漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「豕シ」<ぶた> と 「豖タク・チク」<犠牲にしたぶた> 「圂コン」

2019年01月16日 | 漢字の音符
 シ・い・いのこ  豕部いのこ

解字 いのしし、またはぶたの姿を描いた象形。部首「いのこ」「いのこへん」となる。音符として使われることはなく、会意として、いのしし・ぶたなどの意を表わす。亥と似ているが、亥は豚などの骨格を、豕は動物の豚(ぶた)を示す。
意味 い(豕)。いのこ(豕)。いのしし。ブタ類の総称。「亥豕ガイシの誤り」(文字の書き誤りのこと)
参考 豕は部首「豕いのこ」になる。漢字の右辺や下部に付いて、イノシシの意味を表す。常用漢字には3字ある。[新漢語林]には、24字が収録されている。主な字は以下のとおり。
 豕シ(部首):豪ゴウ・やまあらし(豕+音符「高コウ」)、豚トン・ぶた(豕+月(にく)の会意)、象ゾウ・ぞう(下部に豕を含むので便宜的に分類される)

イメージ 「ぶた・いのしし」(豕・豚・逐)
音の変化  シ:豕  チク:逐  トン:豚

ぶた・いのしし
 トン・ぶた  豕部
解字 「月(にく)+豕(ぶた)」の会意。ぶたの肉の意で、肉をとるための豚を表わす。
意味 (1)ぶた(豚)。こぶた。いのこ。「豚児トンジ」(不出来な息子) (2)「河豚カトン」とは、ふぐのこと。ずんぐりとした形が似ているから。
 チク・おう  辶部           

解字 甲骨文はいのししの下に足(止)の形を描き、いのししを人が追っているさま。金文は彳(ゆく)と足を描く。この部分が篆文でしんにょうの原形(辵)に変化している。現代字は、「辶(ゆく)+豕(いのしし)」の会意で、いのししを追ってゆくこと。
意味 (1)おう(逐う)。おい払う。「駆逐クチク」(おいはらうこと)「放逐ホウチク」(おいやる・おいはらう) (2)順を追う。「逐一チクイチ」(ひとつひとつ)「逐次チクジ」(次々に)「逐語チクゴ」(一語一語) (3)きそう。争う。「角逐カクチク


  豖[豕] タク・チク <犠牲にしたぶた>
豖[豕]  タク・チク  豕部  

解字 豚に右下がりの斜線を入れ、豚を犠牲にした形。単独の字となることはない。新字体で斜線がとれて「豕」と表現され、豕シ(い・いのこ)と字体が同じになるが、発音と意味が異なる。また、豕(豖)タクは、その発音からものをたたく音の擬声語としても用いられる。

イメージ  
 「犠牲にした豚」
(冢・塚)
 「ものをたたく音」(啄・琢)
音の変化  タク:啄・琢  チョウ:冢・塚

犠牲にしたぶた
 チョウ・つか  冖部
解字 「冖(上からおおう)+豖(犠牲にした豚)」の会意。犠牲獣をともなった墳墓のこと。
意味 (1)つか(冢)。大きな墓。 (2)おか(丘)。「丘冢キュウチョウ」(①丘。②丘のような墳墓。)
 チョウ・つか  土部
解字 旧字はで、「土+冢チョウ(つか)」の会意形声。土を盛り上げた墳墓のこと。冢チョウの意味を、土をつけて強調した字。現代字は斜線がとれた塚。
意味 (1)つか(塚)。土を高く盛って築いた墳墓。「大塚おおつか」(大きな塚の意:名字のひとつ) (2)塚のように土が盛りあがったもの「一里塚いちりづか」「貝塚かいづか」「蟻塚ありづか

ものをたたく音
 タク・トク・ついばむ  口部
解字 旧字は、「口+豖(タク)」の形声。タクはものをたたく音の擬声語で、鳥が口ばしで木をつつく音になぞらえる。新字体は、豖⇒豕に変化した。
意味 ついばむ(啄む)。くちばしでつつく。「啄木タクボク」(木をつつく)「啄木鳥きつつき」(かたいくちばしで木の幹に穴をあけ、舌で虫を引き出して食べる鳥)「石川啄木いしかわたくぼく」(岩手県生まれの歌人)
 タク・みがく  王部
解字 旧字は、「王(玉)+豖(タク)」の形声。タクはものをたたく音の擬声語で、切りだした玉の原石を小刻みにたたいたりけずって形をととのえること。玉を仕上げるので、たたく意より、みがく意が強くなる。新字体は、豖⇒豕に変化した。
意味 (1)みがく(琢く)。玉をみがく。玉を打つ。「琢磨タクマ」(琢はたたいてみがく、磨はこすってみがく。転じて学徳をみがくこと)「切磋琢磨セッサタクマ」 「彫琢チョウタク」(①宝石をきざみみがく。②詩文の字句をみがく)(2)徳・技などをみがくこと。「琢句タクク」(字句をみがくこと。詩文を推敲すること)


    コン <豚囲い・豚便所>
 コン・カン  囗部
 豚便所(後漢代の模型)
解字 「豕(ぶた)+囗(かこい)」の会意。囲いの中で豚を飼うこと。豚囲い。また、豚囲いには横に便所が併設されており人がそこで用をたし、糞が豚の餌になった。
意味 ぶたごや。かわや。

イメージ  廁の付いた豚小屋(圂・溷)
音の分布 コン:圂・溷
廁の付いた豚小屋
 コン・にごる  氵部
解字 「氵(みず)+圂コン(廁の付いた豚小屋)」の会意形声。廁(かわや)の付いた豚小屋からでる水。にごる・けがれる意。
意味 (1)にごる(溷る)。いりまじる。みだれる。「溷濁コンダク」(①にごる。②世の中が乱れる)「澆季溷濁ギョウキコンダク」(澆季は乱れた世、乱れけがれた末世) (2)けがれる。けがす。 (3)かわや。便所。「溷廁コンシ」(豚便所) (4)豚小屋。家畜小屋。
<紫色は常用漢字>
            
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音符 「爪ソウ」 <つめ>

2019年01月15日 | 漢字の音符
 ソウ・つめ・つま  爪部  
  鷹の爪
解字 金文は三本指の手の先にツメのでている形の象形。鳥獣あるいは人のツメを描いている。篆文は三本指の手を下に向けた形に変化し、指の先のツメも消えたが、意味は鳥獣や人のツメを表す。現代字の爪は篆文を引き継いだかたち。
意味 つめ(爪)。手足のつめ。つめの形をしたもの。「爪先つまさき」「爪弾(つまはじ)き」「琴爪キンソウ」(琴をひくときに指先にはめるつめ)
参考 爪は部首「爪つめ」になり爪の意を表す。この部首に属する主な漢字は爬しかない。爬ハ・かく は、「爪(つめ)+巴(つける)」の会意形声で、爪をつけてかく意。

イメージ 
 「つめ」
(爪) 
 鳥獣が獲物をつかまえようと「つめをひらく」(抓・笊)
 つめが付いている「て」(覓)
音の変化  ソウ:爪・抓・笊  ベキ:覓

つめをひらく
 ソウ・つまむ・つねる・つむ  扌部
解字 「扌(手)+爪(つめをひらく)」の会意形声。手の爪をひらいて物をつかむこと。
意味 (1)つまむ(抓む)。つむ(抓む)。つかむ。つかまえる。「抓入つみれ」(抓みいれの転。つまんで入れる)「抓賊ソウゾク」(賊を捕らえる) (2)つねる(抓る)。「ほおを抓る」 (3)かく。ひっかく。
 ソウ・ざる  竹部
解字 「竹(たけ)+爪(つめをひらく)」の会意形声。爪をひらいた形に編んだ竹のかご。
意味 (1)ざる(笊)。竹で編んだざる。「笊籬いかき」(竹のざる)「笊笥ソウケ」(竹のざる) (2)す。ざるの形をした鳥の巣。

つめが付いている「て」
 ベキ・もとめる  見部     

解字 金文は「見(みる)+横むきの爪(て)」の会意。てをかざし見て、探し求めること。篆文は[説文解字]に未収録。現代字は、爪が上に付いた覓になった。
意味 もとめる(覓める)。さがしもとめる。「覓索ベキサク」(さがす)「覓句ベキク」(苦吟する)「覓得ベキトク」(もとめて得る)「覓路ベキロ」(路をもとめる)「騎驢覓驢キロベキロ」(ロバに乗ってロバをもとめる。 身近にあるものをわざわざ他にもとめるおろかさ。驢は、ロバ)
<紫色は常用漢字>


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音符「翏リョウ」<オス鹿が鳴く>

2019年01月13日 | 漢字の音符
翏リョウは何を描いたのか?
「翏リョウ」は正体不明の音符である。後漢の[説文解字]は、「羽と㐱シンからなり高く飛ぶなり」としているが、㐱の意味は説明していない。これをうけて[字統]は「鳥の両翼と尾羽の形」とし、㐱を尾羽と解釈している。ほとんどの字書は似たような説明で、鳥が飛ぶ意としている。こうした中で、[角川新字源]は「羽かざりをつけた人のさま+彡」とし髪飾りが美しいと独自の解釈をしている。当初、私は「鳥が飛ぶ説」で翏の音符をもつ字を検証してみたが、当てはまるものはなかった。「羽かざりをつけた人説」も、しっくりこない。中国ネットで調べても、「鳥が飛ぶ説」ばかりである。

最高の膠(にかわ)は鹿の角製
 万策尽きた私は、再度、音符・翏リョウを持つ字を細かく点検してみた。そのひとつ膠コウ(にかわ)の字を調べてみた。膠は動物の皮や骨などを煮つめたのち乾燥させて作った接着剤である。森田恒之氏の「膠の文化」という論文を読んでいると、ハッとする箇所に出会った。
 「膠は梓弓を作るときに使う接着剤を意味する言葉である。それが一つの祖語から派生したことまで分かっている。日本語に「にく」という単語がある。和膠の生産者は原料皮を「にく」という。弓師はいまでも仕事で使う膠を「にく」と呼ぶ。「にく」はまさにユーラシア大陸北部で成立した文化を伝える言葉の化石なのだ。その言葉が渡来したのは、コウ(またはキャウ)とよんだ中国語の「膠」が渡来するはるか以前だった。(中略)膠の現地語を教えてくれたチベット人が言った。『最高級品は鹿製だと言うんだけど、チベットには鹿がいないんだ』。すごいヒントだった。日本でも一部の職人や日本画家の間では鹿膠は高級膠の別称だ。ウラル語の専門家に聞いてみた。『(ウラル地方では)膠は昔からオオジカの角製だといっていますね』。

金文の翏は鹿の角
 私は金文の翏は鹿の角に似ているな、と前から思っていたのである。そこで「鹿角と膠」でネット検索すると、鹿角膠ロッカクキョウとよぶ「健康食品」を販売する薬局のサイトが見つかった。その説明に鹿角膠は「鹿角を煎じ詰めて作ったニカワを鹿角膠といい、シカの角を10cmくらいに切り、数日間水につけてかき混ぜ、水が澄んだあとに繰り返し煎じ、骨質が柔らかくなるまで煮つめて、膠液をろ過した後に加熱濃縮し、成型して乾燥する。一般に縦と横は2~3cm、長さ5cmの黒褐色の方形状で、半透明で光沢がある」と書いてあるではないか。これで鹿角からニカワを作ったことがはっきりし、「健康食品」として生薬的な使われ方をしていることも分かった。そして金文の角のような表現は鹿の角で間違いないと思う。

 では、金文の鹿角のそばに描かれている二つないし三つの点、および篆文の彡は何を意味するのか。私はオス鹿の鳴き声の吐息を表したものと思う。秋になると鹿は発情期を迎える。鳴くのは角をもつオスで、鳴く事で、他のオスを威嚇したりメスを呼び寄せようとする。日本の和歌にも「鳴く鹿」を歌ったものは多い。そこで私は翏リョウを角があるオスの鹿が鳴くさまの象形と考えたい。


    リョウ <オス鹿が鳴く>
 リョウ・リュウ  羽部    

解字 金文第一字は鹿の角と鹿が出す吐息を描き、オス鹿が鳴く形。第二字は角の根元が人がかがんだような形にみえるため篆文で、鹿の両角⇒羽、「角の根元+吐息」⇒㐱に変化した翏リョウになった。後漢の[説文解字]が篆文の形から、「羽と㐱からなり高く飛ぶなり」としたため、鳥が高く飛ぶ意があるが、実際はほとんど使われていない。音符となるとき、「オス鹿が鳴く・鹿の群れ」「鹿の角」のイメージがある。
意味 (1)鳥が高く飛ぶ様子。(2)遠くから吹いてくる風の音の形容

イメージ
 「オス鹿が鳴く・鹿の群れ」
(嘐・蓼・寥・勠・戮)
 「鹿の角」(膠・繆・謬・醪)
 「その他」(廖)
音の変化  リョウ:蓼・寥・廖  リク:勠・戮  ロウ:醪  ビュウ:繆・謬  コウ:嘐・膠 

オス鹿が鳴く・鹿の群れ
 コウ・キョウ  口部
解字 「口(くち)+翏(オス鹿が鳴く)」の会意形声。鹿が鳴くように人が口から大きな声を出すこと。
意味 (1)おおげさで、とりとめもない言い方で話す。ほらをふく。言葉が多い。「嘐嘐コウコウ」(大げさに話すさま)(2)ほこる。志がおおきい。大言。
 リョウ・リク・たで  艸部

解字 「艸(くさ)+翏(鹿の群れ)」の会意形声。金文からある古い字。金文は上下に艸が描かれており草むらに鹿の群れがいるさまを表した地名。国名。現在の河南省東南部にあった国をいう。のち、タデ科の草に当て、その意味が主流になった。
意味 (1)たで(蓼)。タデ科の一年草。特に、葉に辛味が強く香辛料とするヤナギタデをさす。その辛味を利用して古くから香辛料に使用されてきた。水辺に生えるものが多い。「蓼たで食う虫も好き好き」(蓼の葉は食べると辛いが、それを好んで食べる虫もいる。人の嫌うものを好む者もいれば、人の好む物を嫌う者もいる)(2)辛苦。くるしみ。(3)国名。「蓼国リョウコク」(商(=殷)の時代から現在の河南省にあった国。紀元前622年に楚国により滅ぼされた)(4)日本の地名。「蓼科たてしな」(長野県の地名)
 リョウ・さびしい  宀部
解字 「宀(やね・おおい)+翏(=蓼リョウ)」の形声。蓼は、広い草むらに鹿がいるさまを表した字。それに屋根をつけた寥は、屋根・おおいの下が広い状態をいい、広い・空虚・むなしい意。転じて、さびしい・しずか、の意ともなる。
意味 (1)むなしい。空虚。「寥寥リョウリョウ」(うつろでひっそりとしているさま)「寥廓リョウカク」(①うつろ。大きい。②大空。③度量の広いこと) (2)さびしい(寥しい)。「寂寥セキリョウ」(寂も寥も、さびしい意)「寥落リョウラク」(さびしく落ちぶれたさま)
 リク・ロク・あわせる  力部
解字 「力(スキ)+翏(鹿の群れ)」の会意。鹿は群れで生活することが多く、ここでは集まる意、これに耕作するスキ(力)がついて、スキを使う人が集まって耕作すること。転じて、力をあわせる意となる。また、同音の戮リクと通用することがある。
意味 (1)あわせる(勠せる)。「勠力協心リクリョクキョウシン」(力を合わせ、心をそろえる)(2)ころす。(=戮リク
 リク・ころす  戈部  
解字 「戈(ほこ)+翏(=勠。あわせる)」の会意形声。あわせて戈(ほこ)で人を殺すこと。
意味 (1)ころす(戮す)。死刑にする。あわせころす。「殺戮サツリク」(多くの人を殺す)「刑戮ケイリク」(刑罰で殺す。死刑)(2)はずかしめる。はじ。「戮辱リクジョク」(戮も辱も、はずかしめる意)(3)あわせる。力をあわせる。(=勠リク)。「戮力リクリョク」(=勠力)

鹿の角
 コウ・キョウ・にかわ  月部にく
解字 「月(にく汁)+翏(鹿の角)」の会意形声。動物の皮や骨などを煮つめたのち乾燥させて作った接着剤。特に鹿の角から作ったものが最高とされる。
意味 (1)にかわ(膠)。動物の皮や骨などを煮つめて作った接着剤。使うとき水にいれ低温で溶かして用いる。「膠化コウカ」(にかわ状(ゼリー状)になること)「膠漆コウシツ」(にかわと、うるし。親密な間柄。固い友情)「鹿角膠ロッカクキョウ」(鹿角を煎じ詰めて作ったニカワ。生薬ともなる)「鮸膠にべ・にべにかわ」(①ニベ科の海産魚・鮸にべの浮袋を煮て膠にしたもの。②粘着力が強いことから他人に与える親近感。否定表現で用いる)「鮸膠にべもない」(とりつきようもない) (2)ねばりつく。「膠着コウチャク」(膠でくっつけたようにしっかり着く。状況が固定して進展しない)
 ビュウ・リョウ  糸部
解字 「糸(いと)+翏(鹿の角)」の会意形声。鹿の角に糸がからまること。
意味 (1)からむ。まといつく。もつれる。からみつく。「繆繆ビュウビュウ」(糸がもつれる)(2)あやまる。まちがえる。(=謬)「繆説ビュウセツ」(=謬説)
 ビュウ・あやまる  言部
解字 「言(ことば)+翏(=繆。もつれる)」の会意形声。言葉がもつれて言い間違えること。
意味 あやまる(謬)。まちがえる。あやまり。「誤謬ゴビュウ」(誤も謬も、あやまる意)「謬説ビュウセツ」(間違った説)「謬見ビュウケン」(間違った見解)
 ロウ・もろみ  酉部
解字 「酉(さけ・発酵する)+翏(=繆。もつれる)」の会意形声。酒が発酵し、器のなかで米や麹がまじりあっている(もつれる)状態。まだ粕を漉していない酒。発音は繆ビュウ・リョウ⇒ロウに変化。
意味 (1)にごりざけ。どぶろく。「濁醪ダクロウ」(濁り酒)「醇醪ジュンロウ」(香りのよい濃い濁り酒) (2)もろみ(醪)。まだかすを漉してない酒や醤油。「醪酒もろみざけ

その他
 リョウ   广部
解字 「广(やね)+翏(リョウ)」の形声。字の構造は寥リョウとほぼ同じであるが、廖は姓を表す字として用いられる。
意味 姓を表す字。「廖仲凱リョウチュウガイ」(清末の革命家)「廖任磊リャオ・レンレイ」(台湾出身のプロ野球選手)
 ※初稿は、2015.4.11、追加および修正2019.1.13


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音符 「眔トウ」 <目から涙をながす> と 「鰥カン」

2019年01月12日 | 漢字音符研究会
 トウ  目部

解字 甲骨文字は目の下に水滴を表す小点を加えており涙を表した文字。仮借して並列を表す助辞[および]などに用いられる[甲骨文字辞典]。金文から「目+水に似た形」になったが、助辞や人名で用いられた。篆文から本来の涙をながす意で用いられる。
意味 (1)なみだ・みおくる (2)およぶ。および。

イメージ  涙をながす(眔・鰥・褱)
音の変化 トウ:眔  カイ(会意):褱  カン(会意):鰥

涙をながす
 カン  魚部
解字 「魚(さかな)+眔(涙をながす)」の会意。同音の鰔カン・鳡カンに通じ、コイ科の淡水魚である大魚のハクレン・ボウウオをいう。『孔叢子』(年代不詳)には「衛人、河に釣り鰥魚カンギョを得たり。其の大なること車に盈(み)つ」とあり。車いっぱいになるほどの大魚だとされる。
 また、鰥は魚が涙をながす形であることから、捕獲された大魚(オス)が群れに戻れずに涙をながすと考え、人に移して「結婚できない男」また「妻を失った老いた男」の意味で使われる。
意味 (1)大魚の名。ハクレン。ボウウオ。「魴鰥ホウカン」(魴ホウという魚を釣りの餌にしたが、見向きもしない大魚の鰥カン) (2)やもお(鰥)。妻のない男。また妻をなくした老いた男。男やもめ。「鰥寡カンカ」(男やもめと女やもめ)「鰥寡孤独カンカコドク」「鰥夫カンフ・やもお=鰥民カンミン」「鰥居カンキョ」(妻を失って一人暮らしする)」
 カイ  衣部
解字 「衣(ころも)+眔(涙を流す)」の会意。衣は上下に分かれている。死者の衣の襟(えり)もとに涙をたれる形。別れを惜しむ意で死者との儀礼を意味する。褱を音符に含む字は、「別れを惜しむ」イメージがある。
意味 なつかしい(=懐)。
参考 音符「褱カイ」へ。 

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音符 「支 シ」 <枝わかれする>

2019年01月10日 | 漢字の音符
 シ・ささえる  支部

解字 篆文は手に竹をもつかたち。篆文第1字は、竹の字を上と下に分けて書き、真ん中に手をつけ、竹をもつ形を表す。第2字は下の竹を省略したかたち。竹を手で支持(ささえもつ)意をあらわす。また、持った竹に枝があることから、えだ・わかれたもの・わかつ意となる。現代字は、第2字の竹が十に変化した支となった。
意味 (1)ささえる(支える)。「支柱シチュウ」「支持シジ」 (2)わかれ。えだ。「支部シブ」「支隊シタイ」 (3)わかつ。分けて出す。「支払い」「支出シシュツ」 (4)「支度シタク」とは、用意する・準備すること。

イメージ 
 「手に竹をもつ」
(支)
  持った竹の枝は「枝分れ・分かれる」(枝・肢・岐・跂・翅)
 「手に持った竹」(技・伎・妓)
音の変化  シ:支・枝・肢・翅  キ・ギ:岐・技・伎・妓・跂

枝分れ・分かれる
 シ・えだ  木部
解字 「木(き)+支(えだわかれ)」の会意形声。えだわかれたした木、つまり木の枝の意。
意味 えだ(枝)。「枝葉末節シヨウマッセツ」「枝道えだみち
 シ  月部にく
解字 「月(からだ)+支(わかれる)」の会意形声。胴体から枝わかれした手と足。
意味 (1)手と足。てあし。「肢体シタイ」(手足)「四肢シシ」(両手と両足。動物の4本の足)「義肢ギシ」(四肢の失われた部分を復元した人工の手や足) (2)本体から分かれた部分「選択肢センタクシ
 キ・ギ・わかれる  山部  
解字 「山(やま)+支(わかれる)」の会意形声。山の枝道。
意味 (1)えだみち。「岐路キロ」(わかれみち) (2)わかれる。枝状にわかれる。「分岐点ブンキテン」「多岐タキ」 (3)地名。「岐阜ギフ」(岐阜県南部、長良川に臨む商業・交通の要地)
 キ・ギ・はう・つまだてる
解字 「足(あし)+支(わかれる)」の会意形声。足がたくさん分かれ出ている虫が、くねりながら行くこと。はう・はってすすむ意。また、同音の企キ(つま先立つ)に通じ、つまだてる・まちのぞむ意となる。
意味 (1)はう(跂う)。はってすすむ。「跂跂キキ」(はう虫のゆくさま)「跂行キコウ」(はうように進む)「跂行喙息キコウカイソク」(跂行は虫がはう、喙息は鳥が喙(くちばし)で息をする。動物一般・いきものをいう) (2)つまだつ(跂つ)。つまだてる(跂てる)。かかとをあげて遠くを見る。「跂足キソク」(待ち望んでつま先で立ち上がる。=跂踵キショウ。踵は、かかと)「跂望キボウ」(つま先立ちして望む。まちこがれる。=希望)
 シ・つばさ・はね  羽部
解字 「羽(はね)+支(わかれる)」の会意形声。体からわかれ出る羽。鳥や虫のはねをいう。
意味 (1)つばさ(翅)。はね(翅)。鳥や虫のはね。「翅翼シヨク」(つばさ)「鱗翅類リンシルイ」(チョウやガなど翅と体が鱗粉リンプンで被われている昆虫の種類) (2)魚のひれ。「魚翅ギョシ

手に持った竹
 ギ・わざ  扌部
解字 「扌(て)+支(手に持った竹)」の会意形声。手に持った竹を、さらに手で加工してカゴなどの製品をつくること。人間の手のわざをいう。
意味  わざ(技)。てなみ。うでまえ。たくみ。「技芸ギゲイ」「技巧ギコウ」「技術ギジュツ
 ギ・キ・わざ  イ部
解字 「イ(人)+支(=技。わざ)」の会意形声。人間の体の動きで表現するわざをいう。
意味 (1)わざ(伎)。わざおぎ。「伎楽ギガク」(古代の舞楽)「歌舞伎カブキ」「伎芸ギゲイ」(歌舞や音曲などのわざ) (2)わざを心得た人。 ※伎は主に芸能の技に使う。
 ギ  女部
解字 「女+支(=伎。芸能のわざ)」の会意形声。伎芸ギゲイを用いてもてなす女性。
意味 芸者。わざおぎ。うたいめ。「妓女ギジョ」「芸妓ゲイギ」「娼妓ショウギ
※京都では未成年の舞子を「舞妓まいこ」といい、数年の修行を終えると「芸妓ゲイこ」となる。
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
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