漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「元ゲン」<人の丸いあたま>と「玩ガン」「頑ガン」「冠カン」と「兀コツ」

2021年08月28日 | 漢字の音符
  阮ゲンを追加しました。
 ゲン・ガン・もと  儿部  

解字 甲骨文字第一字は、人の側身形の上部に横線を引いて、人の頭を指した指示文字。第二字は、その上にさらに-印(あたま)を描いて頭であることを強調した字。金文以降、第二字がもとになって現代字にいたっている。人のまるい頭の意。頭部は人間のもと(元)になるところの意。また。上の端にあるので、転じて先端・はじめの意となる。元を音符に含む字は、「あたま」「まるい」イメージを持つ。
意味 (1)もと(元)。根本。「元金ガンキン」「元素ゲンソ」「元気ゲンキ」(①根本の気。②気力。威勢がいい) (2)はじめ(元め)。はじまり。「元祖ガンソ」「元日ガンジツ」 (3)あたま。くび。おさ。「元首ゲンシュ」(元も首も、あたまの意。二つあわせて国の長として国を代表する人)「元凶ゲンキョウ」(悪者のかしら) (4)年号。「元号ゲンゴウ」「改元カイゲン

イメージ 
 「もと・あたま」
(元・冠)
 「まるい」(頑・玩・翫)
 「形声字」(阮)
 「派生字」(兀)
音の変化  ゲン:元・阮  カン:冠  ガン:頑・玩・翫  コツ:兀

あたま
 カン・かんむり   冖部わかんむり
解字 「冖(かぶる)+元(あたま)+寸(て)」 の会意形声。あたまに手でかぶせるもの。
意味 (1)かんむり(冠)。頭にかぶるものの総称。 (2)成人のしるしとして冠をつける。「冠者カンジャ」(元服して冠をつけた男子。若者)「弱冠ジャッカン」(男子二十歳の異称。②年の若いこと)「冠婚葬祭カンコンソウサイ」(①元服・結婚・葬式・祖先の祭りの、四つの重要な儀式) (3)かむる(冠る)。かぶる。「冠水カンスイ」「冠雪カンセツ」 (4)もっともすぐれている。「栄冠エイカン

まるい
 ガン・かたくな  頁部  
解字 「頁(あたま)+元(まるい)」の会意形声。まるい頭の意。また、発音のガンは丸ガン(弾きだま。まるくかたいたま)に通じ、かたい頭、かたくなの意で使われる。また、かたい意から、がんじょうな意ともなる。
意味 (1)かたくな(頑な)。「頑固ガンコ」「頑迷ガンメイ」(かたくなで正しい判断ができない) (2)がんじょうな。「頑健ガンケン」「頑強ガンキョウ」 (3)「頑張(がんば)る」(我を張るの当て字。①我意を張りとおす。②忍耐して努力する。)
 ガン・もてあそぶ  玉部
解字 「王(玉)+元(まるい)」 の会意形声。まるい玉。転じて、まるい玉をもてあそんで遊ぶこと。
意味 (1)もてあそぶ(玩ぶ)。めでる。なぐさみものにする。「玩具ガング」「玩弄ガンロウ」(玩も弄も、もてあそぶ意) (2)深く味わう。「玩味ガンミ」「玩読ガンドク
 ガン・もてあそぶ  羽部
解字 「習(くりかえす)+元(=玩。丸い玉をもてあそぶ)」の会意形声。まるい玉を、くりかえしもてあそぶこと。
意味 (1)もてあそぶ(翫ぶ)。(=玩)。なぶる。「翫弄ガンロウ」 (2)深く味わう。めでる。「翫味ガンミ」(よく味わう)「翫賞ガンショウ」(美術・文学などを味わい楽しむ)

形声字
 ゲン・ゴン  阝部こざと
読売新聞2021.8.28朝刊
解字 「阝(おか)+元(ゲン)」の形成。ゲンという名の丘。地名・国名および姓を表す字。
意味 (1)周代の国名。今の甘粛カンシュク省涇川ケイセン県付近にあった国。 (2)姓のひとつ。「阮咸ゲンカン」(晋代の文人。竹林の七賢の一人。音楽によく通じた) (3)楽器の名。「阮咸ゲンカン」(琵琶に似た弦楽器。阮咸が発明したとされる。正倉院に伝わる螺鈿ラデン紫檀シタン阮咸は正倉院を代表する宝物の一つ)

派生字
 ゴツ・コツ  儿部

解字 甲骨文は元の第一字と同じで、人の頭部を強調したかたち。金文は頭部をまるい形にした。篆文第一字は一の下に人をつけた形。第二字は一の下に儿をつけた形で、これが現在に続いている。意味は、当初の人の頭から、①頭がはげる・頭をそる・頭髪を切る。②頭頂の意から、高くて上が平らな地形・山など高くそびえるさま。人が動かぬさま。などの意になる。発音はゴツだが、慣用音のコツが広く使われる。
意味 (1)頭がはげる。頭を剃る。「兀首コツシュ」(はげ頭) (2)山などの高くそびえる。「突兀トッコツ」(①山や岩がそびえる。②他に抜きんでて高い) (3)人がうごかないさま。「兀然コツゼン」(①うごかぬさま。②知覚のはたらかないさま)「兀坐コツザ」(ひとり端然とすわる) (4)一心不乱に努力する。「兀兀コツコツ」(ひとり困苦して勉めるさま)
<紫色は常用漢字>

<関連音符>
 カン  宀部
解字 「宀(廟)+元(あたま)」 の会意形声。戦争から元(あたま)を全うして帰ったことを祖先の霊を祭る廟に報告すること[字統]。無事(まったし)に帰り、任務をやりとげ、任務が終了する意となる。
意味 (1)まったし。欠けめがない。「完全カンゼン」(2)まっとうする。やりとげる。「完遂カンスイ」 (3)おわる。「完成カンセイ」「完結カンケツ
イメージ  「欠けめない」 (完・院・浣・寇)  「同音代替」 (莞)
音の変化  カン:完・浣・莞  イン:院  コウ:寇
音符「完カン」へ

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音符「屰ギャク」<さかさ> と「逆ギャク」と「朔サク」「遡ソ」「塑ソ」

2021年08月25日 | 漢字の音符
 ギャク・ゲキ  屮部 

解字 手足を広げて立つ人の正面形を逆さにした象形。さかさ・ぎゃくの意味を表わす。また、この字を路上に置くと、向こうから人が頭を先にして来る形でもある。逆の原字。現在は発音のみ表す。

イメージ 
 「さかさ・ぎゃく」
 (逆)
音の変化  ギャク:逆

 ギャク・ゲキ・さか・さからう  之部

解字 甲骨文字第一字は、人の正面形を上下逆さにした形に彳(ゆく)を加え、逆行することを表す。第二字は上向きの足の形をつけ歩く意を表した。金文は甲骨文字とほとんど同じ。第二字の足の形が止に近くなった。篆文は彳と止が合体した「辵チャク+屰ギャク」になり、現在の字は辵⇒辶に変化した逆になった。意味は、来た方と、ぎゃくの方向に進む形でさからう意。また、屰は向こうから人が来る形でもあり、その人を迎える意もある。屰の意味である、さかさまの意も受け継ぐ。
意味 (1)さからう(逆らう)。たがう。「反逆ハンギャク」「逆襲ギャクシュウ」「逆鱗ゲキリン」(竜のあごの下の逆さうろこ。これに触れると怒ってその人を殺すという) (2)むかえる。「逆旅ゲキリョ」(旅人をむかえる旅館のこと)「逆撃ギャクゲキ」(むかえ撃つ) (3)さかさま(逆さま)。順序や方向が反対である。「逆風ギャクフウ」(向かい風)「逆算ギャクサン」(後ろから前にさかのぼって計算する) (4)のぼせる。「逆上ギャクジョウ

    サク <逆になる>
 サク・ついたち  月部

解字 「月(つき)+屰ギャク(=逆になる)」の会意形声。月が満月から徐々に欠けてゆき、全く見えなくなった暗黒の月を境に、逆向きに方向を変え満月に向かうこと。月光が初めて見える最初の日(新月)をいう。陰暦では月の満ち欠けによって、一か月ごとに新月がまわってくる。なお、月光が人々の目にはっきりと分かるのは三日目の月で、これを朏みかづき(月が出る)という。
意味 (1)ついたち(朔)。陰暦で月の第一日。「朔日サクジツ」(ついたち)「朔旦サクタン」(ついたちの朝) 「八朔ハッサク」(①旧暦八月朔日のこと。②ミカンの一種。甘酸っぱくおいしい)(2)きた(北)。北の方角。十二支の第一番の子(ね)が北に配されたことから、朔(はじめ)を北とした。「朔風サクフウ」(北風)「朔方サクホウ」(北方)

イメージ 
 「逆になる」(朔・溯・遡)
 「形声字」(塑・愬)
 「異体字」(槊)
音の変化  サク:朔・槊  ソ:遡・溯・塑・愬

逆になる
 ソ・さかのぼる  氵部
解字 「氵(水)+朔(逆になる)」の会意形声。水の流れを逆にさかのぼること。
意味 さかのぼる(溯る)。流れをさかのぼる。「遡江ソコウ」(川を溯る。特に長江。=遡江)「遡上ソジョウ」(=遡上)
遡の意味(2)と通用する。
 ソ・さかのぼる  之部
解字 「辶(ゆく)+朔(=溯。さかのぼる)」の会意形声。溯と同源の字であり、川をさかのぼって行く意。川以外のさかのぼる意味でも用いる。この字は新指定の常用漢字であり、一点しんにょう(辶)でも可。
意味 (1)さかのぼる(遡る)。物事の根本や過去の時代にさかのぼる。「遡及ソキュウ」「遡源ソゲン」(源にさかのぼり研究する)(2)流れをさかのぼる「遡江ソコウ」(=溯江)「遡上ソジョウ」(=溯上)

形声字
 ソ  土部
解字 「土(つち)+朔(ソ)」 の形声。ソは素(素材)に通じ、土を素材とするもの。
意味 (1)粘土をこねて形を作る。「塑像ソゾウ」「彫塑チョウソ」(彫刻と塑像)(2)でく。土でつくった人形。「泥塑デイソ」(3)変形しやすい。「可塑性カソセイ
 ソ・サク  心部
解字 「心(こころ)+朔(ソ)」の形声。ソは訴(うったえる・つげる)に通じ、心からうったえること。また、サクの発音で、おそれる意となる。
意味 (1)うったえる。つげる。「膚受之愬フジュノソ」(痛切な訴え。膚受フジュは皮膚に受ける意で痛切の意。「論語・顔淵」)「愬訟ソショウ」(訴訟)「愬告ソコク」(告訴)(2)おそれる。「愬怒サクド」(おそれ怒る)「愬愬サクサク」(おそれるさま)

異体字
 サク・ほこ  木部
解字 同音の矟サク(ほこ)の異体字で、ほこの意。長柄のほこをいう。
意味 (1)槊(ほこ)。柄の長い武器のほこ。「剣槊ケンサク」(剣とほこ)「戟槊ゲキサク」(戟ゲキ[枝刃のあるほこ]とほこ)「横槊賦詩オウサクフシ」(槊(ほこ)を横たえ詩を賦す。戦場でほこを横たえて詩を作る。魏の曹操が戦場で詩を作った故事。)(2)すごろく。すごろくの盤。「棊槊キサク
<紫色は常用漢字>

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音符「耳ジ」 <やわらかい耳> と「餌ジ」「恥チ」

2021年08月22日 | 漢字の音符
 ジ・みみ  耳部           

解字 甲骨文字は耳を描いた象形。金文もその面影を残すが、篆文にいたり形が変わり現在の耳になった。耳を音符に含む字は、耳の意のほか、耳たぶの柔らかいことから、「やわらかい」イメージがある。
意味 (1)みみ(耳)。「耳朶ジダ」(みみたぶ)「耳目ジモク」(①耳と目。②多くの人々の注意・注目)。「耳目をひく」「耳鼻科ジビカ」「耳寄(みみよ)り」 (2)みみ状のもの。「食パンの耳」
参考 は部首「耳みみ・みみへん」となる。意味は、耳・耳のはたらき等を表す。常用漢字で5字、約14,600字を収録する『新漢語林』では45字収録されている。主な字は以下のとおり。
 聞ブン・モン・きく(耳+音符「門モン」)
 職ショク・つとめ(耳+音符「戠ショク」)
 聡ソウ・さとい(耳+音符「忩ソウ」)
 聖セイ・ひじり(耳+口+音符「壬テイ」)
 耽タン・ふける(耳+音符「冘チン」)
 聴チョウ・きく(耳+直+心の会意)
 聾ロウ(耳+音符「龍リュウ」)など。

イメージ 
 「みみ」
(耳・弭・珥)
  耳たぶが「やわらかい」(恥・餌・茸)
 「形声字」(洱)
音の変化  ジ:耳・餌・珥・洱  ジョウ:茸  チ:恥  ビ:弭

みみ
 ビ・ミ・ゆはず  弓部
 骨製の弭
解字 「弓(ゆみ)+耳(みみの形)」の会意。弓端の耳のかたちをした弓弦(ゆづる)をかけるところ。弓の端にあるので、末端・そこまでで止める意ともなる。
意味 (1)ゆはず(弭)。弓弭・弓筈とも書く。弓の両端にある弓の弦をかけるところ。 (2)やめる。そこまでで終りにする。「弭兵ビヘイ」(戦争をやめる)
 ジ・ニ・みみだま  王部
解字 「王(たま)+耳(みみ)」の会意形声。王は玉の意。耳につける玉をいう。また、耳につけることから耳に「さしはさむ」意味になる。(耳に穴をあけて挿したのかは不明)
意味 (1)みみだま(珥)。耳に飾る玉。「双珥ソウジ」(両耳の玉)「珠珥シュジ」(真珠の珥) (2)さしはさむ(珥む)。「珥筆ジヒツ」(筆をさしはさむ。[字統]によれば、筆を冠のへりにさしはさむ。筆記の職)

やわらかい
 チ・はじる・はじ・はじらう・はずかしい  心部
解字 「心(こころ)+耳(やわらかい)」 の会意形声。心がやわらかく感受性があり、自分を気まり悪く思うこと。
意味 はじる(恥じる)。はじ(恥)。はじらう(恥じらう)。はずかしめる。「羞恥シュウチ」(恥ずかしく思う気持ち)「恥辱チジョク」(はずかしめ)「無恥ムチ」(恥を知らない)
 ジ・えさ・え  食部  
解字 「𩙿(食)+耳(やわらかい)」の会意形声。やわらかくした食べ物。𩙿⇒食の表記も可。
意味 (1)え・えさ(餌)。やわらかいねり餌。動物のえさ。「餌食エジキ」(①えさとして食われるもの。②ねらわれて犠牲となる) (2)人を誘惑する手段。「好餌コウジ」 (3)たべもの。食物の総称。「食餌ショクジ」(たべもの。えさ)「薬餌ヤクジ」(薬と食物)「餌口ジコウ」(食事をする。生計をたてる。≒糊口ココウ
 ジョウ・きのこ・たけ  艸部
解字 「艸(草)+耳(やわらかい)」の会意。芽吹いてのびるやわらかい草。また、鹿の生えたての角。日本では、やわらかいキノコの意で使われる。
意味 (1)しげる。草が生い茂る。「茸茸ジョウジョウ」(草が盛んに茂るさま) (2)鹿の新しく生えたやわらかい角。「鹿茸ロクジョウ」(鹿の角が脱落したのち、再生中のやわらかな角。ふくろづの。漢方の強壮薬とする) (3)[国]きのこ(茸)。たけ(茸)。「松茸まつたけ」「椎茸しいたけ

形声字
 ジ  氵部
解字 「氵(みず)+耳(ジ)」の形成。ジという名の川や湖を表す地名用字。
 普洱茶(プーアル茶)
意味 (1)川や湖の名。「洱水ジスイ」(河南省南陽あたりを流れていた昔の川の名)「洱海ジカイ」(雲南省大理にある湖の名) (3)「普洱茶プーアルチャ」とは、雲南省の普洱(pǔ ěrプーアル)県とその周辺が主要産地のお茶。なかでも茶葉を蒸してから圧縮して円盤状にして発酵させる固形茶で知られる。固形のため運搬に便利で長期保存もできるため、古来、雲南省から四川省をへて(茶馬古道)、チベットやモンゴルへ運ばれ遊牧民もミルクティーにして愛飲している。
<紫色は常用漢字>

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音符「又ユウ」<右手> 「友ユウ」と「右ユウ」「雄ユウ」と「左サ」「佐サ」

2021年08月19日 | 漢字の音符
 ユウ・また  又部

解字 手の指を三本に省略した右手の形の象形。みぎて・みぎの意味を表す。古くは右手の動作から、右手で「たすける」、右手のなかに物が「ある」などの意味で用いられたが、それらの意味は、「右・佑」「有」に移り、現在では仮借カシャ(当て字)して「また・ふたたび」の意味で用いられる。又は部首になる。
意味 (1)て(手)。右手。 (2)また(又)。そのうえ。ふたたび。重ねて。「又貸(またが)し」「又聞(またぎ)き」 (3)[国]また(又)。ならびに。それから。並列・話題を変える表現。
参考 又は、手・手に取る意で部首「又また」になる。又部には常用漢字では9字、約14,600字を収録する『新漢語林』では37字が収録されている。主な字は以下のとおり。
 収シュウ・おさめる(又+音符「丩キュウ」)
 叔シュク(又+音符「尗シュク」)
 叙ジョ・のべる(又+音符「余ヨ」)
 友ユウ・とも(又+又の会意形声)
 双ソウ・ならぶ(雙ソウの新字体)
 取シュ・とる(又+耳の会意)
 反ハン・かえる(又+厂の会意)
 受ジュ・うける(爫+冖+又の会意)
 このうち取シュ・叔シュク・反ハン・受ジュ、は音符になる。

イメージ 
 「みぎて・て(手)」
(又・友・馭)
音の変化  ユウ:又・友  ギョ:馭

みぎて・て
 ユウ・とも  又部

解字 「又(て)+又(て)」の会意形声。手に手を取り合って助けあう関係で、「とも」を表す。
意味 (1)とも(友)。「友達ともだち」「学友ガクユウ」 (2)仲がよい。親しい。「友好ユウコウ」「友邦ユウホウ」(親しい交わりのある国)
 ギョ  馬部
解字 「馬(うま)+又(て)」の会意。馬の手綱を手にとり、馬をあやつること。
意味 (1)馬をあやつる。また、その人。「馭者ギョシャ」(=御者)「射馭シャギョ」(馬に乗って弓を射る) (2)統べる。使いこなす。


     ユウ <みぎ>
 ウ・ユウ・みぎ・たすける  口部

解字 甲骨文は又(右手)で「みぎ」を表した。金文から、「口(器物)+又(右手)」の会意。又は右手の象形だが、「また・ふたたび」の意に使われるようになったので、口サイ(器物)をつけて、器物をもつ右手の形で「みぎ」の意を表した。また、右手は「又」の時から「たすける」意味がある。
意味 (1)みぎ(右)。みぎがわ。「右手みぎて」「右岸ウガン」 (2)たすける(右ける)。 (3)(そばにいてたすける意から)そば。かたわら。「座右ザユウ」「右筆ユウヒツ」(貴人のそばにいて文書を書く人。文筆にすぐれた人) (4)保守的な。「右翼ウヨク」⇔ 左翼。

イメージ 
 「みぎ」
(右・雄)
 右手の動きは人を「たすける」(佑・祐)
音の変化  ユウ:右・雄・佑・祐

みぎ
[䧺] ユウ・お・おす  隹部

解字 篆文第1字は秦系簡牘カントク文字(春秋戦国時代)で、「隹(とり)+右ユウ(みぎ)」の会意形声。右は中国の戦国時代に、左を卑しみ右を上位とする考えがあったことから、上位の隹(とり)すなわちオスの隹(とり)の意。第2字は[説文解字]の篆文で、第1字の右⇒厷に変化した雄になった。厷コウにはユウの発音はなく、強いて言えば厷のナ(右手=又ユウ)の発音がユウである。オスのとりから転じて、いさましい・強い・すぐれる意となる。
意味 (1)おす(雄)。お(雄)。「雄鶏おんどり」「雌雄シユウ」(めすと、おす) (2)おおしい。いさましい。ひいでる。すぐれた人物。「雄姿ユウシ」「英雄エイユウ
※音符「厷コウ」にも重出した。

たすける
 ユウ・たすける  イ部
解字 「イ(ひと)+右(たすける)」の会意形声。人がたすけること。
意味 たすける(佑ける)。たすけ。「佑助ユウジョ」(たすけること)「天佑テンユウ」(天のたすけ。=天祐)
 ユウ・たすける  ネ部
解字 「ネ(=示。神の祭壇)+右(たすける)」の会意形声。神のたすけがあること。
意味 (1)たすける(祐ける)。神仏の助けがあること。「祐助ユウジョ」(天や神の助け)「天祐テンユウ」(天の助け) (2)右ユウに準じた使い方。「祐筆ユウヒツ」(貴人のそばにいて文書を書く人=右筆)


      サ <工具をもつ左の手>
 サ・ひだり  工部

解字 甲骨文は左手の象形。手の指を3本に省略した左手を、本人から見た形に描く。金文以降は「ナ(左手)+工(工具)」の会意形声。工具(ノミ)を持つ手を描いて左(ひだり)を表した。また、左手に工具をもち右手の働きを「たすける」意もある。
意味 (1)ひだり。「左折サセツ」 (2)たすける。ささえる。「証左ショウサ」(あかし。証拠をささえるもの) (3)右と比べて下の地位。「左遷サセン」 (4)進歩的な考え。「左派サハ」「左翼サヨク」 (5)[国]酒のみ。「左党サトウ

イメージ  
 「ひだり」(左) 
 左手に工具をもち右手の働きを「たすける」(佐)
音の変化  サ:左・佐

たすける
 サ・すけ  イ部
解字 「イ(人)+左(たすける)」 の会意形声。たすける人。補佐する人の意。
意味 (1)たすける。「補佐ホサ」「佐幕サバク」(江戸幕府の将軍をたすける) (2)すけ(佐)。長をたすける。昔の官名。次官。軍隊の階級。「佐官サカン」(将の下の階級。将をたすける)
<紫色は常用漢字>

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音符「粦リン」<おに火> と「隣リン」「燐リン」「鱗リン」「麟リン」「憐レン」

2021年08月13日 | 漢字の音符
 リン  米部

解字 金文は「大(ひと)+小点四つ+両足を外にむけた形」の会意。大は手をひろげた人の正面形で人を表し、続く両足が外に向かって開いた形。小点は鬼火を示す。粦は、大の字になって倒れた屍(しかばね)から、鬼火が立ちのぼるさまで燐の原字とされる。金文には霊魂の用法がある。篆文は「火+火+舛(両足)」に変化した。[説文解字]は、「兵の死(しかばね)及び牛馬の血、粦リンと為る」とし、戦場で死んだ兵士や牛馬の血が鬼火になると考えた。しかし、粦は後の燐となる字であり燐の成分から考えると、鬼火は血よりも骨の成分が分解して生ずる化合物であると思われる。楷書は篆文の炎 ⇒ 米に変化した粦になった。
 鬼火は湿地に小雨の降る闇夜などに燃えでて空中に浮遊する青火をいう。腐敗した生物から生じた黄燐(白燐)などが空気中で酸化する際の光とされるが、その原理は完全には解明されていない。一般に鬼火(おにび)とは、伝承上では人間や動物の死体から生じた霊、もしくは人間の怨念が火となって現れた姿と言われている。
意味 おにび。ゆうれいび。きつね火。火の玉。燐の原字。

イメージ 
 「鬼火」
(燐・憐) 
 鬼火が点々と「つらなる」(隣・鱗・麟・驎)
音の変化  リン:燐・隣・鱗・麟・驎  レン:憐

鬼火
[磷] リン  火部
解字 「火(ひ)+粦(おにび)」の会意形声。粦はもともと鬼火の意であるが、それに火をつけて意味を明確にした。しかし、現在は非金属元素の一である燐の意味で用いられ、鬼火と直接の関係はない。石偏の磷リンは非金属元素の燐を表す異体字。
意味 (1)おにび(鬼火)。きつねび。ひとだま。「燐火リンカ」(墓地・沼沢などで自然に発光する青白い火光) (2)りん(燐)。非金属元素の一つ。元素記号P。燐酸カルシュウムとなって鉱物界に存在する。「黄燐オウリン」(淡黄色状の燐の同素体の一つ。空気中で自然発火する)「燐寸マッチ」(点火用具。木製の軸の頭薬にかつて黄燐が使われていたことから)「燐酸リンサン」(燐の化合物と水が結合してできる酸の総称)
 レン・あわれむ  忄部
解字 「忄(心)+粦(おにび)」 の会意形声。鬼火のあがる屍(しかばね)を見て、あわれに思うこと。
意味 (1)あわれむ(憐れむ)。あわれみ。「憐憫レンビン」(あわれむこと)「憐察レンサツ」(あわれみ思いやる) (2)いとしくおもう。「可憐カレン」(かわいらしいこと。いじらしいこと)

つらなる
 リン・となり・となる  阝部
解字 「阝(土もり)+粦(つらなる)」 の会意形声。土盛りがつらなること。土盛りや土塀・土壁で互いに接している国・土地・家・部屋などをいう。となりあうこと。
意味 となり(隣り)。となる(隣る)。となりあう。「隣人リンジン」「隣家リンカ」「隣室リンシツ」「隣国リンコク
 リン・うろこ  魚部
解字 「魚(さかな)+粦(つらなる)」 の会意形声。魚の表面につらなるウロコ。
意味 (1)うろこ(鱗)。魚などのうろこ。「金鱗キンリン」(金色のうろこ。転じて美しい魚)「逆鱗ゲキリン」(竜のあごの下の逆さうろこ。そこに触れると怒って触れた人を殺すという) (2)うろこ状のもの。「鱗茎リンケイ」(うろこ状になった地下茎)「鱗粉リンプン」(チョウやガの羽についている微細な粉状のうろこ)「鱗雲うろこぐも
 リン  鹿部
解字 「鹿(しか)+粦(=鱗。うろこがある)」 の会意形声。うろこ状のものがある鹿。
 麒麟(百度百科より)
意味 麒麟キリンに使われる字。麒麟とは、①中国で、聖人の出る前に現れるとされる想像状の獣。 ②傑出した人物のたとえ。「麒麟児キリンジ」(才能がすぐれ将来が期待される少年) ③ウシ目キリン科の哺乳動物。
 リン  馬部
解字 「馬(うま)+粦(=鱗。うろこがある)」の会意形声。うろこ状のものがある馬。
意味 (1)鱗のような斑紋がある馬。 (2)良い馬の名。駿馬のこと。「麒驎キリン」(①一日に千里も走るという駿馬。②麒麟に同じ)
<紫色は常用漢字>

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音符「中チュウ」<真ん中・内側>と「仲チュウ」「忠チュウ」「衷チュウ」「沖おき」

2021年08月10日 | 漢字の音符
 チュウ・なか   l部

解字 甲骨文字第1字は、吹き流しのつく旗を四角な土地の真ん中に挿して立てた形。挿したことを示すため旗棹の下先が四角を貫いている。第2字は突き出た先にも旗の吹き流しを描いた形。金文は甲骨第2字を引きつぐが土地が楕円形になった形をへて、吹き流しがない第2字の形になった。篆文および現代字はこの形を継承している。意味は、土地の「真ん中」「うち」「なか」の意を表す。そのほか、真ん中で「かたよらない」、的の中に入ることから「あたる」意味も加わった。部首は、l部たてぼう。
意味 (1)なか(中)。まんなか。中心。「中央チュウオウ」 (2)あいだ。物と物との真ん中にある。「中間チュウカン」 (3)うち。なか。「夜中ヨナカ」「懐中カイチュウ」 (4)かたよらない。「中正チュウセイ」 (5)あたる。あてる。「的中テキチュウ」「命中メイチュウ」「中毒チュウドク」(毒にあたる)「中傷チュウショウ」(傷にあたる=傷つけられる)

イメージ  
 「なか・あいだ」
(中・仲・衷・忠・狆)
 「まんなか」(沖・迚)
音の変化  チュウ:中・仲・衷・忠・狆・沖  とても:迚

なか・あいだ
 チュウ・なか  人部
解字 「イ(ひと)+中(あいだ)」の会意形声。人と人とのあいだにいる意。
意味 (1)兄弟の序列で、あいだにあたる人。上から、伯ハク・仲チュウ・叔シュク・季、また、孟モウ・仲チュウ・季という。 (2)春夏秋冬のそれぞれの期間を三分したとき、孟・仲・季という。「仲春チュウシュン」(春の真ん中の月で、陰暦2月のこと) (3)なかだち。「仲人なこうど」 (4)[国]なか(仲)。なかまどうしの間がら。「仲間なかま
 チュウ・うち  衣部
解字 「衣(ころも)+中(なか・内側)」の会意形声。衣で包まれた内側の意で、①衣の内側に着る肌着などの意。②衣の内側から人の心のうちをいう。現代字は、中の下部が突き出ない。
意味 (1)うちにする。中に着る。肌着。「衷甲チュウコウ」(衣服の下によろいを着る) (2)うち(衷)。なか。心のうち「衷心チュウシン」(まごころ)「苦衷クチュウ」(苦しい心のなか)(3)なかほど。かたよらない。「折衷セッチュウ」(取捨して適当なところをとる)
 チュウ   心部
解字 「心(こころ)+中(なか・うちがわ)」の会意形声。うわべでなく、こころの内から相手にむきあうこと。相手に尽くす意で、まごころ・まことをいう。のち、主君のためにつくす意味もできた。
意味 (1)まこと。まごころ。まじめ。「忠心チュウシン」(まごころ)「忠誠チュウセイ」「忠実チュウジツ」(2)君主に対して誠実なこと。「忠臣チュウシン」「忠義チュウギ」「忠犬チュウケン
 チュウ・ちん  犭部
解字 「犭(いぬ)+中(なか・内側)」の会意形声。日本では室内で飼う犬の意。なお、中国では少数民族の名に用いていた。
意味 (1)[国]ちん(狆)。日本で改良された愛玩用の小型犬。日本名のちんは珍チン(めずらしい・だいじな)から来たのではないかと思われる。 (2)中国、貴州省南部などに住むプイ(布依)族の旧称。

まんなか
 チュウ・おき  氵部
解字 「氵(海・湖)+中(まんなか)」の会意形声。海や湖のまん中の意。日本では岸から遠く離れた所の意で使うが、中国では、「しずか・おだやか」「むなしい」意で使う。また、チュウ(注)に通じ、水がそそぐ意ともなる。
意味 (1)[国]おき(沖)。岸から遠くはなれた所。「沖釣り」 (2)しずか・おだやか。「沖和チュウワ」(おだやか。やわらぐ) (3)むなしい。「沖虚チュウキョ」(むなしい。何もない) (3)流れがそそぐ。「沖積チュウセキ」 (4)「沖天チュウテン」とは、空高くのぼること。(柱チュウに通じ、柱が天に届く意からか)
[国字] とても  辶部
解字 「辶(ゆく)+中(なかほど)」の会意。なかほどまで行った状態をいい、①到着できないことから、否定の語をともない、「とても~ない」となる。②否定をともなわず、とても・すこぶる・非常に、の意味となる。
意味 (1)「迚(とて)も出来ない」「迚(とて)もじゃないが無理だよ」 (2)「迚(とて)も楽しい」
<紫色は常用漢字>

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音符「朱シュ」<木を切断する> と「株シュ」「殊シュ」「珠シュ」

2021年08月07日 | 漢字の音符
 シュ・あけ  木部

解字 甲骨文字と金文は木の幹の根もとの部分に●印をいれた形の指示文字。この印は篆文で一となることから、切断する意と思われる。隷書レイショ(漢代)で木の上部の両端が上に曲がる形や、左端だけが曲がる形が出現し、この形が変化して現在の朱になった。
 甲骨文の意味は地名。金文で赤い色の意味になり、これが現在まで続いている。木の幹を切断して何故赤い意味になるのか? [説文解字]は、「赤心(芯)の木。松柏(常緑樹)の属なり」としている。つまり、切ったとき芯が赤い松柏の木をいい、転じて、あかい色を表すようになったとされる。松柏のうち、柏(コノテガシワ)などに代表されるヒノキ科の常緑針葉樹は、木の寿命が長く材質も緻密で、油分を多く含む赤い芯材は湿気や腐食に強い性質をもつ。
  芯が赤い柏科の木材。これで樹齢196年。 
 一方、朱は姓としても古い歴史をもつとされ、ネットで「朱姓」を検索すると、赤心木を崇拝する一族がこの木をトーテム(氏族の象徴)とし、商の時代から存在したとも言われるが起源は多様で不明の点が多い。漢字「朱」のはじまりは芯の赤い木を一族の象徴として姓としたものといえるが、赤い色の意味は赤心木から始まったのか、それとも仮借カシャ(当て字)か、判断しにくい。いずれにしても赤色は当初、鉱物の天然赤色顔料「辰砂シンシャ」の色であり、さらに後に硫黄と水銀から人工顔料の銀朱が作られたため、色調も深い朱色からあざやかな朱色へと変化している。
意味 (1)あけ(朱)。あか(朱)。深赤色。また、黄赤色。「朱肉シュニク」(朱色の印肉)「朱印シュイン」(朱肉で押した印)「朱墨シュボク」 (2)赤色顔料。「本朱ホンシュ・真朱シンシュ」(天然赤色顔料の辰砂) (3)姓の一つ。「朱熹シュキ」(南宋の儒学者)「朱子学シュシガク」(朱熹が大成した学説。日本で江戸時代に官学として保護された)「朱元璋シュゲンショウ」(明の初代皇帝。洪武帝) (4)夏の異称。「朱夏シュカ」(なつ)

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 伐った木の芯が「あかい」(朱・茱)
 木の根もとを切断する形から「きりかぶ」(株・侏)
 「切断する」(殊・誅)
 芯の赤い樹から、赤は樹の「内側にある」(珠)
 「同音代替」(蛛)
音の変化  シュ:朱・茱・株・侏・殊・珠  チュ・チュウ:蛛・誅

あかい
 シュ  艸部
解字 「艸(くさき)+朱(あかい)」の会意形声。あかい実がなる低木。
意味 「茱萸シュユ」に使われる字。茱萸シュユとは、(1)中国でミカン科ゴシュユ属の落葉低木。実は赤い球形で薬用になる。「茱萸節シュユセツ」(陰暦9月9日の節句。中国では昔、この日に茱萸の実を袋に入れて山に登り、茱萸の実を頭にさして菊花酒を飲み邪気を払った) (2)日本では「茱萸シュユ・ぐみ」といい、果樹の名。小さな赤い球形の果実がつき、食用となる。

きりかぶ
 シュ・かぶ  木部
解字 「木(き)+朱(切り株)」の会意形声。朱は、木の根もとを切った形で切り株の意。のち、もっぱら赤色の意で使われたので、木をつけて本来の意味を表した。また、切り株から生える小枝(写真)から、株分け・株式・株券の意味がでた。
 切り株から生える株状の枝
意味 (1)かぶ(株)。「切株きりかぶ」(樹木または草を切ったあとの根株)。また、根が付き、植え替えがきく草木のひとまとまり。「株分け」(植物の根株を分け植えること) (2)江戸時代、同業者の独占した権利。「株仲間かぶなかま」「年寄株としよりかぶ」 (3)「株式かぶしき」「株券かぶけん」の略。
 シュ  イ部
解字 「イ(人)+朱(切り株)」の会意形声。切り株のように背丈が低い人。
意味 背の低い人。「侏儒シュジュ」(こびと)「侏優シュユウ」(小人の道化役者)

切断する
 シュ・こと  歹部
解字 「歹(死ぬ)+朱(切る)」の会意形声。人を切り殺すこと。転じて、普通とことなる意味になった。
意味 (1)ころす。たつ(殊つ) (2)ことなる。「特殊トクシュ」 (3)ことに(殊に)。とりわけ。「殊勲シュクン」(すぐれた手柄)「殊勝シュショウ」(けなげなさま) (4)梵語の音訳字。「文殊モンジュ」(Manjusri [文殊師利=文殊菩薩] の略で、智慧をつかさどる仏の脇侍)「文殊の智慧ちえ」(すぐれてよい智慧) ※文殊の殊は、珠でない。
 チュウ・チュ・うつ・せめる・ころす  言部
解字 「言(いう)+朱(切る)」の会意形声。相手の罪を言いたてて切り殺すこと。
意味 (1)せめる(誅める)。とがめる。「誅求チュウキュウ」(税金などをきびしく取り立てる) (2)うつ。ころす(誅す)。「誅殺チュウサツ」(罪をせめて殺す)「誅伐チュウバツ」(罪をとがめて殺す)

内側にある
 シュ・たま  玉部
解字 「王(玉)+朱(内側にある)」の形声。貝の内側にできるまるい玉。
意味 (1)たま(珠)。貝の中にできる丸いたま。「真珠シンジュ」(貝の体内にできる球状のかたまり。まわりが光沢のある真珠層でおおわれ美しい)「珠玉シュギョク」(海に産する珠と山に産する玉)(2)まるいつぶ。「数珠ジュズ」(3)美しいものの例え。「珠楼シュロウ

同音代替
 チュウ・チュ・シュ  虫部
解字 「虫(むし)+朱(チュウ)」の形声。チュウという名の虫。「蜘蛛チチュウ・くも」に使われる字。チチュウとは、踟躕チチュウ(行っては止まる)に通じ、これに虫へんをつけた蜘蛛チチュウは、くものすの上で、行っては止まる動作をくりかえして巣をつくるクモをいう。
意味 「蜘蛛チチュウ・チチュ・くも」に使われる字。蜘蛛とは、糸を出して網を張り、虫を捕えて食う虫。「蛛網チュモウ・チュウモウ」(クモの巣)
<紫色は常用漢字>

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音符「米ベイ」<こめつぶ> と「迷メイ」と「粥シュク」<かゆ>

2021年08月04日 | 漢字の音符
 ベイ・マイ・こめ  米部         

解字   甲骨文の第一字は斜線と六つの点からなり、斜線が穀物の穂の枝の部分、六点がその実を表わし、実のついているイネ科の穂の象形。第二字は十に四つ点の形。この形が篆文に引き継がれ現代字の米になった。甲骨文字が使われた殷インで米は栽培されておらず、穀物の実の意味。日本では「こめ」の意となる。米は部首ともなる。現代中国ではコメは大米、アワは小米と表記される。
意味 (1)こめ(米)。よね。稲の実。「玄米ゲンマイ」「精米セイマイ」「米櫃こめびつ」「米穀ベイコク」(こめ。また、穀物一般) (2)メートル。長さの単位。「5米」(五メートル) (3)「亜米利加アメリカ」の略。「米国ベイコク

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 「こめ・穀物の実」
(米・粟)
 「形声字」(迷・謎・麋)
音の変化  ベイ・マイ:米  メイ:迷・謎  ゾク(会意):粟  ビ:麋

こめ・穀物の実
 ゾク・ショク・ソク・あわ  米部

解字 篆文は𠧪(実を示す記号)に米(穀物の実)がつき、細かい穀物の実の意。現代字は「覀(実の意)+米(穀物の実)」の会意で、細かい実をつけるあわ。粟は五穀の一つであり、穀物の総称としても用いられる。
あわ(粟)
意味 (1)あわ(粟)。イネ科の一年草。果実は小粒で黄色。 (2)穀類の総称。「粟帛ゾクハク」(穀物と絹織物)「粟米ゾクベイ」(穀物・粟と米)(3)つぶ。「粟散ゾクサン」(小さくて散らばる)「粟粒ゾクリュウ・あわつぶ」「粟立(あわだ)つ」(毛穴が粟粒のようにふくれる。鳥肌立つ)

形声字
 メイ・ベイ・マイ・まよう  辶部
解字 「辶(ゆく)+米(ベイ・マイ)」の形声。迷メイは慣用音で、漢音はベイ・呉音はマイ。マイは「昧」および「眛」の呉音であるマイ(くらい・はっきりしない)に通じ、ゆく道が暗くはっきりしないこと。すなわち、迷う意となる。「迷メイ・マイ」と「昧・眛マイ」の古代音は、ともに明紐脂部(復元音:miei)で同一。
意味 (1)まよう(迷う)。「迷路メイロ」「迷子まいご」 (2)こまる。「迷惑メイワク」 (3)奇妙な「迷答メイトウ
 メイ・なぞ  言部
解字 「言(ことば)+迷(まよう)」の会意形声。よくわからない言葉。新指定の常用漢字のため二点しんにょうだが、一点しんにょうも可。
意味 なぞ(謎)。なぞなぞ。「謎語メイゴ」(なぞを含んだ語)
 ビ・ミ・なれしか  鹿部

解字 甲骨文字は鹿の頭を発音を表す眉ビ(まゆ)にした字で、鹿の種類を指す文字。甲骨文字では鹿よりも捕獲頭数が多く、元は小型の鹿種を指していたと思われる[甲骨文字辞典]。金文も基本は甲骨文字を受け継いでいる。篆文になり「鹿(しか)+米(ベイ⇒ビ)」の形声になった。これは眉の発音を米に置きかえた字で、この字が現在に続いている。現在の意味は、「なれしか」「おおじか」となっている。
意味 (1)なれしか(麋)。おおじか。大型の鹿の一種。古くはトナカイの類をさすといわれる。「麋鹿ビロク」(大鹿と鹿) (2)眉(まゆ)に通じ、まゆ。「須麋シュビ」(=鬚眉シュビ。ひげとまゆげ) (3)湄(ほとり。みぎわ)に通じ、ほとり。みぎわ。川辺の草地。「河の麋(ほとり)に居る」(詩経・小雅) (4)糜(かゆ)に通じ、かゆ。「麋粥ビシュク」(かゆ。糜も粥も、かゆの意)
<紫色は常用漢字>

   シュク・イク <かゆ>  
 シュク・イク・かゆ  米部

解字 篆文は「米(こめ)+鬲レキ(三本足のうつわ)+左右にタテの波線」の会意。鬲は土製または金属製の三本足の煮沸用具。ここに米をいれ、たっぷりの水で煮ている形。左右の波線は立ち上る蒸気と思われる。この字が現代のシュク・イク(かゆ)で、左右の波線は弓二つになっている。現代字は下の鬲がとれた粥になった。
意味 Ⅰ.シュクの発音。かゆ(粥)。米に水を多めにいれて、やわらかく煮た食べ物。「豆粥トウシュク・まめがゆ」(大豆をまぜた粥)「茶粥ちゃがゆ」(茶の煎じ汁、または茶葉の袋をいれて炊いた粥)「粥腹かゆばら」(粥を食べただけの腹。力がはいらない意)
Ⅱ.イクの発音。(古語で売る意の字(𧶠イク・ショク(うりあるく)のイクという発音に通じ)ひさぐ(粥ぐ)。物を売って商売をする。「粥文イクブン」(文章を書いてお金をもらう)

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 「かゆ」
(粥・鬻)
音の変化  シュク・イク:粥・鬻
 シュク・イク・かゆ・ひさぐ  鬲部
解字 「鬲(三本足のうつわ)+粥(かゆ)」の会意。三本足のうつわで粥を炊くこと。粥の本字で「かゆ」を表す。
意味 (1)シュクの発音。かゆ(鬻)。=粥。 (2)イクの発音。ひさぐ(鬻ぐ)。売る。あきなう。「鬻売イクバイ」(物を売る。商売をする)

参考 米は部首「米こめ・こめへん」になる。漢字の偏(左辺)などについて、米や穀物を表す。常用漢字で10字、約14,600字を収録する『新漢語林』では101字が収録されている。主な字は以下のとおり。
常用漢字 10字
 米ベイ(部首)
 粉フン・こな(米+音符「分ブン」)
 粒リュウ・つぶ(米+音符「立リツ」)
 粗ソ・あらい(米+音符「且ソ」)
 粘ネン・ねばる(米+音符「占セン」)
 粧ショウ・よそおう(米+音符「庄ショウ」)
 精セイ・くわしい(米+音符「青セイ」)
 糖トウ(米+音符「唐トウ」)
 粋[粹]スイ・いき(米+音符「卒ソツ」)
 糧リョウ・かて(米+音符「量リョウ」)
常用漢字以外の主な字
 糊コ・のり(米+音符「胡コ」)
 粟ゾク・あわ(米を含む会意)
 粥シュク・かゆ(米を含む会意)など。

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音符「旬ジュン 」<ぐるっとまわる>と「殉ジュン」「筍ジュン」「絢ケン」

2021年08月01日 | 漢字の音符
 ジュン・シュン 日部

解字 甲骨文字は上の手からつながる腕を曲げて丸めた形とされる。意味は十日間で、十干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)を一回りする十日の日数を表している。金文は腕の中に日を入れた形。篆文は外側がまるく包み込む形になり、現代字は「勹(つつみがまえ)+日(ひ)」になった。
意味 (1)十日間。「上旬ジョウジュン」「旬刊ジュンカン」(10日に一度発行する)「旬日ジュンジツ」(10日余り) (2)10回。また、10年。「旬年ジュンネン」(10年) (3)[国]しゅん(旬)。魚・野菜など最も味のよい時期。「今が旬しゅんの魚といえば」

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 日が一回りする意から「ひとめぐり」(旬・恂・洵)
 丸く包む意から「とりまく」(殉・詢・筍・絢)
 「形声字」(荀)
音の変化  ジュン:旬・恂・洵・殉・詢・筍・荀  ケン:絢

ひとめぐり
 ジュン・シュン・まこと  忄部
解字 「忄(こころ)+旬(ひとめぐり)」の会意形声。心をひとめぐりさせて、いろんな状況を想定すること。①行き届いた心。こまやかなさま。②悪い状況を想定する、二つの意味がある。
意味 (1)まこと(恂)。行き届いた心。こまやかなさま。真心のあるさま。「恂恂ジュンジュン」(ねんごろなさま) (2)おそれる。悪い状況を想定すること。「恂然ジュンゼン」(おそれるさま)「恂慄ジュンリツ」(おそれおののく)
 ジュン・シュン・まことに  氵部
解字 「氵(みず)+旬(ひとめぐり)」の会意形声。水がひとめぐりし、ゆきわたること。同音である恂ジュンの意味①から、「まこと-に」の意味でもちいられる。
意味 (1)水がひとめぐりし、ゆきわたる。 (2)洵(まこと)に。まったく。本当に。「洵(まこと)に美にして且(か)つ仁なり」(詩経・鄭風)
 
とりまく   
 ジュン・したがう  歹部
解字 「歹(しぬ)+旬(とりまく)」 の会意形声。歹は死者の残骨を表わし死ぬ意。殉は、主人の遺体を取り巻いて死ぬこと。
意味 (1)したがう(殉う)。君主が死んだ時、それに従って臣下が死ぬこと。「殉死ジュンシ」 (2)身をささげる。「殉職ジュンショク」(職責を果たして死ぬこと)「殉教ジュンキョウ」(宗教のために命をささげる)
 ジュン・シュン・とう・はかる  言部
解字 「言(ことば)+旬(とりまく)」の会意形声。とりまいている人々に、言葉でたずね、相談すること。
意味 (1)とう(詢う)。意見をもとめる。「詢問ジュンモン」(たずね問う)(2)はかる(詢る)。みんなに相談する。「諮詢シジュン」(諮も詢も、相談する意。問いはかる)
 ジュン・シュン・たけのこ  竹部
解字 「竹+旬(周囲をとりまく)」 の会意形声。皮が周囲を取り巻いているタケノコ。
意味 (1)たけのこ(筍)。竹の地下茎からでる若芽。「筍皮ジュンピ」「筍席ジュンセキ」(タケノコの皮を編んだゴザ) (2)たけのこ状のもの。「石筍セキジュン」(鍾乳洞の筍状の突起物)
 ケン・あや  糸部
解字 「糸(色糸)+旬(とりまく⇒めぐらす)」の会意形声。色糸の模様を織物の全面にめぐらすこと。発音はジュン⇒ケンに変化。
意味 あや(絢)。織物の美しい模様。模様があって美しいさま。「豪華絢爛ゴウカケンラン」(華やかできらびやか)「絢文ケンブン」(美しいあや文様)

形声字
 ジュン  艸部
解字 「艸(くさ)+旬(ジュン)」の形声。ジュンという名の草という意味だが、実際にはジュンという国名や姓を表す字として用いられる。
意味 (1)周代の国名。春秋時代に晋シンに滅ぼされた。 (2)姓。「荀子ジュンシ」(姓は荀、名は況。戦国時代の思想家。孔子の学問を受け継ぎ、著作『荀子』で礼儀・道徳の大切さを説いた。 (3)草の名。伝説中の香草。
<紫色は常用漢字>

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