漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「拝ハイ」<両手をついておがむ> と 「湃ハイ」

2015年01月31日 | 漢字の音符
[拜] ハイ・おがむ  扌部

解字 篆文は、「手(て)+一(床面)+手(て)」の会意。両手を一(床面)につき神をおがむこと。また頭を深くさげて、おじぎをすること。一は右の手の下についた拜となり、新字体は手⇒扌に変化した拝になった。※金文も存在するが、字形のつながりが薄いので省略した。
意味 (1)おがむ(拝む)。おじぎをする。「伏し拝む」(両手を地面について拝む)「礼拝レイハイ」(礼をして拝する。神仏などを拝むこと)「拝殿ハイデン」(神社で本殿の前に設けられた礼拝をするための社殿) (2)つつしんで~する。「拝謁ハイエツ」(お目にかかる)「拝観ハイカン」 (3)自分の行為に冠して相手に敬意を示す語。「拝啓ハイケイ」「拝見ハイケン」「拝読ハイドク

イメージ 
 「深くおじぎをする」
(拝・湃)
音の変化   ハイ:拝・湃

深くおじぎをする
 ハイ  氵部
解字 「氵(みず)+拜(深くおじぎをする)」の会意形声。何回も両手をついて、おじぎをするように波が上から下に落ちてさかまくこと。
意味 水の勢いの盛んなさまをいう。「澎湃ホウハイ」(水のみなぎり、さかんなさまから、転じて物事が盛んな勢いで起こるさま)
<紫色は常用漢字>

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音符「手シュ」<て> と 「看カン」

2015年01月31日 | 漢字の音符
 シュ・て・た  手部

解字 五本の指のある手を描いた象形。手は、甲骨文字では三本指を描いた「又」(音符「又ユウ」 を参照)が用いられた。五本指の手が出現するのは金文からである。手は部首となり、拳ケン・挙キョ・撃ゲキ・摯・掌ショウ・拿・摩などの字で、下について手の働きを表している。また、手が左辺に付いたとき「扌」に変化し、部首「扌てへん」となる。手は部首としての用途がほとんどで音符にならない。手の意味で会意文字を作る。そのため発音はバラバラである。
意味 (1)て(手)。「手相てソウ」「手綱たづな」 (2)てなみ。うでまえ。「手段シュダン」「妙手ミョウシュ」 (3)てずから。「手記シュキ」 (4)てにする。「入手ニュウシュ」 (5)ある仕事をする人。「歌手カシュ」 (6)技芸にすぐれた人。「名手メイシュ
参考 部首の手は下につくときは手のままだが、左辺(偏)につくとき扌のかたちに変化する。意味は手および手の動作を表す。常用漢字で手部は9字、扌部てへんは87字(第3位)、約14,600字を収録する『新漢語林』では手部34字、扌部470字が収録されている。
 手部・扌部とも音符と大変なじみがよく、手部・扌部と組み合わさる字はほとんど音符である。また、拝ハイと折セツは、この字がさらに音符となる。例外は形が似ているため便宜的に扌部に含めている才サイだが、この字も音符となる。

イメージ  「手」(手・看・承)
音の変化   シュ:手  カン:看  ショウ:承 
 
て(手) 
 カン・みる  目部
解字 「目(め)+手(て)」の会意。手を目のうえにかざしてよく見ること。
意味 (1)みる(看る)。じっと見つめる。観察する。「看破カンパ」(見破る)「看過カンカ」(見過す) (2)見守る。見張る。「看護カンゴ」「看病カンビョウ」「看守カンシュ
 ショウ・うけたまわる  手部
 
解字 甲骨・金文は両手で、ひざまずいた人を持ち上げている形の会意。篆文ではさらに中央にもう一つ手が描かれ、三つの手で持ち上げている。いずれも尊者を奉(たてまつ)る形であるが、字の意味は尊者を持ち上げている側にある。持ち上げている側にとって、尊者の言うことを、受ける・受け入れる意となり、また受けたものを「ひきついでゆく」意となる。現代字の承は、三つの手が「水の両側+手」に、ひざまずいた人は「了(手と一部重複する)」に変化した。
意味 (1)うける。受け入れる。「了承リョウショウ」「承認ショウニン」 (2)つぐ。ひきつぐ。「継承ケイショウ」「口承コウショウ」 (3)[国]うけたまわる(承る)。聞くの敬語。
<紫色は常用漢字>

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音符「舎シャ」 <簡易な宿舎> と 「捨シャ」

2015年01月30日 | 漢字の音符
[舍] シャ・やど・やどる  人部

解字 金文は、「口(かこい)+余の古い形(簡易な宿舎)」の会意。余は一本柱の上に屋根をもち、斜めの梁で支えた簡易な小屋で宿泊や休憩に使う。音符「余ヨ」 を参照。これに場所を表す口(かこい)がついた舎は、簡易な宿舎、やどの意、転じて、すまい・たてものの意となった。また、軍隊が一夜の宿とした軍の宿舎の意にも使われた。軍隊が一夜で宿をすてる(出発する)ことから、すてる意がある。新字体は、舍⇒舎に変化した。
意味 (1)やどる(舎る)。身をよせる。やど。「宿舎シュクシャ」(2)すまい。いえ。たてもの。「茅舎ボウシャ」(かやぶきの家)「校舎コウシャ」「田舎いなか」(田園の家が原義。郷里)(3)身内の者の謙称。「舎弟シャテイ」(自分の弟をいう語。他人の弟にもいう)「舎兄シャケイ」(実の兄)(4)軍隊の一夜の宿営所。軍隊の一日の行程。「舎次シャジ」(軍隊が宿る)「三舎サンシャ」(軍隊の三日の行程)(5)梵語の音訳。「舎利シャリ」(釈迦の遺骨)(5)おく(舎く)。すえおく。(7)放棄する。すてる。(=捨)

イメージ 
 「簡易な宿舎」
(舎・捨)
音の変化   シャ:舎・捨

簡易な宿舎
シャ・すてる  扌部 
解字 「扌(て)+舍(簡易な宿舎)」の会意形声。舎は簡易な宿舎で、軍隊が一夜の宿をおいてのち、その宿をすてる意にも使われ、その意味を強調するため、扌(手)をつけた捨ができた。
意味 (1)すてる(捨てる)。手ばなす。「捨石すていし」「取捨選択シュシャセンタク」(2)[仏]金品を寺や僧に寄付する。ほどこす。「喜捨キシャ」(進んで寺社などに寄付すること)
<紫色は常用漢字>

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音符「那ナ」<美しくしなやか> と「娜ダ」「梛ダ」

2015年01月26日 | 漢字の音符
 ナ・ダ 阝部  

解字 「冄ゼン+阝(=邑:まち)」の会意。冄ゼンは、毛状のやわらかなものや、花の咲いたしなやかな枝などが、たくさん垂れたさまをいう。音符「冄ゼン」を参照。これに阝(まち)がついた那は、中国・陝西の地名を表わすが、また、冄ゼンの意味である、美しくしなやかのイメージがある。仮借カシャ(当て字)され、疑問の助字や指示詞などに使われる。
意味 (1)なんぞ・いかんぞ  (2)あれ・どこ・どれ「那辺ナヘン」(いずこ・どこ) (3)梵語の音訳に用いる。「旦那ダンナ」(仏家が財物を布施する信者を呼ぶ語。転じて、主人、得意客など)「刹那セツナ」(極めて短い時間) (4)地名「伊那 いな」(長野県の地名)「那智なち」(和歌山県の地名。那智の滝・那智大社がある)「那智黒なちぐろ」(那智地方に産した黒色の石。碁石・硯石などに用いる)

イメージ 
 「地名・仮借ほか」
(那)
 「美しくしなやか」(娜)
 「ダの音」(梛)
音の変化  ナ:那  ダ:娜・梛

美しくしなやか
 ダ・ナ  女部
解字 「女(おんな)+那(美しくしなやか)」 の会意形声。女のうつくしいさま。
意味  しなやか。たおやか。なよなよとして美しいさま。「婀娜アダ」(女の美しくたおやかなさま。なまめかしいさま)「婀娜アダな姿」

ダの音
 ダ・ナ・なぎ  木部
解字 「木(き)+那(ダ)」 の形声。ダという名の樹木。中国の古書に見える樹の名称。日本ではナギの木に当てる。
意味 なぎ(梛)。マキ科ナギ属の常緑高木。暖地に自生し、熊野速玉神社では神木とされる。海南島や台湾等に自生するが、太古、黒潮ラインに乗り日本の南紀・四国・九州の温暖な地方に定着した。葉は、しなやかで光沢があり、古く鏡の裏や守り袋に入れて災難よけにした。

熊野速玉大社の御神木「梛(なぎ)」
<紫色は常用漢字>

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音符「克コク」<かぶとを着けた人> と 「剋コク」

2015年01月22日 | 漢字の音符
 コク・かつ・よく  儿部ひとあし

解字 甲骨文第一字と金文は、カブトを頭に着けた人が腰掛ける形にかたどる。また、甲骨文第二字に、カブトをかぶり、戈(ほこ)を手にもつ立ち姿の異体字[漢字古今字資料庫の克]もある。意味は、かぶとをつけて戦いにかつ意を表わす。甲骨文の意味は、「勝利」「できる」意。金文も同じで「克敵コクテキ」という言葉があり敵に勝つ意。また「できる」意。篆文で変形し、現代字は克になった。現在の意味は、自分にうちかつ意が強い。              
意味 (1)かつ(克つ)。うちかつ。「克服コクフク」(努力して困難にうちかつ)「克己コッキ」(自分にかつ) (2)よく(克く)。できる。じゅうぶんに。「克明コクメイ」(①克く明らかにすることができる。細かい所まで念をいれる。②まじめで正直なこと。)

イメージ 
 「かつ」
(克・剋)
音の変化  コク:克・剋

かつ
 コク・かつ  刂部
解字 「刂(刀)+克(かつ)」の会意形声。刀を用いて相手にかつこと。克コクが、克己コッキ(おのれにかつ)の意味が強くなったので、刂(刀)をつけて相手にかつ意とした字。しかし、常用漢字でないので、克が剋の書き換え字として使われることが多い。
意味  (1)かつ(剋つ)。相手に打ちかつ。「下剋上ゲコクジョウ」(下の者が上の者の地位や権力をおかすこと=下克上)「相剋ソウコク」(勝とうとして両者が相争うこと=相克)「剋復コクフク」(戦いに勝って失地をとりもどし平和を回復する) (2)きざむ。「剋心コクシン」(心にきざむ) 「剋期コクキ」(期日を約束する) (3)きびしい。むごい。「厳剋ゲンコク」(非常にきびしい。厳も剋も、きびしい意)
<紫色は常用漢字>

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音符「暴ボウ」<はげしい・たちまち> と「爆バク」「曝バク」

2015年01月19日 | 漢字の音符
 ボウ・バク・あばく・あばれる  日部

解字 金文は「日(太陽)+動物の死体」の会意。動物の遺体が日にさらされている形。日にさらされるが原義。日の下の動物の遺体部分は、篆文以降いろんな漢字の組み合わせで表現されたが、現代字は「共+水」の形。遺体がさらされている環境は、日照りの続く乾燥地帯で時折、はげしい風が突然吹きおこることから、「はげしい」「にわかに」の意が生じた。本来の意味は、日をつけた曝バク(さらす)が作られた。
覚え方  にち()きょう()みず()で、
意味 (1)あらあらしい。はげしい。あばれる(暴れる)。「暴力ボウリョク」「暴風ボウフウ」「暴虐ボウギャク」 (2)にわかに。たちまち。急に。「暴発ボウハツ」「暴落ボウラク」 (3)あらわす。あばく(暴く)。「暴露バクロ」(①風雨にさらされる。②さらけだす)

イメージ 
 「はげしい・たちまち」
(暴・瀑・爆)
 本来の意味の 「さらす」(曝)
音の変化  ボウ:暴  バク:瀑・爆・曝

はげしい・たちまち
 バク・たき  氵部
解字 「氵(水)+暴(はげしい)」の会意形声。はげしく落ちる水で、たきを表す。
意味 たき(瀑)。高い所からはげしく流れ落ちる水流。大きな滝。「瀑布バクフ」(大きな滝)「飛瀑ヒバク」(高い所から飛ぶように落ちる滝)
 バク・はぜる  火部
解字 「火(ひ)+暴(たちまち)」の会意形声。火の勢いがたちまち大きくなること。
意味 はぜる(爆ぜる)。はじける。「爆発バクハツ」「爆破バクハ」「被爆ヒバク」(爆撃を受ける。原水爆の被害をうける)
 
さらす
 バク・さらす  日部
解字 「日(ひ)+暴(さらす)」の会意形声。暴はもともと、さらす意であったが、はげしい・たちまちの意が主流となったので、日を付けて本来の意味を表した。
意味 さらす(曝す)。日にさらす。「曝書バクショ」(書物の虫干し)「曝衣バクイ」(着物の虫干し)「被曝ヒバク」(放射線にさらされる) ※「被爆ヒバク」との違いに注意。
<紫色は常用漢字>
           
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音符 「厚コウ」 <岩をくりぬいた祖先の墓>

2015年01月18日 | 漢字の音符
 コウ・あつい  厂部

解字 甲骨文字・金文・篆文とも 「厂(石の略体。岩)+享キョウの倒立字(先祖を祀る建物)」 の会意形声。享キョウは、先祖を祀る建物の形で祖先神に飲食物をたてまつり、祖先神をもてなす意を表わす。それに厂(石の略体。岩)がついた厚は、岩を刳りぬいて作った祖先を祀る堂、即ち墓を表す。地下にあるので享を倒立させて描 いている。いわゆる崖墓ガイボの一種をいう。漢代の黄河中下流域では、岩や崖を刳り抜き、地下に壮大な祖先を祀る堂を造り、祖先を厚く供養する諸侯や貴族の墓が作られた。これが厚葬である。心をこめて先祖を祀ることから、心のこもった・ねんごろの意となる。のち、厚みがある意でも使われる。現代字は、厂の中が「日+子」に変化した。
 なお、甲骨文字にも厚の字があるが、地名またはその長の意。金文は、多い・大きい意で用いており「厚福豊年」(福が多く年(みのり)豊か)の文が残っている。先祖を含む一族に福が多いことを願ったのであろう。心がこもる・ねんごろ、および厚みがある意は篆文からのようである。
意味 (1)心がこもる。ねんごろ。たいせつにする。「厚意コウイ」「厚情コウジョウ」「温厚オンコウ」(おだやかで情に厚い) (2)あつい(厚い)。ぶあつい。「厚紙あつがみ」「重厚ジュウコウ」(重々しくしっかりしている)「肉厚にくあつ」 (3)あつかましい。「厚顔コウガン
<紫色は常用漢字>

<参考:厚のなかの倒立字のもとの形>
 キョウ・うける  亠部

解字 甲骨文・金文は、基礎となる台の上に建っている先祖を祀った建物の象形で「高」の字と似た高い建物を表す。祖先神に飲食物をたてまつって、祖先神をもてなす意を表わす。また、その結果、神の恩恵を受ける意ともなる。篆文は亯となったが、形のことなる第二字が出現し、現代字はその字の系統を受けつぎ、さらに下部が子になった。( 音符「享キョウ」を参照 )
意味 (1)たてまつる。すすめる。ささげる。「享祭キョウサイ」(物を供えて神を祭る) (2)(祖先神を)もてなす。ふるまう。「享宴キョウエン」(もてなしの酒盛り) (3)(神の意志を)うける(享ける)。受け納める。「享年キョウネン」(神からさずかった年数)「享楽キョウラク」(楽しみを受ける。十分に楽しむ)

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音符 「鬯チョウ」 <におい酒> と 「鬱ウツ」

2015年01月10日 | 漢字の音符
 チョウ  鬯部ちょう

解字 甲骨文・金文とも、香りをつける香草を酒壷に浸している形の象形。篆文で、「※(酒に入れた香草)+凵(うつわ)+ヒ(器台)」の形になった。におい酒を表す。
意味 (1)においざけ(香酒)。黒きびを原料としウコン草をまぜてかもした酒。祭りで神をよぶのに用いる。「鬯人チョウジン」(鬯酒を神に供える人)「秬鬯キョチョウ」(黒黍きび(秬)を原料にした、におい酒) (2)香草の名。ウコン草。(現在のウコンでなく別の香草と思われる)

イメージ  「におい酒」 (鬯・
音の変化  チョウ:鬯  ウツ: 
 
におい酒
 ウツ・ふさぐ  鬯部ちょう

解字 篆文は、「林(はやし)+缶(うつわ)+冖(ふた)+鬯(におい酒)+彡(香りが立ち込めるさま)」の会意。この字は二種の意味がある。一つは林を取り去った意味で、香りが立ち込める匂 い酒に、ふたをした缶の意で、ふさぐ・ふさがる意。もう一つは、林を加えた意味で、におい酒が盛んに香るように木々が盛んに茂る意で、しげる意とさかんなさまを表す。複雑な字なので語呂合わせで覚えると書きやすい。
意味 (1)ふさぐ(ぐ)。ふさがる。こもる。気がはればれしない。「憂ユウウツ」(気がふさぐこと)「ウッケツ」(静脈の血が体の一か所に異常にたまる状態)「ウップン」(心にこもる憤り) (2)しげる。こんもり茂る。「ウッソウ」(青々と盛んに茂る) (3)さかんなさま。「ウツボツ」(満ちた意気が外にあふれるさま) (4)「ウコン」とは、ショウガ科の多年草。根茎を止血薬・香料・カレー粉などの原料とする。根茎を利用する草であり、におい酒にいれた香草とは別の種類と思われる。
覚え方 きかん気は(木缶木ワ)罰点(X‥‥)受けて()悲惨(ヒ彡)なり 憂 長崎あづま『漢字川柳』論創社より 
<紫色は常用漢字>                               

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音符 「曰エツ」 <いう・いわく>

2015年01月07日 | 漢字の音符
 エツは、口から言葉を発する意。会意以外に音符になることなく、部首の曰部(いわく・ひらび)となるが、部首や漢字の一部となるとき、ほとんど日の形となる(なお、皆・習の下部の白も、曰の変化形とする説もあり、私も便宜的にその説を採用しているが確証はない)。
 曰は音符がないので、本稿では曰が部首となっている字、および曰が含まれて会意になっている音符を紹介させていただく。
 


 エツ・オチ・いう・いわく・のたまわく  曰部  

解字 甲骨文・金文は、口(くち)の上に指示記号の短い横線を加えて、口が動いて言葉を発することを表す文字。意味は口を開いて動かし言葉を発すること。篆文は、口の上の横線が上に曲がった形となり、現代字は、口の中に短い横線が入ったかたち。日と紛らわしいが、曰は真ん中の線が右につかない。曰は部首の曰部となる。音符にはならない。
 なお、曹ソウの字では、甲骨文が口、金文が口の中に短い横線、篆文で口の上の横線が曲がる形の変化も見られる。
意味 (1)いう(曰う)。ものをいう。 (2)いわく(曰く)。いうことには。「曰く言い難し」(言葉で言い表すのは難しい) (3)のたまわく(曰わく)。おっしゃるには。 (4)[国]いわれ。わけ。

     曰を含む音符(会意) 
 ソウ・ゾウ・ともがら   曰部

解字 甲骨文字は、「東(荷物を入れた袋)+東(荷物を入れた袋)+口(くち)」の形。東東は荷物二つで荷物を運ぶ二人を表す。そこに口がついて、荷物を運ぶ人が互いに話をしている形で、ともがら・なかまの意。金文は口⇒甘になり、篆文は曰(いう)になったが意味は話す意で変わらず、同じ職業のなかまの意。後に裁判用語として使われたため、司法関係の役所やひろく役人の意味となった。楷書から簡略化され、曹となった。東が荷物を入れた袋であることについては、音符「東トウ」 を参照。
意味 (1)なかま。ともがら(曹)。 (2)つかさ。裁判官。役人。「法曹ホウソウ」(法律家) (3)軍隊などの階級の一つ。「軍曹グンソウ」 (4)「曹司ゾウシ」とは、官吏や女官の部屋の意。「御曹司オンゾウシ」(堂上家の部屋住みの子息。名門の子弟)
曹を音符とする字 (音符「曹ソウ」 を参照)  ソウ:曹・遭・漕・艚・槽・糟

 サン・セン  曰部 

解字 篆文は「曰(いう)+兟シン(髪挿し)」の会意形声。曰(いう)に先がするどい髪挿しを加えて、言う行為をゆがめること。つまり、そしる・中傷する意となる。しかし、本来の意味でなく、仮借カシャ(当て字)されて、かつて・すなわちの意となる。現代字は曰⇒日に変化。
意味 かつて。すなわち。
朁を音符とする字 (音符「朁サン」 を参照)
    サン:朁・蚕  シン:譖・簪  セン:潜・僭

 カツ・なんぞ・いずくんぞ  曰部

解字 「曰エツ(いう)+匃カツ(もとめる)」の会意。匃カツは死者をだいて、そのよみがえりをねがう形。曰エツは、いう意。両者を合わせた曷は、よみがえりの願いを大きな声で言う形で、「請い願う」意味となる。しかし、本来の意味でなく、「なんぞ」「いずくんぞ」の助字に仮借カシャ(当て字)された。新字体の音符になるとき、下部が、匃⇒匂に変化する。
意味 (1)なんぞ(曷ぞ)。いずくんぞ。 (2)いつか。
曷を音符とする字 (音符「曷カツ」を参照)
     カツ:曷・渇・葛・褐・喝  ケイ:掲  エツ:謁  アイ:靄・藹

 タイ・かえる・かわる  曰部

解字 金文は、二人の立った人の形で、二人が話をしているさまと思われる。篆文は「立立+曰(言う)」の会意。立った二人の人が会話をしている形。二人が引き継ぎをして役割を交替するさまから「かわる」意味をもつ。交替が済んだ方は役割からはずれるので、おとろえる意となる。現代字は、篆文の立立⇒夫夫(おとこ)に、曰⇒日に変化した替になった。立った人から夫(おとこ)に変わっただけで意味は同じである。
意味 (1)かわる(替わる)。かえる(替える)。「交替コウタイ」「両替リョウがえ」「為替かわせ」(とりかわす。ひきかえ。交換) (2)[国]かえ。身代わり。「替え玉かえだま」 (3)すたれる。おとろえる。「隆替リュウタイ」(盛んになることと衰えること)
替を音符とする字  なし

 トウ・くつ  水部

解字 「水(みず)+曰(いう)」の会意。水は流れる水の意。曰エツは言うの意。水の流れるようにすらすら言うこと[大修館漢語新辞典]。現代字は、曰エツ⇒日に変化した。日本では鞜トウ(かわぐつ)に当て、沓を、くつの意で使う。
意味 (1)すらすらと言う。流暢にしゃべる。「沓沓トウトウ」(得意になってしゃべるさま) (2)あふれる。水があふれる。 (3)あう(合う)。まじりあう。かさなる。多い。「雑沓ザットウ=雑踏」(ひとごみ) (4)[国]くつ(沓)。「沓石くついし」(柱をささえる土台石)
沓を音符とする字 (音符「沓トウ」 を参照)  トウ:沓・誻・踏・鞜


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音符「矞イツ」<矛を台座に立てる>と「鷸イツ」「橘キツ」「譎ケツ」

2015年01月06日 | 漢字の音符
 イツ・キツ・ケツ  矛部

解字 「矛(ほこ)+冏ケイ(穴のある台座)」の会意。台座の穴に矛を立てて武威を示した形[字統]。武威を示すことをいう。
意味 (1)ただす。 (2)おそれおののく。

イメージ 
 「矛を立てて武威を示す」
(譎・鷸・橘)
音の変化  イツ:鷸  キツ:橘  ケツ:譎

矛を立てて武威を示す
 ケツ・キツ・いつわる  言部
解字 「言(いう)+矞(武威を示す)」の会意形声。相手に武威を見せつけて作りごとを言うこと。
意味 (1)いつわる(譎る)。あざむく。「譎詐ケッサ」(いつわりあざむく=譎詭ケッキ)「奸譎カンケツ」(わるがしこく、いつわりが多いこと) (2)あやしい。「譎怪ケッカイ」(譎も怪もあやしい意)
 イツ・しぎ  鳥部

シギ科の水鳥(大杓鷸)
解字 「鳥(とり)+矞(矛を立てる)」の会意形声。矛のような長いくちばしを持つ鳥。
意味 しぎ(鷸)。鴫とも書く。シギ科の鳥の総称。くちばしや脚が長く、水辺にすみ、水棲の小動物を餌にする。「鷸蚌イツボウの争い」(シギと蚌どぶがいが争い漁夫が利を占める話)
 キツ・たちばな  木部  

橘たちばな(「季節の花300」より)
解字 「木(き)+矞(矛を立てる=トゲがある)」の形声。広い意味での橘は、枝にトゲをもち葉に芳香があるのが特徴の低木をさす。柑橘属(ミカン(橘子)・レモン・ユズ)・金橘属(キンカン)・枸橘からたち属(=枳殻。カラタチ)の3属があるが、多かれ少なかれトゲがあり、特にカラタチやユズのトゲはよく知られる。実は黄色で酸っぱい味がする。食用になるものが多い。日本では、固有種の柑橘属であるタチバナにこの字を当てた。その実は食用にならないが、きれいな白い花をつけ、その花から清らかな香りが立つので、タチバナ(香りの立つ花)と言われる。
意味 (1)[国]たちばな(橘)。日本固有のミカン科の常緑小高木。樹高2~4m。若い幹にはトゲがある。果実は酸っぱくて食べられない。香りのある白い花をつける。「橘紋たちばなもん」(橘の実と葉を図案化した家紋) (2)[国]姓。「橘氏たちばなシ」「源平藤橘ゲンペイトウキツ」(日本における貴種名族の源氏・平氏・藤原氏・橘氏をまとめた言い方) (3)ミカン類の総称。「柑橘類カンキツルイ」(①ミカン類の常緑樹、特に果樹・果実の総称。②分類上は、ミカン属・キンカン属・カラタチ属からなる)「金橘キンカン・キンキツ」「枸橘クキツ」(カラタチ・枳殻キコクとも書く)

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