漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「盾ジュン」<たて> と「楯ジュン」「循ジュン」「遁トン」

2013年09月29日 | 漢字の音符
 ジュン・トン・たて  目部   

解字 甲骨文は盾(たて)の形の象形。金文の一字に目の上におおいのある形のものが出現し、篆文の「おおい+十(集中させる)+目」 の形となり現代字につづく。十は「針」のように先を集中させる意味があり、盾は、おおいの後ろで目を集中させて敵に注意をはらう形の象形で、たてを意味する。
意味 (1)たて(盾)。矢・槍などを防ぎ、からだを隠す板状の武器。「矛盾ムジュン」(矛ほこと盾たて。つじつまがあわないこと) (2)自分の立場をまもること。「~を盾にする」「~に盾突く」(反抗する=楯突く)

イメージ 
 「たて」
(盾・楯・循) 
 「たてにかくれる」(遁)
音の変化  ジュン:盾・楯・循  トン:遁

たて
 ジュン・たて  木部
解字 「木+盾(たて)」の会意形声。木製の盾。
意味 (1)たて(楯)。盾とも書く。弓矢・槍などを防ぐ武具。「楯突(たてつ)く」(はむかう) (2)記念・賞の杯。「優勝楯ユウショウたて
 ジュン・したがう・めぐる  彳部
解字 「彳(ゆく)+盾(たて)」の会意形声。軍隊が盾を持って行進すること。各地を行くので人心を安んじる・人々が従う意となる。また、巡ジュンに通じ、めぐる意もある。
意味 (1)安んじる。なでる。「循撫ジュンブ」(人心を安んじる) (2)したがう(循う)。「循例ジュンレイ」(前例に従う)「因循インジュン」(古い習慣に因り循う) (3)めぐる(循る)。「循環ジュンカン」(めぐり回る)「悪循環アクジュンカン」「循行ジュンコウ」(めぐり行く)

たてにかくれる
 トン・シュン・ジュン・のがれる  辶部
解字 「辶(ゆく)+盾(たてにかくれる)」の会意形声。盾にかくれるようにこっそり逃げること。常用漢字でないため、二点しんにょう。
意味 (1)のがれる(遁れる)。かくれる。「遁走トンソウ」(逃げ走る)「遁世トンセイ」(俗世間との交渉を断つ。仏門に入る)「隠遁イントン」(世間をのがれて隠れる) (2)しりごみする。あとずさりする。「遁巡シュンジュン」(=逡巡)
<紫色は常用漢字>
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「けん制」の「けん」はどんな字?

2013年09月12日 | 漢字の音符
「中国をけん制する狙いがある」「けん制球のうまい投手」など、新聞紙上で「けん制」という言葉をよく目にする。おそらく常用漢字以外の漢字でもっとも多く使われる字であろう。
どんな字で、どんな意味なのだろうか? 


 ケン・ひく  牛部             

解字 篆文は、「玄(つな)+冖(鼻輪の半分が見える形)+牛」 の形である。玄ゲンは、ここでは牛をひく綱。次の冖は牛の鼻輪で鼻の外に出ている半分を表す。一番下が牛。牽は、牛の鼻輪につけた綱を引っぱるかたちで、意味は牛を「牽く」である。
 牛を牽く
意味 (1)ひく(牽く)。ひっぱる。ひきつける。「牽引ケンイン」「牽牛ケンギュウ」(牛飼い)「牽牛花ケンギュウカ」(あさがお)「牽強付会ケンキョウフカイ」(牽強はむりにひく、付会はくっつける、あわせて無理にこじつける意)「牽制ケンセイ」 (2)つらなる。つづく。「牽連ケンレン」(ひかれつながる。ひきつづく) 

牽制とは
 牽制とは、牽いて制する、つまり牛を牽いて牛の動きを制御すること。これを人に及ぼして、「相手の注意を自分にひきつけて相手を自由に行動させないこと」。「中国を牽制する」は、例えば日本がベトナムやフィリピンと会談するなどして中国の海洋進出の動きを自由にさせないようにすること。野球の「牽制球」は、塁上に出ている走者の動きを自由にさせないため投手が投げる球」である。

書き順
 書き順は、まず「玄」を書き、次に「冖」を、最後に「牛」を書く。最初の玄を書くとき、後で冖が入るように玄のムを少し縦長に書くのがコツ。
http://kakijun.jp/page/ken200.html
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音符 「戉エツ」 <まさかり>

2013年09月08日 | 漢字の音符
 エツ・まさかり   戈部   

解字 まさかりの形の象形。大きな刃のついた古代の武器のひとつ。大きなおの。
意味 まさかり。武器や儀式に用いる。鉞の原字。

イメージ  「まさかり」 (戉・鉞・越)
音の変化  エツ:戉・鉞・越

まさかり
 エツ・まさかり  金部
  鉞の刃の部分(故宮博物院蔵) 
解字 「金(金属)+戉(まさかり)」 の会意形声。戉(まさかり)に金を付けて金属製であることを示した。
意味 まさかり(鉞)。大きなおの。「斧鉞フエツ」(おのとまさかり)
 エツ・こす・こえる  走部
解字 「走(あるく)+戉(まさかりの刃のような地形)」 の会意形声。走は、ここでは歩く意。まさかりの刃先のような山形の所をあるいて越えること。
意味 (1)こえる(越える)。こす(越す)。「越境エッキョウ」 (2)限界や分をこえる。「僭越センエツ」(自分の身分・地位を越えて出過ぎたことをする) (3)去る。遠ざかる。 (4)[国]こし(越)。北陸道の呼称。こしのくに(越の国)。越前・能登・加賀・越中・越後の5国をいう。
<紫色は常用漢字>

                バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



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音符 「戠ショク」 <しるしをつける>

2013年09月04日 | 漢字の音符
 ショク・シ 戈部      

解字 「辛(入れ墨に用いる大きな針)+印をつける+戈(ほこ:たたく・うつ)」の会意。「印をつける」は、甲骨文字で〇に点、金文で〇に縦棒、現代字で日に変化している。戠は、大きな針(辛)をたたき(戈)ながら、印(日)を打ってゆくこと。現代字は辛が立に変化し、全体で「音+戈」の形になった。戠を音符に含む字は、「印をつける」「目立つ・目立たせる」イメージを持つ。

イメージ  「印をつける」 (幟・識・職)、印を打って「目立つ・目立たせる」 (織・熾)
音の変化  ショク:職・織  シ:幟・熾  シキ:識

印をつける
 シ・のぼり  巾部
解字 「巾(ぬの)+戠(印をつける)」 の会意形声。目印をつけた長い布。
意味 (1)のぼり(幟)。細長い布に模様をつけてめじるしとして立てる旗。「旗幟はたのぼり」「鯉幟こいのぼり」(鯉のかたちをした幟)「赤幟セキシ」 (2)[仏]しるす。あらわす。「標幟ヒョウジ」(形でその内容を表現すること。密教では、印(指の組合せ)・持物などで仏の役割を表す)
 シキ・しる・しるす  言部
解字 「言+戠(印をつける)」 の会意形声。言葉にしるすこと。また、言葉にしるすことによって深く認識すること。
意味 (1)しるす(識す)。しるし。「標識ヒョウシキ」 (2)しる(識る)。考える。さとる。「識別シキベツ」「認識ニンシキ」「識見シキケン
 ショク  耳部
解字 「耳+戠(印をつける)」 の会意形声。戦場で討ちとった敵の耳に印 しをつけて数え、その戦功を記録すること。耳の数の多さは戦場での手柄を示した。転じて、仕事やつとめの意となった。
意味 (1)しょく(職)。いとなみ。しごと。「就職シュウショク」「定職テイショク」 (2)つとめ。役目。担当する。「職務ショクム」「職掌ショクショウ」(うけもつ職務)

目立つ・目立たせる
 ショク・シキ・おる  糸部
解字 「糸+戠(目立たせる)」 の会意形声。色糸などを入れて糸を交差させ、模様をつけて目立たせること。織は、もと織物のなかでも模様のあるものを意味した。
意味 (1)おる(織る)。布をおる。はたおり(機織り)。「織機ショッキ」「染織センショク」(染めと織り)「紡織ボウショク」(糸を紡ぐことと織ること) (2)組み立てる。組み合わせる。「組織ソシキ
 シ・さかん・おき  火部
解字 「火+戠(目立つ)」 の会意形声。火が目立って燃えるさま。
意味 (1)さかん(熾ん)。勢いがはげしい。「熾烈シレツ」(勢いが盛んで激しい)「熾盛シセイ」(熾も盛もさかんの意) (2)[国]おき(熾。=燠)。薪が燃えて炭火のようになったもの。「熾火おきび」(赤く熱した炭火)
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