漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「畀ヒ」<かぶら矢・矢じり> と「痹ヒ」「鼻ビ」

2015年10月21日 | 漢字の音符
 ヒ 田部

解字 金文は先に大きな矢じりのついた矢の形で、かぶら矢、また矢じりを表す。現代字は上部が田に、下部が丌からなる畀となった。あたえる・たまう意となるのは、儀式などの場で、矢じりをあたえることからと思われる。
意味 あたえる。たまう。「畀予ヒヨ」(あたえる。畀も予も、あたえる意)

イメージ 
 「あたえる」
(畀)
 「かぶら矢・矢じり」(痹)
 「形声字」 (鼻・嚊・嬶)
音の変化  ヒ:畀・痹・嚊  ビ:鼻  かかあ:嬶

かぶら矢・矢じり
 ヒ  疒部
解字 「疒(やまい)+畀(矢じり)」の会意形声。畀はここでは毒矢の矢じり。痹は、毒矢に当たり身体の感覚がなくなること。現在は、同音の卑を用いた痺が通用する。
意味 しびれる(痹れる)。(=痺れる)。「痲痹マヒ」(痲も痹も、しびれる意。=麻痺。痲痺)

形声字
  ビ・ヒ・はな  鼻部

解字 旧字は、「自(はな)+畀(ヒ)」の形声。自は、もともと鼻の象形で「はな」の意。「はな」の発音であるヒ(畀)をつけて鼻を表した。しかし、もともと鼻の意であった自の発音はジ・シである。これがなぜヒの発音になったのか。はっきりしないが、ヒの音は鼻息の音を表しているとされる。
 新字体は、畀の丌⇒廾に変化した鼻。日本語の「はな」は、端(はな。先端)から来ている。漢字でも同じく先端の意から「はじめ」の意がある。
意味 (1)はな(鼻)。「鼻息はないき」「鼻孔ビコウ」(鼻のあな) (2)はじめ。「鼻祖ビソ」(始祖。元祖)
 ヒ  口部
解字 「口(くち)+鼻の旧字」」の会意形声。口から鼻の息がでること。
意味 (1)はないき。(2)[国]かかあ。(=嬶)。
<国字> かかあ  女部
解字 「女(おんな)+鼻の旧字(=嚊の略体)」の会意。この字で鼻は、嚊(はないき)の略体。嬶かかあは、鼻息のあらい女の意で、妻をたわむれ親しんでよぶ呼称。
意味 かかあ(嬶)。かか。自分の妻をたわむれ親しんで呼ぶ呼称。「嬶天下かかあデンカ」(妻が夫より権力をもち、いばっていること。⇔亭主関白)
<紫色は常用漢字>

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音符「可カ」<斧のまがった柄とその発音・カ>「歌カ」「苛カ」「河カ」「何カ」「荷カ」

2015年10月17日 | 漢字の音符
 増補改訂しました。
 カ・よい・べし  口部
石斧を装着した曲がった木の柄

解字 甲骨文字は、「口(くち)+丁(斧の柄にするまがった木)」の形声。丁(丁テイとは別の字)は、斧の柄にする木製の曲がった木。可は、この曲がった柄の発音である「カ」を口から出す形であり、カの音を表す。カの音は、漢字ができる前から肯定を表す意味で使われており、「可」の字でこの意味を「仮借カシャ」(当て字)して表した。承諾を表す「よし」の他、「できる」意となる。
意味 (1)よい(可い)。よし。よいと許す。「許可キョカ」 (2)できる。「可能カノウ」 (3)べし(可し)。するべし。

イメージ 
 「よし・できる」
(可)
 「カという声」(呵・訶・哥・歌・苛・珂)
 斧のまがった柄から「まがる」(河・舸・柯・坷・軻・何・荷)
音の変化  カ:可・呵・訶・哥・歌・苛・珂・河・舸・柯・坷・軻・何・荷

カという声
 カ  口部
解字 「口(くち)+可(カという声)」の会意形声。口からカッという声を強く出すこと。しかる意と、わらう意とある。可は本来、カ(丁)という音を口から出す意だったが、可能などの意に仮借カシャ(当て字)されたので、口をつけて本来の意味を表した。そのため、この字には口が二つある。
意味 (1)しかる(呵る)。せめる。「呵叱カシツ」(呵も叱も、しかる意)「呵責カシャク」(しかりせめる)(2)わらう(呵う)。「呵呵カカ」(からからと笑う)
 カ  言部
解字 「言(ことば)+可(カという声)」の会意形声。カッという強い言葉を出すこと。呵とほぼ同じ意味だが、梵語の音訳字としての使用が多い。
意味 (1)しかる(訶る)。(=呵る)。せめる。(2)梵語の音訳。「魔訶マカ」(梵語mahaの音訳。偉大な・非常に・すぐれる意)「摩訶不思議マカフシギ」(非常に不思議な。原義は、思い議(はか)りもできないほど偉大な)
 カ・コ  口部
解字 「可(カという声)+可(カという声)」の会意形声。カという声を連続して出すこと。うたう意となる。歌の原字。コの発音は唐音(宋以後の中国音)。
意味 (1)うたう(哥う)。うた。 (2)地名。「哥倫比亜コロンビア」(南アメリカ北西部の共和国)
 カ・うた・うたう  欠部
解字 「欠(口をあけて立つ人)+哥(うたう)」の会意形声。欠ケンは口をあけて立つ人の象形。これに哥(うたう)がついた歌は、人が口をあけて歌うこと。
意味 (1)うた(歌)。うたう(歌う)。「歌手カシュ」 (2)やまとうた。「和歌ワカ」「歌人カジン
 カ  艸部  
解字 「艸(くさ)+可(カという声)」の会意形声。からい草を食べてカッと声を強く出すこと。からい意から転じて、きびしい・むごい意となる。
意味 (1)からい(苛い)・きびしい(苛しい)・むごい(苛い)。「苛政カセイ」「苛烈カレツ」「苛酷カコク」 (2)いらだつ。いらいら(苛苛)する。「苛立(いらだ)つ」
 カ  王部
解字 「王(玉)+可(カの音)」の形声。カという名の宝石。メノウの白いものを言う。
意味 (1)しろめのう。「珂声カセイ」(玉の触れ合う音)「珂傘カサン」(玉で飾った傘蓋) (2)貝の名。くつわがい。 (3)地名。「那珂湊なかみなと」(茨城県の旧市名)「那珂川なかがわ」(①茨城県で太平洋にそそぐ川。②福岡県で博多湾にそそぐ川)

まがる
 カ・かわ    氵部
解字 「氵(水)+可(まがる)」 の会意形声。曲がって流れる大きな川の意。中国で黄河を表す字として使われた。黄河は中流で「几」の字形にまがり、さらに関中盆地から流入する渭水との合流点でもほぼ直角に曲る。甲骨文字からある字だが、殷の時代には渭水との合流点で直角に曲がることから、黄河を表す字として用いたと思われる。のち、大きな川の意となった。なお、殷の時代に黄河の先が曲がっているのを正確に把握していたとは考えられないとして、この説を批判する人がいるが、渭水との合流点で曲がっていることは遠くから旅をしてきた人に聞けば簡単に把握できる。戦略を立てる上からも川の流路を把握することは国家にとって最も大事なことである。
意味 (1)川の名前。「黄河コウガ」 (2)かわ(河)。大きなかわ。「河川カセン」「運河ウンガ
 カ  舟部
解字 「舟(ふね)+可(=河。大きな河)」の会意形声。河を上下する比較的大きな舟。
意味 ふね。おおきな船。「軽舸ケイカ」(軽快な船。はやぶね)「舸艦カカン」(大きな軍艦)
 カ・え  木部
解字 「木(き)+可(まがる)」の会意形声。まがった木の枝。先端に斧を結び柄とする曲がった木の枝。原字は丁で、可の構成要素となる重要な字。
意味 (1)え(柯)。斧の柄。斧をつける先の曲がった枝。「斧柯フカ」(斧の柄) (2)木の枝。「柯葉カヨウ」(枝と葉)
 カ  土部
解字 「土(つち)+可(まがる)」でこぼこした土地。
意味 ごつごつと角張っているさま。でこぼこでひっかかるさま。「坎坷カンカ」(行きなやむ。坎も坷も、でこぼこする意)
 カ  車部
解字 「車(くるま)+可(=坷。でこぼこした土地)」の会意形声。でこぼこした土地で車が行きなやむこと。
意味 (1)「轗軻カンカ」とは、坎坷カンカを車偏に置き換えて作った熟語。①車の行き悩むさま。②事の思うように運ばないさま。 (2)車がきしるさま。「軻峨カンガ」(ごつごつして高いさま) (3)孟子の名。「孟軻モウカ
 カ・なに・なん  イ部

解字 甲骨文は、人が斧の柄(=丁。=柯。まがった柄)をになう形。荷(になう)の原字。金文は人に頭部を追加して描いた形。篆文以降、「イ(ひと)+可(=柯。斧の柄)」になった。意味は人が斧の柄を「になう」こと。しかし、本来の意味でなく、人にものを尋ねる意に仮借カシャ(当て字)され、「なに」「どれ」などの疑問詞となった。
意味 (1)なに(何)・どれ・どの。「誰何スイカ」(誰か、と声をかけて問いただす)「如何イカン」 (2)になう。
 カ・に・になう  艸部
解字 「艸(くさ)+何(になう)」の会意形声。花弁を荷っているハス花の花托の意からハスの意がある(実際は花托でなく雌しべ)。何が「なに」の意となったため、本来の「になう」意味も表わす。
意味 (1)になう(荷う)。「荷担カタン」(①荷物を担う。②味方をする) (2)に(荷)・にもつ。「出荷シュッカ」「重荷おもに」「歩荷ぼっか」(山小屋などへ荷物をいくつも背負って運ぶ仕事をする人。荷物が歩く意からと言われる) (3)はす(蓮)。はちす(蓮の古名。花托の形がハチの巣に似ることから)。「荷葉カヨウ」(ハスの葉。ハス花の香りに似せた練り香の一種)
<紫色は常用漢字>

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音符「者シャ」<たき火に人が集まる> と「着チャク」

2015年10月14日 | 漢字の音符
[者] シャ・もの  耂部おいがしら

解字 甲骨文第一字は、木に複数の点(炎)がついており、たき火を表す。第二字は、枝が伸びた木の象形に口を加えた字。この木は、第一字のたき火の枝で、それに口(話す)をくわえた者シャは、たき火を囲んで人が集まり、口々に話をするさまを表す。金文は、口に点が入り(点がないものも混在する)、曰(いう)の形になった。篆文以降の変化により、最終的に上部は耂(おいがしら)、下部は曰⇒白になった者シャとなった。意味は、たき火を囲んで人が集まり、口々に話をするさまを表す。しかし、本来の意味でなく仮借カシャ(当て字)され、人や事物をさしたり、主語を提示したり、時を示す言葉にそえる助字などに用いられる。新字体での点がとれた者になった。同様に、新字体で音符として用いられる場合も点がとれる。
意味 (1)もの(者)。人物・事物・所などをさしていう。上の言葉を名詞化する。「作者サクシャ」「勇者ユウジャ」「前者ゼンシャ」 (2)主語を提示・強調する。~は。とは。 (3)時を示す言葉にそえる助字。「今者コンシャ」(いま。このごろ)

イメージ 「仮借カシャ(当て字)」のほか、たき火に人々が「あつまる・おおい」イメージがある。その他、「同音代替」などがある。
 「仮借(当て字)」(者)
 「あつまる・おおい」(諸・署・都・闍・賭・堵・屠・著・奢)
 「形声字」(煮・暑・箸・緒・曙・儲・猪・潴・躇・薯・藷・楮)
 「その他」(着)
音の変化 
 シャ:者・煮・奢  ショ:諸・暑・署・緒・曙・薯・藷  ト:都・闍・賭・堵・屠  チョ:著・箸・儲・猪・潴・躇・楮  チャク:着

あつまる・おおい
 ショ・もろもろ  言部  

解字 金文は者の字であり、あつまる・おおい意。篆文から言が付いたが、もともとあった白(=曰。いう)に同じ意味の言(いう)をつけた字。者が仮借されて「もの」などの意味になったので言をつけて、元の意味を表した。結局、諸は者と同字ということになる。意味は、もろもろ・多くの。
意味 (1)もろもろ。多くの。「諸国ショコク」「諸兄ショケイ」(多くの兄。みなさん)「諸般ショハン」(それぞれ。いろいろ) (2)これ。
 ショ・しるす  罒部  
解字 「罒(=网。あみ)+者(=諸。もろもろ)」の会意形声。もろもろのものを網の目のように区分けし配置すること。また者(=著。書きつける)に通じ、書きしるす意がある。現代字は、网⇒罒に変化する。
意味 (1)割り当てる。手分けする。人を配置する。「部署ブショ」(役目を割り当てる。また、割り当てられた役目) (2)配置された役所。「税務署ゼイムショ」「消防署ショウボウショ」「官署カンショ」 (3)しるす(署す)。書きしるす。「署名ショメイ
 ト・ツ・みやこ  阝部 
解字 「阝(城市)+者(あつまる・おおい)」の会意形声。阝は、もと邑ユウで城壁の中に人がひざまずいている形。(音符「邑ユウ」を参照)人々が住む城市を表し、右辺にくるとき、「おおざと」と呼ばれ阝の形になる。それに者(あつまる・おおい)がついた都は、多くの人が集まって城壁の中にすむ大きな都市の意味で、のちに「みやこ(都)」の意味にも用いられた。
意味 (1)みやこ(都)。天子の宮城のある地。「都市トシ」「都城トジョウ」 (2)みやこする。「遷都セント」「建都ケント」 (3)すべて。ことごとく。「都度ツド」(そのたびごと)「都合ツゴウ」(①すべて合わせる。②[国]ぐあい)
 ト・ジャ  門部
解字 「門(もん)+者の旧字(=都。みやこ)」の会意形声。都をとりまく城壁の門。二階になった城門をいう。
意味 (1)トの発音。うてな。二階になった城門。(2)ジャの発音。梵語の音訳字。「阿闍梨アジャリ」(梵語 acarya[師範]の音訳字。師範となる徳の高い僧)
 ト・かける  貝部
解字 「貝(財貨)+者の旧字(あつめる)」の会意形声。財貨を集中してつぎこみ勝負すること。新常用漢字なので、者に点がある。点なしの表記も可。
意味 (1)かける(賭ける)。 (2)かけ(賭け)。ばくち。「賭博トバク」(金品を賭けて勝負を争うかけごと)「博徒バクト
 ト・ド・かき  土部  
解字 「土(つち)+者の旧字(あつまる)」の形声。土をあつめて、突き固めた垣をいう。
意味 (1)かき。かきね。へい。「堵列トレツ」(垣根のようにずらりと立ち並ぶ)「環堵カント」(まるくとりまく垣)「田堵たと」(田の垣の意だが、平安時代に荘園の田の耕作を請け負った有力農民をいった。彼らはのちに田に自分の名をつけたので名田と呼ばれるようになった) (2)(垣で)ふせぐ。さえぎる。「安堵アンド」(堵のなかに安んずる。安住する。安心する)
 ト・ほふる   尸部 
解字 「尸(=屍。しかばね)+者の旧字(あつまる)」の会意形声。多くの家畜を集めて殺すこと。
意味 (1)ほふる(屠る)。家畜を殺す。敵を殺す。「屠殺トサツ」(肉や皮を得るため牛や羊を殺すこと)「屠者トシャ」(屠殺する人)「屠蘇トソ」(年始に飲む薬用酒。屠蘇のいわれは、悪鬼を屠(ほふ)り魂を蘇生ソセイさせるという) (2)梵語Buddhaの音訳字。Buddhaは「浮屠フト」「浮図フト」「仏陀ブッダ」などと音訳され、いずれも仏教の意。「浮屠氏フトシ」(仏教徒)
 チョ・チャク・あらわす・いちじるしい  艸部
解字 「艸(くさ)+者(多くのものが集まる)」の会意形声。本来は、草の繊維を織り合わせて(集めて)作られた布の衣で、転じて、衣を着る意。草の繊維から布を織り衣ができることから、多くの材料を集めてはっきりとした形が「あらわれる」意となる。日本では「いちじるしい」という訓になる。また、「あらわれる」から転じて、あらわす意となるが、この場合は文章を書きあらわす意味で用いる。なお、衣を着る意は、俗字である「着チャク」が受け持つようになった。著は成り立ちから言うと、箸チョの竹冠⇒艸に変化した字で、隷書(漢代)から見える比較的新しい字。
意味 (1)いちじるしい(著しい)。あらわれる。めだつ。「顕著ケンチョ」「著名チョメイ」(2)あらわす(著わす)。書きあらわす。「著作チョサク」「著述チョジュツ」(3)着る。着く。
 シャ・おごる  大部
解字 「大(ひと)+者の旧字(あつまる)」の会意形声。大は人の正面形。奢は、物がたくさん集まって、ぜいたくをする人。
意味 (1)おごる(奢る)。ぜいたくをして人にふるまう。 (2)ぜいたくをする。「奢侈シャシ」(度をこえてお金をつかうこと。身分不相応なぜいたく)「豪奢ゴウシャ」(ぜいたくで、はでなこと)「華奢カシャ」(はなやかでぜいたく)「華奢キャシャ」([国]①姿がほっそりとして上品。②作りが弱弱しく頑丈でない)

形声字
 シャ・ショ・にる・にえる・にやす  灬部
解字 「灬(火)+者(シャ)」の形声。灬(火)で物をにる(煮る)ことを煮シャという。物に水を加えて火で加熱すること。
意味 (1)にる(煮る)。にえる(煮える)。「煮沸シャフツ」「煮海シャカイ」(海水を煮て塩をつくること)(2)[国]にやす(煮やす)。怒りの気持ちを激しくする。「業ゴウを煮やす」
 ショ・あつい  日部
解字 「日(太陽)+者(ショ)」の会意形声。ショは煮ショ・シャ(にる)に通じ、太陽の熱が、煮えるような熱さをいう。
意味 (1)あつい(暑い)。気温が高い。あつさ。「避暑ヒショ」 (2)夏。「暑中ショチュウ」(夏の暑いあいだ)「暑気ショキ」(夏のあつさ)
 チョ・はし  竹部
解字 「竹(たけ)+者の旧字(=煮。にる)」の会意形声。煮物のはいったナベから食べ物をとりだす竹の棒。はしをいう。新常用漢字なので、者に点がある。点なしの表記も可。
意味 はし(箸)。食物をはさむはし。「菜箸さいばし」「火箸ひばし
 ショ・チョ・お  糸部
解字 「糸(いと)+者(=煮。にる)」の会意形声。マユを煮て、糸を引き出すこと。
意味 (1)いとぐち。物事の起こりはじめ。「緒戦ショセン」(戦いが始まったころ) (2)すじ。つづき。つながり。「一緒イッショ」 (3)こころ。「情緒ジョウチョ」 (4)ひも。お(緒)。「鼻緒はなお
 ショ・あけぼの  日部
解字 「日(ひ)+署(ショ)」の形声。ショは緒ショ(物事のはじめ)に通じ、日(太陽)の昇るはじめ、即ち、日が昇る前をいう。
意味 あけぼの(曙)。あかつき。夜明け。「曙光ショコウ」(あけぼのの光)「曙鐘ショショウ」(夜明けの鐘の音)
 チョ・もうける  イ部
解字 「イ(ひと)+諸の旧字(チョ)」の形声。チョは貯チョ(ためる)に通じ、人がお金をためること。また、たくわえの意から、まさかの時に用意しておく跡継ぎの王子をいう。日本では、もうける意で使う。
意味 (1)たくわえる。たくわえ。「儲蓄チョチク」(=貯蓄) (2)あとつぎ。皇太子。「儲君チョクン」(皇太子。もうけの君)(3)[国]もうける(儲ける)。
覚え方 じることをするは、かる。者は旧字。
猪[豬] チョ・い・いのこ・いのしし  犭部  

解字 篆文は豬で、「豕(ぶた)+者(チョ)」の形声。チョは、貯チョ(ためる)に通じ、肉を体内にたくわえているブタの意。食肉用のブタをさす。楷書から、豕⇒犭に変化した猪になった。日本では、ブタの原種であるイノシシの意で用いる。
意味 (1)い(猪)。いのこ(猪子)。いのしし(猪)。豚の原種。山野に棲む。「猪突チョトツ」(猪のようにまっしぐらに突き進む)「猪首いくび」(首が猪のように太く短い) (2)ぶた。中国では、ぶたの意で使い、イノシシは野猪という。
 チョ  氵部
解字 「氵(みず)+豬(チョ)」の形声。チョは貯チョ(ためる)に通じ、水がたまること。また、豬(いのしし)が、ぬたを打つ(ねころがる)みずたまりと解釈することもできる。
意味 (1)みずたまり。沼。ため池。「潴水チョスイ」(たまりみず)(2)たまる。水がたまる。(3)地名。「三潴郡みずまグン」(福岡県の郡)「三潴町みずままち」(もと三潴郡に属した町。久留米市に合併した)
 チョ  足部
解字 「足(あし)+著の旧字(チョ)」の形声。チョは佇チョ(たたずむ)に通じ、足が前に出ずその場にたたずむこと。
意味 ためらう。たちどまる。「躊躇チュウチョ」(ためらう。決めかねてぐずぐずする)
 ショ・いも  艸部
解字 「艸(草)+署の旧字(ショ)」の形声。ショは同音の蔗ショ(いも)に通じ、いもをいう。
意味  いも(薯)。いも類の総称。とくに、ヤマノイモ・ジャガイモをいう。「自然薯ジネンジョ」(ヤマノイモ)「馬鈴薯バレイショ」(ジャガイモの別称)
 ショ・いも  艸部
解字 「艸(草)+諸の旧字(ショ)」の形声。ショは蔗ショ(いも)に通じ、いもをいう。
意味 (1)いも(藷)。とくに、さつまいもをいう。「甘藷カンショ」(さつまいも)「甘藷先生カンショセンセイ」(青木昆陽を親しんでいう。救荒作物として甘藷栽培を勧めた) (2)さとうきび。イネ科の多年草。
 チョ・こうぞ  木部
解字 「木(き)+者の旧字(チョ)」の形声。チョは苧チョ(からむし)に通じる。からむしは苧麻チョマとも呼ばれ、繊維をとるために利用されるイラクサ科の多年草。楮チョは樹皮の繊維を利用する木で、主に和紙の材料となる。
意味 (1)こうぞ(楮)。クワ科の落葉低木。樹皮は和紙の原料になる。 (2)カジノキ。クワ科の落葉高木。樹皮は和紙の原料になる。 (3)紙。「楮墨チョボク」(紙と墨。転じて、紙に書く文字や詩文)「楮幣チョヘイ」(紙幣。おさつ)

その他
 チャク・ジャク・きる・きせる・つく・つける  羊部

解字  著チョの俗字。著には、着る・着く意味があるが、もっぱら、著作(書き表わす)・著名(目立つ)の意味に専用され、「きる」「つく」意味は「着」が受け持つようになった。着は著を略して書いた形から変化してできた俗字。
意味 (1)きる(着る)。きせる(着せる)「着衣チャクイ」 (2)つく(着く)。くっつく。つける(着ける)。「着色チャクショク」 (3)ゆきつく。つく(着く)。「到着トウチャク」 (4)とりかかる。「着工チャッコウ
<紫色は常用漢字>

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音符 「飛ヒ」 <とぶ> と 「卂ジン」「迅ジン」

2015年10月07日 | 漢字の音符
 ヒ・とぶ・とばす  飛部            

解字 鳥の飛ぶすがたの象形。羽を広げて飛ぶ姿を描く。部首は飛。
意味 (1)空をとぶ。とぶ(飛ぶ)。「飛行ヒコウ」「飛魚とびうお」 (2)とびあがる。とびちる。「飛散ヒサン」「飛躍ヒヤク」 (3)とばす(飛ばす)。速く行く。「飛脚ヒキャク
参考 飛は部首「飛とぶ」になる。漢字の右辺について、飛ぶ意を表す。しかし、この部に属する字はほとんどなく、強いてあげると飜ホン(ひるがえる=翻ホン)だが、この字は翻と同字とされており、実質的には部首の飛ヒだけとなる。

   シン <はやい>
 シン  十部
解字 飛の形から羽がとれて変化した形(迅を参照)。鳥が羽をたたんで急降下するさまで、はやい意。単独では使われず、はやい意で音符となるほか、同音代替字となる。
意味 はやい。

イメージ
 「はやい」
(迅・汛)
 「その他」(訊・蝨)
音の変化  ジン:迅・汛・訊  シツ:蝨

はやい
 ジン・はやい  辶部                  

解字 卂ジンは、飛の形から羽がとれて変化した形。鳥が羽をたたんで急降下するさまで、はやい意。迅は、「辶(ゆく)+卂ジン(はやい)」の会意形声。はやく行く意。
意味 (1)はやい(迅い)。すみやか。「迅速ジンソク」 (2)はげしい。「迅雷ジンライ」(激しく鳴るかみなり)「奮迅フンジン」(勢い激しく奮い立つ)「獅子奮迅シシフンジン
 ジン  氵部
解字 「氵(みず)+卂ジン(はやい)」の会意形声。水が増水して速くなること。この字は日本ではほとんど使われない。中国では河川の季節ごとの増水の意味で使う。
意味 (1)河川の季節ごとの増水。「春汛シュンジン」(春の増水)「汛期ジンキ」(定期的な増水期)「長江汛期チョウコウジンキ」(長江の増水期) (2)出回り期「漁汛リョウジン」(漁獲期)「繭汛ケンジン」(蚕がいっせいに繭(まゆ)を作る時期)

その他
 ジン・シン・たずねる・とう  言部             

解字 甲骨文は「口+ひざまずいた人+糸」で、捕虜を縄で後ろ手にしばり、口で訊問しているさま。この字はジンという発音であるため、篆文で「言(ことば)+卂(ジン)」の形声に変化した。したがって訊ジンは取り調べる・問いただす意となる。
意味 (1)たずねる(訊ねる)。とう(訊う)。といただす。取り調べる。「訊問ジンモン」(取り調べる。たずね問う。=尋問)「審訊シンジン」(詳しく問いただす) (2)(安否を)とう。たより。「音訊オンシン」(たより。手紙などによる連絡。=音信)
覚えかた 「言(ことば)+卂(はやい)」で矢継ぎ早に問いただすと覚えてもよい。(実際には矢継ぎ早に、の意味はない)
蝨[虱] シツ・シチ・しらみ  虫部
解字 「虫虫(たくさんのむし)+卂(シツ・シチ)」の形声。シツ・シチは蛭シツ・シチ(血を吸うヒル)に通じ、人の頭髪などに取り付いて血を吸う虫をいう。
意味 しらみ(蝨)。虱シツ・シチは俗字(卂+虫から変化した形と思われる)。哺乳類の毛や皮膚にしつこく寄生し血を吸う昆虫。宿主の体から離れると2~3日で死ぬ。俗字の虱が風から一画を省いたかたちなので、シラミを半風子ともいう。「虱潰(しらみつぶ)し」(シラミを一匹ずつ見つけてつぶすように、片端から見つけて処理すること)
俗字の覚え方 風ノないしらみ(風の字のノがないのが虱) 
<紫色は常用漢字>

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音符「崔サイ」<たかい山> と「催サイ」「摧サイ」

2015年10月05日 | 漢字の音符
 サイ  山部
① 
①崔姓のシンボルマーク(左)と、②崔の古代文字
解字 「山(やま)+隹(とり)」の会意。山をバックに隹(とり)を描いた崔姓のシンボルマーク。姓を表す。崔姓は中国山東省が発生の地とされ、中国・朝鮮半島に広く分布する姓。姓以外に、山をバックにした隹のさまから、高い山の意がある。
意味 (1)姓のひとつ。 (2)山の高くて大きいさま。「崔嵬サイカイ」(険しい山・高くそびえる)

イメージ 
 「高い山」
(崔)
 「形声文字」(催・摧)
音の変化  サイ:崔・催・摧

形声文字
 サイ・もよおす  イ部
解字 「イ(人)+崔(サイ)」の形声。[唐韻][集韻]などの韻書インショ(発音の字典)は、「促(うなが)す也。迫(せま)る也。発音はサイ(崔)」とし、うながす・せきたてる意。日本では、もよおす意でも使う。
意味 (1)うながす(催す)。「催促サイソク」「催涙サイルイ」(涙をうながす)「催涙弾サイルイダン」「催眠術サイミンジュツ」(眠気を催させる術) (2)[国]もよおす(催す)。「催事サイジ」(特別に行なう催し)「開催カイサイ
覚え方 ひと()やま()で、とり()をみる開催す[漢字川柳を参考]
 サイ・くだく  扌部
解字 「扌(手)+崔(サイ)」の形声。[説文解字]は「擠(お)す也。折(お)る也」とし、南宋の[増韻]は「挫(くじ)く也」とする。現在の意味は手でくだく。くじく。ほろぼす意味に用いる。
意味 くだく(摧く)。こなごなにする。くじく。ほろぼす。「摧破サイハ」(敵軍をくだきやぶること=砕破)「摧挫サイザ」(うちくじく。くだきやぶる)「摧折サイハ」(くじき折る)「摧滅サイメツ」(うちほろぼす)「摧北サイホク」(くじき敗れてにげる)
<紫色は常用漢字>

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音符「品ヒン」<供えられた多くの器物>「臨リン」と「器キ」「囂ゴウ」

2015年10月01日 | 漢字の音符
 ヒン・しな  口部

解字 「口+口+口」の会意。口は器物をかたどり、祭礼や行事の際に、供えられたいろんな器物が並んださま。品物の意のほか、献上された品の種類やその良し悪しなどをいい、また良し悪しを人に例えて言う。
意味 (1)しな(品)。かたちのあるもの。「物品ブッピン」「商品ショウヒン」 (2)等級。種類。「品種ヒンシュ」「品目ヒンモク」 (3)人の資質。「品性ヒンセイ」「品格ヒンカク

イメージ 
 「供えられた器物」
(品・臨)
 「物が重なるさま」(嵒・癌)
音の変化  ヒン:品・榀  リン:臨  ガン:嵒・癌

供えられた器物
 リン・のぞむ  臣部
解字 「臣(下をむく)+𠂉(人の変形)+品(供えられた器物)」 の会意。臣シンは目を下にむけた象形で、見おろす意(音符「臣シン」を参照)。人が高いところから下の器物を見下ろすこと。また、高いところにいる人が、その場に降りてくる(出向く)、その結果、実際にその場に居合わせる意となる。
意味 (1)見下ろす。上に立つ。「君臨クンリン」(君主として上に立ち統治する) (2)身分の高い者がその場に出向く。「来臨ライリン」「臨席リンセキ」 (4)のぞむ(臨む)。目の前で向き合う。その場に居合わせる。「臨海リンカイ」(海に面した)「臨戦リンセン」(戦場に出る)「臨時リンジ」(その時限りの・その場限りの)

物が重なるさま
 ガン  山部 
解字 「山(やま)+品(物が重なるさま)」の会意形声。この品は岩石を表し、嵒は、山の上に岩石がかさなっているさま。
意味 いわお。いわ。岩の異体字。巌と同じ。
 ガン   疒部
解字 「疒(やまい)+嵒(重なるいわ)」 の会意形声。悪性の腫瘍で患部が嵒(いわ)のように肥大する病気。
意味 (1)がん(癌)。悪性の腫瘍。「胃癌イガン」「肺癌ハイガン」「癌腫ガンシュ」(悪性腫瘍の総称) (2)[国]じゃまなもの。難点。「組織の癌がん
 ヒン・こまい  木部
解字 「木(き)+品(かさなる)」の会意形声。家屋の骨組み。また骨組みを数える量詞。日本では壁の下地に組わたす竹または木をいう。
意味 (1)[中国]家屋の骨組み。家屋の骨組みを数える量詞。 (2)[国]こまい(榀)。屋根や壁の下地に組わたす竹や木。

    シュウ <かまびすしい>
 シュウ・キュウ  口部
 
解字 口(くち)4つを描いた会意。多くの人(衆人)の口の意で、かまびすしい意となる。発音のシュウは衆シュウ(多くの人)に通じる。
意味 かまびすしい。
イメージ
 「かまびすしい」
(囂)
 「その他(同体異字)」(器)
音の変化  ゴウ:囂  キ:器

かまびすしい
 ゴウ・キョウ・かまびすしい  口部

解字 「頁(あたま)+㗊(かまびすしい)」 の会意。頁ケツは人のあたまを強調した字。それに㗊(かまびすしい)をつけた囂ゴウは、頭(顔)をアップさせて周囲に口を四つ描いた劇画的手法の字。後漢の[説文解字]は、「語気が頭上から出る」と説明しており、さしずめ頭から湯気を立てて怒号を発しているさまであろう。怒ってかまびすしいさま。
意味 かまびすしい(囂しい)。やかましい。大声でさわぐ。「囂々ゴウゴウ」(①声のやかましいさま。②怒りの声)「喧々囂々ケンケンゴウゴウ」(やかましいさま)「非難囂々ヒナンゴウゴウ」(非難する怒号)「囂塵ゴウジン」(かまびすしくよごれたさま。猥雑な繁華街や俗世間をいう)

その他(同体異字)
 キ・うつわ  口部  

解字 金文から旧字まではで 「口(うつわ)四つ+犬」 の会意。この字の口は、うつわの意で、口(うつわ)四つは祭器が並べられた形。犬はいけにえの犬。犬をいけにえにする祭りに用いられるうつわの意が原義。のち、普通のうつわ・いれものの意味を表わすようになった[大修館漢語新辞典]。また、うつわを人に例えて用いる。新字体は、犬から点がとれる。
意味 (1)うつわ(器)。いれもの。「容器ヨウキ」 (2)道具。「器具キグ」「器械キカイ」 (3)度量。才能。「器量キリョウ」「器才キサイ」「器用キヨウ」(手先がよく技芸に巧み) (4)体内の組織。「器官キカン」「臓器ゾウキ
<紫色は常用漢字>
            
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