漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「彖タン」<ブタが囲いの周辺を走る> と「縁エン」「掾エン」「篆テン」

2023年06月26日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 タン  彑部けいがしら 
      
解字 豕シ(ぶた)の上に横向きのあしを付けた象形。豚が前方でなく横に走る形で、放し飼いされている豚が、囲いの柵にそって走りまわる意から、囲いの内側の周辺を意味する。
現代字は、「彑(けいがしら)+豕(上部は重複する)」に変化した。音符となって「へり・ふち」「わくにおさまる」のイメージがある。新字体では、上部の彑がヨの下が出た形の⇒縁の右辺に変化する。
意味 はしる。めぐる。

イメージ  
 「へり・ふち」
(縁・椽・掾・喙)
 「わくにおさまる」(篆・蠡)
音の変化  エン:縁・掾  カイ:喙  テン:篆・椽  レイ:蠡

へり・ふち
[緣] エン・ふち  糸部
解字 旧字は緣で「糸(ぬの)+彖(へり)」の会意形声。布のへり・はしの意。現代字は右辺が変化した縁。意味の(3)~(5)は仏教用語のため本来の意味から変化している。 
意味 (1)ふち(縁)。へり(縁)。「崖っ縁がけっぷち」「額縁ガクぶち」 (2)[国]座敷の外側の板敷。えん(縁)。「縁側エンガワ」 (3)よる(縁る)。ちなむ。 (4)えにし(縁)。ゆかり(縁)。かかわりあい。「所縁ショエン・ゆかり)。「縁故エンコ」(①血縁・姻戚。②故(ゆえ)ある縁。つて)「由縁ユエン」(事の由来。ゆかり) (5)めぐりあわせ。「因縁インネン」 
 テン・たるき  木部
解字 「木(まるた)+彖(へり)」の会意形声。屋根のへりとなる軒(のき)に突き出ている木。屋根の棟木(むなぎ)から軒まで屋根板をささえるために架ける垂木をいう。垂木は外からみると屋根のへりを取り巻くようにみえる。また、大きな建物では軒だけ別の垂木を架けることがあった。椽の垂木は丸い木を用いたものとされた。※四角なたるきを「桷カク」という。

軒の椽(たるき)(中国の検索サイトから。原サイトなし)
意味 (1)たるき(椽)。屋根の棟から軒にわたす丸太の材。「屋椽オクテン」(屋根のたるき)「椽竹テンチク」(竹のたるき) 「采椽サイテン=採椽」(山から切り出したままの木を用いた垂木。また、飾らない質素な家の例え)「椽大テンダイの筆」(軒の丸いたるきのように太く立派な筆。立派な文章)
 エン・じょう  扌部
解字 「扌(て)+彖(へり)」の会意形声。中心でなく組織のへり(周辺)にいて手を動かして仕事をする小役人。
意味 (1)下役。小役人。「掾史エンシ」(下級の役人=掾吏エンリ)「陳掾チンテン」(小役人が陳情し走り回る) (2)たすける。 (3)[国]じょう(掾)。律令制の国司の三等官。
 カイ・くちばし  口部
解字 「口(くち)+彖(へり)」の会意。口の周りのへり。人では唇(くちびる)だが、特に先がとがる鳥のくちばしをいう。また、獣のくちにも用いる。
意味 くちばし(喙)。鳥のくちばし。けものの口。「鳥喙チョウカイ」(鳥のくちばし)「烏喙ウカイ」(カラスのくちばし。欲の深い人相のたとえ)「長頸烏喙チョウケイウカイ」(首が長くカラスのように口がとがった人相のこと。残忍・強欲で疑い深い人)「喙長カイチョウ」(くちばしが長い。口八丁)「喙息カイソク」(口で息をする)「跂行喙息キコウカイソク」(跂行は虫がはう、喙息は鳥が喙(くちばし)で息をする。動物一般・いきものをいう)「容喙ヨウカイ」(くちばしを容(い)れる。横から口を出す)「容喙ヨウカイを許す」(口出しをさせてしまう)

わくにおさまる
 テン  竹部
解字 「竹(竹簡)+彖(わくにおさまる)」の会意形声。竹簡に書かれる文字で、枠に収まるように書かれた文字の種類。
意味 (1)古代漢字の書体の名。長方形の枠におさまるよう書かれた書体。印章に多く使われる。「篆書テンショ」(漢字の書体の一つ、周代の大篆と秦代の小篆がある)「篆刻テンコク」(石や木などに文字を刻むこと。多く篆書体を使ったことから)「篆文テンブン」(篆書体の文字)
 レイ・ライ・リ・にな・ひさご  虫部
解字 「虫虫(むし)+彖(わくにおさまる)」の会意。①木の芯をくう虫で、木くい虫をいう[説文解字]。②虫を貝の意味にとり、一つの貝殻のわくにおさまっている虫の巻貝(ニナ)をいう。③転じて、中が空洞で外側だけがある瓢(ひさご)をいう。
意味 (1)木くい虫。むしばむ。虫が木の芯をくう。 (2)にな(蠡)。巻貝の一種。蜷ケン、螺、とも書く。「蠡殻レイカク」(貝殻) (3)ひさご(蠡)。ひょうたんの水くみ。「蠡酌レイシャク」(ひさごで水をくむ)「以蠡測海イレイカイソク」(蠡ひさごを以(も)って海を測る。ひょうたんで海の水をはかる例え。狭い見識で大事を測る=蠡測レイソク) (4)「蠡蠡レイレイ」とは、つらなるさま。
<紫色は常用漢字>

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