしなく当ててかわかすこと。
意味 (1)かわく(燥く)。かわかす。「乾燥カンソウ」 (2)いらだつ。「焦燥ショウソウ
 ソウ・くる  糸部
解字 「糸(いと)+喿(せわしない)」の会意形声。せわしなく手を動かしてマユから糸をたぐりよせること。
意味 (1)くる(繰る)。細長いものをたぐる。「糸繰り」(マユや綿から糸をとりだし、紡ぐこと)「繰り入れ」(たぐりよせて入れること)「繰越し」(簿記で計算の結果を次ページへ送ること) (2)順に数える。「日を繰る」
 ソウ・も  艸部
解字 「艸(くさ)+氵(水)+喿(せわしない)」の会意形声。せわしなく水の中でゆれている草。
意味 (1)も(藻)。水草の総称。「藻類ソウルイ」「海藻カイソウ」「藻屑もくず」(藻のくず。海で死ぬことのたとえ) (2)あや。かざり。詩文などの美しい言葉。「文藻ブンソウ
 ソウ・あらう  氵部
解字 「氵(水)+喿(せわしない)」の会意形声。水のなかでせわしなく動かして身体や物をあらうこと。
意味 あらう(澡う)。あらいきよめる。すすぐ。「澡浴ソウヨク」(入浴してあらいきよめる)「澡熨ソウイ」(洗濯して火のしをかける。転じて旧弊を去ること)「澡洗ソウセン」(あらいすすぐ)
 ソウ・さわぐ・さわがしい  足部
解字 「足(あし)+喿(せわしない)」の会意形声。せわしなく足で動き回ること。また、動き回るときの心の状態をいう。
意味 (1)あわただしい。さわがしい(躁がしい)。ざわつく。さわぐ(躁ぐ)。「躁急ソウキュウ」(せっかち。気がいらだち、せわしい) (2)気分が高揚した状態になる。「躁鬱ソウウツ」(気分が高揚することと、ふさぐこと)
<紫色は常用漢字>

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音符「阿ア」 <まがったところ> と 「痾ア」「婀ア」

2014年07月16日 | 漢字の音符
 ア・くま・おもねる  阝部こざと

解字 「阝(おか)+可(まがる)」の会意形声。可には、まがるイメージがあり、それに阝(おか)がついた阿は、おかの曲がったところ。くまの意をあらわす。転じて、自分をまげておもねる意となる。
意味 (1)くま(阿)。山や川の曲がったところ。奥まってかくれた所。「山阿サンア」(山の奥まったところ)「水阿スイア」(川の曲がって奥まったところ) (2)おもねる(阿る)。へつらう。自分の気持ちを曲げて従う。「曲学阿世キョクガクアセイ」(学説を曲げて世におもねる) (3)人を親しみ呼ぶときに、つける接頭語。「阿母アボ」(おかあさん)「阿国おくに」(歌舞伎の祖)「阿呆アホウ」(おろか。たわけ) (4)梵語や外国語の音訳字。「阿弥陀アミダ」(人々を極楽に導く仏)「阿吽アウン」(吐く息と吸う息)「阿闍梨アジャリ」(徳の高い僧) (5)地名など。「阿波あわ」(旧国名。今の徳島県)「阿蘇山アソサン」(熊本県東北部にある活火山)

イメージ 
 「くま」
(阿・痾)
 「まがる」(婀)
音の変化   ア:阿・痾・婀

くま
 ア・やまい  疒部
解字 「疒(やまい)+阿(くま。まがって奧まったところ)」の会意形声。病気が奧まったところに入りこんだように治らないこと。
意味 やまい(痾)。こじれて長びく病気。「宿痾シュクア」(長い間治らないやまい)

まがる
 ア  女部
解字 「女(おんな)+阿(まがる)」の会意形声。しなやかに身体をまげる艶めかしい女。
意味 なまめかしく美しい。たおやか。「婀娜アダ」(美しくしとやか。女性の色っぽいさま)「婀娜アダな姿の洗い髪」(風呂上がりの女の、色っぽい姿の洗い髪)「婀嬌アキョウ」(①なよなよしてなまめかしい。美人。②漢・武帝の妻の幼名)

<関連音符>
 カ  口部
解字 「口(くち)+丁(斧の柄にするまがった木)」の形声。仮借カシャ(当て字)して、許可、可能の意になるが、丁(曲がった木の柄)から「まがる」イメージがある。音符「可カ」を参照。 

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音符「司シ」<神につげる>「伺シ」「詞シ」「飼シ」「嗣シ」

2014年07月10日 | 漢字の音符
 シ・つかさ   口部

解字 甲骨文は、「人の変形+口(神への言葉をいれる器)」の会意。神への祈りの言葉をいれた器を前に、手を出して祈る人の形で、祭りをつかさどる人の意。金文も同じ形。篆文から、祈る人は、人と手がはなれた刁になり、口を加えて司になった。
意味 (1)つかさどる(司る)。責任者として行なう。「司会シカイ」「司書シショ」「司法シホウ」 (2)つかさ(司)。役人。つとめ。「祭司サイシ」「国司コクシ」 (3)うかがう。

イメージ 
 祭りを「つかさどる」(司・祠・嗣・飼・笥)
 祈りの言葉を「神へつげる」(詞)
 神へ祈りの言葉をつげて「神の意志をうかがう」(伺・嗣・覗)
音の変化  シ:司・祠・嗣・飼・笥・伺・嗣・覗

つかさどる
 シ・ほこら  示部
解字 「示(祭壇)+司(祭りをつかさどる)」の会意形声。祭りをつかさどる人が祭壇に向かい祈ること。神をまつる意。また、祭っているほこらの意となる。
意味 (1)まつる(祀る)。神をまつるたてもの。おたまや。先祖の霊をまつる所。「祠堂シドウ」(①先祖の霊をまつる所。②中国で一族(同姓)の先祖をまつる建物)「合祠ゴウシ」(合わせまつる) (2)ほこら(祠)。神仏をまつる小さい建物。
 シ・つぐ  口部

解字 金文は、「口(くち)+子(こども)+冊(短冊・ふだ)+司(祭りをつかさどる人)」の会意形声。祭りをつかさどる人が冊(ふだ)に書かれた内容を口で読みあげて子(後継者)を指名すること。あとつぎ・あとをつぐ意となる。篆文から、子が省略された。
意味 (1)つぐ(嗣ぐ)。あとをつぐ。「継嗣ケイシ」(継も嗣も、つぐ意。あとつぎ) (2)あとつぎ。よつぎ。「嗣子シシ」「嗣君シクン」(あとつぎの君。嗣子の敬称)
 シ・かう  食部
解字 「食(たべる)+司(つかさどる)」の会意形声。動物の食べ物を司る(責任をもつ)こと、即ち、動物を飼うこと。
意味 かう(飼う)。やしなう。動物を養い育てる。「飼育シイク」「飼料シリョウ
 シ・ス・け・はこ  竹部
解字 「竹(たけ)+司(つかさどる)」の会意形声。衣類など特定のものを、司る(管理する)竹で編んだはこをいう。
意味 け(笥)。はこ(笥)。食物を盛るうつわ。また、衣などを入れるはこ。「笥子けこ」(食物を盛る容器)「衣笥イシ」(着物を入れるはこ)「箪笥タンス」(衣類などを整理・収納する引出しのある家具)

神へつげる
 シ・ことば  言部    
解字 「言(ことば)+司(神へつげる)」の会意形声。神へ告げる言葉が原義。いう・つげる意のほか、単語や文章の意で使われる。
意味 (1)いう。告げる。説く。「台詞せりふ」(いう言葉) (2)ことば(詞)。単語。語句。「品詞ヒンシ」「詞韻シイン」(ことばのひびき) (3)文章。詩歌。韻文の一体。「歌詞カシ」「祝詞のりと・シュクシ

神の意志をうかがう
 シ・うかがう  人部
解字 「人(ひと)+司(神の意志をうかがう)」の会意形声。神の意志をうかがう人。また、うかがうこと。うかがう為にそばで、はべる意ともなる。
意味 (1)うかがう(伺う)。さぐる。おしはかる。「伺察シサツ」(うかがい察する。さぐる) (2)はべる。人に仕える。「伺候シコウ」(おそばで奉仕する) (3)[国]うかがう(伺う)。問う・尋ねる、の謙譲語。 (4)[国]うかがう(伺う)。訪問するの謙譲語。「お宅へ伺う」
 シ・うかがう  見部
解字 「見(みる)+司(神の意志をうかがう)」の会意形声。神の意志をうかがうように、そっと見ること。のぞき見ること。
意味 うかがう(覗う)。のぞく(覗く)。そっと見る。「覗機シキ」(機会をうかがう)「覗察シサツ」(ひそかに観察する)
<紫色は常用漢字>

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音符 「口コウ」 <人のくち>

2014年07月09日 | 漢字の音符
 コウ・ク・くち  口部

解字 人の口を描いた象形。人の口が食べものの取り入れ口となるように、器物の口や出入り口の意ともなる。口は部首となるが、「くち・いりぐち」や、「囲まれた場所」「まるいもの」のイメージで音符ともなる。
意味 (1)くち(口)。「口角コウカク」(唇の両端の部分) (2)口に出す。言う。ことば。「口頭コウトウ」(口で述べること)「口上コウジョウ」「口調クチョウ」 (3)出入りするところ。「河口カコウ」「銃口ジュウコウ」 (4)人や家の数。「人口ジンコウ」「戸口ココウ」(戸数と人口)
参考 コウは部首「口くち・くちへん」となる。意味は、①口・食べる・息をする。②言葉を話す。③口まね。擬音語の記号。③あな。容器。④便宜的に入れているもの、などがある。口部は常用漢字で70字(第5位)、約14,600字を収録する『新漢語林』では276字が収録されている。口部は多いので、ここでは口部に属し音符となる字のみを紹介する。
 咸カン・含ガン・名メイ・句・告コク・召ショウ・呈テイ・可・吾・吉キチ・喜・君クン・后ホウ・向コウ・同ドウ・司・合ゴウ・員イン・品ヒン・右ユウ・古・各カク・喬キョウ・周シュウ・呉・唐トウ・史・台ダイ・呂・咅ホウ。これらの字は口を含むが、全体で一つのまとまりをもつ字であり音符となる。

イメージ  「くち・いりぐち」(口・釦)
       「場所」(叩)
       「まるいもの」(杏)
音の変化  コウ:口・釦・叩  キョウ:杏

くち・いりぐち
 コウ・ぼたん  金部
解字 「金(金属)+口(くち)」の会意形声。金銀などで器物の口やへりを飾る意だが、近年は、口(あな)にボタンなどの留め金をかける意で、ボタンの意で使われる。
意味 ボタン(釦)。洋服などのボタン。

場所
 コウ・たたく・はたく  口部

解字 「卩セツ(人がひざまずいた形)+口(場所)」の会意形声。人がひざまずいて額ひたいを同じ場所にこつこつと打ち当てて礼をすること。
意味 (1)たたく(叩く)。はたく(叩く)。軽く打つ。「叩門コウモン」(門をたたく) (2)ぬかずく(叩頭く)。「叩頭コウトウ」(ぬかずく。頭を地にすりつけてお辞儀をする) (3)ひかえる。

まるいもの
 キョウ・コウ・アン・あんず  木部
解字 「木(き)+口(まるいもの)」で、木の枝にまるい実のある形の会意形声。ここで丸い実はアンズを表す。アンの発音は唐音。
意味 あんず(杏)。「杏子アンズ」とも書く。バラ科の落葉高木。梅に似たオレンジの実をつける。種たねは薬用となる。「杏仁キョウニン」(アンズの種の胚を乾燥させたもので薬用になる)「杏林キョウリン」(①アンズの林。②医師。医者)「銀杏ギンナン」(ギンアンの転。アンは唐音。イチョウのタネ)
<紫色は常用漢字>

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音符「夏カ」<大きな人> と「榎えのき」

2014年07月06日 | 漢字の音符
 カ・ゲ・なつ  夊部

解字 篆文は、「頁(あたまを強調した人)+両手+夊(あし)」の象形。大きな頭に両手と夊(あし)をつけ、大きな人を表した字。古代文明が発祥した中国・中原地方で自らの部族を表す語として使われ、のち、中華(中国)の意味にも使われるようになった。現代字は、篆文から両手と頁の下部のハが略された形。また夊(あし)⇒夂に変化した。
 季節の夏(なつ)の意味は仮借カシャ(当て字)の用法。戦国時代に起こった五行説で「なつ(夏)」は火の行(火のような灼熱の性質を表す)に属しており、同じ発音の夏を「なつ」に当てたものと思われる(私見)。
意味 (1)なつ(夏)。「夏季カキ」「夏至ゲシ」 (2)大きい。さかん。「夏屋カオク」(大きな家) (3)中国。中国人の自称。「夏夷カイ」(自分たちの中華と未開の夷族) (4)中国の王朝の名。「夏王朝カオウチョウ」(禹が建てたとされる王朝。近年、発掘成果から実在性が高まっている)

イメージ 
 「なつ(仮借)」
(夏)
 大きな人から「おおきい」(廈・榎)
音の変化  カ:夏・廈・榎 
 
おおきい
 カ  广部
解字 「广(やね)+夏(おおきい)」の会意形声。おおきな屋根の家。
意味 (1)いえ。おおきな家。また、家や門のひさし。「大廈タイカ」(大きな家)「廈屋カオク」(大きな屋根でおおった家。大きな家) (2)地名。「廈門アモイ」(中国福建省南部の都市の名)
 カ・えのき  木部
解字 「木(き)+夏(おおきい)」の会意。大きな木の意。日本では、大木となって枝がひろがるエノキをいう。
意味 (1)[国]えのき(榎)。ニレ科エノキ属の落葉高木。枝を大きくひろげ大木となる。高さ20m以上になる。「榎茸えのきたけ」(榎などの枯れた切り株に生える食用きのこ) (2)トウキササゲ。ノウゼンカズラ科の落葉高木。楸ひさぎの別称。
<紫色は常用委漢字>

 
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