漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「戎ジュウ」 <武装した兵士> と 「絨ジュウ」「賊ゾク」

2023年11月15日 | 漢字の音符
 ジュウ・えびす  戈部ほこづくり   


 上が戎、下が甲
解字 「戈(ほこ)+十(かぶと)」の会意。甲骨文と金文は戈(ほこ)に十字形。十字は亀の腹の甲羅の模様を示し、甲羅⇒甲(かぶと)の意。攻撃の武器である戈ほこと防ぐ武器である甲かぶとをつけた武人を表す。篆文は甲の字の変形をつける。現代字の戎は、甲(かぶと)が甲骨・金文の「十」に元がえりした形。
覚え方  じゅう(・たくさん)の武器()を持つえびす(
意味 (1)つわもの。兵士。軍隊。「戎伍ジュウゴ」(軍の隊列)「戎士ジュウシ」(兵卒)「戎馬ジュウバ」(戦いに使う馬)(2)いくさ。戦争。「戎器ジュウキ」(戦争に使用する刀剣・銃砲など) (3)えびす(戎)。古代中国の西方異民族。「戎夷ジュウイ」(野蛮な国の人。戎は中国西方の、夷は東方の異民族) 「戎狄ジュウテキ」(野蛮な国の人。戎は西方、狄は北方の異民族)
日本の戎(えびす)

十日戎の熊手(「姫路みたい」より)
(4)[国]えびす(戎)。①エミシ(蝦夷)の転じた言葉。夷とも書く。蝦夷えぞ(古代の奥羽から北海道に住み大和朝廷に服属しなかった人々)に同じ。②都から離れた開けぬ土地の人民。③荒々しい武士。京都人が東国武士をさした言葉。「戎姿えびすすがた」(よろいをつけた姿)④日本の民間信仰。七福神のひとつ。「戎えびす神社」(夷神社、胡神社、蛭子神社、恵比須神社などとも表記。外からきた寄神信仰が中心。海上・漁業神。商売繁盛の神)「戎橋えびすばし」(大阪市の道頓堀に架かる橋。今宮戎神社への参道にあったから)「十日戎とおかえびす」(正月十日に行われる戎を祭る神社のお祭り。=十日恵比寿)

イメージ 
 「武装した兵士」
(戎) 
 「形声字」(絨)
 「同体異字」(賊)
音の変化  ジュウ:戎・絨  ゾク:賊

形声字
 ジュウ  糸部
解字 「糸(いと)+戎(ジュウ)」の形声。ジュウは柔ジュウ(やわらかい)に通じ、やわらかい糸の意。やわらかい糸や毛をいう。
意味 (1)刺しゅう用の練り糸。 (2)やわらかく細い毛。羊などの細毛。また、その織物。「羊絨ヨウジュウ」(羊の毛織物) (3)表面にけばのある織物。「絨毯・絨緞ジュウタン」(表面にけばのある厚い敷物。カーペット) (4)「絨毛ジュウモウ」(小腸などの内壁に存在する突起。この突起には表面積を増やすため、更に小さな突起が無数に存在している。)

同体異字
 ゾク  貝部

解字 金文は左から、「逆向きの刀+鼎(かなえ)+戈(ほこ)」の形。「刀+鼎(かなえ)」は則ソク(のり・規範)を表す。篆文は鼎⇒貝になった、「則(貝+刀)+戈(ほこ)」の会意形声。世の中の規範(則)を戈(ほこ)で打ち破ること。世の中の秩序を武力でそこなう悪者の意。そこなう・秩序に刃向かう悪者・どろぼう、の意となる。現代字は、篆文の刀⇒十に変化した賊になった。篆文から形が大きく変わったので戎と結びつけて覚えると便利。ただし、発音は則ソクが濁音になったゾクである。
覚え方 「(財貨)+(武装した兵士)」で、武装した兵士が財貨を奪って盗になる。
意味 (1)そこなう。傷つける。「賊害ゾクガイ」(そこなう)(2)ぞく(賊)。国家や君主にそむく。「国賊コクゾク」「賊臣ゾクシン」(3)ぬすむ。どろぼう。「山賊サンゾク」「盗賊トウゾク」 
<紫色は常用漢字>

  バックナンバーの検索方法
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