漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

紛らわしい漢字 「匀キン(均)」 と 「勺シャク(酌)」

2019年02月07日 | 紛らわしい漢字 
 勹ホウの中に二本線を入れたのが匀キンで、一本線が勺シャクである。匀キンの中の二本線は、何と金(青銅)の延べ棒!!だ。勺シャクの中の一本線は、ひしゃくで酌んだ中身を表している。

    キン <むらなく行きわたる>
 キン  勹部

解字 金文は、「二印キン+腕をまるくひとまわりさせた形」の会意形声。二印は、銅の延べ棒二つを積んだ形(音符「金キン」を参照)。銅(青銅)は古代中国で主要な金属として器・武具・銅貨などに利用されており、原材料としての銅は、金の延べ棒のように一定の形と重さをもった固まりとして流通した。この二印に腕を一回りさせた形を加えた匀キンは、銅の延べ棒を包んだ形と思われる。鈞キンの原字。篆文で「二印+勹ホウ(人が手をのばして全体でまるくなった形)」になった。意味は二印(二本の延べ棒)にあり、延べ棒は、①中がむらなく行きわたっている。②延べ棒の重さや形が等しい、意となる。この意味をもとに鈞と均が作られた。
意味 ととのう。ひとしい。ゆきわたる。あまねし。むらがない。

イメージ  「むらなく行きわたる」(鈞・均)
音の変化  キン:均・鈞   

むらなく行きわたる
 キン・ひとしい  金部  
解字 「金(金属)+匀(むらなく行きわたる)」の会意形声。匀は銅の延べ棒の形。金をつけて意味を確認した字。一定の形にむらなくゆきわたり重さが同じなので、重さの単位及びおもりの意となった。
意味 (1)中国古代の重さの単位。30斤。周代の1鈞は、7.68kg。 (2)おもり。「鈞石キンセキ」(おもり。1鈞は30斤、1石は4鈞) (3)ひとしい(鈞しい)。(=均しい) (4)ろくろ。
 キン・ひとしい・ならす 土部
解字 「土(つち)+匀(むらなく行きわたる)」の会意形声。土がついた均は、表面にむらがない意となり、土のデコボコをならして平らにすること。転じて、公平にする・平均する意となる。また、匀キンの意味である重さ・形がひとしい意としても使われる。
意味 (1)ならす(均す)。公平にする。「均一キンイツ」「平均ヘイキン」 (2)ひとしい(均しい)。同じ。「均等キントウ」「均分キンブン」「均田キンデン」(耕地を均等に分ける)


    シャク <ひしゃく>
 シャク  勹部
 

解字 甲骨文~篆文は、ひしゃくの形の象形。スプーンで液体の一部を酌んださまを描いている。現代字は勹に丶を加えた形。丶はスプーンにすくった少しの量を示している。杓の原字。
意味 (1)ひしゃく。 (2)くむ。 (3)枡目の単位。一合の十分の一。一勺は約18cc。「酒一合五勺を飲む」

イメージ 
 「ひしゃく」(勺・杓・酌)
  液体の一部分を汲むことから「一つを取り出す」(的・釣)
音の変化  シャク:勺・杓・酌  チョウ:釣  テキ:的   
 
ひしゃく
 シャク・ヒョウ・ひしゃく・しゃく  木部
解字 「木(き)+勺(ひしゃく)」の会意形声。木製のひしゃく。
意味 (1)ひしゃく(杓)。「柄杓ヒシャク」とも書く。水を汲む道具。「杓子シャクシ」(汁や飯をすくったり盛ったりする道具。しゃもじ)「杓子定規シャクシジョウギ」(杓子の柄を定規にする。自分の基準で他人を律する) (2)しゃくう(杓う)。すくう。
 シャク・くむ  酉部
解字 「酉(さけ)+勺(ひしゃく)」の会意形声。ひしゃくで酒をくむこと。
意味 (1)くむ(酌む)。酒をくむ。「晩酌バンシャク」「媒酌バイシャク」(結婚の仲立ちをする) (2)意をくむ。「参酌サンシャク」(意見を聞いて参考にする)「斟酌シンシャク」(意を酌んで処置する) (3)[国]酒を杯につぐこと「お酌シャク

一つを取り出す
 テキ・まと  白部
解字 「白(しろ)+勺(一つを取り出す)」の会意形声。一つ取り出して置いた白いもの。白くて目立つ弓の「まと」をいう。
意味 (1)まと(的)。めあて。ねらい。「目的モクテキ」「射的シャテキ」 (2)あたる。たしか。あきらか。「的確テキカク」「的中テキチュウ」 (3)英語の~ticの音訳字。「劇的ゲキテキ
 チョウ・つる  金部
解字 「金(つり針)+勺(一つを取り出す)」 の会意形声。釣針で魚一匹を釣り上げること。
意味 (1)つる(釣る)。魚をつる。「釣人つりびと」「「釣竿つりざお」「釣果チョウカ」(釣りの成果) (2)つる。つるす「釣鐘つりがね」 (3)[国]つりせん。「釣銭つりせん
<紫色は常用漢字>

参考 音符「匀キン」
   音符「勺シャク」

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音符「回カイ」<まわる・めぐる>と「廻カイ」「徊カイ」「蛔カイ」

2019年02月03日 | 漢字の音符
 カイ・・まわる・まわす  口部

解字 金文と篆文第一字は水の回流する形。水の巡る意から、まわる・回転する意となった。篆文第二字から、大きな囗の中に小さな口がはいる形となった。
意味 (1)まわる(回る)。まわす(回す)。「回転カイテン」「回覧カイラン」 (2)めぐる。めぐらす。「回想カイソウ」「回顧カイコ」「回向エコウ」(①自らの功徳を他者に振り向けて、ともに仏果を得ようとすること。 ②仏事を営んで死者の成仏を祈ること) (3)かえる。もとに戻す。「回収カイシュウ」 (4)ひとまわり。「毎回マイカイ」「回忌カイキ」 (5)「回教カイキョウ」とは、イスラム教をいう。

イメージ 
 「まわる」
(回・廻・徊・蛔)
 「その他」(茴)
音の変化  カイ:回・廻・徊・蛔  ウイ:茴

まわる
 カイ・エ・まわす・まわる・めぐる・めぐらす  廴部えんにょう
解字 「廴(のびる)+回(まわる)」の会意形声。廴インは、のびて行く意。それに回がついた廻は、回を動詞化した字で、まわる動作をいう。しかし、常用漢字でないため、回に書き換える熟語が多い。
意味 まわす(廻す)。まわる(廻る)。めぐる(廻る)。めぐらす(廻らす)。「廻船カイセン」(港から港へ旅客や貨物を運んで回る船のこと)「廻り灯籠まわりドウロウ」「廻風カイフウ」(つむじ風=回風)「廻送カイソウ=回送」(①他へさしまわす。②もとの場所へ送りもどす)「輪廻リンエ・リンネ」(仏教:人間の霊魂が生死を繰り返して、この世をめぐり廻ること)
 カイ  彳部
解字 「彳(路上)+回(まわる・めぐる)」の会意形声。彳は十字路の左半分で、ここでは路上の意。徊は路上をまわるように歩くこと。
意味 さまよう。行きつもどりつする。「徘徊ハイカイ」(どこともなく歩き回る)
 カイ  虫部
解字 「虫(むし)+回(まわる)」の会意形声。お腹のなかを回りめぐっている虫の意で、人や動物の消化器官に寄生する虫をいう。
意味 はらのむし。カイチュウ。寄生虫の一種。「蛔虫カイチュウ

その他
 ウイ・カイ  艸部
 茴香の畑
解字 「艸(くさ)+回(ウイ)」の形声。ウイと呼ばれる香草。ウイは唐音(鎌倉時代以降に中国から入ってきた字音)
意味 「茴香ウイキョウ」に使われる字。茴香とは、香草の名。セリ科ウイキョウ属の多年草。草全体に芳香がある。夏、黄色い小花が群がり咲く。実は楕円形で薬用・食用にする。この草をハーブとして表す言葉に「フェンネル」がある。
 「茴香ウイキョウ」の名の由来は二説あり、一つは回教徒を通じて西方から伝来した草の意。もうひとつは、鮮度が落ちた肉や魚に茴香を使うと、その本来のよさを回復したようにおいしくなる効果があるため回復する草という説。
<紫色は常用漢字>
          
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音符 「豦キョ」 <虎と猪が争う> と 「遽キョ」 「劇ゲキ」

2019年02月01日 | 漢字の音符
 キョ  豕部

解字 金文は二頭の動物が争っている形。篆文は「虎の略体+豕(いのしし)」の会意で、虎と猪がはげしく争うさま。また、両者が組み合って解けないこと。単独で用いられることなく、「はげしい動きをする」、組み合って「あわさる」イメージを持つ。

イメージ 
 「はげしい動きをする」
(遽・劇)
  組み合って「あわさる」(醵)
音の変化  キョ:遽・醵  ゲキ:劇

はげしい動きをする 
 ゲキ・はげしい 刂部
解字 「刂(刀)+豦(はげしい動きをする)」の会意。虎や猪の役割をする者が刀をもって動きまわる演劇をいう。また、はげしい意味を表わす。
意味 (1)はげしい動きや内容を見せる興業。芝居。「劇場ゲキジョウ」「演劇エンゲキ」(劇を演ずる。芝居)「劇画ゲキガ」(リアルな物語性をもつ漫画) (2)はげしい(劇しい)。ひどい。「劇薬ゲキヤク」(使用の度をこせば生命にかかわる危険な薬剤)「劇烈ゲキレツ」(きわめてはげしいさま)
 キョ・にわか・あわただしい  辶部
解字 「辶(ゆく)+豦(急にはげしい動きをする)」の会意形声。豦キョは、虎と猪がたたかうさまで、急にはげしい動きをする意。遽キョは、急に行く意。あわただしく行く意で、馬車や早馬などでの駅伝をいう。
意味 (1)早馬。はやうち(馬を早く鞭打つ)。伝馬。「遽人キョジン」(命令を伝える使者) (2)あわただしい(遽しい)。にわかに(遽かに)。「急遽キュウキョ」「遽然キョゼン」(あわてたさま)「遽色キョショク」(あわてた顔付き) (3)おそれる。うろたえる。

あわさる
 キョ  酉部
解字 「酉(酒席)+豦(あわさる)」の会意形声。酒席の宴会で両者がお金を合わせて飲むこと。すなわち、「わりかん」すること。金銭を出し合う意となる。
意味 (1)さかもり。金銭を出し合って酒盛りをする。 (2)金銭を出し合う。費用を出し合う。つのる。「醵銭キョセン」(銭を出し合う)「醵金キョキン」(金銭をつのる)「醵出キョシュツ」(金品を出し合う。=拠出)
<紫色は常用漢字>

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