漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「留リュウ」<とどまる・たまる>と「瘤リュウ」「柳リュウ」「聊リョウ」「瑠ル」

2023年06月24日 | 漢字の音符
<畱> リュウ・ル・とめる・とまる  田部

解字 篆文は、「丣リュウ+田」の会意。丣リュウは金文で分かるように川の流れの両わきに溜り水ができている形。畱リュウは、これに田を加え、水が田地にとどまること。とどまる。とまる意となる。楷書から、畱⇒留に変化した。
意味 (1)とまる(留まる)。とどまる(留まる)。「留鳥リュウチョウ」「居留キョリュウ」「留守ルス」 (2)とめる(留める)。とどめる(留める)。「留置リュウチ」「留意リュウイ

イメージ  
 水が田地にたまる意から「とどまる・たまる」(留・溜・瘤・榴・聊)
「形声字」(瑠・柳)
音の変化  リュウ:留・溜・瘤・榴・柳  リョウ:聊  ル:瑠

とどまる・とまる
 リュウ・たまる・ためる・ため  氵部
解字 「氵(水)+留(とどまる)」の会意形声。水がとどまってたまること。水以外にもいう。
意味 たまる(溜る)。ためる(溜める)。「溜め池」「溜息ためいき」「溜飲リュウイン」(胃の具合が悪く、食べた物が溜ること)「溜飲が下がる」(つかえがとれてすっきりする)
 リュウ・こぶ  疒部
解字 「疒(やまい)+留(たまる)」の会意形声。皮膚に盛り上がってできたしこり。
意味 (1)こぶ(瘤)。はれもの。「動脈瘤ドウミャクリュウ」(動脈にできるこぶ)「瘤(こぶ)取り爺さん」(日本の民話) (2)じゃまなもの。「目の上の瘤こぶ
 リュウ・(ザクロ)  木部
解字 「木(き)+留(=瘤。こぶ)」の形声。古木になると幹に瘤のようなふくらみが多く出る木。

ザクロ古木の幹のふくらみ(ブログ「里山悠々録」より)
意味 「石榴ざくろ・セキリュウ」に使われる字。石榴とは、漢名の安石榴アンセキリュウの略で、安石国(安国はイラク一帯、石国はウズベキスタン)方面から渡ってきた幹に瘤(こぶ)のようなふくらみがある木の意。ザクロ科の落葉高木。ペルシャ・インド原産。果実は大きな球形で、熟すると裂けて多数の赤紫色の種子を一部露出する。「榴華リュウカ」(ザクロの華)「榴散弾リュウサンダン」(弾の中にザクロの実のようにたくさんの散弾を詰めた砲弾)
 リョウ・いささか  耳部
解字 「耳(みみ)+卯(留の略体・とどまる)」の会意形声。聞いたことが耳にとどまって、奥へすこししか伝わらないこと。すこし・いささかの意となる。
意味 (1)いささか(聊か)。すこし。「聊表リョウビョウ」(表にすこしあらわす)「聊表寸心リョウビョウスンシン」(一寸の気持ちをすこし表す。心ばかりの祝い) (2)「無聊ブリョウ」とは、(いささかも無しの意で、たいくつで、つまらないこと) (3)「聊斎志異リョウサイシイ」とは、中国清代の怪異短編小説集。聊斎とは作者の号で、題名は「聊斎が怪異を記す」の意。

形声字
 ル  玉部
解字 「王(玉:宝石)+留(ル)」の形声。ルという名の宝石で瑠璃ルリを表わす言葉に使う。
意味 「瑠璃ルリ」とは、梵語の「vaiduryaベイルリ(吠瑠璃)」の音訳語の略で、深い青色の宝石をいう。琉璃ルリとも書く。仏教の七宝のひとつ。「瑠璃色ルリいろ」「浄瑠璃ジョウルリ」(①清浄透明の瑠璃。②三味線を伴奏とする語り物の一つ。室町末期に始まり、江戸時代に大いに流行した)
 リュウ・やなぎ  木部
解字 篆文は桺リュウで「木(き)+丣(リュウ)」の形声。李時珍の[本草綱目]は「柳枝は弱くして垂れ流れる。故に之を柳と謂う」とし、丣リュウを流リュウに通じるとしている。現在の字は、丣⇒卯に変化した柳となった。

水郷・周庄の水路の柳(上海近郷・筆者撮影)
意味 (1)やなぎ(柳)。しだれやなぎ。「川柳かわやなぎ・センリュウ」(①川辺に生える柳。②俳句と同じ17字の短詩。内容は機知・風刺が特色)「柳に風」(逆らわずに受け流すこと)「楊柳ヨウリュウ」(やなぎの総称。楊は枝が垂れないヤナギ、柳は枝のたれるヤナギ)(2)柳の枝や葉・種子の綿毛など。「柳腰やなぎごし」(枝が細くしなやかな例え)「柳絮リュウジョ」(柳の種子の綿毛が飛び散る。春の季語)「柳葉魚シシャモ」「柳営リュウエイ」(将軍の陣営。西柳という地に陣した名将にちなむ) (3)地名「柳川やながわ」「柳町やなぎまち」 (4)姓のひとつ。「柳やなぎ」「柳田やなぎだ」「柳沢やなぎさわ
<紫色は常用漢字>

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