漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「旨シ」<うまい>と「指シ」「脂シ」「詣ケイ」「稽ケイ」

2018年12月30日 | 漢字の音符
 シ・むね・うまい  日部          

解字 甲骨文は「ヒ(さじ)+口(くち)」の形で、口にヒ(さじ)でうまい物を入れる意。金文以降、口の中に食べた物を含むかたちになり、いずれも「うまい」意。現代字で「ヒ+日」の形になった。のち、うまいところの意から大事なところ・主な点の意となった。
覚え方 ひび(ヒ日い。
意味 (1)うまい(旨い)。「旨酒シシュ・うまざけ」 (2)むね(旨)。おもな点や意図。「主旨シュシ」(主な考え)「趣旨シュシ」(目的やねらい) (3)天子の考え。「聖旨セイシ

イメージ  
 「うまい」
(旨・指・脂・鮨)
 「旨むね・おもな点や意図」(詣)
 「その他」(稽)
音の変化  シ:旨・指・脂・鮨  ケイ:詣・稽

うまい
 シ・ゆび・さす  扌部
解字 「扌(手)+旨(うまい)」の会意形声。うまいものを手のユビでさすことから、ユビ及び指す意となった。
意味 (1)ゆび(指)。「親指おやゆび」 (2)さす(指す)。ゆびさす。「指名シメイ」「指南シナン」(南を指す。方角を指示して導く)「指針シシン」(指さす針。進むべき方針)「指図さしズ」(図を指して人を動かす)
 シ・あぶら・やに  月部にく
解字 「月(にく)+旨(うまい)」の会意形声。肉の中の白いあぶら肉(脂身)のこと。あぶら肉は筋肉のなかや周囲につく白い脂肪分(体の貯蔵物質)で動物のエネルギー源となる。肉を食べるとき、あぶら肉が適度に混じっている(霜降肉)と美味しく感じることからこの字ができた。
意味 (1)あぶら(脂)。あぶら肉。動物性のあぶら。「脂肪シボウ」「油脂ユシ」(油と脂肪。常温で液体のものを油、固体のものを脂という)(2)やに(脂)。樹皮から分泌される粘液。「樹脂ジュシ」「目脂めやに」(めくそ)
 シ・すし  魚部 
解字 「魚+旨(うまい)」の会意形声。加工してうまくした魚。
意味 (1)うおびしお。魚のしおから。 (2)[国]すし(鮨)。寿司。酢を加えたご飯と魚肉を合わせた料理。「鮨桶すしおけ」(鮨を盛りつける底の浅い桶)「鮒鮨ふなずし」(鮒を塩漬けしたものを飯と交互に重ねて漬けこみ自然発酵させた鮨。現在の鮨の源流)

むね・主な点や意図
 ケイ・いたる・もうでる  言部  
解字 「言(いう)+旨(むね・主な点や意図)」の会意。旨むね(主な点や意図)を言う意だが、そのために朝廷や上級官庁に行くこと。いたる意となるが、単にある場所に至るのでなく、高い所にいたる意となる。日本では高い所=神仏の意から寺社に参拝する意味でも使われる。
意味 (1)いたる(詣る)。高い所に行く。「詣闕ケイケツ」(天子の宮殿にいく。朝廷におもむく。闕ケツは宮殿の門) (2)学問などが高い境地にいっている。「造詣ゾウケイが深い」 (3)[国]もうでる(詣でる)。まいる(詣る)。「参詣サンケイ」(神社や寺にお参りする)

その他
 ケイ・かんがえる  禾部
解字 「禾+尤+旨」の形声。意味も多様で字源に諸説あり、いずれと決め難い。ゴロ合わせで覚えるのが手っとり早い。
覚え方 のぎ(ノ木)大将、いぬ()をおともに、ひび(ヒ日
意味 (1)かんがえる(稽える)。くらべて考える。「稽古ケイコ」(昔の古いことを調べ考えること。転じて、学問や学習をする、芸事や武道などを練習する意となる)「無稽ムケイ」(根拠のないこと)「荒唐コウトウ無稽」(とりとめなく根拠がない) (2)とどまる。「稽留ケイリュウ」 (3)ぬかずく。「稽首ケイシュ」 ※「滑稽コッケイ」とは、面白可笑しく巧みに言いなすこと。
<紫色は常用漢字>

<参考音符>
 キ・シ・たしなむ 「老の略体+旨シ」の会意形声。音符「耆キ」を参照

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音符「家カ」<一族のすまい> と「嫁カ」「稼カ」

2018年12月27日 | 漢字の音符
 宀(たてもの)に豕(ぶた)にを加えて何故「家いえ」になるのか? この解字をめぐって多くの学者が論争を繰り広げてきた。ある中国の学者は「雲南省では、家の1階で豚(豕)を飼い2階で人が住む家があり、これが家の字のはじまりだ」という。一方、白川静氏は[字統]で、「古くは犬牲(犬を犠牲にする)に従う字で家の地鎮のために犬を犠牲とした」と、豕(ぶた)でなく犬だと主張した。
 この字を最も早く解字したのは[説文解字]を著した後漢の許慎キョシンで、「宀(たてもの)+豭カ・ケ(オス豚)の省声」の形声文字とした。つまり、家の中の豕は豭の省略形で、カ・ケの発音を表している字ですよ、というのである。しかし、清代に[説文解字]に注釈を加えた段玉裁は、これに疑いありとして「宀+豕」の会意とした。しかし、その後もこの解字をめぐり議論が続いた。その後、甲骨文字が発見・解読され、新しい解釈が生まれてきた。それは、甲骨文字には、「宀+豭カ・ケ」と「宀+豕」の両字があり、のちに「宀+豭」の意味が「宀+豕」に置き換えられたというのである。落合淳思氏は[甲骨文字辞典]で、この経過を簡潔にまとめている。


 カ・ケ・いえ・や  宀部  

解字 甲骨文字第1字は、建物の形である宀ベンを意符、オス豚を意味する豭の初文(オスの生殖器が下腹に付く)を声符とする形声文字で宗廟施設を指す。第2字は建物(この場合は家畜小屋)の形である宀ベンと豚を意味する意符の豕からなる会意文字で家畜の豚、あるいは家畜として飼うために捕らえた豚を指す。後代には第1字が継承されたが、古文(春秋戦国期)で豭を豕に簡略化した字体が用いられるようになり、結果として字体は第2字と同じになった。意味は第1字が祭祀施設。宗と同じく宗廟であろう。第2字は家畜の豚、また祭祀名(家畜の豚を捧げることであろう)。なお、「家族」「家屋」は宗廟施設からの引伸義であるが、甲骨文字にその用法は見られない(甲骨文字辞典)。
 金文も同じくオス豚(第1字)と豕の豚(第2字)の2種あるが、意味は王家と朝廷を表すのと、奴隷の家戸を表す意味があるので(漢語多功能字庫)、字により意味が分かれていたのであろう。篆文から「宀+豕」の字体が用いられ、家屋・家族・家系・家名など氏族の単位を中心にいうようになり現在に至っている。

なぜオス豚が用いられたのか?
 甲骨・金文第1字に何故オス豚が用いられたのだろうか?これについて許慎キョシンから落合淳思氏まで、その理由を何も語っていない。私はその理由を次のように推測したい。およそ、宗廟施設で豚を捧げる場合、何か目的がある。私は最初、神または祖先を喜ばせるために美味しい豚肉となるのはオス豚か?と考え、オス豚の肉について調べたところ、肉にするオス豚は繁殖用にする一部を除き例外なく子豚のとき去勢されることが分かった。また、去勢された豚はメス豚と比べ特に美味しいことはないという。すると、オス豚を捧げるのは繁殖用のオスであり、これを捧げることにより子孫が繁栄するよう祈ったのではないだろうか。
 家を音符に含む字は、宗廟の意から「一族・一族のすまい」のイメージを持つ。
意味 (1)すまい。いえ(家)。人の住む建物。「家屋カオク」「家財カザイ」「家主やぬし」「家庭カテイ」「家族カゾク」 (2)血縁の集まり。一族。「家系カケイ」「良家リョウケ」 (3)学問や技術の流派。専門にする人。また、商店。みせ。「家元いえもと」「専門家センモンカ」「酒家さかや

イメージ 「一族のすまい・一族」(家・嫁・稼)
音の変化  カ:家・嫁・稼

一族の住い・一族
 カ・よめ・とつぐ  女部
解字 「女+家(一族)」の会意形声。他の一族にとつぐ女性。
意味 (1)とつぐ(嫁ぐ)。よめ(嫁)。嫁にいく。「嫁入よめいり」「嫁資カシ」(嫁入り支度の費用)「許嫁いいなずけ」(婚約者) (2)罪や責任をなすりつける。「転嫁テンカ
 カ・かせぐ  禾部
解字 「禾(いね)+家(一族)」の会意形声。一族で稲を育て収穫すること。
意味 (1)うえる。稲を植える。耕作。農事。「稼穡カショク」(農事)「稼業カギョウ」(①農業。②生活をささえる仕事) (2)みのり。収穫。「秋稼シュウカ」(秋の取り入れ) (3)[国]かせぐ(稼ぐ)。かせぎ(稼ぎ)。精出して働きお金を得る。「稼働カドウ」(①働き稼ぐ。②機械などを動かすこと)
<紫色は常用漢字>


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音符「兎ト」<うさぎ>と「逸イツ」「冤エン」

2018年12月16日 | 漢字の音符
[兔] ト・うさぎ  儿部 

解字 甲骨文はうさぎの形の象形。金文からかなり変形した。篆文第1字は春秋期の字で金文とのつながりがある、篆文第2字は[説文解字]だが、子を分娩する形の免や奐の影響を受けた字形。旧字は兔となったが、上が刀のうさぎもある(ネットででない)。新字体は兎となった。旧字と新字体のうさぎの点は尻尾を表している。
意味 (1)うさぎ(兎)。「脱兎ダットの如く」 (2)月の異称。月に兎がすむという伝説から。「玉兎ギョクト」 
うさぎの字三種 現代字は、ノが上に着くので「野(ノ)兎」と覚える。兎を含む字は、旧字のクうさぎ(兔)刀(かたな)うさぎ(冤エンに含まれる)がある。

イメージ 
 「うさぎ」
(兎・逸・冤)
 「形声字」(菟)
音の変化  ト:兎・菟  イツ:逸  エン:冤

うさぎ
 イツ  辶部

解字 旧字は「辶(ゆく)+兔(クうさぎ)」の会意。はしる・のがれる・かくれる・足がはやい等、兎の動くさまをいう。新字体では、兔の丶(点)がない。
意味 (1)はしる(逸る)。のがれる。にがす。「逸機イッキ」(機会をのがす)「後逸コウイツ」(後ろにそらす) (2)かくれる。うしなう。「逸史イッシ」(書きもらされた歴史上の事実) (3)それる(逸れる)。そらす(逸らす)。はずれる。「逸脱イツダツ」「見逸(みそ)れる」(うっかり見落とす)「御見逸(おみそ)れしました」(①気付かなかった。②相手を見直した) (4)足がはやい。抜きんでる。「逸材イツザイ」 (5)気楽に楽しむ。「逸楽イツラク」「安逸アンイツ」 (6)[国]はやる(逸る)。はぐれる(逸れる)。
 エン  冖部
解字 「冖(おおい)+刀うさぎ」の会意。覆いをかぶせられ外にでることができない兎。動き回ってのがれた兎の「逸イツ」に対して、不幸にしてつかまった兎を「冤エン」という。ウ冠の寃エンは異体字。
意味 (1)ぬれぎぬ。無実の罪をうける。「冤罪エンザイ」「冤獄エンゴク」(無実の罪で牢獄につながれる) (2)うらみ。「讐冤シュウエン」(うらみをはらす)
覚え方 わ()ナにはまった刀うさぎエンザイ

形声字
 ト  艸部
解字 「艸(くさ)+兔(ト)」の形声。トという名のつる草の一種をいう。
意味 (1)「菟糸トシ」は、ねなしかずら。寄生するつる草で、種子は菟糸子トシシといい漢方薬になる。「菟糸燕麦トシエンバク」(菟糸は糸がついていても織ることができず、燕麦は麦がついていても食べることができない。有名無実の例え。燕麦は主に馬の飼料だった。) (2)兔に通じ、うさぎ。 (3)「於菟オト」(虎。楚の方言)「木菟ずく」とはミミズクの古名。フクロウ科の鳥のうち、頭に耳のような羽毛をもつものの総称。 
<紫色は常用漢字>

参考音符
 ザン <ずるくはしこいウサギ>

お知らせ
 主要な漢字をすべて音符順にならべた、『音符順 精選漢字学習字典 ネット連動版』石沢書店(2020年)発売中です



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音符「革カク」 <かわ> と 「羈キ」「覇ハ」

2018年12月10日 | 漢字の音符
 カク・かわ  革部  

解字 金文第一字は動物の皮をはがして開いた形と思われる。上が頭、真ん中が開いた胴体、下部が両脚と尾か。第二字はそれを簡略化した形で、篆文につづき現代字もその形を受け継いだ革になった。しかし、字は皮をはがした形であり、これだけでは革にならない。革をつくるためには、剥がした皮の外側の毛や、内側についている肉片や脂肪を取り除いてから草木の中に含まれるタンニン(渋)液などに漬けて強く柔らかくし(なめす)、皮からすっかり変わった革(かわ)にする必要がある。しかし、漢字でこの過程を表すのはむずかしい。そこで皮は「手で動物の皮を剝がす形」で、革は「動物の皮をはがして開いた形」で表した。金文の革で一番多く使われている字は勒ロク(おもがい。馬の頭からクツワにかける革ひも)であり、上図の革も勒から抜き出した。出来上がった革は、生の皮とすっかり違う物となるので「あらたまる・あらためる」意味ともなる。参考:音符「皮ヒ」
意味 (1)かわ(革)。なめしがわ。「皮革ヒカク」「革製品かわセイヒン」 (2)あらたまる。あらためる。「革新カクシン」「革命カクメイ」(①革はあらためる、命は天命で、天命をうけた皇帝がかわること。②被支配階級が支配階級にとってかわり社会を変革すること)「沿革エンカク」(沿は旧いものに沿う、革はあらためる。旧いものに沿ったり、あらためたりした移り変わり)
参考 革は部首「革かわ」になる。漢字の偏(左辺)に付いて、革の意味を表す。常用漢字で2字、約14,600字を収録する『新漢語林』では79字が収録されている。主な字は以下のとおり。
 (部首)
 カ・くつ(革+音符「化カ」)
 鞄ホウ・かばん(革+音符「包ホウの旧字」)
 靭ジン・しなやか(革+音符「刃ジン」)
 鞠キク・まり(革+音符「匊キク」)
 鞍アン・くら(革+音符「安アン」)
 勒ロク・おもがい(革+音符「力リキ」)
 鞣ジュウ・なめす(革+音符「柔ジュウ」)

イメージ
 「かわ・あらためる」
(革・羈・覇)
音の変化  カク:革  キ:羈  ハ:覇 
 
かわ・あらためる
羈[覊] キ・おもがい  罒部
解字 「罒(=网あみ)+革(かわ)+馬(うま)」の会意。馬のあたまを覆ってかける革のひもである、おもがいをいう。は異体字。

貝の飾りを付けた「おもがい」(歴史文物陳列館)
http://museum.sinica.edu.tw/ja/knowledge-base/category/17/item/139/
意味 (1)おもがい(羈)。馬具の一種。くつわにつなげるため馬の頭からかける革紐。「羈鞅キオウ」(おもがいと、むながい) (2)たづな。 (3)つなぐ。「羈束キソク」(つなぎとめる)「不羈フキ」(①しばりつけられないこと。②おさえつけにくい)「奔放不羈ホンポウフキ」「不羈フキの才」(非常にすぐれた才能) (4)たび(旅)。=羇。「羈思キシ」(たびの思い)「羈旅キリョ」(たび。たびびと)
 ハ・はたがしら  覀部
解字 「覀(おおう)+革(あらためる)+月(月光)」の会意。覀は襾(ふた)の変化した形でおおう意を表し、覇は、革命の波が月光のように全国をおおう意。革命によって武力で天下を得た者をいう。
意味 (1)はたがしら(覇)。武力によって天下を治める者。「覇者ハシャ」「覇権ハケン」「覇気ハキ」 (2)勝者。競技などで優勝すること。
覚え方 にし(  )で、かく()命、にくづき()のいい者が者。[漢字川柳]
<紫色は常用漢字>

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音符「象ショウ・ゾウ」<ぞう>「像ゾウ」と「為イ」<象がする>「偽ギ」「譌カ」

2018年12月08日 | 漢字の音符
 ショウ・ゾウ・かたち・かたどる  豕部  

解字 長い鼻をもつゾウの姿を描いた象形。ゾウは動物のなかで最も目立った大きいかたちをしているところから、「かたち」という意味になった。
意味 (1)ぞう(象)。ゾウ科の哺乳動物。「象牙ゾウゲ」 (2)かたち(象)。かたどる(象る)。すがた。ようす。なぞらえる。「現象ゲンショウ」「対象タイショウ」「象徴ショウチョウ

イメージ  
 「ぞう」
(象・橡)
  意味②の「すがた・かたち」(像)
音の変化  ショウ・ゾウ:象・像・橡

ぞう
 ショウ・ゾウ・くぬぎ・とち  木部

クヌギの樹皮(「庭園図鑑」より) 

トチの樹皮(「庭園図鑑」より)
解字 「木(き)+象(ぞう)」の会意形声。樹皮が象の皮のような木。クヌギやトチの木をいう。
意味 (1)くぬぎ(橡)。写真上はその樹皮。櫟レキとも書く。つるばみ(橡)。くぬぎ(橡)の実(どんぐり)を原料とする植物染料の一種。(2)[国]とち(橡)の木。写真下はその樹皮。栃は国字。
※象皮樹とは、ゴムの木。

すがた・かたち
 ゾウ・かたち・かたどる  イ部
解字 「イ(人)+象(すがた・かたち)」の会意形声。人のすがた・かたち。
意味 (1)人や物のすがた・かたち(像)。「映像エイゾウ」(映した人や物の像)「想像ゾウゾウ」(思い浮かべた人や物の像)「肖像ショウゾウ」(人物の絵・写真・彫刻など) (2)本物の人物や事物になぞらえて作ったもの。かたどる(像る)。「銅像ドウゾウ」「石像セキゾウ」「仏像ブツゾウ」「偶像グウゾウ」(神仏の像。崇拝の対象物) (3)にる。形が似ている。「像似ゾウジ」(似る)



   イ <象がする>
[爲] イ・なす・する・ため・なる  灬部れっか

解字 甲骨文から旧字体まで、「手のかたち+象(ぞう)」の会意。甲骨文は手が左につき、篆文以降は上につく。人の手を以って象を使役する形で、土木工事などの工作をすることをいう。旧字で爲、新字体で為に変化した。
意味 (1)なす(為す)。する。行なう。「行為コウイ」「人為ジンイ」「無為ムイ」(自然のままで作為がないこと)「有為ウイ」(因縁によって生じたこの世の一切の現象)「為替かわせ」(ひきかえ。交換) (2)ため(為)。ために。 (3)なる(為る)。~となる。

イメージ  
 「象がする」
(為・偽・譌)
音の変化  イ:為  カ:譌  ギ:偽

象がする
 ギ・いつわる・にせ  イ部
解字 旧字は僞で「イ(人)+爲(象がする)」の会意形声。象がしたことを人がしたようにいつわること。新字体は偽に変化。
意味 (1)いつわる(偽る)。だます。「偽造ギゾウ」「偽名ギメイ」 (2)にせ(偽)。にせもの。「偽書ギショ」「真偽シンギ
譌[訛] カ・いつわる・なまる  言部
解字 「言(ことば)+爲(=偽(僞)の略体。いつわる)」の会意形声。いつわる言葉。訛(あやまる。いつわる。なまる)の異体字。従って発音はカ。
意味 (1)いつわる(譌る)。いつわり。うそをつく。「譌言カゲン」(いつわりごと) (2)あやまる。まちがえる。「譌字カジ」(誤った字)「譌雑カザツ」(あやまりみだれる) (3)なまる(譌る)。なまり。(=訛)「譌音カオン
<紫色は常用漢字>

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音符「幾キ」<ちかい・わずか> と 「畿キ」「磯キ」「機キ」「饑キ」「譏キ」

2018年12月03日 | 漢字の音符
 多くの辞書は幾を「幺幺+戍ジュ・まもる(人+戈)」で解字しているが、それでは本当の意味がでてこない。金文には人の代わりに大を用いた字もあることから、この字は「幺幺+人+戈」で解字しなければならない。

 キ・いく  幺部いとがしら

解字 金文第1字は「幺幺(ほそい・わずか)+大(ひと)+戈(ほこ)」の会意。第2字から、大⇒人に変わった幾となった。幺は、糸たばの先の形で糸たばの糸がほそい意。幺が二つで「わずか」の意味となる。幾は、武器である戈(ほこ)をわずかな距離まで人に近付けることを示し、「ちかい」「もうすこしで」「あやうい」「きざし・かすか」などの意味を表す。また、仮借カシャ(当て字)で、いくつ・いくらの意ともなる。幾の筆順はこちら。
意味 (1)ほとんど(幾ど)。ちかい。きざし。けはい。かすか。「幾望キボウ」(ほとんど望月もちづき、すなわち満月に近いこと。満月の1日前)「幾微キビ」(かすかで微妙な=機微) (2)いく(幾)。いくつ(幾つ)。いくら(幾ら)。「幾許いくばく」(どれほど)。「幾年いくとせ・いくねん」(どれほどの年数)「幾歳いくとせ」「幾重いくえ」(多く重なる。何度も) (3)「幾何学キカガク」とは、数学の一部門で geometry の訳語。図形や空間の性質を研究する学問。

イメージ 
 「きざし・けはい」
(幾)
  戈を近づける意から「近い・せまる」(畿・磯・譏)
  かすかの意から「わずか・細かい」(機・饑)
音の変化  キ:幾・畿・磯・譏・機・饑

近い・せまる
 キ・みやこ  田部
解字 「田(耕地)+幾の略体(ちかい)」の会意形声。天子のすぐ近くの直轄地。
意味(1)みやこ(畿)。首都。「京畿ケイキ」(皇居周辺の地。京都周辺の国々)(2)王城から五百里(周代の一里は約405m)以内(=約202km以内)の地をいう。「近畿キンキ」「畿内キナイ
 キ・いそ  石部
解字 「石(いし)+幾(ちかい)」の会意形声。石や岩が水辺に近いこと。
意味 いそ(磯)。石や岩の多い波打ちぎわ。「磯辺いそべ」「磯魚いさな・いそうお」「荒磯あらいそ・ありそ」(荒波の打ち寄せる磯)
 キ・そしる  言部
解字 「言(いう)+幾(せまる)」の会意形声。相手に迫って言うこと。とがめる・そしる意となる。
意味 とがめる。そしる(譏る)。せめる。「誹譏ヒキ」(とがめる。誹も譏も、とがめる意)「譏弾キダン」(そしりあばく)

わずか・細かい
 キ・はた  木部
解字 「木(き)+幾(しかけの細かい)」の会意形声。仕掛けの細かい木の装置。また、幾の意味である、きざしの意もある。
意味 (1)はた(機)。布を織る機械。「機織(はたお)り」(2)からくり・しかけ。「機械キカイ」「機関キカン」(3)きざし。きっかけ。「機会キカイ」「好機コウキ」(5)心のはたらき。「機転キテン」「心機シンキ」(心のはたらき)「心機一転シンキイッテン」(心の動きががらりと変わること)「機微キビ=幾微」(表面から知りにくい心の動き。また微妙な事情)「人情の機微に触れる」
 キ・うえる  食部
解字 「食(たべる)+幾(わずか)」の会意形声。食べ物がわずかしかないこと。うえる意となる。
意味 (1)穀物が実らない。食物が不足する。「饑饉キキン」(=飢饉)(2)うえる(饑える)。「饑渇キカツ」(うえとかわき)
<紫色は常用漢字>

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