漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「苗ビョウ」<生えたての細い草>と「描ビョウ」「猫ねこ」「錨ビョウ」

2020年04月27日 | 漢字の音符
 ビョウ・ミョウ・なえ・なわ  艸部

解字 「艸(草)+田(た)」 の会意。耕作地に穀物の芽が生えた状態を表している。また、中国南方の苗族の名に用いる。
意味 (1)なえ(苗)。なわ(苗)。稲のなえ。植物の生えたばかりのもの。「苗代なわしろ」「早苗サナエ」「苗稼ビョウカ」(苗をうえる。稼は植える意)(2)血筋。また、その子孫。「苗字ミョウジ」「苗胤ビョウイン」(遠い子孫。ちすじ)(3)中国の民族名。「苗族ビョウゾク」(ミャオ族。中国南部からタイ北部・ミャンマー・ラオス・ベトナムの山地に住む民族の中国における名称。モンと自称する)

イメージ 
 「なえ」
(苗)
 生えたばかりの苗は「細くこまかい」(描)
 「ミョウ・ビョウの音」(猫・錨)
音の変化   
 ビョウ:苗・描・猫・錨

細くこまかい
 ビョウ・えがく・かく  扌部
解字 「扌(手)+苗(細くこまかい)」 の会意形声。ある物のかたちを細かいところまで写しえがく。また、細かく手や筆を動かす。
意味 えがく(描く)。かく(描く)。「描写ビョウシャ」「素描ソビョウ」(デッサン)

ミョウ・ビョウの音
 ビョウ・ミョウ・ねこ  犭部
解字 「犭(けもの)+苗(ミョウ)」 の形声。ミョウミョウと鳴くねこ。現代中国では苗族をミャオ族といい、「ミャオ」と発音する。ミャオミャオと言うと、もっと猫の発音に近くなる。
意味 ねこ(猫)。「猫額ビョウガク」(ねこの額。狭い例え)「猫舌ねこじた」(熱い食べ物が苦手なこと)「猫背ねこぜ」(猫のように背中が丸くなる姿勢)「猫糞ねこばば」(落とし物を拾って自分の物にすること。ネコが排便後に砂をかけて糞フンを隠すことから)
 ビョウ・いかり  金部

錨の製作『天工開物』より
猫の爪(「みんなのペットライフ」より)
解字 「金(金属)+苗(=猫)」の会意形声。ここで苗は猫の略体で、猫が爪を立てる意。猫は爪がのびるので、いつも爪を立てて研いでいる。錨はネコが爪を立てるように水底をひっかき船の動きを止める金属製(鉄)のイカリをいう。
 船のイカリは古くは石を用いたため碇テイや矴テイを使っていた。錨ビョウは金属のいかりが出来てからの字で、篆文には見当らず、楷書からの字。明末(17世紀)の産業技術を紹介した『天工開物』に、鉄の大きなイカリを製造する場面がある。当時のイカリの爪はネコの爪と同じような形をしている。
意味 いかり(錨)。アンカー。船をとめておくために綱や鎖につけて水底に沈めるおもり。「投錨トウビョウ」(錨を下ろす)「錨地ビョウチ」(船が錨を下ろして停泊する場所)
<紫色は常用漢字>

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音符「盍コウ」<おおう> と 「闔コウ」「瞌コウ」「溘コウ」「蓋ガイ」

2020年04月25日 | 漢字の音符
 コウ・おおう・なんぞ  皿部

解字 篆文は、もの(一印)が入っている皿(うつわ)に大の字型のふたをした形。現代字は「去+皿」の形に変化している。去キョは去る意味でなく皿をおおうフタの象形といえる。おおう・ふたをする意味を表わす。「なんぞ」と疑問詞・反語に用いるのは仮借カシャ(当て字)の用法。
意味 (1)おおう(盍う)。ふたをする。(=蓋)(2)疑問詞・反語に用いる。なんぞ(盍ぞ)。なんぞ(盍ぞ)~ざる。「盍ガイ出従シュツジュウ」「盍(なん)ぞ出(いで)て従(したが)わ不(ざ)る乎(か)」(どうして出て行って従わないのか)

イメージ 
 「おおう」
(盍・蓋・闔・瞌・溘)
音の変化  コウ:盍・闔・瞌・溘  ガイ:蓋

おおう
 ガイ・コウ・ふた・おおう・けだし  艸部
解字 「艸(くさ)+盍(おおう)」の会意形声。草などを編んで作ったおおいをいう。盍コウが「なんぞ」の意味に使われたので、ふた・おおう意として用いられる。
意味 (1)おおう(蓋う)。かぶせる。「頭蓋骨ズガイコツ」「蓋世ガイセイ」(世の中をおおいつくす)(2)ふた(蓋)。「火蓋ひぶた」(火縄銃の火口をおおう蓋)(3)かさ。「天蓋テンガイ」(仏像の上にかざす笠状の装飾)(4)(助字の用法)けだし(蓋し)。たぶん。思うに。「蓋然性ガイゼンセイ」(何かが起こる確実性の度合い)
覚え方 くさ()を、さ()り、さら()のうえに(ふた)をする。
 コウ・とびら・とじる  門部
解字 「門(もん)+盍(おおう)」の会意形声。門をおおうとびら。
意味 とびら()。門のとびら。とじる(じる)。「コウモン」(門をとじる)「コウキョウ」(国境をとじた内側。全国)「闔郡コウグン」(郡内全部)「コウユウ」(村をとじた内側。村じゅう)「開カイコウ」(=開閉)
 コウ  目部
解字 「目(め)+盍(おおう)」の会意形声。目をまぶたがおおうこと。
意味 眠気がする。居眠りする。「瞌然コウゼン」(眠そうな様子)「瞌睡コウスイ」(居眠りする)
 コウ・たちまち  氵部
解字 「氵(みず)+盍(おおう)」の会意形声。水があふれて、にわかに辺りをおおうこと。たちまち・にわかにの意を表す。
意味 (1)たちまち(溘ち)。にわか(溘か)。「溘死コウシ」(にわかに死ぬ)「溘然コウゼン」(にわかなさま)「溘焉コウエン」(にわかなさま)(2)水の流れるさまの形容。「溘溘コウコウ」(水がにわかに流れるさま)
<紫色は常用漢字>

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音符「竹チク」< た け >と「筑チク」「築チク」「竺ジク」「篤トク」

2020年04月20日 | 漢字の音符
 チク・たけ  竹部         

解字 甲骨文字は竹の枝が節からたれさがる形で、先に三つの葉を描いている。金文以降、二つの枝が離れ、隷書(漢)で、葉が上に移動し、現代字は葉が「𠂉」二つに枝がついた竹になった。
意味 たけ(竹)。「竹細工たけザイク」「孟宗竹モウソウチク」「竹馬チクバ・たけうま」「爆竹バクチク」(竹または紙の筒に火薬をつめ、たくさんつないだもの)「竹簡チッカン」(文字を書く竹の札)
参考 竹は部首「竹たけ・たけかんむり」になる。漢字の上部(かんむり)に付き、竹の種類や状態、竹でできたもの等を表す。しかし、竹と関係のない、笑ショウ・答トウ・箇などもある。常用漢字で25字あり部首の21位。[新漢語林]では282字が収録されている。
 竹(部首) 常用漢字
ショウ・ 第ダイ・ 笛テキ・ 符・ 筋キン・ 策サク・ 答トウ・ 等トウ・ 筒トウ・ 筆ヒツ・ 節セツ・ 箇・管カン・ 算サン・ 箋セン・ 箱はこ・ 箸はし・ 範ハン・ 築チク・ 篤トク・ 簡カン・ 簿・ 籍セキ・ 籠かご
 
イメージ 
 「たけ」
(竹・竺・篤・筑) 
 「とんとんと打つ(筑)」(築)
音の変化  チク:竹・筑・築  ジク:竺  トク:篤

た け
 ジク・トク  竹部
解字 「二(ふたつ)+竹(たけ)」の会意形声。竹二本分あるほどの太い竹の意。
意味 (1)たけ。太い竹。 (2)あつい。分厚いさま。行きとどいているさま。(=篤)。 (3)インドの古称「天竺テンジク」に使われる字。「竺学ジクガク」(仏教の学問)
 トク・あつい  竹部
解字 「馬(うま)+竹(=竺トク。分厚い)」の会意形声。分厚い意から転じて、人情に厚い意となった。ここで馬は状態を表わすのに用いられ、意味とは関係ない。なお、この字にはもうひとつ「馬+竹(トク)」の形声の意味もある。この場合、トクは毒(トク・ドク)に通じ、馬が毒にあたり病気が重くなる意となる。
意味 (1)あつい(篤い)。人情にあつい。熱心である。「篤志家トクシカ」「篤実トクジツ」「篤学トクガク」 (2)病気が重い。「危篤キトク
 チク  竹部

解字 篆文の竹の下の字は「工(工具)+手+人の変形」で、人が工具を手で持ち打つ動作をすること。現代字は「工+凡」のかたちに変化し、発音は「工凡キョウ」である。筑チクは竹でとんとんとたたく意であり(音符は竹チク)、竹のへらで弦をたたいて鳴らす楽器に当てた。なお、この字はたたく意で築チクの原字ともなる。

中国古代楽器の「筑」(中国のネットから)https://baike.baidu.com/item/%E7%AD%91/20237697
意味 (1)中国の古代楽器。筝(琴)に似た形で、弦を竹の細棒で打って鳴らす。弦は先秦時代は5弦であったが、のち13弦となった。(2)筑紫国(つくしのくに)の略。「筑前チクゼン」(旧国名。今の福岡県の北西部)「筑後チクゴ」(旧国名。今の福岡県南部)

とんとんと打つ(筑) 
 チク・きずく  竹部
解字 「木(き)+筑(とんとんと打つ)」の会意形声。木の棒を手に持ち、まんべんなく土をたたき固めて土台工事をすること。本来なら部首は木のはずだが、竹部になっている。理由はわからない。
意味 (1)つく。つきかためる。「築地ついジ」(土を突き固め瓦屋根を葺いた土塀)「築地つきジ」(海や沼を埋め立てて作った土地)「築山つきやま」(庭園などに築く土を突き固めてつくる山) (2)きずく(築く)。建物をつくる。「建築ケンチク」「構築コウチク」「築城チクジョウ
<紫色は常用漢字>


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音符「各カク」と「格カク」「閣カク」「客キャク」「絡ラク」「落ラク」「略リャク」

2020年04月16日 | 漢字の音符
 恪カクを追加しました。
    チ <降下する足>
 チ  夂部ふゆがしら

解字 下向きの足の形。上からくだり来たる時の足のかたち。各カク・夆ホウ・夅コウなどに含まれ、文字の上にくるとき、多くは神が上より降下する意味を表す。単独では使われない。字形は各・降から復元した。
参考 夂は部首「夂ふゆがしら」になる。下向きの止(あし)の形で上からおりる意を表す。夂部の主な字は次のとおり。冬トウ(夂+冫の会意)・夅コウ(夂+夂の会意)・夆ホウ(夂+丰の会意)など。冬トウ・夅コウ・夆ホウ、はすべて音符となる。

   カク <いたる>
 カク・おのおの  口部

解字 甲骨文第一字は「夂(下向きの足)+口(場所)」の会意。夂は上より降りてくる足先の形で、人(または神)が降りてくる、また向こうから来る形。第二字は異体字で口でなく穴のような場所を表している。意味は、いたる・到来・到着する意[甲骨文字辞典を参考にした]。金文から現代字まで甲骨文第一字の形を引き継いでいる。「いたる」が原義だが、仮借カシャ(当て字)して、おのおの、の意になった。各を音符に含む字は「いたる(神がいたる)」、いたることにより「つながる」イメージがある。
意味 おのおの(各・各々)。めいめい。それぞれ。「各自カクジ」「各位カクイ」「各論カクロン

イメージ 
 「いたる・神がいたる」(各・客・恪・額・落・咎)
 いたりて「つながる」(格・閣・擱・絡・略・烙・珞・駱・酪・賂)
 「形声字」(喀・洛・貉)
 音の変化  カク:各・格・恪・閣・擱・喀・貉  ガク:額  キャク:客  キュウ:咎  ラク:落・絡・烙・珞・駱・酪・洛  リャク:略  ロ:賂

いたる・神がいたる
 キャク・カク・まろうど  宀部   
解字 「宀(たてもの・いえ)+各(いたる)」の会意形声。宀(いえ)にいたった人で、旅をして遠くから訪問してきた大事な人(賓客)をいう。
意味 (1)招かれてきた人。訪問してくる人。まろうど(客)。「客人キャクジン」「来客ライキャク」「客間キャクマ」 (2)商売の相手。料金を払う人。「顧客コキャク」 (3)旅。旅人。「客死キャクシ・カクシ」 (4)自己に対するもの。「客観キャッカン」「客体キャクタイ
 カク・つつしむ  忄部
解字 「忄(こころ)+各(=客の略体。お客)」の会意形声。篆文は「心+客」の愙カク。来客に接する心で、つつしむ。うやまう意。現代字は客⇒各に、心⇒忄の恪になった。
意味 (1)つつしむ(恪しむ)。つつしみ(恪み)「恪遵カクジュン」(つつしみしたがう)「恪勤カクキン」(①勤務を忠実につとめる。②[国]恪勤者かくごしゃの略。①平安時代、親王・大臣に仕えたさむらい。②武家時代の宿直とのいの武士。) (2)うやまう。「恪謹カクキン」(うやまいつつしむ)
 ガク・ひたい  頁部
解字 「頁(あたま)+客(大事なお客さま)」の会意形声。大事なお客さまに頭をさげてぬかずき、ひたいを床につけること。ひたいの意となり、また、ひたいは顔の正面にあることから、建物や門などの正面に掲げる「がく(額)」をいう。のち、金額など分量の意ともなる。
意味 (1)ひたい(額)。おでこ。ぬかずく。「額衝(ぬかず)く」 (2)書画を入れて掲げるもの。がく(額)。また、そのわく。「扁額ヘンガク」(細長い額)「額縁ガクブチ」 (3)分量。たか。お金の数値。「金額キンガク」「価額カガク
 ラク・おちる・おとす  艸部
解字 「艸(草=木の葉)+氵(水)+各(いたる)」の会意形声。木の葉がおちて水の上にいたる、即ち木の葉が水面に落ちること。木の葉に限らずすべて「おちる・くだる」意を表わす。また、攻め落とされる。おちぶれる。落ち着いた所。木の葉がすべて落ちて、おさまりがつく意となる。
意味 (1)おちる(落ちる)。おとす(落とす)。「落下ラッカ」「落盤ラクバン」 (2)攻め落とされる。敗れる。「落城ラクジョウ」「落人おちゅうど」(敗れて逃げた人) (3)おちぶれる。「没落ボツラク」 (4)落ちた所。着いた場所。住み着く。「群落グンラク」「集落シュウラク」 (5)(木の葉がすべて落ちて)おさまる。決まりがつく。できあがる。「落着ラクチャク」「落成ラクセイ
 キュウ・とがめる  口部
解字 「人(ひと)+各(神がいたる)」の会意。神が至りて人に天罰をくだすこと。
意味 (1)とが(咎)。とがめる(咎める)。天がくだす罰。わざわい。「天咎テンキュウ」「災咎サイキュウ」 (2)罪。あやまち。「咎人とがにん」(罪人)「罪咎ザイキュウ」(つみと、とが。罪科)

つながる
 カク・コウ・キャク・いたる  木部
解字 「木(き)+各(つながる)」の会意形声。木を整然と組んでつなげた木組み(格子)をいう。きちんと整っていることから、規格(標準)・きまりの意となる。品格(程度)などの意味は派生義である。また、各の原義である「いたる」意。角カク(角(つの)くらべ)に通じ、たたかう意もある。
意味 (1)木をタテ横きちんと組み合わせたもの。「格子コウシ」また、人の身体の部分の組み合わせ。「体格タイカク」「骨格コッカク」 (2)標準。きまり。「規格キカク」「格式カクシキ」(①身分・儀式などのきまり。②身分や家柄の程度)。「別格ベッカク」「品格ヒンカク」 (3)いたる(格)。(4)たたかう。「格闘カクトウ
 カク・たかどの  門部  
解字 「門(門のある建物)+各(=格。組み合わせたもの)」の会意形声。木組みの高い楼がある建物をいう。
意味 (1)たかどの(閣)。「金閣キンカク」「仏閣ブッカク」「天守閣テンシュカク」 (2)役所・官庁。閣で行なわれる国の統治。「内閣ナイカク」(行政権の最高機関)「閣議カクギ」(内閣での会議)「閣僚カクリョウ」(内閣を構成する大臣)(3)後世に出た意味。「閣板カクバン」(物を置くたな)「閣筆カクヒツ」(筆をおく。書くことをやめる。=擱筆)
 カク・おく  扌部
解字 「扌(て)+閣(おく)」の会意形声。閣に、おく意があり、これに扌(て)をつけて、おく意を表した字。
意味 おく(擱く)「擱筆カクヒツ」(筆をおく。書くことをやめる)「擱坐カクザ」(船が浅瀬にのりあげる)
 ラク・からむ・からまる・からめる  糸部  
解字 「糸(いと)+各(つながる)」の会意形声。糸でつながること。つながってからまる意もある。
意味 (1)つながる。つなぐ。つづく。「連絡レンラク」「短絡タンラク」 (2)からむ(絡む)・からまる(絡まる)・からめる(絡める)。「籠絡ロウラク」(からめて籠にいれる。人をうまくまるめこむ) (3)すじ。すじみち。「脈絡ミャクラク
 リャク・はぶく  田部  
解字 「田(田畑)+各(つなげる)」の会意形声。田畑の中に横につなぐ道をつけること。遠回りせずにまっすぐ行けることから、はぶく・かんたんにする意となる。また、道をつけてその土地を奪いとる意もある。
意味 (1)はぶく・簡単にする。「省略ショウリャク」「略式リャクシキ」 (2)奪い取る。かすめとる。「略奪リャクダツ」「侵略シンリャク」 (3)はかりごと・たくらみ。「計略ケイリャク
 ラク・ロク・やく  火部
解字 「火(ひ)+各(つながる)」の会意形声。火の熱が伝わること。
意味 やく(烙く)。鉄などを熱する。熱した焼きがねをあてる。「烙印ラクイン」(①刑罰として焼き印をあてること。②不名誉や汚名の例え)「焙烙ホウロク・ホウラク」(①素焼きの平たい土鍋。火に掛けて食品を炒ったりする。②あぶりやくこと)
 ラク  玉部
解字 「王(たま)+各(つながる)」の会意形声。玉をつなげた首飾り。
意味 玉をつないだ首飾り。「瓔珞ヨウラク」(①インドの貴族が頭や首にかける装身具。仏像の装飾ともなる。②仏像の天蓋などにつける装飾)
 ラク  馬部
解字 「馬(うま)+各(つながる)」の会意形声。つながって進む馬のような動物。
意味 「駱駝ラクダ」に用いられる字。駱駝とは、ラクダ科の哺乳動物。背中のこぶに脂肪を蓄えているので沙漠の生活に適し、何頭も連なって乗用や運搬用に使われる。
 ラク  酉部
解字 「酉(酒樽。発酵する)+各(つながる)」の会意形声。乳をかき回しながら乳たんぱく質をつなげて固め、発酵させた飲料や食品。
意味 ヨーグルト・バター・チーズなど乳酸菌発酵した食品。「酪農ラクノウ」(牛や羊などの乳から乳製品を作る農業)「牛酪ギュウラク」(バターのこと)「乳酪ニュウラク」(バター・クリーム・チーズなど)
 ロ・まいなう  貝部
解字 「貝(財貨)+各(直接つなげる)」の会意形声。財貨を相手に直接渡して便宜をはかってもらうこと。
意味 まいなう(賄う)。まいない。金品を贈る。「賄賂ワイロ」(不正な意図で金品を渡し便宜をはかってもらうこと)「賂謝ロシャ」(=賄賂。賄賂の金品)

形声字
 カク  口部
解字 「口(くち)+客(カク)」の形声。カクは衉カク(はく)に通じ、口からものを吐くこと。衉カクは、「血(ち)+各(いたる)」で、血をはくこと。
意味 はく(喀く)。のどにつかえたものを吐く。「喀血カッケツ」(血をはく)「喀痰カクタン」(たんをはく)
 ラク  氵部
解字 「氵(水)+各(ラク)」の形声。ラクという名の川。
意味 (1)川の名。「洛水ラクスイ」(黄河の支流のひとつ) (2)地名。「洛陽ラクヨウ」(中国の都が置かれたことがある古都。洛水の北岸(北は陽)にあることからいう) (3)[国]日本の古都である京都をいう。「京洛キョウラク」(京都)「入洛ニュウラク」(京都に入ること)
貉[狢] カク・バク・むじな  豸部むじな
解字 「豸(けもの)+各(カク)」の形声。カクという名のけもの。ムジナをいう。各は発音のみを表す。中国では東北地方の異民族を卑しんで言った。
意味 (1)むじな(貉)。アナグマの異称。狢カクとも書く。「貉藻むじなも」(形状が貉の尾に由来する多年性水草) (2)タヌキをムジナと呼ぶこともある。 (3)古代ツングース系の民族の名。「貉道バクドウ」(異民族のやり方)「大貉小貉タイバクショウバク」(未開の土地の野蛮な異民族のような為政者のこと)
<紫色は常用漢字>

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音符「卯ボウ」<二つに分かれる>「貿ボウ」と「劉リュウ」

2020年04月12日 | 漢字の音符
 ボウ・う  卩部

解字 甲骨文は犠牲にする生贄(いけにえ)の動物を切り裂いた形を表した象形。甲骨文では犠牲の動物を殺す意で使われていた[甲骨文字辞典]。のち、干支の第四位に仮借カシャ(当て字)された。切り裂く形から「二つに分ける」イメージがある。
意味 う(卯)。干支の第四位。月では陰暦四月、動物では兎。「卯月うづき」(陰暦四月)「卯槌うづち」(桃などの木で作った邪気を払う飾りの槌。正月の初卯の日に使う)「卯の花」(ウツギの花。旧暦四月の頃に花が咲く)

イメージ 
 「仮借カシャ
(卯)
 「二つに分ける」(貿)
 「同音代替」(昴・茆)
音の変化  ボウ:卯・貿・昴・茆

二つに分ける
貿 ボウ  貝部

解字 「貝(通貨)+卯(二つに分ける)」の会意形声。二つに分かれた相手が貝(通貨)を仲立ちに物を売り買いすること。現代字の上部は、卯の右辺が刀に変化した貿になった。
意味 かえる。とりかえる。あきなう。「貿易ボウエキ」(品物を交換すること。交易)

同音代替
 ボウ・すばる  日部
 ボウを持つ使節
解字 「日(ほし=星の略)+卯(ボウ)」の形声。ボウは旄ボウ(ヤクの毛を竿頭につけた旗)に通じる。旄ボウはヤクの毛をまとめて丸くした飾りを旗竿の上から5つほど連続して吊りさげた旗。皇帝の使節に任命の印として与えられた。この連続した丸い飾りを星になぞらえ、連続して数個がまとまる星であるスバルに当て、中国で旄頭星ボウトウセイともよばれた。
日本語の「すばる」は、統る(すばる:集まって一つになる)からきており、肉眼で人によって5~7つの星が集まって一つにかたまって見える星の意。日本では通常6個の星が見えるので、六連星(むつらぼし)ともいった。
意味 すばる(昴)。星の名前。おうし座にあるプレアデス星団を昴すばるという。28宿のひとつ。通常5~7つの星がまとまって見える。「昴宿ボウシュク」(すばるの漢名)
 ボウ  艸部
解字 「艸(草)+卯(ボウ)」の形声。ボウは冒ボウ(おおう)に通じ、葉が池沼の水面を一面におおうジュンサイをいう。また、茅ボウ(かや)に通じ、かやを表す。
意味 (1)じゅんさい(茆)。ぬなわ(蓴)。スイレン科の多年生水草。池沼に自生。葉はほぼ円形で水面に浮いて一面に拡がる。若芽・若葉は食用として珍重される。 (2)かや。ちがや・ススキなどの総称。茅ボウと同じ。「茆屋ボウオク」(かやぶきの家)


       リュウ <刀で切り裂く>
 リュウ・ころす  刂部

解字 「金(金属)+刂(刀)+卯リュウ(切り裂く)」の形声。「金+刂(刀)」は釖トウで刀の異体字。従って劉は「釖(かたな)+卯リュウ(切り裂く)」の形声で、刀で切り裂いて殺すこと。発音は卯ボウ⇒リュウに変化。これは卯を含む字である留リュウの音の影響と思われる。獣のいけにえを殺してまつる儀式を表す。
意味 (1)いけにえを殺す儀式。 (2)ころす(劉す)。大量に殺す。「遏劉アツリュウ」(殺戮をとめる) (3)つらねる。めぐる。「劉覧リュウラン」(通覧する) (4)姓のひとつ。「劉邦リュウホウ」(漢の高祖)「劉秀リュウシュウ」(後漢の初代皇帝。光武帝)
 劉邦(漢の高祖)
<紫色は常用漢字>

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音符 「𢦏サイ」 <ことを始める >と「載サイ」「栽サイ」「裁サイ」「戴タイ」

2020年04月10日 | 漢字の音符
𢦏 サイ  戈部

解字 甲骨文の( )内の第一字は「川(かわ)+才サイ」で、川の水害を表現した字だが、災害一般に用いられている。第二字は「火(ひ)+才サイ」で火災を表している。これらの字で才は、▽にタテ線を入れた形で、災いを表す声符(音符)になっている。甲骨文の𢦏は「戈(ほこ)+才サイ(▽にタテ線)」で、川の災の異体字であり、戦禍(戦争による災い)を表している[甲骨文字辞典を参考にした]。金文の𢦏は「戈+才(▼+タテ線)」で、哉サイ(語気・感嘆)の意味で使われている。篆文にいたると字形は、才⇒キに代わったが、この音符を持つ字が増え意味も多様化した。
 ところで[字統]は、𢦏サイを「戈(ほこ)に呪符としての才をつけて戈を払い清める形で、軍事を始めるときの儀礼を意味し、ことをはじめる意となる」としている。甲骨文字辞典とは異なる解釈で違和感があるが、私が注目するのは「ことをはじめる意」である。この意を「イメージ」にすると、栽サイ・裁サイ・載サイの解字ができるからである。そこで私は、甲骨文字の戦禍のあと、口をつけた哉サイが現れ、口から落胆(のちに感嘆)の声を出し、また語気を強める意となったのち、声を出して再出発しよう⇒ことをはじめよう、となったのではないかと考えた(これは私見です)。字形は隷書(漢代)から才が篆文のキ⇒十に変化した𢦏になった。
意味 (1)甲骨文字で戦禍(戦争の災い) (2)[説文解字]は、傷つける意とする。 (3)栽・載・裁・哉・戴の音符となる。

イメージ
 「戦禍(災い)」(𢦏・烖・哉)
 「ことを始める」(栽・載・戴・裁)
 「同体異字」(截)
音の変化  サイ:烖・哉・栽・載・裁  セツ:截  タイ:戴

戦禍(災い)
 サイ・わざわい  火部
解字 「火(ひ)+𢦏(わざわい)」の会意形声。火のわざわい。災の異体字。
意味 (1)火災。「火烖カサイ」(=火災) (2)災害。「烖害サイガイ」(=災害)
 サイ・かな  口部
解字 「口(くち)+𢦏(わざわい)」の会意形声。戦禍の中で口から出す声。[字統]によると、金文に「哀しい𢦏(かな)」のように𢦏に悲歎の意味があるという。当初は哉も悲歎だったと思われるが、現在は詠嘆の意味が残っている。また、疑問・反語の助字となった。
意味 (1)かな(哉)。感動・詠嘆を表す助字。「快哉カイサイ」(快なるかな)「善哉ゼンザイ」(①善いかな。喜び祝う語。②小豆を甘く煮て中に餅などを入れた汁子) (2)や(哉)・か(哉)。疑問・反語の助字。 (3)はじめる。はじめ。「哉生魄サイセイハク」(月が初めて光を持ち始める三日目の月。朏)

ことをはじめる
 サイ・のせる・のる  車部
解字 「車(くるま)+𢦏(ことを始める)」の会意形声。車で軍事を始めること。兵士や物資を載せる意となる。転じて、記事を書いて新聞や雑誌などにのせる意ともなる。
意味 (1)のせる(載せる)。のる(載る)。車や乗り物に物や人をのせる。「積載セキサイ」「搭載トウサイ」 (2)しるす。書く。記事にのせる(載せる)。「掲載ケイサイ」 (3)はじまる。「湯(人名)の始めて征するは葛カツ(国名)自(よ)り載(はじ)まる」(孟子・滕下) (4)(歳サイに通じた用法)とし。一年。「千載一遇センザイイチグウ」(千年に一度しかない)
 タイ・いただく  戈部
解字 「異(両手をあげた人)+𢦏(=載。のせる)」の会意形声。両手で物を頭上にのせたり、頭上でものを受けること。発音はサイ⇒タイに変化。異の甲骨文は両手をあげた人のかたちで「両手をあげる」イメージがある。 音符「異イ」 を参照。
意味 (1)いただく(戴く)。頭上に物をのせる。「戴冠式タイカンシキ」「戴天タイテン」(天を頭上にいただくこと。この世に生存する) (2)ありがたく受ける。「頂戴チョウダイ」 (3)長としてあがめる。「推戴スイタイ
 サイ・うえる  木部
解字 「木(き)+𢦏(ことを始める)」の会意形声。木を植えて育て始めること。
意味 (1)うえる(栽える)。苗木をうえる。「栽培サイバイ」(木を植え育てる)「栽植サイショク」(木を植え育てる=植栽)「盆栽ボンサイ」(盆での木の栽培) (2)うえこみ。にわ。「前栽センザイ」(縁側の前の草木の植え込み) 
 サイ・たつ・さばく  衣部
解字 「衣(ころも)+𢦏(ことを始める)」の会意形声。布を切って衣服を仕立て始めること。布から衣服を仕立てるためには、いろんな工程が必要であることから転じて、ほどよく処理する意となる。
意味 (1)たつ(裁つ)。布地をたつ。「裁断サイダン」「裁縫サイホウ」(裁って縫う) (2)仕立てる。「和裁ワサイ」「体裁テイサイ」(体に合わせた仕立て。物の外から見えるさま) (3)図って処理する。「裁量サイリョウ」「裁許サイキョ」(調べて許可する)「総裁ソウサイ」 (3)さばく(裁く)。「裁判サイバン」「裁決サイケツ

同体異字
 セツ・たつ・きる  戈部

解字 篆文は、「雀(すずめ)+戈(ほこ)」の会意形声。戈(ほこ)で雀をきること。隷書(漢代)から「隹+𢦏」の截に変化し、現代に続く。
意味 たつ(截つ)。きる(截る)。たちきる。「截然セツゼン」(①区別がはっきりしているさま。②切り立っているさま) 「截断セツダン」(=切断) 「直截チョクセツ」(①すぐに裁断を下す。②きっぱりしている)「截金きりかね」(金銀箔を細く切って貼り付け模様を表現する技法)
<紫色は常用漢字>

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「3密空間」の「密ミツ」とは

2020年04月07日 | 漢字の音符
 新型コロナウイルスの感染拡大にそなえ、本日(4月7日)政府は緊急事態宣言を出す。厚生労働省は、生活の中で密集・密閉・密接の3つの「密」が重ならないように呼び掛けている。この「密」という字は、どんな成り立ちをもつ字なのか。
 密の音符の元は必ヒツである。まず「必」の成り立ちを見てゆこう。

  ヒツは武器の戈(ほこ)の柄
 ヒツ・かならず  心部

上段が「必」、下段が「戈(ほこ)」。金文・篆文の必は、戈(ほこ)の刃先(横線)を省いた形に八をつける。
 柲ヒ(ほこの柄)の構造図
解字 金文・篆文は、「戈(ほこ)から刃先を省いた形+八(両側をはさみつける)」の象形。戈(ほこ)から刃先を省いた形とは、戈の柄を意味し、そこに八印で柄を補強する形。柲(武器の柄)の原字。図版を見ると分かるように、柲は芯となる木の棒に割竹を当て、籐(とう)や革紐でしっかり巻き付け漆を塗って補強したもの。これによって柄は柔軟性があり、かつ強靭性をもつ。必ヒツは、柄の木芯を取り巻いて補強した形を表し、「しめつける」「まわりを囲む」イメージをもつ。しかし、仮借カシャ(当て字)され、「かならず」の意となった。現代の字形は、「心+ノ」に変化した。
意味 かならず(必ず)。きっと。「必然ヒツゼン」「必読ヒツドク」「必須ヒッス

イメージ 
 「仮借カシャ(必)
 「しめつける」(泌)
 「まわりをかこむ」(秘・宓・蜜・密)
音の変化  ヒツ:必・泌・宓  ヒ:秘  ミツ:蜜・密 

しめつける
 ヒツ・ヒ・にじむ  氵部
解字 「氵(水)+必(しめつける)」 の会意形声。しめつけて、中から汁がでること。
意味 (1)にじむ(泌む)。狭い隙間や穴から汁がでること。「分泌ブンピツ・ブンピ」「泌尿器ヒニョウキ」(尿の分泌と排泄をつかさどる器官)

まわりをかこむ 
[祕] ヒ・ひめる  禾部
解字 旧字は祕で「示(祭壇)+必(まわりをかこむ)」 の会意形声。入口を閉じ、なかが分からないようにしてひそかに神を祭ること。新字体は、旧字の示が禾(いね)に変化したが、これは神にささげる初穂で、これをひそかに祭る形。いずれも、ひそかに・ひめる意となる。
意味 (1)ひそか。「秘密ヒミツ」「神秘シンピ」 (2)ひめる(秘める)。かくす。「秘事ヒジ」「秘蔵ヒゾウ」「秘宝ヒホウ」「秘訣ヒケツ」(奥の手)

  ヒツ・ビツ・フク(密と蜜の音符になる字)
 ヒツ・ビツ・フク  宀部
解字 「宀(いえ)+必(まわりをかこむ)」 の会意形声。家の戸や窓を閉めて中にこもること。やすらか・ひそかの意となる。また、蜜・密の音符となる。
意味 (1)やすらか。「宓穆フクボク」(深く静かで安らかなさま) (2)ひそか。 (3)人名。「宓子フッシ」(孔子の弟子)
 ミツ  宀部
解字 「虫(はち)+宓(家の中に閉じ込める)」 の会意。ハチが巣の中に閉じ込めた蜂のみつ。
意味 (1)みつ(蜜)。はちみつ。「蜜蜂ミツバチ」 (2)みつのように甘い。「蜜月ミツゲツ」(結婚した当月。ハネムーン)「蜜柑ミカン」「甜言蜜語テンゲンミツゴ」(蜜のように甜い言葉。うまい話や勧誘の言葉)
 ミツ・ひそかに  宀部  
解字 「山(やま)+宓(閉じこもる)」 の会意で、深く閉ざして人の近付けない山。木が密集してすきまがない・近づけない・ひそかに、等の意となる。
意味 (1)すきまなく。「密集ミッシュウ」「密林ミツリン」「密生ミッセイ」「密接ミッセツ」(すきまなく接触する) (2)とじる。外から近付けない。「密室ミッシツ」「密閉ミッペイ」 (3)ひそかに(密かに)。「内密ナイミツ」「密告ミッコク」「秘密ヒミツ」 (4)こまかい。くわしい。「綿密メンミツ」「細密サイミツ」 (5)「密教ミッキョウ」とは、仏教の流派のひとつ。奥深い絶対の真理の教え。
<紫色は常用漢字>















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音符 「竜 (龍)リュウ」<たつ>と「襲シュウ」「滝ロウ」「籠ロウ」

2020年04月04日 | 漢字の音符
[龍] リュウ・リョウ・たつ  竜部

解字 甲骨文は頭の上に冠飾りをつけ胴をくねらせた大蛇の姿を描いた象形。空を駆け、雲をよび、雨を降らせるという想像上の動物である竜を表す。金文は冠飾りが辛字になり、頭は月のような形に変化した。篆文(秦)は「辛(冠)+月(あたま)+胴体が複雑化した形」になり、旧字で龍となったが、現在は新字体の竜が用いられる。新字体は、辛の上部である「立」と、イナズマを意味する電の下部「电の略体」が合わさってできた。
意味 (1)りゅう。たつ(竜)。「竜王リュウオウ」「飛竜ヒリュウ」 (2)天子。天子に関する事物につける。「竜顔リュウガン」「竜駕リュウガ」(天子の乗り物) (3)すぐれたもの。「竜馬リュウマ」(駿馬) (4)化石で発見される大型の爬虫類。「恐竜キョウリュウ

イメージ   
 「たつ」
(竜・襲・寵)
 身をくねらせて空を駆ける姿から「うねる」(滝・籠・聾・朧・壟・隴)
音の変化  リュウ:竜  シュウ:襲  チョウ:寵  ロウ:滝・籠・聾・朧・壟・隴

た つ
 シュウ・おそう  衣部

解字 金文は、「龍二頭+衣」の会意。龍(天子)が隣の龍(次の天子)に衣を渡すこと、つまり、天子の着る衣を後継者に渡す(襲名)意となる。また、重ね着する意ともなる。篆文以降、龍は一つになった。おそう意は後に出てきた。
意味 (1)つぐ。あとをつぐ。「襲名シュウメイ」「世襲セシュウ」 (2)かさねる(襲ねる)。かさね着する。「襲衣シュウイ」 (3)(襲名を暴力で行なうことから)おそう(襲う)。「襲撃シュウゲキ」「強襲キョウシュウ
 チョウ・めぐむ  宀部
解字 「宀(いえ)+龍(たつの神像)」の会意。たつの神像を家で祀って大事にすること。転じて、人や動物などを可愛がること。
意味 (1)いつくしむ。かわいがる。めぐむ(寵む)。「寵愛チョウアイ」(特別に目をかけてかわいがる)「寵児チョウジ」(親に可愛がられる子供。時流に乗った人気者)「寵臣チョウシン」(君主に気に入られている家来) (2)いつくしみ。めぐみ。「恩寵オンチョウ」(神や君主のめぐみ)

うねる
[瀧] ロウ・たき  氵部
解字 旧字は瀧で「氵(水)+龍(たつのようにうねる)」の会意形声。龍が空をとぶように水がうねって流れ落ちること。新字体は「氵+竜」の滝。
意味 (1)たき(滝)。高い所から筋をなして流れ落ちる水。「滝壺たきつぼ」「白滝しらたき」「滝登(たきのぼ)り」 (2)急流。はやせ。
[篭] ロウ・かご・こもる  竹部
 蛇籠(ネットの画像検索画面より・原写真なし)
解字 「竹+龍(たつのようにうねる)」 の会意形声。うねるように細長い竹製の蛇籠(じゃかご)。また、籠に入る意から、こもる意となる。
意味 (1)かご(籠)。竹などで編んだ容器。「蛇籠じゃかご」(細長く六つ目編みした籠、中に栗石を詰め護岸などに用いる)「籠球ロウキュウ」(バスケットボール)「駕籠かご」(竹で編んだ籠の乗り物) (2)こもる(籠る)。とじこもる。「籠城ロウジョウ
 ロウ  耳部
解字 「耳+龍(=籠。こもる)」の会意形声。耳がこもって聞こえないこと。
意味 耳が聞こえない。また、耳が不自由な人。「聾者ロウジャ」「聾啞ロウア」(耳と言葉が不自由なこと)
 ロウ・おぼろ  月部
解字 「月(つき)+龍(=籠。こもる)」の会意形声。月が雲のなかに籠ってしまい、ぼんやりとしか見えないこと。
意味 おぼろ(朧)。月の光のぼんやりとしたさま。はっきりしないさま。「朧月夜おぼろづきよ」(おぼろ月の出ている夜=朧夜おぼろよ)「朧朧ロウロウ」(おぼろにかすむさま)「朦朧モウロウ」(①おぼろなさま。②意識が確かでないさま)
 ロウ・うね  土部
解字 「土(つちもり)+龍(うねる)」うねるように続く土盛りで、うねの意。また隴ロウ(おか)に通じ、おかの意ともなる。壠は同字。
意味 (1)うね(壟)。田畑の作物をつくるため、土を盛り上げたところ。「壟畝ロウホ」(うね。壟も畝も、うねの意。また、はたけ。いなか・民間) (2)土を盛り上げた墓。「壟墓ロウボ」(土をもりあげた墓) (3)おか。(=隴)。「壟断ロウダン」(①丘を断ち切ったような高くそびえる所。②高い所から市況をみて利益を独占する。独り占め。=隴断)
 ロウ・おか  阝部こざと
解字 「阝(おか)+龍(うねる)」の会意形声。うねるように続く丘。壟ロウに通じ、うねの意ともなる。
意味 (1)おか(隴)。「丘隴キュウロウ」(おか。丘も隴も、おかの意)「隴断ロウダン」(①丘を断ち切ったような高くそびえる所。②ひとりじめ。=壟断) (2)うね。「麦隴バクロウ」(麦のうねで麦畑) (3)地名。中国甘粛省の略称。
<紫色は常用漢字>

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音符「盧ロ」<まるい器>「炉ロ」「膚フ」「慮リョ」「虜リョ」

2020年04月01日 | 漢字の音符
 ロ・ル  皿部             
盧(ろ)姓のシンボルマーク

解字 甲骨文第1字は、つぼ形のうつわ(皿)の横に虎を描いた象形で、つぼの中に2点があり何かが入っていることを示している。第2字は、虎の略体が上にきて下部が鼎(かなえ)状の脚がある器の象形。虎の絵がはいったつぼ形または鼎形のうつわを表す。
 金文を解くには盧姓のシンボルマークが参考になる。このマークはつぼ(皿)と虎が描かれているのは甲骨文と同じだが、つぼの中に描かれているのは胃である。胃は「田(胃袋のなかの食べた物)+月(からだ)」からなる字で、胃袋を表す字[音符「胃イ」を参照]。したがって金文の盧は、食べ物をいれたつぼと考えられる。では虎は何を表しているのだろうか。盧が姓のマークであることから、虎は盧姓(盧の一族)を守護する動物、すなわちトーテム(崇拝対象)であると思われる。
 金文の字形は上から、「虎の略+胃の田の部分+月(胃の月の部分)+皿(つぼ)」となり、シンボルマークと同じ内容を表している。篆文は、胃袋の部分がザルのような形になり、現代字で田に変化し、「虍+田+皿」の盧となった。意味は、姓に用いられる他、食べ物をいれるつぼから「めしびつ」となる。盧を音符に含む字は、「つぼ型のうつわ」「まるい」イメージを持つ。
意味 (1)姓のひとつ。「盧生ロセイの夢」(盧生という青年が立身出世して富貴を極めたが夢だったという故事。はかないことのたとえ)(2)つぼ。めしびつ。「壺盧コロ」(まるいつぼ)(3)すびつ(=炉)。火入れ。(4)くろい。くろいもの。(5)梵語の音訳。「盧遮那仏ルシャナブツ」(大日如来のこと)

イメージ 
 「つぼ型のうつわ」
(盧・炉・蘆・廬) 
  「まるい」(艫・轤・驢)
  「形声字」(膚・慮・虜・濾)
  「その他」(櫨)
音の変化  ロ:盧・炉・蘆・廬・艫・轤・驢・濾・櫨  リョ:慮・虜  フ:膚

つぼ型のうつわ
[爐] ロ・いろり  火部
解字 旧字は爐で「火(ひ)+盧(つぼ型のうつわ)」の会意形声。火をいれておく壷形のうつわ。火鉢。新字体は、旧字の盧 ⇒ 戸に置き換えた。
意味 (1)ろ(炉)。いろり(炉)。ひばち(火鉢)。「炉端・炉辺ロばた」「暖炉ダンロ」 (2)火を入れて燃やしておくもの。「香炉コウロ」「熔鉱炉ヨウコウロ
蘆[芦] ロ・あし  艸部
解字 「艸(くさ)+盧(つぼ型のうつわ⇒まるく中空)」の会意形声。茎がまるく、節のところまで中空である草の意で、あしをいう。盧 ⇒ 戸に置き換えた芦が俗字として使われている。
意味 あし(蘆)。よし。イネ科の多年草で水辺に自生する。葦・葭とも書く。「蘆汀ロテイ」(蘆の生えているみぎわ)「蘆管ロカン」(①アシの茎。②指にはめる管状のもの。一弦琴で用いる)「蘆笛ロテキ・あしぶえ」(芦の葉を巻いて作った笛)
 ロ・リョ・ル・いおり  广部
解字 「广(やね)+盧(=蘆・芦。あし)」の会意形声。芦などの草で葺いた屋根。
意味 (1)いおり(廬)。草や木で造った粗末な家。仮の小屋。「草廬ソウロ」(草ぶきのいおり。草庵)「廬舎ロシャ」(仮小屋) 「穹廬キュウロ」(遊牧民のパオ) (2)地名。「廬山ロザン」(江西省の北部にある山)

まるい
 ロ・とも  舟部
解字 「舟(ふね)+盧(まるい)」の会意形声。舟尾のまるくなっている部分。
意味 とも(艫)。船尾。対義語は「舳ジク・へ」(船首)「舳艫ジクロ」(船の舳先へさきと艫とも
 ロ  車部
解字 「車(回転する)+盧(まるい)」の会意形声。回転するまるいもの。
意味 「轆轤ロクロ」に使われる字。轆轤とは回転運動をする器械で、木地細工で丸い挽き物を作る工具や、陶器を形作る回転台をいう。※轆ロクは、「車+鹿(ロク)」の形声で、車が走るときのごろごろという音の擬声語。
驢[馿] ロ・リョ・うさぎうま  馬部
 石臼を曳く驢馬(中国)
解字 「馬(うま)+盧(=轤。回転運動をする器械)」の会意形声。盧は轤(回転運動をする器械)に通じ、回転運動をする石臼を曳く馬でロバをいう。これはネットで見つけた写真からイメージした私見。
意味 うさぎうま(驢)。ろば(驢馬)。ウマ科の動物。馬に似るが馬より小さく忍耐力にとむ。耳が長いことから、「うさぎうま」と言われた。「驢背ロハイ」(ロバの背)「驢鳴犬吠ロメイケンバイ」(ロバの鳴き声と犬のほえる声。聞くにたえないこと)「海驢あしか

形声字
 フ・はだ  月部にく
解字 「月(からだ)+盧の略体(フ)」の形声。フは、尃(しく)・敷(しく)に通じ、身体の表面に布を敷いたような皮膚をいう。
意味 (1)はだ(膚)。「皮膚ヒフ」「完膚カンプ」(きずのない皮膚) (2)うわべ。物の表面。「膚浅フセン」(あさはかなこと)
 ロ  月部にく
解字 「月(にく)+盧(ロ)」の形声。字の構造は膚と同じだが、ロの発音では仮借カシャ(当て字)の用法で、さまざまな意味がある。
意味 (1)つらなる。ならべる。「臚列ロレツ」(つらなりならぶ) (2)つたえる。伝達する。「臚伝ロデン」(上の人の言葉を下の者へ伝える)「臚句ロコウ」(通訳の官) (3)「鴻臚コウロ」とは、鴻コウ(おおとり。渡り鳥の意から大物の旅人。臚(臚句ロコウから通訳)で、外国の賓客の応接にあたる官のこと。「鴻臚寺コウロジ」(中国で北斉以降、外国来賓の接待にあたる役所)「鴻臚館コウロカン」(古代に筑紫・難波・平安京に設けた外国使節を応対する宿舎)
 リョ・ロ・おもんばかる 心部
解字 「心+盧の略体(リョ)」の形声。リョは呂リョ(つらなる)に通じ、次々と関連することを心に思うこと。
意味 おもんばかる(慮る)。思いめぐらす。「考慮コウリョ」「配慮ハイリョ」「不慮フリョ
覚え方 とら()をおも()う配ハイリョ
 ロ・リョ・こす  氵部
解字 「氵(みず)+慮(ロ・リョ)」の形声。ロ・リョは漉ロク・リョ(こす)に通じ、液体を布などの細かい目をくぐらせて通過させ、混じり物をのぞくこと。
意味 こす(濾す)。「漉す」とも書く。液体の中の混ざりものを除き去る。「濾過ロカ」(こすこと)「濾紙ロシ」(濾過紙。こしがみ)
 リョ・とりこ  虍部
解字 「力(ちから)+盧の略体(リョ)」の形声。リョは呂リョ(つらなる)に通じ、力ずくで捕らえて数珠つなぎにした捕虜(とりこ)をいう。部首は解字から言うと「力」であるが、字を虍と男に分け「虍」を部首としている。
意味 (1)とりこ(虜)。いけどる。「捕虜ホリョ」「俘虜フリョ」「虜囚リョシュウ」 (2)しもべ。めしつかい。どれい。③えびす。蛮族。「胡虜コリョ」(北方のえびす。転じて、異民族)
覚え方 とら()につかまったおとこ()は、(とりこ)
櫨[枦] ロ・はぜ  木部

ハゼの実。外側の黒っぽい果皮がはぜて内側の白い果皮がのこる。
(YouTube 「ナンキンハゼからろうそくを作る」より)

解字 「木(き)+盧(ロ)」の形声。ロという名の木。黄櫨コウロをいう。ウルシ科の落葉小高木。5、6月ごろ黄緑色の花が咲き、果実から木蝋をとる。日本では「はぜ」と言う。黒っぽい外側の果皮がはぜる(裂ける)からか。盧⇒戸にした枦は略字。
意味 (1)はぜ(櫨)。ウルシ科の落葉高木。秋に紅葉する。実から木蝋をとり、樹皮は染料となる。「黄櫨コウロ・はぜ」とも書く。 (2)地名。姓。「櫨谷はぜたに」(①神戸市の地名。②はせや(姓)「櫨山はぜやま」(姓)「枦山はぜやま・はしやま(姓)
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