改訂しました。
鼎 テイ・かなえ 鼎部
大克鼎(上海博物館蔵)内側に銘文が鋳込まれ、足に盛り出た装飾部がある。(「細講中国歴史15」より)
解字 食べ物を煮炊きする三本足の円形の器具。もと土器だったが宗廟において祖先神を祀る際の礼器として青銅製のものが作られた。甲骨・金文は青銅製をかたどったもので、上の猫の耳のようなものは鼎を移動させるとき、鉤などを引っ掛ける耳で、下部は足を二本描く。[甲骨文字辞典]によると、足の横に描かれている二本の短線は、おそらく扁足鼎と呼ばれる足部分の装飾に対応する(大克鼎にもある)、としている。篆文から上部が目となり下部が二本のタテ線の両側から手足が伸びたような形になり、現代字の鼎となった。
宗廟において礼器の地位に高められた鼎は、一族(宗族)の者が手柄を立てたとき、その内容を鼎に記して残したので金文が発達した。また、精巧に作られた青銅器の鼎は国家の君主や大臣などの権力の象徴として用いられた。
意味 (1)かなえ(鼎)。「鼎爼テイソ」(鼎とまないた)「鼎沸テイフツ」(鼎の沸くが如し。わきかえる) (2)王位。また王を支える大臣。「鼎祚テイソ」(帝位)「鼎臣テイシン」(三公の位にある臣。大臣) (3)(三本足から)三つのものが並び立つ。「鼎立テイリツ」「鼎談テイダン」(三人が向かい合って話す)
貞 テイ <占って神意をきく>
貞 テイ・ジョウ・ただしい 貝部
解字 甲骨文は鼎テイ(かなえ)の省略形。テイという発音を借りて(仮借カシャ)、亀の腹甲に刻んだ占いの内容を示して、その結果を問いかける(=神意をきく)意味で用いられ、文章の前に置かれ「とう(問う)」と訳される。金文は「ト(占う)+鼎テイ(テイ)」の形声で、テイという発音で問う・聞く意。これまで、鼎(かなえ)を用いて占いが行われたとする説があったが鼎テイは発音だけを表す。字形は篆文から鼎⇒貝に変化し、現代字の貞となった。貞は占いの内容を提示して問う意味から、①占って神意をきく。②神意をきいた結果が正しい。③「まこと」などの意味へと拡がった。
意味 (1)問う・きく。占って神意をきく。「貞吉テイキチ」(貞して吉なり) (2)[占った結果が]ただしい(貞しい)。心が正しい。まっすぐである。「貞士テイシ」(正義を守る人)「貞潔テイケツ」「貞固テイゴ」(固く正道をまもる) (3)女子がみさおを守る。「貞淑テイシュク」(女性がしっかりしてしとやか)「貞女テイジョ」(堅く行儀を守る女)「貞操テイソウ」(貞も操も、みさおの意。みさおとは真青みさおの義で、松などの常葉の色に例えて云う(大言海) (4)「貞観ジョウガン」とは、清和・陽成天皇朝の年号(859~877)
イメージ
占うことから「神意をうかがう」(貞・偵・遉・禎)
「形声字」(幀・赬)
音の変化 テイ:貞・偵・遉・禎・幀・赬
神意をうかがう
偵 テイ・うかがう イ部
解字 「イ(人)+貞(神意をうかがう)」の会意形声。神意をうかがう人の意。
意味 (1)うかがう(偵う)。ようすを探る。「偵察テイサツ」「内偵ナイテイ」 (2)ようすを探る者。「探偵タンテイ」「密偵ミッテイ」
遉 テイ・チョウ・さすが 辶部
解字 「辶(ゆく)+貞(神意をうかがう)」の会意形声。神意をうかがいに行く意で、古くは偵と同字とされた字。日本では「さすが」「さすがに」の意味で用いられる。
意味 (1)うかがう(遉う)。さぐる。ようすを見る。 (2)[国]さすが(遉)。「彼の働きは遉(さすが)だ」。さすがに(遉に)。「人々は、遉(さすが)に振向きもしなかつた」
禎 テイ・さいわい ネ部
解字 「ネ(示:祭壇・神)+貞(神意をうかがう)」の会意形声。神のお告げが神意にかなうこと。めでたいしるしの意になる。
意味 さいわい(禎)。めでたいしるし。「禎瑞テイズイ」(めでたいしるし)「禎祥テイショウ」(めでたいしるし)
形声字
幀 テイ・トウ 巾部
解字 「巾(ぬの)+貞(テイ)」の形声。北宋の字書の「類篇ルイヘン」は「張りたる画繒えぎぬ也(なり)」とし、枠などに画繒を張り付けたものの意。のち、掛軸風の装幀がされたため、掛物を数える助数詞ともなる。
意味 (1)枠に張った絵ぎぬ。 (2)絵ぎぬを枠に張る。掛け物に仕立てる。「装幀ソウテイ」(=装丁)「幀首テイシュ」(軸物の上部)(3)掛物を数える助数詞。「一幀イットウ」(=一幅)
赬 テイ・あか 赤部
解字 「赤(あか)+貞(テイ)」の形声。テイという発音の赤い色をいう。中国最古の字書である「爾雅ジガ」は、「再び染める、之を赬と謂う」とし二度染めた赤色とする。
意味 あか(赬)。色を重ねた赤。二度染めた赤色。「赬尾テイビ」(魚の赤い尾。魚は泳ぎ疲れると尾が赤くなるといい、転じて、君子が治政に苦労することをいう)「赬楣テイビ」(赤く塗った楣ひさし)
<紫色は常用漢字>
≪参考≫ 鼎が貝に変化した字
員 イン・かず 口部
解字 食物を煮炊きする器である鼎(かなえ)の上に口(くち)の円いことを示す〇形を加え、まるい鼎であることを示した会意。まるい意で使われた。また、鼎の数をかぞえるのに用いたことから、員数(人や物の数)の意となった。篆文以降、鼎の部分が貝に変化した。また、上の〇形は横長の口になった。員を音符に含む字は、「かなえ」「まるい」イメージを持つ。
意味 (1)かず(員)。人や物のかず。「員数インズウ」「員外インガイ」(2)まるい(=円)。「方員ホウエン」(四角と、まる)(3)一定の枠のなかにはいる人。「職員ショクイン」「定員テイイン」「冗員ジョウイン」(余った人員)(3)はば。まわり。周囲。「幅員フクイン」
音符「員イン」へ
則 ソク・のり・のっとる 刂部
解字 金文は「鼎(かなえ)+刂(刀)」の会意。鼎の側面に刀で刻まれた文字のこと。重要な契約は鼎に文字で残したことから、のり(一定のきまり)の意味を表わす[字統]。実際に文字があるのは鼎の内側の側面である。篆文から鼎が貝に変化した。
意味 (1)のり(則)。きまり。「規則キソク」「法則ホウソク」(2)のっとる(則る)。手本とする。「則天去私ソクテンキョシ」(私心を捨てて自然の道理に従って生きる)(3)すなわち(則ち)。接続の助字。
音符「則ソク」へ
賊 ゾク 貝部
解字 金文は左から、「逆向きの刀+鼎(かなえ)+戈(ほこ)」の形。「刀+鼎(かなえ)」は鼎に刀で刻した銘文のことで則ソク(のり・規範)を表す。篆文は鼎⇒貝になった、「則(貝+刀)+戈(ほこ)」の会意形声。世の中の規範(則)を戈(ほこ)で打ち破ること。世の中の秩序を武力でそこなう悪者の意。そこなう・秩序に刃向かう悪者・どろぼう、の意となる。現代字は、篆文の刀⇒十に変化した賊になった。篆文から形が大きく変わったので戎と結びつけて覚えると便利。ただし、発音は則ソクが濁音になったゾクである。
意味 (1)そこなう。傷つける。「賊害ゾクガイ」(そこなう)(2)ぞく(賊)。国家や君主にそむく。「国賊コクゾク」「賊臣ゾクシン」(3)ぬすむ。どろぼう。「山賊サンゾク」「盗賊トウゾク」
「賊ゾク」へ
鼎 テイ・かなえ 鼎部
大克鼎(上海博物館蔵)内側に銘文が鋳込まれ、足に盛り出た装飾部がある。(「細講中国歴史15」より)
解字 食べ物を煮炊きする三本足の円形の器具。もと土器だったが宗廟において祖先神を祀る際の礼器として青銅製のものが作られた。甲骨・金文は青銅製をかたどったもので、上の猫の耳のようなものは鼎を移動させるとき、鉤などを引っ掛ける耳で、下部は足を二本描く。[甲骨文字辞典]によると、足の横に描かれている二本の短線は、おそらく扁足鼎と呼ばれる足部分の装飾に対応する(大克鼎にもある)、としている。篆文から上部が目となり下部が二本のタテ線の両側から手足が伸びたような形になり、現代字の鼎となった。
宗廟において礼器の地位に高められた鼎は、一族(宗族)の者が手柄を立てたとき、その内容を鼎に記して残したので金文が発達した。また、精巧に作られた青銅器の鼎は国家の君主や大臣などの権力の象徴として用いられた。
意味 (1)かなえ(鼎)。「鼎爼テイソ」(鼎とまないた)「鼎沸テイフツ」(鼎の沸くが如し。わきかえる) (2)王位。また王を支える大臣。「鼎祚テイソ」(帝位)「鼎臣テイシン」(三公の位にある臣。大臣) (3)(三本足から)三つのものが並び立つ。「鼎立テイリツ」「鼎談テイダン」(三人が向かい合って話す)
貞 テイ <占って神意をきく>
貞 テイ・ジョウ・ただしい 貝部
解字 甲骨文は鼎テイ(かなえ)の省略形。テイという発音を借りて(仮借カシャ)、亀の腹甲に刻んだ占いの内容を示して、その結果を問いかける(=神意をきく)意味で用いられ、文章の前に置かれ「とう(問う)」と訳される。金文は「ト(占う)+鼎テイ(テイ)」の形声で、テイという発音で問う・聞く意。これまで、鼎(かなえ)を用いて占いが行われたとする説があったが鼎テイは発音だけを表す。字形は篆文から鼎⇒貝に変化し、現代字の貞となった。貞は占いの内容を提示して問う意味から、①占って神意をきく。②神意をきいた結果が正しい。③「まこと」などの意味へと拡がった。
意味 (1)問う・きく。占って神意をきく。「貞吉テイキチ」(貞して吉なり) (2)[占った結果が]ただしい(貞しい)。心が正しい。まっすぐである。「貞士テイシ」(正義を守る人)「貞潔テイケツ」「貞固テイゴ」(固く正道をまもる) (3)女子がみさおを守る。「貞淑テイシュク」(女性がしっかりしてしとやか)「貞女テイジョ」(堅く行儀を守る女)「貞操テイソウ」(貞も操も、みさおの意。みさおとは真青みさおの義で、松などの常葉の色に例えて云う(大言海) (4)「貞観ジョウガン」とは、清和・陽成天皇朝の年号(859~877)
イメージ
占うことから「神意をうかがう」(貞・偵・遉・禎)
「形声字」(幀・赬)
音の変化 テイ:貞・偵・遉・禎・幀・赬
神意をうかがう
偵 テイ・うかがう イ部
解字 「イ(人)+貞(神意をうかがう)」の会意形声。神意をうかがう人の意。
意味 (1)うかがう(偵う)。ようすを探る。「偵察テイサツ」「内偵ナイテイ」 (2)ようすを探る者。「探偵タンテイ」「密偵ミッテイ」
遉 テイ・チョウ・さすが 辶部
解字 「辶(ゆく)+貞(神意をうかがう)」の会意形声。神意をうかがいに行く意で、古くは偵と同字とされた字。日本では「さすが」「さすがに」の意味で用いられる。
意味 (1)うかがう(遉う)。さぐる。ようすを見る。 (2)[国]さすが(遉)。「彼の働きは遉(さすが)だ」。さすがに(遉に)。「人々は、遉(さすが)に振向きもしなかつた」
禎 テイ・さいわい ネ部
解字 「ネ(示:祭壇・神)+貞(神意をうかがう)」の会意形声。神のお告げが神意にかなうこと。めでたいしるしの意になる。
意味 さいわい(禎)。めでたいしるし。「禎瑞テイズイ」(めでたいしるし)「禎祥テイショウ」(めでたいしるし)
形声字
幀 テイ・トウ 巾部
解字 「巾(ぬの)+貞(テイ)」の形声。北宋の字書の「類篇ルイヘン」は「張りたる画繒えぎぬ也(なり)」とし、枠などに画繒を張り付けたものの意。のち、掛軸風の装幀がされたため、掛物を数える助数詞ともなる。
意味 (1)枠に張った絵ぎぬ。 (2)絵ぎぬを枠に張る。掛け物に仕立てる。「装幀ソウテイ」(=装丁)「幀首テイシュ」(軸物の上部)(3)掛物を数える助数詞。「一幀イットウ」(=一幅)
赬 テイ・あか 赤部
解字 「赤(あか)+貞(テイ)」の形声。テイという発音の赤い色をいう。中国最古の字書である「爾雅ジガ」は、「再び染める、之を赬と謂う」とし二度染めた赤色とする。
意味 あか(赬)。色を重ねた赤。二度染めた赤色。「赬尾テイビ」(魚の赤い尾。魚は泳ぎ疲れると尾が赤くなるといい、転じて、君子が治政に苦労することをいう)「赬楣テイビ」(赤く塗った楣ひさし)
<紫色は常用漢字>
≪参考≫ 鼎が貝に変化した字
員 イン・かず 口部
解字 食物を煮炊きする器である鼎(かなえ)の上に口(くち)の円いことを示す〇形を加え、まるい鼎であることを示した会意。まるい意で使われた。また、鼎の数をかぞえるのに用いたことから、員数(人や物の数)の意となった。篆文以降、鼎の部分が貝に変化した。また、上の〇形は横長の口になった。員を音符に含む字は、「かなえ」「まるい」イメージを持つ。
意味 (1)かず(員)。人や物のかず。「員数インズウ」「員外インガイ」(2)まるい(=円)。「方員ホウエン」(四角と、まる)(3)一定の枠のなかにはいる人。「職員ショクイン」「定員テイイン」「冗員ジョウイン」(余った人員)(3)はば。まわり。周囲。「幅員フクイン」
音符「員イン」へ
則 ソク・のり・のっとる 刂部
解字 金文は「鼎(かなえ)+刂(刀)」の会意。鼎の側面に刀で刻まれた文字のこと。重要な契約は鼎に文字で残したことから、のり(一定のきまり)の意味を表わす[字統]。実際に文字があるのは鼎の内側の側面である。篆文から鼎が貝に変化した。
意味 (1)のり(則)。きまり。「規則キソク」「法則ホウソク」(2)のっとる(則る)。手本とする。「則天去私ソクテンキョシ」(私心を捨てて自然の道理に従って生きる)(3)すなわち(則ち)。接続の助字。
音符「則ソク」へ
賊 ゾク 貝部
解字 金文は左から、「逆向きの刀+鼎(かなえ)+戈(ほこ)」の形。「刀+鼎(かなえ)」は鼎に刀で刻した銘文のことで則ソク(のり・規範)を表す。篆文は鼎⇒貝になった、「則(貝+刀)+戈(ほこ)」の会意形声。世の中の規範(則)を戈(ほこ)で打ち破ること。世の中の秩序を武力でそこなう悪者の意。そこなう・秩序に刃向かう悪者・どろぼう、の意となる。現代字は、篆文の刀⇒十に変化した賊になった。篆文から形が大きく変わったので戎と結びつけて覚えると便利。ただし、発音は則ソクが濁音になったゾクである。
意味 (1)そこなう。傷つける。「賊害ゾクガイ」(そこなう)(2)ぞく(賊)。国家や君主にそむく。「国賊コクゾク」「賊臣ゾクシン」(3)ぬすむ。どろぼう。「山賊サンゾク」「盗賊トウゾク」
「賊ゾク」へ
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