漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「卮(巵)シ」<さかずき> と 「梔シ」(クチナシ)

2023年11月29日 | 漢字の音符
卮[巵] シ・さかずき  卩部


上は卮、下は后
解字 篆文は「立つ人の変形+ひざまずいた人」の会意。立つ人の変形は后コウ(当初の意味は君主・諸侯、のち「きさき」)にも用いられており、身分の高い人を表している。そこにひざまずく人(⇒㔾に変化)がついた卮は、身分の高い人のそばに跪(ひざまず)く人を表し、王侯から下賜カシ(物を与える)されているさま。[説文解字]は「圜(まる)い器なり」とし、発音字典の「玉篇」(543年成立)は「酒漿ショウ(原酒。漉(こ)さないままの酒)の器なり。四升を受く」とあり、酒器を表している。「四升」とは容量を表し、一升は漢代で0.198ℓであり、4倍すると792ccとなり、現代の自動販売機のお茶が1本500~600ccであるから、これより多い。かなり容量のある酒器である。下賜カシ(物を与える)は酒器ではなく、酒器に入っている酒を与える意味である。一般に「さかずき」と訳されているが、日本の徳利のたぐいである。巵は明末の[正字通]にある異体字。

广州南越文王墓出土的金扣象牙卮(「維基ウィキ百科 卮」より)
 写真は、広州の南越文王墓出土の金扣コウ(縁に金をかぶせる)象牙の卮であり、以下の説明がある。「卮は中国古代の一種の酒器で、もととなる材質はいろいろあり、銅卮、銀卮、玉卮、石卮、漆卮、陶卮等である。卮の生産は戦国末期からで、漢代に流行し宋朝に至るまでずっと続いた。卮は盖(ふた)と身の両方の部分よりなり,身は円筒状を呈し,一般に耳(取っ手)が有り,底部に三つ足が有る。玉卮は漢朝貴族が使用した酒具で,通常和田玉(新疆ウィグル自治区のホータン(和田)地区で採取される翡翠ヒスイ)を用いて作られている。
意味 (1)さかずき(卮)。おおさかずき。四升入りの杯。「酒卮シュシ」(酒をいれる大さかずき)「卮酒シシュ」(大さかずきの酒)「玉卮ギョクシ」(玉製の卮) (2)支と同音で支離(はなればなれになる)意から、とりとめのない。「卮言シゲン」(首尾一貫しないことば。転じて、自分の著作の謙称) 参考:酒卮(中国の検索サイト「百度」より) 
酒卮の用い方(私見) 酒卮は現在のビールジョッキのような酒器で、蓋つきの豪華な酒杯。王侯貴族が各自、自慢の酒卮を持っており、宴会の折にこれに酒をいれて気に入った相手に酒をふるまうのに使用したのではなかろうか。
「鴻門之会」と卮酒
鴻門コウモン之(の)会とは紀元前206年、楚の項羽と漢の劉邦が、秦の都・咸陽郊外の鴻門(地名)で会見した故事。項羽は宴会を始めると、劉邦のお供の樊噲(はんかい)に酒を勧めた。
項羽:「項王(項羽)曰(いわ)く、「壮(勇壮な士おとこ)、之(これ)に卮酒シシュを賜(たま)へ」(項羽は言った。「勇壮な士(おとこ)よ。このものに大さかずきの酒を差し上げよ」
樊噲:「臣シン(私)は死すら且(かつ)避(さけ)不(ず)、卮酒シシュ安(いずくん)ぞ辞(じ)するに足(た)らん」「私は死さえ避けません。大さかずきの酒ごとき、どうして辞退することがありましょうか」(史記・項羽記)

イメージ
 「酒器」
(卮[巵])
 「形声字」(梔[栀])
音の変化  シ:卮・梔

形声字
梔[栀] シ・くちなし  木部

クチナシの花(「新宿御苑」より)

クチナシの実(「tenki.jp 6月」より)
解字 「木(き)+巵(シ)」の形声。シという木で、クチナシをいう。[説文解字]は「木の実、染める可(べ)し」とし実を染料にできる木とする。クチナシの場合は慣用により異体字の巵を用いる。クチナシの由来は、日本で果実が熟しても口を開かないから「口無し」ということから。酒器の卮は蓋つきの器であり、この形がクチナシの実と形が似ているからか(私見)。
意味 くちなし(梔)。アカネ科の常緑低木。初夏に白い六弁花を咲かせて強い香りを漂わせ、秋には橙赤色の果実をつける。クチナシの実は熟しても裂けない。熟した果実は黄色の染料および黄色の天然色素として沢庵漬などに用いられる。また漢方では山梔子サンシシ、また梔子サンシの名で漢方薬(消炎・利尿・止血など)になる。
「山梔子サンシシ」(消炎、解熱、鎮静作用などがある)「梔子染くちなしぞめ」(黄色に染まる)

クチナシの乾燥果実(通販のサイトから)
黄色の染料および食品染料などに使われる。


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音符「益エキ」<あふれる>「隘アイ」「縊イ」「溢イツ」「搤ヤク」と「兮ケイ」「盻ケイ」「諡シ」

2023年11月27日 | 漢字の音符
  増補改訂し、さらに兮ケイを追加しました。
[益] エキ・ヤク・ます  皿部

解字 篆文は「皿(うつわ)+横向きの水」で、皿(うつわ)に水があふれる形。あふれる・みちる意。隷書(漢代)で、横向きの水がそれぞれ直線になった形をへて、旧字は益になり、新字体は簡略化された益になった。溢イツの原字。あふれる意は溢イツがうけもつので益の意味は、水が加わってあふれるので「ますます」の意となり、転義として「役に立つ・もうけ」の意となる。
意味(1)ます(益す)。加わる。みちあふれる。(=溢イツ) (2)役に立つ。ためになる。「実益ジツエキ」「益友エキユウ」(交わって有益な人)「益虫エキチュウ」 (3)もうけ。「利益リエキ」「損益ソンエキ」(4)[副詞]ますます(益々)。さらに。だんだん。

イメージ 
 「あふれる」(益・溢)
 「形声字」(縊・搤・隘)
音の変化  エキ:益  アイ:隘  イ:縊  イツ:溢  ヤク:搤

あふれる
 イツ・あふれる・みちる  氵部
解字 「氵(水)+益(あふれる)」で、水が溢れる意。
意味 (1)あふれる(溢れる)。みちる(溢ちる)。こぼれる(溢れる)。「溢水イッスイ」(水があふれる)「脳溢血ノウイッケツ」(脳内血管が破綻して血があふれる疾患=脳出血)(2)あまりある。度をこす。「溢利イツリ」(利益をとりすぎること)

形声字
 イ・くびれる・くびる  糸部  

解字 篆文第一字の右辺は、皿に水があふれる形。第二字(六書通)の右辺は、二つの糸を合せてくくる形で、「糸(ひも)+くくる形」の会意。ひもでくくる意となる。篆文の二つの字は発音がイで同じことから、両字とも「くくる」意で用いられ、楷書以降は第一字が使われる。縊は紐をくくる意だが、特に、首をくくる意に使われる。
意味 (1)くびれる(縊れる)。首をくくる。「縊死イシ」(首をくくって死ぬ)(2)くびる(縊る)。ひもで首をしめる。「縊殺イサツ」(首をしめて殺す)
 ヤク・アク  扌部
解字 「扌(手)+益(=縊。くびれる)」の会意。手でくびれる(首をしめる)ように、つかんでおさえること。
意味 (1)つかむ。おさえる。「搤腕ヤクワン」(自分で自分の腕を強く握りしめる。残念がったり意気込むこと。=扼腕) (2)しめる。「搤殺ヤクサツ」(首をしめて殺す。=扼殺)
 アイ・ヤク・せまい  阝部
解字 「阝(おか)+益(=縊。くびれる)」の会意。丘がくびれて狭くなること。
意味 (1)せまい(隘い)。「隘路アイロ」(せまくて通れない道。さまたげになること)「狭隘キョウアイ」(①面積がせまい。②度量がせまい)「隘巷アイコウ」(せまくきたない町)(2)ふさぐ。さまたげる。 
 シ・おくりな  言部
 諡シの異体字。兮ケイ(このページ)の最後に掲載している。
<紫色は常用漢字>

    ケイ <語末・句中の発語>
 ケイ・ゲ  八部
 
解字 甲骨文字は「丅(示の原字。祭卓)+タテ線2つ(切り分けた供物)」の会意で、神に供える物をのせる一本足の卓の上に、切り分けた供物の肉を置いた形。しかし意味は、①地名、②神名、となっている[甲骨文字辞典]。金文は卓の上がはっきりとハになり、下部のタテ線がやや左曲がり、篆文から丂に変化した兮ケイになった。意味は[説文解字]が「語のとどまる所なり」としており、語末において語の勢いを示すかたちとなった。
意味 (1)語末にそえ、よびかけ・詠嘆・疑問などを表す。「兮呀ケイガ」(悲しそうな声の発語) (2)句中にあって上の語を主格としてしめす。訓読では普通よまない。 (3)句中にあって「へい。ほい」という間拍子の声を表す。楚辞ソジ(中国古代の詩集)などに用いられた。訓読しない。「大風(は)起(こり)兮、飛揚ヒヨウ(す)」(漢高祖・大風歌)

イメージ
 「語末・句中の発語」
(兮)
 「形声字」(盻・諡)
音の変化 
  ケイ:兮・盻  シ:諡

形声字
 ケイ・ゲ・にらむ  目部
解字 「目(め)+兮(ケイ)」の形声。目でにらむことを盻ケイという。[説文解字]は「恨(うら)み視(み)る也(なり)」とする。
意味 (1)にらむ(盻む)。うらみにらむ。「目を瞋(いから)して盻(にら)む」 (2)「盻盻ケイケイ」とは苦しんでうらみにらむさま。「民(たみ)をして盻盻然ケイケイゼンたら使(し)む」(孟子・滕上)
諡[謚] シ・おくりな  言部
解字 諡は、異体字の謚が変形した字とされる。謚は「言(ことば)+益(ます)」の会意。益エキは益の旧字で、追加する・ます意がある。これに言がついた謚は、言葉を追加する意で、帝王や貴人の生前の功績をたたえて死後に名前をおくる(追加する)こと。諡は、謚が変形した字で、右辺の皿の上の「八一八」⇒兮ケイに変化した諡となった。
意味 おくりな(諡)。生前の功績をたたえて死者におくる名。「諡号シゴウ」(おくり名)「諡法シホウ」(死者につけるおくりなのつけ方)
<諡号の例> ( )内は姓名
前漢 初代皇帝 高祖(劉邦)
   5代皇帝 文帝(劉恒)
   7代皇帝 武帝(劉徹)

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音符「屯トン」<たむろする> と「頓トン」「沌トン」「飩トン」「噸トン」「瓲トン」「鈍ドン」「純ジュン」

2023年11月25日 | 漢字の音符
   増補しました。
 トン・ドン・チュン・たむろ  屮部

解字 甲骨文字は木の芽の象形。枝に芽がふくらんでいるさまを描く。[甲骨文字辞典]によると、この字が含まれる「屯(木の芽)+林+日(太陽)」は、太陽のもとで林が芽ぶくころの意で春の字になる[音符「春シュン」を参照]。屯は甲骨文字では仮借カシャ(当て字)で、軍事攻撃の意味に用いられているという。後代には転じて「たむろ」することや軍隊の意になった。字形は、芽のふくらみ⇒横線⇒斜線になり、枝の部分⇒両端が上向き、中央の枝⇒乚に変化した屯になった。
意味 たむろ(屯)。たむろする。寄りあつまる。「駐屯チュウトン」(軍隊がある地域にとどまっていること)「屯田トンデン」(平時は農耕、戦時は兵士になること)「屯倉みやけ」(古代、大和朝廷の直轄領から収穫した稲米を蓄える倉。転じて、朝廷の直轄領)

イメージ 
 「たむろする」
(屯・邨)
 「形声字」(鈍・頓・沌・純・飩・噸・瓲)
音の変化  トン:屯・頓・沌・飩・噸・瓲  ドン:鈍  ジュン:純  ソン:邨

たむろする
 ソン・トン・むら  阝部おおざと
解字 「阝(むら)+屯(たむろする)」の会意形声。人が寄りあつまるむら。阝は、右辺に置かれたとき、「おおざと」と言い、まちやむらの意になる。
意味 (1)むら(邨)。村落。村の古字。 (2)姓に用いる。「邨田むらた

形声字
 ドン・にぶい・にぶる  金部
解字 「金(金属製の刀)+屯(ドン)」の形声。発音字典の[広韻]は「不利(刃物が切れない)也(なり)」とし、刃物の切れ味が悪い意とする。また、[正字通]は「凡そ質の魯者ロシャ(おろかもの)を鈍と曰(い)う」とし、感覚がにぶく、のろまな人にもいう。
意味 (1)にぶい(鈍い)。にぶる(鈍る)。なまる(鈍る)。刃物の切れ味が悪い。「鈍刀ドントウ」「鈍器ドンキ」「鈍痛ドンツウ」(にぶい痛み)「鈍麻ドンマ」(感覚がにぶくなること) (2)のろい(鈍い)。おろか。「鈍感ドンカン」「鈍根ドンコン」(頭の働きがにぶい。⇔利根リコン
 トン・ぬかずく  頁部
解字 「頁(あたま)+屯(トン)」の形声。[説文解字]は「首(あたま)を下(さげ)る也(なり)」とする。また「周礼」の九拝のうちに「頓首トンシュ」があり、坐って頭を地につける礼をいう。転じて(頭が地に)とどまる・とまる意に、また派生の意として、にわかに・とみになどがある。
意味 (1)ぬかずく(頓ずく)。「頓首トンシュ」 (2)とどまる。とまる。「頓宮トングウ」(天皇行幸時の仮の宮殿。行宮アングウ)「頓舎トンシャ」(行軍の途中の宿泊)「頓挫トンザ」(中途で行きづまる) (3)にわかに。とみに(頓に)。「頓死トンシ」(にわかに死ぬ)「頓知・頓智トンチ」(すばやく働く知恵) (4)ととのえる。「整頓セイトン
 トン  氵部
解字 「氵(水)+屯(=頓。とどまる)」の会意形声。水が行きとどまって流れないこと。
意味 (1)ふさがる。 (2)万物がまだ形をなさず、うずまいている状態。「混沌コントン」(①なりゆきのはっきりしないさま②天地のまだ分かれていなかった状態)「=渾沌コントン」「沌沌トントン」(水がめぐって滞る)
 ジュン  糸部
解字 「糸(いと)+屯(トン⇒ジュン)」の形声。[説文解字]は「絲(絹糸)也。糸に従い屯ジュン聲(声)」とし、さらに「同注」は「不襍(=雑)曰純」(雑(まざ)らずを純と曰う)とし、白い絹糸で他の色が混ざっていないものとする。純ジュンは淳ジュン・醇ジュンと発音が同じで、中国語でもchúnで同音、さらに上古音・中古音も同音でまったく同じ発音。したがって、「純朴ジュンボク」は「淳朴」「醇朴」とも書かれ同じ意味となる。
意味 (1)まじり気がない。けがれがない。「純真ジュンシン」「純潔ジュンケツ」「純白ジュンパク」 (2)かざらない。自然のまま。「純朴ジュンボク
 トン・ドン  食部
解字 「𩙿(=食。たべる)+屯(トン・ドン)」の形声。トン・ドンという名の食べ物。「餛飩コントン」及び「饂飩うどん」に用いられる。

餛飩コントン(ワンタン)(「中華料理を学ぶ」より)
意味 (1)「餛飩コントン」に用いる字。「餛飩コントン」とは、小麦粉をこね、あん(肉・野菜など)を包み、蒸したり煮たりしたもの。ワンタン。 (2)「饂飩(うどん)」に用いる字。「饂飩(うどん)」とは、腰の強い小麦粉を薄くのばし細く切ったもの。ゆでてから汁に浸して食べる。
<国字> トン  口部
解字 「口(口まね)+頓(トン)」 の形声。口で発するトンの音。トンで英語のtonに当てた。
意味 トン。重量の単位。1トンは1000kg。また、船舶の容量の単位。
 トン  瓦部
解字 「瓦(重さの単位)+屯(トン)」の形声。瓦は一枚の重さが同じことから、重さの単位に使われることが多い。トンは英語のtonに当て、1000kgを表す。
意味 トン。重量の単位。1トンは1000kg。(=噸)
<紫色は常用漢字>

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音符「殷イン」<さかん>「慇イン」 と 「商ショウ」<殷の宮殿>

2023年11月23日 | 漢字の音符
  商は本来、殷の宮殿の意味ですので2字を統合しました。
 イン・アン・さかん  殳部

解字 甲骨文は「身(腹を強調した人)+先端の尖ったものを手にもつ形」で、人の腹部を突くさまを表している。甲骨文字では祭祀儀礼の意味で用いられており、おそらく人犠牲を捧げる儀礼の様子であろう[甲骨文字辞典]。なお同字典は「甲骨文字の段階では殷王朝の意味はない。殷王朝は後の西周代の命名である」としている。金文は、身の部分が左右反転した形になった。意味は、①商(殷の都)の意。②大きな祭り、となっている[簡明金文漢詞典]。篆文は[説文解字]が、「楽ガクを作(な)す之(の)盛んなさまを殷と稱(い)う。㐆(身の反転形)に従い殳に従う」とし、音楽を奏することが盛んな有様をいう。このように意味が変化したが、これは身の意味を妊娠した形とみて、楽器を打ち祝福する意味としたものと思われる。
意味 (1)さかん(殷ん)。さかんに。ゆたか。「殷賑インシン」(にぎやかで活気あふれる)「殷富インフ」(さかえてゆたか) (2)ねんごろ。まごころ。ていねい。「殷勤インギン」(=慇懃インギン) (3)音の強くひびくさま。「殷殷インイン」(鐘・雷などの音がとどろくさま)「殷雷インライ」(鳴り響くかみなり) (4)古代王朝の名。紀元前16世紀~同11世紀頃まで栄えた。「殷墟インキョ」(河南省安陽市にある殷王朝後期の都市遺跡。甲骨文字が発掘されたことで名高い)
古代王朝の殷インは、周代になってからの命名

殷墟・二里岡遺跡(「中国語スクリプト」中国の歴史・殷より)
 甲骨文字の殷は祭祀犠牲の意味だったが、周代(金文)になってから周が滅ぼした前代の王朝の意味として殷が使われた。殷はBC1600年頃に夏王朝を滅ぼして成立し、初期の都を二里岡(河南省鄭州市)に置いた。のちBC1400年頃に都を商(河南省安陽市)に移し、BC1046年に滅ぼされるまで続いた。都があった安陽市に殷墟がある。甲骨文字がまとまって発見されたのは殷代後期の殷墟からである。

イメージ  
 「さかん」(殷)
 意味(2)の「ねんごろ」(慇)
音の変化 イン:殷・慇

ねんごろ
 イン  心部
解字 「心(こころ)+殷(ねんごろ)」の会意形声。殷には、ねんごろの意があり、心をつけてこの意味を強調した字。心づかいのこまやかなこと。
意味 (1)ねんごろ。心づかいのこまやか。「慇懃インギン」(ていねいに気をくばる。ねんごろなこと)「慇懃無礼インギンブレイ」(うわべは丁寧だが、実は尊大なこと)(2)いたむ。心をいためる。「慇慇インイン」(心をいためるさま)

    ショウ <殷の宮殿>
 ショウ・あきなう  亠部

解字 甲骨文字では古代王朝・殷イン代後期の首都の意味で使われた。上の第一字は初期に多く「冠の形+建物」で王の宮殿を意味する[甲骨文字辞典]。末期に出現する下の第二字および金文以降は、冠の形が変化し下部に口(入口)が付く。篆文は上が辛シン字形となったが、現代字は上部が帝かんむり(帝から巾を除いた形)に変わった。意味は殷の首都のほか、殷が亡びてのち、その民が行商を業としたので商いの意味を表わすといわれるが、[甲骨文字辞典]は「甲骨文字の段階から仮借カシャ(当て字)の用法で下賜する意があり、金文から賠償の意が加わっているので、そこからの転義とするのが妥当である」とする。
意味 (1)あきなう(商う)。あきない(商い)。「商売ショウバイ」「通商ツウショウ」 (2)あきんど。商人。「豪商ゴウショウ」「隊商タイショウ」 (3)はかる(商る)。相談する。「商議ショウギ」「商量ショウリョウ」(あれこれと考える) (4)割り算の答え。 (5)中国古代王朝の名。殷インとも呼ばれる。「商代ショウダイ」「商朝ショウチョウ」「商書ショウショ」(書経の殷代を書いた部分) (6)甲骨文字の意味。殷代後期の首都。
<紫色は常用漢字>

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音符「果カ」<木の果実> と 「菓カ」「踝カ」「夥カ」「顆カ」「課カ」「裸ラ」

2023年11月21日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 カ・はたす・はてる・はて  木部           

解字 甲骨文字は木の上にまるい果実がたくさん(三つ)実ったさま、金文はまるい果実をひとつにして田のなかに中身をあらわす点をいれている。篆文は果実が田に簡略化され、その形が続いて現代字の果になった。果物(くだもの)の意味を表わす。また、花が咲き終わって実が成長し、その結果として果実が収穫されるので、はたす・なしとげる意になる。
意味 (1)くだもの(果物)。木の実。「果実カジツ」 (2)できばえ。しあがり。「成果セイカ」「効果コウカ」 (3)はたす(果たす)。とげる。「結果ケッカ」 (4)思い切りがよい。「果断カダン」「果敢カカン」(思い切りよく大胆に行う) (5)はたして(果たして)。①思っていたように。②本当に。その言のとおりに。 (6)[国]はてる(果てる)。終わる。

イメージ 
 「くだもの」
(果・菓) 
 「まるい実」(踝・夥・顆・裹)
 「形声字」(裸・課)
音の変化  カ:果・菓・踝・夥・顆・裹・課  ラ:裸

くだもの
 カ・くだもの  艸部
解字 「艸(くさ)+果(くだもの)」の会意形声。果が果物以外の意味でも使われるようになったので艸をつけて元の意味を表したのが本来の意。また、果物を加工してできた菓子の意味となり、さらに日本ではデンプンに砂糖を加えて加工した「御菓子」もいう。
意味 (1)[本来の意味]くだもの(菓)。木の実。「水菓子みずがし」(果物) (2)かし(菓子)。常食のほかに食べる嗜好品。間食用の食品。「茶菓チャカ」「銘菓メイカ」「和菓子ワガシ」「洋菓子ヨウガシ

まるい実
 カ・くるぶし  足部
解字 「足+果(まるい実)」の会意形声。足のまるい実のように出たところ。くるぶし。
意味 (1)くるぶし(踝)。足くびの両側にまるく突き出た部分。「踝脛カケイ」(くるぶしとすね) (2)かかと。くびす。はだし。「踝跣カセン」(すあし)
 カ・おびただしい  夕部
解字 「多(おおい)+果(まるい実)」の会意形声。まるい実がたくさんあること。
意味 (1)おびただしい(夥しい)。「夥多カタ」(非常に多い)「夥人カジン」(おびただしい人) (2)くみ。なかま。「夥盗カトウ」(盗賊仲間)「夥党カトウ」(盗賊や謀叛人のなかま)
 カ・つぶ  頁部
解字 「頁(あたま)+果(まるい実)」の会意形声。頭のようにまるい実の意。頭かずを数える語として用いられたと思われるが、小さい実の連想から、小さな丸いつぶの意で使われる。
意味 (1)つぶ(顆)。「顆粒カリュウ」(小さなつぶ)「顆顆カカ」(一つぶ一つぶ) (2)つぶ状のものを数える語。「三顆サンカ」(三つぶ)
 カ・つつむ  衣部

解字 「衣(=ふくろ)+果(まるい実・木の実)」の会意形声。衣は布でつくられたものであるから袋の意としても用いられる。裹は木の実をふくろにつつむこと。衣は上下に分かれている。果の下部がハになるのは異体字。
意味 つつむ(裹む)。つつみ。「一裹イッカ」(ひとつつみ)「薬裹ヤクカ」(薬袋)「裹頭カトウ」(①頭髪を布で包む。②男子の成人の儀式)「裹蒸カジョウ」(つつんで蒸す。笹の葉などにもち米をつつみ蒸してつくる、ちまきをいう)

形声字
 ラ・はだか  衤部
解字 「衤(衣)+果(ラ)」の形声。ラはこの字は同音の(はだか)に通じ、衣を脱いではだかになること。はだぬぐ意。
意味 (1)はだか(裸)。むきだしの。「裸体ラタイ」「裸眼ラガン」(メガネなどを掛けない状態の目) (2)隠しことがない。「赤裸々セキララ
 カ   言部
解字 「言(ことば)+果(カ)」の形声。カは科(区分)に通じ、区分や、区分けして言葉などで割り当てることをいう。
意味 (1)事務分担の区分。「庶務課ショムカ」「課長カチョウ」 (2)わりあてる。わりあて。「課役カエキ」「課税カゼイ」「課程カテイ」(ある期間にわりあてる学業や作業の内容や順序)「課目カモク」(課せられた項目。学校で学ぶ個々の学科) (3)ためす。こころみる。「課試カシ」(課も試も、ためす意。ためすこと)
<紫色は常用漢字>

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音符「句ク」<ひとくぎり>と「駒ク」「狗ク」「枸ク」「佝ク」「拘コウ」「鉤コウ」「苟コウ」「蒟コン」

2023年11月19日 | 漢字の音符
  増補しました。
 ク・コウ  口部

解字 甲骨文は、ふたつのカギ形で口(くち・ことば)を囲ったかたち。言葉がカギ形で囲まれることから、一区切りの短い言葉の意。金文は、カギ形二つが接近し口の上方に移動、篆文はS形が絡まって口を包むように変化し、現代字は、カギ形二つが「勹ホウ」に変化した句になった。短い言葉から、文章や詩の一区切りの意で用いられる。音符になるとき、一区切りであることから「小さくまとまる」、カギ形の意味である「まがる」イメージを持つ。
意味 (1)言葉や文章のひとくぎり。「語句ゴク」(言葉のひとまとまり)「句点クテン」(句の終りにつける点)「句読点クトウテン」(文中の切れ目の符号。「。」が句点。「、」が読点) (2)詩歌の構成単位。「発句ホック」「結句ケック」 (3)俳句の略。「句会クカイ

イメージ 「一区切りの言葉・くぎり」、ひとくぎりであることから「小さくまとまる」、カギ形の意味である「まがる」イメージがある。
 「くぎりの言葉・くぎり」(句・齣)
 「小さくまとまる」(駒・狗)
 「まがる」(拘・佝・鉤)
 「形声字」(枸・蒟・苟)
音の変化 ク:句・駒・狗・枸・佝  コウ:拘・鉤・苟  ク・コン:蒟  セキ:齣

くぎりの言葉・くぎり
 セキ・こま  歯部
解字 「齒(はならび)+句(くぎり)」の会意。歯ならびの一つ一つのくぎりから、芝居や戯曲の一つ一つの場面をいう。現在は映画の1シーンやフィルムの1画面にも使う。
意味 こま(齣)。「一齣ひとこま」(①フィルムの1画面。②劇や映画の1場面。③一つの授業)「両齣リョウセキ」(二こま)「齣目セキモク」(折り目。こまとこまの間)

小さくまとまる  
 ク・こま  馬部  
解字 「馬(うま)+句(ちいさくまとまる)」の会意形声。からだの小さな馬。周代では肩の高さ五尺以上で六尺未満の子馬をいった。(当時の1尺は22.5cm)
意味 (1)こま(駒)。こうま。若い元気な馬。「若駒わかこま」「駒鳥こまどり」(鳴き声が馬のいななきに似る鳥)(2)若い馬が走るようす。「駒隙クゲキ」(年月が速く過ぎること。駒が走るのが隙間から見える短い時間)「白駒ハック」(白色の子馬。つきひ、光陰) (3)小さいものの呼び名。「将棋の駒」
 ク・コウ・いぬ  犭部
解字 「犭(いぬ)+句(小さくまとまる)」の会意形声。小さい犬が原義。のち、イヌの総称となった。また、いやしいものの例えとして用いる。
意味 (1)いぬ(狗)。こいぬ。「羊頭狗肉ヨウトウクニク」(羊の頭を掲げて犬の肉を売る)「狗尾草えのころぐさ」(狗えのこ=子犬、の尾のような穂を出す草) (2)いやしい者のたとえ。「走狗ソウク」(他人の手先となって使われる人)「狗盗クトウ」(こそどろ) (3)「天狗テング」とは(①日本で深山に棲息するといわれる想像状の怪物。顔が赤く鼻が高く翼をもつ。②中国古代の天文で、流星を言った。天狗星)

まがる
 ク・コウ  イ部
解字 「イ(ひと)+句(まがる)」の形声。背のまがった人。
意味 背の曲がった人。「佝僂病クルビョウ」(ビタミンDの欠乏による小児の骨の発育異常)
 コウ・ク・かぎ  金部
解字 「金(金属)+句(まがる)」の形声。先のまがった金属製のものをいう。
意味 (1)かぎ(鉤)。物をひっかけたり止めたりする先の曲がった金属製のもの。まがった形のもの。「自在鉤じざいかぎ」(囲炉裏などの上からつるし、鉄瓶・鍋などを掛け、自在に上下させることのできる鉤)「鉤鼻かぎばな」(鼻筋がカギのように曲がっている鼻。わしばな) (2)かける。ひっかける。「鉤裂(かぎざ)き」(衣服などが鉤に引っ掛かり裂けること)
 コウ・とらえる・こだわる  扌部
解字 「扌(手)+句(=鉤。かぎ)」の形声。カギ(鉤)を手に持ち、引っかけてつかまえること。
意味 (1)とらえる(拘える)。つかまえる。とどめる(拘める)。とどめておく。「拘束コウソク」(とらえて束縛する)。「拘留コウリュウ」(とらえて留める。また、とらえ留める刑罰) (2)こだわる(拘る)。「拘泥コウデイ」(こだわって執着する) (3)[国]かかわる(拘わる)。打消しの助動詞をともなう。「~にも拘わらず」

形声字
 ク  木部
解字 「木(き)+句(ク)」の形声。クという名の木。ミカン科やナス科の低木の名、および[まがる]イメージでも用いる。
意味 (1)「枸橘からたち」(ミカン科の落葉低木。和語は、唐たちばなの略。生垣としてよく用いられる。枳殻キコクとも書く) (2)「枸杞クコ」(ナス科の落葉低木。果実・根・葉は生薬になる)「枸杞酒クコシュ」(枸杞の果実を焼酎に漬け込んで熟成させた薬酒)「枸杞茶クコチャ」(枸杞の葉を茶にしたもの) (3)まがる。「枸木コウボク」(曲木)
 ク・コン  艸部

コンニャクの花(「HIROMI PHOTO」より)

コンニャク芋(「こんにゃく豆知識」より)
解字 「艸(植物)+立(たつ)+句(ク・コン)」の形声。ク・コンという名のまっすぐ立つ花をつける植物の意。コンニャク芋の花は、芋が大きくなった5~6年目にイモから槍が立つように伸びて咲く特徴がある。普通、コンニャク芋は3年目に収穫するので、収穫を放棄するなどした畑以外、花はめったに見られないが、蒟ク・コンは、その花の特徴を文字にしたと思われる。発音のコンは慣用読み。
意味 「蒟蒻コンニャク・クジャク」に使われる字。蒟蒻とは、サトイモ科の多年生作物。地下茎は蒟蒻芋コンニャクいもと呼ばれ、普通3年目のものを収穫し食用とする。蒟蒻芋を粉末にし水を加えてこね、これに石灰乳を加え煮沸し、固めて豆腐のような食品にする。なお、蒻ジャク・ニャクは「艸(くさ)+弱(やわらかい)」で、蒟蒻芋からできた食品がやわらかい意と思われる。
 コウ・ク・いやしくも  艸部
解字 「艸(くさ)+句(コウ)」の形声。ここで艸(草冠)は草の意味でなく、コウ(句)という発音のさまざまな意味を表すための用い方。主に仮定の助字などに用いる。したがって苟の意味は多彩である。
意味 (1)いやしくも(苟くも)。かりにも。もしも。(2)かりそめに(苟に)。かりそめ。しばし。「苟且コウショ」(その場かぎり。かりそめ)「苟安コウアン」(一時の安楽をむさぼる)「苟言コウゲン」(一時のがれの言葉) (3)おろそかにする。「苟禄コウロク」(勤めを怠りながら俸禄をむさぼる) (4)まことに(苟に)「苟(まこと)に日に新たなり日日(ひび)新たにして 又(また)日に新たなり」(日々新しいことに挑戦し、日々新しい発見を求め、日々成長できるように努力しなければならない」(経書「大学」)
<紫色は常用漢字>

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音符「利リ」<実った穀物を刃物で刈る>と「梨リ」「痢リ」「俐リ」「悧リ」「莉リ」「蜊リ」

2023年11月17日 | 漢字の音符
 リ・きく  刂部            

解字 甲骨文字は「禾(実って穂をたれた穀物)+刀(かたな)」。刀で、実った穀物の穂を刈り取る形。穀粒を表す小点を加えている。金文も同じ形で小点が刀の近くにある。篆文は小点がとれた「禾+刀」となり、現代字は刀⇒刂(りっとう)に変化した利になった。意味は刈りとる刀(現在は鎌)がするどい・よく切れる意と、実った穀物を無事に刈り取って結果がよい・収益がでる意となる。
意味 (1)するどい。よく切れる。「鋭利エイリ」 (2)よい。うまくいく。「有利ユウリ」「便利ベンリ」 (3)得なこと。りえき。「利益リエキ」「利息リソク」 (4)通じがよい。うまくはこぶ。「利尿リニョウ」(尿の通じがよい) (5)すばやい。かしこい。「利足リソク」(①足がはやい。②ききあし)「利発リハツ」(かしこい) (6)[国]きく(利く)。ききめがある。「利き酒」「腕利き」 

イメージ 
 「穀物を刈り取る」(利)
 意味(5)の「かしこい」(俐・悧)
 「形声字」(梨・痢・莉・蜊)
音の変化  リ:利・俐・悧・梨・痢・莉・蜊

かしこい
 リ  イ部
解字 「イ(ひと)+利(かしこい)」の会意形声。かしこい人。明代の『字彙ジイ』(1615年)にある比較的新しい字。
意味 かしこい。「怜俐レイリ」(かしこいこと)「俐亮リリョウ」(かしこくあかるい)
 リ  忄部
解字 「忄(心)+利(かしこい)」の会意形声。かしこい心。
意味 かしこい。さかしい。「怜悧レイリ」(かしこいこと)「悧口リコウ」(=利口)

形声字
 リ・なし  木部
解字 「木(き)+利(リ)」の形声。リという名の木。[説文解字]は梨の本字である棃をあげて果名(果物の名)とする。楷書で音符を利にした梨になった。果樹の梨(なし)をいう。
意味 (1)なし(梨)。果樹の名。また、その実。バラ科の落葉高木。白い花をつけ果実は大形で球形、外皮に斑点がある。「梨園リエン」(①梨の木の庭園。②演劇、演劇界のこと。唐の玄宗皇帝が宮中の梨の木の庭園で戯曲や音楽を学ばせた故事から)「梨花リカ」(梨の白い花。春の季語)「梨雪リセツ」(梨の花の白さを雪にたとえる。=梨花雪)「山梨やまなし」(バラ科の落葉高木) (2)地名。「山梨県やまなしケン」(日本の中部地方の県)
 リ  疒部
解字 「疒(やまい)+利(リ)」の形声。発音字典の[広韻・集韻]は「瀉シャ(腹がくだる)也(なり)。音は利」とする。下痢(はらくだり)の症状をいう。
意味 (1)はらくだり。「下痢ゲリ」(はらくだり) (2)伝染病。「赤痢セキリ」(赤い血便が出る伝染病)「疫痢エキリ」(幼児の急性伝染病)
 リ  艸部
解字 「艸(草木)+利(リ)」の形声。リという名の木。モクセイ科ソケイ属の植物(ジャスミン)のサンスクリット(梵語)名・mallikaマリカー(茉莉花)に当てる語に使われる。

水に浮かべた茉莉花の花(「ハルメク365 茉莉花の育て方」より)
意味 「茉莉花マツリカ」とは、モクセイ科の常緑小低木。ジャスミンの一種。花は芳香があり中国では乾燥させてお茶にする。「茉莉マツリ」(=茉莉花)「茉莉花茶マツリカチャ」(ジャスミンティー)
 リ・あさり  虫部
解字 「虫(かい)+利(リ)」の形声。虫は、ここでは貝の意。リという名の貝で蛤蜊コウリに用いられる。日本では最後にリがつく貝の「あさり」に当てる。
意味 (1)「蛤蜊コウリ」とは、蛤(はまぐり)の類の二枚貝で、シオフキガイを言う。また、ハマグリを言うこともある。 (2)[国]蜊(あさり)。浅蜊(あさり)・鯏(あさり)とも書く。淡水が混じる内湾の砂泥中にすむ二枚貝。潮干狩でよく獲れる。
<紫色は常用漢字>

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音符「戎ジュウ」 <武装した兵士> と 「絨ジュウ」「賊ゾク」

2023年11月15日 | 漢字の音符
 ジュウ・えびす  戈部ほこづくり   


 上が戎、下が甲
解字 「戈(ほこ)+十(かぶと)」の会意。甲骨文と金文は戈(ほこ)に十字形。十字は亀の腹の甲羅の模様を示し、甲羅⇒甲(かぶと)の意。攻撃の武器である戈ほこと防ぐ武器である甲かぶとをつけた武人を表す。篆文は甲の字の変形をつける。現代字の戎は、甲(かぶと)が甲骨・金文の「十」に元がえりした形。
覚え方  じゅう(・たくさん)の武器()を持つえびす(
意味 (1)つわもの。兵士。軍隊。「戎伍ジュウゴ」(軍の隊列)「戎士ジュウシ」(兵卒)「戎馬ジュウバ」(戦いに使う馬)(2)いくさ。戦争。「戎器ジュウキ」(戦争に使用する刀剣・銃砲など) (3)えびす(戎)。古代中国の西方異民族。「戎夷ジュウイ」(野蛮な国の人。戎は中国西方の、夷は東方の異民族) 「戎狄ジュウテキ」(野蛮な国の人。戎は西方、狄は北方の異民族)
日本の戎(えびす)

十日戎の熊手(「姫路みたい」より)
(4)[国]えびす(戎)。①エミシ(蝦夷)の転じた言葉。夷とも書く。蝦夷えぞ(古代の奥羽から北海道に住み大和朝廷に服属しなかった人々)に同じ。②都から離れた開けぬ土地の人民。③荒々しい武士。京都人が東国武士をさした言葉。「戎姿えびすすがた」(よろいをつけた姿)④日本の民間信仰。七福神のひとつ。「戎えびす神社」(夷神社、胡神社、蛭子神社、恵比須神社などとも表記。外からきた寄神信仰が中心。海上・漁業神。商売繁盛の神)「戎橋えびすばし」(大阪市の道頓堀に架かる橋。今宮戎神社への参道にあったから)「十日戎とおかえびす」(正月十日に行われる戎を祭る神社のお祭り。=十日恵比寿)

イメージ 
 「武装した兵士」
(戎) 
 「形声字」(絨)
 「同体異字」(賊)
音の変化  ジュウ:戎・絨  ゾク:賊

形声字
 ジュウ  糸部
解字 「糸(いと)+戎(ジュウ)」の形声。ジュウは柔ジュウ(やわらかい)に通じ、やわらかい糸の意。やわらかい糸や毛をいう。
意味 (1)刺しゅう用の練り糸。 (2)やわらかく細い毛。羊などの細毛。また、その織物。「羊絨ヨウジュウ」(羊の毛織物) (3)表面にけばのある織物。「絨毯・絨緞ジュウタン」(表面にけばのある厚い敷物。カーペット) (4)「絨毛ジュウモウ」(小腸などの内壁に存在する突起。この突起には表面積を増やすため、更に小さな突起が無数に存在している。)

同体異字
 ゾク  貝部

解字 金文は左から、「逆向きの刀+鼎(かなえ)+戈(ほこ)」の形。「刀+鼎(かなえ)」は則ソク(のり・規範)を表す。篆文は鼎⇒貝になった「則(貝+刀)+戈(ほこ)」の会意形声。世の中の規範(則)を戈(ほこ)で打ち破ること。世の中の秩序を武力でそこなう悪者の意。そこなう・秩序に刃向かう悪者・どろぼう、の意となる。現代字は、篆文の刀⇒十に変化した賊になった。篆文から形が大きく変わったので戎と結びつけて覚えると便利。ただし、発音は則ソクが濁音になったゾクである。
覚え方 「(財貨)+(武装した兵士)」で、武装した兵士が財貨を奪って盗になる。
意味 (1)そこなう。傷つける。「賊害ゾクガイ」(そこなう)(2)ぞく(賊)。国家や君主にそむく。「国賊コクゾク」「賊臣ゾクシン」(3)ぬすむ。どろぼう。「山賊サンゾク」「盗賊トウゾク」(4)「烏賊イカ」(墨魚とも書き、墨すみ(=烏カラス。黒い)を出して敵をあざむき、吸盤をもち賊のように攻撃してエビ類や小魚を捕るイカ。)
<紫色は常用漢字>

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音符「寸スン」と「忖ソン」「村ソン」「厨チュウ」「肘チュウ」「酎チュウ」「討トウ」

2023年11月13日 | 漢字の音符
  甲骨文字は肘(ひじ)の原字
 スン・ソン  寸部           

解字 甲骨文字は、三本ゆびで表した手の下方の腕の湾曲する部分に短い曲線をつけ「ひじ」を表わした指示文字。肘ひじの原字。寸は、もと肘を意味した[甲骨文字小字典]。篆文は 「又(て)+-印」 の形になり、手の親指一本分の幅の意味に変化した。指の幅は人によってまちまちなので、のち時の政権によって公定尺が決められた。長さの意味のほか、親指一本の幅から、すこし・わずかの意ともなる。ひじの意味は音符に残っている。また、音符では、又(て)と同じく手の意味で使われる。寸は部首になり、手にもつ意(尊・専・対など)を表す。
意味 (1)長さの単位。尺の十分の一。日本で1寸は約3㎝。周代では、2.25㎝。「五寸ゴスン」(1寸の5倍。約15㎝) (2)長さ。「寸法スンポウ」(各部分の長さ。また、基準) (3)すこし。わずか。「寸暇スンカ」(わずかのひま)「一寸ちょっと」 (4)はかる。

イメージ
 「ながさ」
(寸・吋・忖) 
 本来の意味である「ひじ」(肘)
 「形声字」(村・厨・酎・討)
 
音の変化  スン:寸  ソン:忖・村  チュウ:厨・肘・酎  トウ:吋・討

ながさ
 トウ・スン・いんち  口部
解字 「口(くちまね)+寸(長さ:一寸)」 の会意形声。イギリスの一寸にあたる長さを、口まねする意の字。古くは、しかる声をあらわした字。
意味 インチ(吋)。ヤード・ポンド法の長さの単位。1インチは約2.5㎝。現代中国語の発音は、cùn(ツン)
 ソン・はかる  忄部
解字 「忄(心)+寸(長さをはかる)」の会意形声。寸は長さの意のほか、長さをはかる意がある。忖は、相手の心をおしはかること。
意味 はかる(忖る)。おしはかる。「忖度ソンタク」(他人の心をおしはかること。度もはかる意)「思忖シソン」(思いはかる)

ひじ
 チュウ・ひじ  月部にく
解字 「月(からだ)+寸(ひじ)」 の会意形声。寸は本来、ひじを意味したが、長さの単位に変化したので、月(からだ)を加えて元の意味を表わした。
意味 ひじ(肘)。腕の関節の外側部分。「肘鉄砲ひじデッポウ」「肘掛(ひじか)け」「肩肘かたひじ」「制肘セイチュウ」(肘を制する。自由に行動させない)

形声字
[邨] ソン・むら  木部
解字 古くは邨ソンで「阝(おおざと。町やむら。+屯トン⇒ソン(たむろする)」の形声。人々が寄り集まるむらの意。のち、東晋(317~420)の頃から邨に代わり同音の村ソンが使われるようになった。村はもと木の名前だったとされるが、現在の解字は「木(き)+寸スン⇒ソン(=屯。たむろする)」で、人々がたむろする木の茂る村となる。
意味 (1)むら(村)。「村落ソンラク」(村ざと)「寒村カンソン」(貧しい村) (2)むら。地方自治体の一つ。「村長ソンチョウ」「村営ソンエイ」(3)姓。「村田」「村山」「田村」「邨田むらた
厨[廚] チュウ・ズ・くりや  厂部
解字 「厂(やね)+豆(たかつき)+寸チュウ(て)」の会意形声。豆はマメでなく食器のたかつきの意。厨は、屋根の下で食器を寸(手)に持ち、食事の準備をする形で、調理場の意味を表す。寸はチュウの発音で音符になっている。なお、ズの発音で、食器などをいれるはこの類をいう。廚チュウは異体字。
意味 (1)くりや(厨)。台所。料理場。「厨房チュウボウ」(調理場)「厨芥チュウカイ」(厨房から出るくず) (2)ひつ。はこ。「厨子ズシ」(調度品をいれる戸棚。仏像を安置する仏具)
 チュウ  酉部
解字 「酉(さけ)+寸(チュウ)」 の形声。チュウは丑チュウ(手を握った形)に通じる。ここでは酒の原酒(もろみ)を絞る意味と思われる。[説文解字]は「三重醇ジュン酒也(なり)」とする。発音字典の[広韵]は「三重釀ジョウ酒」とする。この酒は、原酒(もろみ)をしぼったものをベースにさらに発酵させて、これを三度くりかえした芳醇な酒をいう。なお、日本では蒸留して造った濃い酒をいう。
意味 (1)何度もかもした濃い酒・よい酒。「酎酒チュウシュ」(祭祀に用いる重ねてかもした酒)「醇酎ジュンチュウ」(こい酒) (2)[国]しょうちゅう。「焼酎ショウチュウ」(発酵した酒を蒸留して作る濃い酒)「酎(チュウ)ハイ」(チューハイ。焼酎ハイボールの略。焼酎を炭酸水で割った飲み物)
 トウ・うつ  言部 [䚯]
解字 「言(ことば)+寸(スン⇒トウ)」の会意形声。[説文解字]は「治める也(な)り。言に従い寸に従う」とする。会意文字であり意味が多く、①たずねる。しらべる。②意見などを、たたかわせる。③うつ。征伐する。などの意味があるが、討の異体字に「言+刀」の䚯トウ(言い立てて刀で切る。うつ。討ち取る)があり、討つ(殺す・斬る)意は䚯トウに由来している。
意味 (1)たずねる(討ねる)。しらべる。「討究トウキュウ」(たずねしらべる)「検討ケントウ」 (2)たたかわせる。相談する。「討論トウロン」(意見をたたかわせて議論する)「討議トウギ」(意見をたたかわせて相談する) (3)うつ(討つ)。罪を言いたててうつ。「討伐トウバツ」「掃討ソウトウ
<紫色は常用漢字>

参考 寸は部首「寸すん」となる。部首の寸は、長さの単位でなく「手にとる」意を表し、又と同じ意味でつかわれる。常用漢字で12字、約14,600字を収録する『新漢語林』では28字が寸部に収録されている。主な字は以下のとおり。
常用漢字 12字 
 寸スン (部首)
 導ドウ・みちびく(寸+音符「道ドウ」)
 対[對]タイ・つい(丵+土+寸の会意)
 射シャ・いる(身+寸の会意)
 将[將]ショウ(爿+月+寸の会意)
 尊ソン・とうとい(寸+酋の会意)
 専[專]セン・もっぱら(寸+叀の会意形声)
 尉(寸を含む会意)
 寺ジ・てら(土+寸の会意)
 封フウ(寸+圭の会意)
 尋ジン・たずねる(寸を含む会意)
 寿[壽]ジュ・ことぶき(寸を含む会意)
 このうち射シャ・将ショウ・尊ソン・専セン・尉・寺・封フウ・尋ジン・寿ジュが音符になる。

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音符「毛モウ」<け> と 「耗モウ」「耄モウ」「尾ビ」「梶ビ」

2023年11月11日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 モウ・ボウ・け  毛部          

解字 体から生えている毛の象形。金文は毛根がついた形。人や動物の毛を表わす。毛は体表の生え際から分かれて生えることはあるが、金文のように途中から枝分かれすることはない。密集する毛を見て、枝分かれしていると思ったのであろう。
意味 (1)け(毛)。人や動物の毛。「毛髪モウハツ」「毛筆モウヒツ」 (2)細くて小さいもの。わずか。「毛細血管モウサイケッカン」 (3)草木が生えること。「二毛作ニモウサク」「不毛フモウの地」
参考 毛は部首「毛け」になる。漢字の左右および下部に付いて、毛および毛で作られたものを表す。常用漢字は部首の毛1字のみ。主な字は以下のとおり。
 毛モウ・け(部首)
 毬キュウ・まり(毛+音符「求キュウ」)
 絨ジュウ(毛+音符「戎ジュウ」)・厚地の毛織物
 毯タン・けむしろ(毛+音符「炎エン」)・もうせん
 毫ゴウ・すこし(毛+音符「高コウ」)
 氈セン・けむしろ(毛+音符「亶タン・セン」)
 毳ゼイ・むくげ(「毛+毛+毛」の会意)など

イメージ 
 「人や動物の毛」
(毛・尾・梶・旄・毳)
 毛の意味(2)から「細い・わずか」 (耗・耄・粍・瓱・竓)
 「会意形声字」(髦)
音の変化  モウ:毛・耗・耄  ビ:尾・梶   ボウ:旄・髦  ゼイ:毳
 <国字> ミリ:粍・瓱・竓

動物の毛
 ビ・お  尸部しかばね

解字 甲骨文は、かがんだ人の尻から生えている毛を描き、尻から生えている毛を表す。人に尻尾はないので、比喩的表現で動物の尻尾を表している。戦国以降、かがんだ人⇒人が腰かけた形になり、楷書は「尸+毛」の尾となった。意味は動物の尾を表す。
意味 (1)お(尾)。動物のしっぽ。「尾行ビコウ」「首尾シュビ」(首と尾。初めと終わり)「交尾コウビ」(動物の交接。生殖のとき動物が尾と尾を交わらせるように見えることから)「尾花おばな」(ススキ) (2)細長い物の末端。「末尾マツビ
 ビ・かじ  木部
解字 「木(き)+尾(動物のしっぽ)」 の会意形声。日本では動物のお尻から生え下がっている尾のように、船尾から下げる木製の方向舵などの意に用いる。また、クワ科コウゾ属の木の名に用いる。中国では木の先の意で梢(こずえ)の意味がある。
意味 (1)かじ(梶)。舵とも書く。船尾につけて船の進行方向を決める道具。「梶を切る」(梶を動かして方向を変える) (2)人力車などを引っぱるための柄。「梶棒かじぼう」 (3)かじのき(梶の木)。クワ科コウゾ属の落葉高木。コウゾを古くは「カゾ」といい、それが転訛した名とされる。「梶紋かじもん」(梶の葉を図案化した家紋」「梶鞠かじまり」(七夕のとき、梶の枝に鞠をかけて二星に供える行事) (4)[中国]こずえ(梢)
 ボウ・はたかざり  方部
解字 「旗の略体+毛(牛の毛)」 の会意形声。竿頭に、からうしの尾の毛をつけた旗の一種。
 
ボウを持つ使節(中国のネットから。現在なし)
意味 (1)はたかざり(旄)。軍の指揮や使節の旗に用いる。「旄麾ボウキ」(軍を指揮する旗)「旄節ボウセツ」(使者のもつ旗)「旄牛ボウギュウ」(からうし。ヤク。からうしの尾の毛を旄に用いることから) (2)耄モウ(おいぼれる)に通じ、としより。「旄期ボウキ」(老人)
 ゼイ・セイ・むくげ  毛部
解字 「毛+毛+毛」 の会意。密生する細い毛をいう。
意味 (1)むくげ(毳)。にこげ。「毳毛ゼイモウ」(細くやわらかい毛) (2)毛織物。「毳衣ゼイイ」(毛織の服)「毳帳ゼイチョウ」(毛織の幕)
 キョウ・(セイ・ゼイ)・そり  木部

トナカイが引く橇(そり)(中国ネットの検索画面より)
解字 「木(木製)+毳(セイ⇒キョウ)」の形声。橇キョウの異体字に橋キョウがある。橋は横に渡した木組であり左右に手すりがある構造物であることから、橋には乗り物である「そり」の意があった。橇キョウは漢代から見える。なぜ喬に毳ゼイ⇒キョウの字が当てられたのか不明である。橇キョウは古くは泥路上を動物に引かせて走行する乗り物であった。[史記·夏本紀]に「水行乗船,泥行乗橇」とある。また雪上を走る乗り物として用いられた。なお、かんじき(橇)の意味には蹻キョウが異体字となっている。
意味 (1)そり(橇)。泥地上や雪上をすべり走る乗り物。「橇車キョウシャ」(そり)「雪橇ゆきぞり」 (2)かんじき(橇)。雪中を歩く時、踏み込まないように足にはく用具。

細い・わずか
 モウ・コウ・へる  耒部すきへん
解字 「耒(すき)+毛(細くなる)」 の会意形声。耒ライは土地を掘り起こすスキの象形。「耕(たがやす)」の偏にも使われている。スキを使って土を起こしていると、すり減って細くなる意で、すり減ること。
意味 へる(耗る)。すりへる。へらす。「消耗ショウモウ」「摩耗マモウ」「心神耗弱シンシンコウジャク」(心がすり減って弱くなること)
 モウ・ボウ・ほうける  老部
解字 「老(おいる)+毛(細くなる)」 の会意形声。やせ細って衰えた老人。
意味 おいぼれる。ほうける(耄ける)。「耄碌モウロク」(年老いて心身の働きがにぶる)「衰耄スイボウ」(衰えおいぼれる)
<国字> ミリメートル  米部
解字 「米(メートル)+毛(ほそい)」 の会意。毛の細さを示す長さの単位。1メートルの千分の一を示す。
意味 ミリメートル。長さの単位。1000分の1メートル。
 <国字> ミリグラム  瓦部  
解字 「瓦(グラム)+毛(わずか。1000分の1)」 の会意。
意味 ミリグラム。mg。重さの単位。1000分の1グラム。
 <国字> ミリリットル  立部
解字 「立(リットル)+毛(わずか。1000分の1)」 の会意。
意味 ミリリットル。ml。容量の単位。1000分の1リットル。1ml(ミリリットル)=1cc(シーシー)  

会意形声字
 ボウ・モウ・たれがみ  髟部
解字 「髟(長いかみ)+毛(モウ・ボウ)」 の会意形声。髟ヒョウは「镸(長の変形)+彡(細かいものがたくさん並んでいるさま)」 で、あたまの髪の意。そこに毛け(ボウ・モウ)がつき、髪のなかの長い毛の意で、子供や若者が前に垂らす前髪をいう。
意味 (1)たれがみ(髦)。さげがみ。子どもや若者の髪がひたいの前に垂れ下がっているもの。「髦髫ボウチョウ」(さげがみの子ども。髦も髫も、たれがみの意)「両髦リョウボウ」(両側に振り分けたたれがみ。幼児)「時髦ジボウ」(流行している。モダンな。垂れがみ以外にも言う) (2)前髪のすぐれた若者。「髦士ボウシ」(すぐれた人)「髦彦ボウゲン」(すぐれた人)「髦俊ボウシュン」(すぐれた人) (3)たてがみ(髦)。馬の長い前髪。「髦馬ボウバ」(長いたてがみの馬) 
<紫色は常用漢字>

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