漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

紛らわしい漢字 「夜ヤ」 と 「液エキ」

2023年06月09日 | 紛らわしい漢字 
 「夜ヤ・よる」に 氵(さんずい) がついて、なぜ液エキと発音が変わるのか? 

  ヤ <日没を中心にして月のでる方>
 ヤ・よる  夕部 


  上が夜ヤ、下が亦エキ
解字 夜の金文が大の字に立った人の右に夕または月の形を描いていることで分かるように、「月(つき)+亦エキの略体」の会意。亦エキ(両わき)は大の字に立った人の両側にハの字をつけた形で、大を中心にして両側に同じものがある意。夜の篆文(てんぶん=秦代)は、大の一方に夕(=月)を描いた形で、両側の一方が月の出る夜であることを示す(もう一方は昼を暗示している)。現代字は隷書(漢代)を経て「夜」へと原形をとどめぬほどに変化した。なお、夜を音符に含む字は、ヤと発音する場合は「よる」の意。エキと発音する場合は「亦(両わき)」の意味で用いられる。
意味 (1)よ(夜)。よる(夜)。「夜景ヤケイ」「夜陰ヤイン」「除夜ジョヤ」(おおみそかの夜)「深夜シンヤ」「月夜つきよ」「昼夜チュウヤ」 (2)くらい。

イメージ 
 「よる」
(夜) 
 「エキの音(=亦。両わき)」(液)
音の変化  ヤ:夜  エキ:液

エキの音
 エキ・しる  氵部
解字 「氵(みず)+夜(エキ=亦。両わき)」の形声。両わきから流れ落ちる汗の意。転じて、物の内部から出る汁(しる)の意となる。
意味 (1)しる(液)。物の内部から出るしる。「液汁エキジュウ」(しる。つゆ) 「体液タイエキ」(汗・唾(つば)・涙などの総称) (2)水状のもの。「液体エキタイ」「血液ケツエキ」「液化エキカ」(気体が液体に変化すること)「液晶エキショウ」(液状結晶の略。液体と固体の中間の状態にある物質) 
<紫色は常用漢字>
 
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音符 「市シ」 <市場・いちば> と 「姉シ」「柿シ」「肺ハイ」

2023年06月07日 | 漢字の音符
 旆ハイ・はた、を追加しました。
 シ・いち  巾部   

解字 甲骨文第1字は「止(足の形)+丅(神への供物をのせる机=示)」の形。第2字は止の変形に小点(水滴または血)」で、意味は時間に関する語だという[甲骨文字字典]。金文は止の左右に小点が移動し、下に丅⇒丁となってつき、市場の意味で使われている。篆文から形が変わり、第1字は止の上部が屮となり、止の下部と左右の小点がHになり、下に丁の変形がつく。第2字は「屮の下部がのびてHをつらぬいた形。この字形を掲載している[説文解字]は「売り買い(の者が)が之(ゆ)く所也。市に垣(かき)有り」と書いており市場の様子がわかる。隷書で「十の下がのびて冂をつらぬく形になり、現代字で「亠+巾」の市になった。 字源がはっきりと分からない字であるが、発音は止に由来し、意味は甲骨文字で時間に関する語であることから、市場の意味になったと思われる。
意味 (1)いち(市)。人が集まって物の売り買いをする所。「市場シジョウ・いちば」「朝市あさいち」 (2)商いをする。売り買いをする。「市利シリ」(商売のもうけ)「市況シキョウ」(商品・株などの取引き状況) (3)まち。人家が多くて賑やかなところ。「市街シガイ」「市井シセイ」 (4)し(市)。行政上の自治団体。

イメージ 
 「市場・人があつまる」
(市・鬧) 
 「形声字」(姉・柿)
 「同体異字」(肺・柿・旆)
音の変化  シ:市・姉・柿  ドウ:鬧  ハイ:肺・柿・旆
鬧ドウの音符は「鬥トウ」

人があつまる
 ドウ・トウ・さわがしい  鬥部
解字 「鬥トウ(あらそう)+市(多くの人があつまる)」の会意形声。鬥トウは二人の人が手でつかみあいをしている形。それに市がついた鬧は、多くの人が集まってあらそうように騒がしいこと。音符は鬥トウだが、ここに重出した。
意味 (1)さわがしい。さわぐ。にぎやか。さかん。「鬧市ドウシ」(さわがしい市場。繁華街)「鬧熱ドウネツ」(こみあってさわがしい)「鬧歌ドウカ」(やかましく歌う) (2)争い。いかり。

形声字
 シ・あね  女部  
解字 「女(おんな)+市(シ)」の形声。シという発音の女。[説文解字]は、「女の兄なり」とし、同じ親から生まれた年上の女をいう。シについては、同音の姒シ・ジ(あね)、始(はじめ。女の兄弟のはじめ)から説明する説があるが、上古音が異なるらしい。しかし、類似音として理解したら、覚えるには差し支えないと思う。この字は姊が元の字だそうだが、姉の異体字である。
意味 (1)あね(姉)。同じ親から生まれた年上の女。「姉妹シマイ」「姉婿あねむこ」 (2)義理の姉。「義姉ギシ」 (3)婦人を親しみ、また尊敬してよぶ言葉。
 シ・かき  木部 
解字 「木(き)+市(シ)」の形声。シという名の木。[説文解字]は「赤い実の果なり」とし、かき(柿)をいう。この字は柹が元の字だそうだが、この字も柿の異体字である。
意味 かき(柿)。かきの木。「干柿ほしがき」「渋柿しぶがき」「熟柿ジュクシ

同体異字
 ハイ  月部にく

解字 篆文は、「月(からだ)+市ハイ(分かれる)」の会意形声。市ハイは「屮(草の芽)+八(ひらく)」で双葉が分かれ出るさま。それに月(からだ)がついた肺は、咽から入った気管が二つに分かれる肺を意味する。現代字の肺の字では、市に変化しているが、市場の「市」とは別字である。
意味 (1)はい(肺)。呼吸を司る器官。「肺臓ハイゾウ」「肺活量ハイカツリョウ」 (2)こころ。心のなか。「肺腑ハイフ」(①肺臓。②心のなか。③大切な所)
 ハイ・こけら  木部

「日本古来在来工法の柿葺(こけらふき)とは?」(第2回より)
解字 「木(き)+市ハイ(分かれる)」の会意形声。木材を細かく分けた板。また、木の削りくず。柿(かき)の字と同じ形だが別字。
意味 (1)[国]こけら(柿)。こっぱ。木材を細長く削りとった板。「柿板こけらいた」(屋根を葺くヒノキ・マキなどの薄い板)「柿葺(こけらぶ)き」(柿板で葺いた屋根)「柿落(こけらおと)し」(新築劇場の初興行) (2)木の削りくず。木簡の削りくず。
 ハイ・はた  方部

①は下が凸凹の旗。②縁が△△の旗。(中国ネットの検索サイトより)
解字 「方𠂉(はた。旗)+市ハイ(分かれる)」の会意形声。旗の布地の縁(ふち)が凸凹や△△の形に分かれているもの。
意味 (1)はた(旆)。はたあし。旗の布地に凸凹や△の形が付いているもの。「大旆タイハイ」(天子や将軍のしるしとする大きな旗)「牙旆ガハイ」(竿の上に牙がついた旗)「酒旆シュハイ」(酒屋の目印旗) (2)旗の総称。「旆旌ハイセイ」(はた。旆も旌も旗の総称)「旆旆ハイハイ」(旗が風になびくさま)
<紫色は常用漢字>

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音符「辟ヘキ」<お尻の肉を切り裂く>と「壁ヘキ」「璧ヘキ」「癖ヘキ」「避ヒ」

2023年06月05日 | 漢字の音符
 ヘイを追加しました。
 ヘキ・ヒ  辛部

解字 甲骨文は、「坐った人である卩セツ+辛の一種(刃物)」の会意で、人の身体を刃物で切断する形。肉刑を受けた者を表す[甲骨文字辞典]。(なお、甲骨文字辞典は足首を切断する肉刑とするが、私は字統を参考に金文で尻の肉を切り取る形としている)。金文は卩セツの横に口(肉片)をつけ、人の後ろから刀物で尻の肉を切り取る刑罰を表す。現代字は卩セツ⇒尸に変化した辟になった。意味は刑罰の意から、刑罰権をもつ君主などの意を表し、語義は変遷、多様化した[字統を参考]。 
意味 (1)つみ。刑罰。「大辟タイヘキ」(重い刑罰。死刑) (2)君主。「辟公ヘキコウ」(諸侯) (3)さける。(=避)「辟易ヘキエキ」(①相手をさけてしりぞく。しりごみする。②こまる。閉口する)「辟邪ヘキジャ」(魔除け)

イメージ  
 尻の肉を「切り裂く」(辟・劈・霹・檗・襞・躄)
 切り裂く部分が尻なので真中から「かたよる」(避・癖・僻・嬖・臂・壁)
 「その他」(璧・闢・譬)
音の変化  ヘキ:辟・劈・霹・襞・躄・璧・壁・癖・僻・闢  ヘイ:嬖  バク:檗  ヒ:避・臂・譬

切り裂く
 ヘキ・さく・つんざく  刀部
解字 「刀(かたな)+辟(切り裂く)」の会意形声。刀で切り裂くこと。
意味 さく(劈く)。つんざく(劈く)。「劈開ヘキカイ」(さきひらく。ひびが入って割れる)「劈頭ヘキトウ」(物事のはじまり。まっさき)
 ヘキ  雨部
解字 「雨(あめ)+辟(切り裂く)」の会意形声。雨を切り裂いて鳴る雷の音。
意味 雨を切り裂いて鳴りひびく雷。「霹ヘキレキ・かみとき」(ひき裂くような激しい雷。落雷。レキは雨の中を鳴り響く意)「晴天の霹靂」(晴天に突然起こる落雷。突然起こる変動)
 バク・ハク  木部
解字 「木(き)+辟(裂く)」の会意形声。樹木の皮をはぐ形で、はいだ皮を利用する木をいう。

黄檗(中国の漢方薬通販サイトより)
意味 「黄檗オウバク」に使われる字。黄檗(きはだ・オオバク)とは、ミカン科の落葉高木。樹皮から胃薬の黄檗をつくり、また、黄色の染料ができる。「黄檗色きはだいろ」(鮮やかな黄色)「黄檗山オウバクサン」(①中国福建省にある山。禅の道場である万福寺がある。②京都府宇治市にある黄檗宗の本山、万福寺の山号)
 ヘキ・ひだ  衣部
解字 「衣(ころも)+辟(切り裂く)」の会意形声。切り裂いたように見える衣の細くたたんだ折目。
意味 ひだ(襞)。袴(はかま)や衣服に、細く折りたたんだ折目。ひだめ。ひだのような地形。「山襞やまひだ」「褶襞シュウヘキ」(ひだや、しわ状のもの)
 ヘキ・ビャク  足部
解字 「足(あし)+辟(切る)」の会意形声。刑罰で両足を切ること。あしなえ。
意味 (1)あしきりの刑。あしきり。あしなえ。 (2)いざる。膝行する。「躄疾ヘキシツ」(あしなえ)「躄行ヘキコウ」(いざる)「悶絶躄地モンゼツビャクチ」(苦しみもだえ地を転げ回る)

かたよる
 ヒ・さける  辶部
解字 「辶(ゆく)+辟(かたよる)」の会意形声。真ん中でなく、かたよったところをゆくこと。さけて通る意となる。
意味 さける(避ける)。よける。のがれる「避難ヒナン」「避暑ヒショ」「逃避トウヒ
 ヘキ・くせ  疒部
解字 「疒(やまい)+辟(かたよる)」の会意形声。普通とは異なるかたよった病的な習性のこと。
意味 くせ(癖)。かたよった習性。「性癖セイヘキ」「盗癖トウヘキ」「潔癖ケッペキ」(不潔を極度にきらうこと)
 ヘキ・かたよる・ひがむ  イ部
解字 「イ(ひと)+辟(かたよる)」の会意形声。一方にかたよった見方をする人。また、中央でなくかたよった地域をいう。
意味 (1)かたよる(僻る)。ひがむ(僻む)。よこしま。「僻見ヘキケン」「僻説ヘキセツ」 (2)かたいなか。かたすみ。「僻地ヘキチ」「僻村ヘキソン
 ヘイ・きにいり  女部
解字 「女(おんな)+辟(かたよる)」の会意形声。一人の女をかたよってかわいがること。発音は、ヘキ⇒ヘイに変化。
意味 (1)おきにいり(嬖)。かわいがる。身分が低く特に愛される女性。「而(しか)して是の女を嬖ヘイする也。[鄭語]」「嬖妾ヘイショウ」(お気に入りの側室)「嬖人ヘイジン」 (2)寵愛される家臣。「嬖竪ヘイジュ」(お気に入りの小臣)
 ヒ・ひじ  月部
解字 「月(からだ)+辟(かたよる)」の会意形声。からだの正面から、かたよったところにある両方の「うで」が原義。日本では、ひじの意でも使う。
意味 (1)うで。かいな。「臂環ヒカン」(腕輪)「猿臂エンビ」(猿のように長い腕)「猿臂をのばす」(2)ひじ(臂)。腕の折れ曲がる部分の外側。肘、肱とも書く。
 ヘキ・かべ  土部
解字 「土(つち)+辟(かたよる⇒外側)」の会意形声。建物の外側にある土製のかべをいう。
意味 (1)かべ(壁)。土の仕切り。部屋と部屋との間の仕切り。建物と外界の仕切り。「障壁ショウヘキ」(へだてのかべ。さまたげ)「壁画ヘキガ」 (2)かべのように切り立った所。「岩壁ガンペキ」「絶壁ゼッペキ

その他
 ヘキ  玉部
 玉璧

解字 甲骨文は、丸いかたちと刃物の象形である辛の一種に従う。円形の玉を刃物で作っている様子と推定される。意味は供物として用いられる玉器[甲骨文字辞典]。金文から「玉+辟ヘキ」の形になったが、甲骨文の発音である「ヘキ」が辟に置きかわり、意符として玉がついた(玉は金文~篆文は王で表される)。意味は円いかたちの玉で、中に円い孔があいているものをいう。現代字は下に玉がついた璧となるが、玉が下につく字は極めて少なく、よく使う漢字では璧の他に、玉ギョクジ(天子の印)ののみ。
意味 (1)中央に孔のある円板状の玉。たま。「璧玉ヘキギョク」 (2)たまのように立派なもの。「完璧カンペキ」「双璧ソウヘキ」(一対の宝玉。優劣のないすぐれた二つのもの)
 ヘキ・ビャク  門部

解字 金文は、「門(もん)+両手」で、門を手で開く形から、ひらく意。篆文から「門+辟(ヘキ・ビャク)」の形声となった。意味は金文の形からひらく意。また、劈ヘキ(切り裂く)に通じて、門の所で切り裂く、すなわち撃退する意がある。
意味 (1)ひらく(闢く)。「天地開闢テンチカイビャク」(世界のはじめ) (2)しりぞける。「闢邪ヘキジャ」(邪悪をしりぞける)
 ヒ・たとえる  言部
解字 「言(ことば)+辟(ヒ)」の形声。ヒは比(くらべる)に通じ、あるものを他と比べて言うこと。たとえる意となる。
意味 たとえる(譬える)。たとえ(譬え)。「譬喩ヒユ」(類似したものを例にあげて説明すること。譬も喩も、たとえる意。=比喩)「譬説ヒセツ」(説きさとす)
<紫色は常用漢字>

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音符「六ロク」<テント>「宍二ク」 と 「冥メイ」<くらい>「瞑メイ」「螟メイ」

2023年06月03日 | 漢字の音符
 ロク・む・むつ・むっつ・むい  ハ部

解字 小さな幕舎バクシャ(テントの家)の形。その原義で用いられることなく、その音を仮借カシャ(当て字)して数の六に用いる[字統]。
意味 むっつ(六つ)。数の名。「六(む)つ切り」「六日むいか」「六法ロッポウ」「六月ロクガツ」「六地蔵ロクジゾウ」「丈六ジョウロク」(身のたけが一丈六尺の仏像)

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 「数字の六」
(六) 
 「ニクの音」(宍)
音の変化  ロク:六  ニク:宍

ニクの音
 ニク・しし  宀部
解字 「宀(たてもの)+六(ニク)」の形声。ニクは肉ニクに通じ、宍は肉をうる店の意。転じて肉を表す。[学研漢和]は、六ロクは江南方言でニクと混同するとしている。
意味 (1)しし(宍)。獣類の肉。肉の俗字。「宍人ししびと」(肉類を料理する人)(2)姓。「宍戸ししど


     メイ <くらい>
 メイ・ミョウ・ベキ・くらい  冖部        
     
解字 篆文は、「冖(おおう)+日(ひ)+六(おおう)」の会意。六はテントの形の象形で、おおう意。これ以上古い形が分からないので、この字形に従って解字すると、冥は日が上からも下からもおおわれて暗い意となる。
意味 (1)くらい(冥い)。光がない。「冥界メイカイ」 (2)道理にくらい。おろか。「頑冥ガンメイ」(かたくなで道理にくらい) (3)あの世。「冥土メイド」「冥福メイフク」(あの世での幸福) (4)目に見えない神仏の働き。「冥利ミョウリ」(神仏が与えてくれる御利益ごりやく)「冥加ミョウガ」(知らず知らずのうちに受ける神や仏の加護。おかげ)

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 「くらい」
(冥・瞑・溟・螟)
音の変化  メイ:冥・瞑・溟  ベキ:幎

くらい
 メイ・ミョウ・くらい  日部
解字 「日(ひ)+冥(くらい)」の会意形声。冥(くらい)意味に日(ひ)をつけて、日がくらい意とした字。冥には日が含まれており、くらい意味を念押しした字。
意味 (1)くらい(暝い)。夜。「暝天メイテン」(夜のくらい空)「暝途メイト」(暗い道) (2)「暝暝メイメイ」とは、さびしいさま。
 メイ・ミョウ・つぶる・くらい  目部
解字 「目(め)+冥(くらい)」の会意形声。目がくらくなる意で、目をつぶること。
意味 (1)つぶる(瞑る)。目をとじる。「瞑目メイモク」(目を閉じる)「瞑想メイソウ」(目を閉じて静かに考える) (2)くらい(瞑い)。よく見えない。 (3)目がくらむ。「瞑眩メイゲン」(目がくらむ。瞑も眩も、くらむ意)
 メイ・くらい・うみ  氵部
解字 「氵(水)+冥(くらい)」の会意形声。氵(水)は、ここでは海を指し、くらい地方にひろがる海をいう。中国では自分たちの地・中華に対し、そこからはずれた四方の極地を晦冥カイメイの地(くらやみの地)とする観念があった。その地に氵(水)がついた溟は、晦冥の地にひろがる果てしない水のうみの意[字統を参考]。
意味 (1)くらい(溟い)。小雨が降って暗い。遠く深く、うす暗い。 (2)うみ(溟)。おおうなばら。「溟海メイカイ」(おおうなばら。大海)「南溟ナンメイ」(南方の大海)
 メイ・ずいむし  虫部
解字 「虫(むし)+冥(くらい)」の会意形声。稲の葉柄や茎の中(くらいところ)に入り込んで茎や葉柄を食べる虫。

螟虫(「昆虫食彩館」より)
意味 ずいむし(螟)。くき虫。稲の茎を食う害虫。「螟虫メイチュウ・ずいむし」「二化螟虫二カメイチュウ」(年に二回発生する螟虫の二度目の虫。稲の株分けが終わり、穂の出る茎に被害を与える)「螟蛾メイガ」(螟虫が成長して蛾になったもの。苗代や田植の終わった水田のイネに産卵する。)
 ベキ・ミャク・おおう・きれ・とばり  巾部
解字 「巾(きれ)+冥(=冥土。あの世)」の会意形声。あの世に入った人の顔におおう巾(きれ)。

幎目綴玉ベキモクテイギョク(布の上に玉を顔の形に配置し綴りあわせ死者の顔に覆う。西周期。上海博物館蔵。写真は「ブログ上海旅行記」より)
意味 (1)死者の顔をおおいかくす巾(きれ)。「幎帽ベキボウ」(死者の顔をおおう顔かくし)「幎目ベキモク」(死者の顔をおおう巾きれ)「幎目綴玉ベキモクテイギョク」(布の上に玉を顔の形に配置し綴りあわせたもの。死者の顔に覆う。) (2)とばり。蓋う布。(=冪ベキ
<紫色は常用漢字>

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音符「童ド ウ」<わらべ>と「瞳ドウ」「憧ドウ」「鐘ショウ」

2023年06月01日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 ドウ・トウ・わらべ  立部

解字 金文第一字は、「辛(針)+目(め)+人+東トウ」。このうち「辛(針)+目(め)+人」は、針で目の上(ひたい)に入れ墨をされた人で捕虜となった奴隷を意味する。東トウはこの字の発音を表す。金文第二字は、人がとれて土が増えた字体。篆文は、目がとれて「辛+東+土」(辛と東は一部重複している)となった。現代字は、辛⇒立、「東+土」⇒里、に変化した童となった。童は、入れ墨をされた奴隷であり、奴隷は結髪を許されなかったので、おなじように結髪をしない「こども、わらべ」を童というようになった[字統を参考]。字形の変化が大きいので、ごろ合わせで覚えると便利。
意味 (1)わらべ(童)。わらわ。こども。「童話ドウワ」「童謡ドウヨウ」「童顔ドウガン」「童蒙ドウモウ」(幼少で道理にくらいもの。子供) (2)しもべ。召使い。罪によって、しもべとなった者。
覚え方  あの、たっ()ている、さと()の子は、わらべ(

イメージ 
 「わらべ」
(童・瞳・憧)
  元の意味である「どれい・しもべ」(僮)
  「形声字」(撞・鐘・艟)
音の変化 ドウ:童・瞳・僮・撞・艟  ショウ:鐘・憧

わらべ
 ドウ・ひとみ  目部

正面から見た目の「6瞳孔」が瞳ひとみ(「Lidea-目のしくみ」より)
解字 「目(め)+童(わらべ)」の会意形声。南北朝時代の字書[玉篇]は「目の珠子シュシ(丸い玉)也(なり)」とする。[説文解字]は、この字を載せていないが、瞳の意味である眸ボウの説明に「目の童子也(なり)」とする。目の中の丸い玉である「ひとみ」を目の中にある童子の黒髪の丸い頭に例えている。目を正面から見た時、目の中央部にある黒目の部分が「瞳孔(どうこう)」で、いわゆる「瞳(ひとみ)」の部分である。
意味 (1)ひとみ(瞳)。目玉の黒い部分。光の刺激は、ここから入り眼球内を通りぬける。眸ボウとも書く。「瞳孔ドウコウ」(眼の虹彩によって囲まれた孔。ひとみ)「瞳子ドウシ」(ひとみ) (2)(童子の目と解釈して)あどけなく無心に見る。「瞳焉ドウエン」(あどけなく無心にみる)
 ショウ・ドウ・あこがれる  忄部
解字 「忄(心)+童(わらべ)」の会意形声。わらべの心をいう。心が動くさまをいい、憧憬という語で、あこがれる意となる。
意味 あこがれる(憧れる)。「憧憬ショウケイ・ドウケイ」(憧も憬も、あこがれる意。強く望むこと)

どれい・しもべ
 ドウ・トウ  イ部
解字 「イ(ひと)+童(どれい・しもべ)」の会意形声。童は、もと「どれい・しもべ」の意であり、イ(ひと)をつけてその意味を表す。また、童子の意味でも用いる。
意味 (1)しもべ。めしつかい。「僮僕ドウボク」(めしつかい) (2)おろか。「僮蒙ドウモウ」(おろか)「僮昏ドウコン」(おろかで道理にくらい) (3)こども。わらべ。「僮児ドウジ」(こども)

形声字
 トウ・ドウ・シュ・つく  扌部  
解字 「扌(手)+童(トウ・ドウ)」の形声。トウ・ドウは動ドウ・トウ(うごく)に通じ、手で棒などを持ち、動かして物をつくこと。
意味 (1)つく(撞く)。つきあたる。つき鳴らす。「撞鼓トウコ」(太鼓をうつ)「撞球ドウキュウ」(玉つき。ビリヤード)「撞着ドウチャク」(①つきあたる。②つきあたって、くっつく=つじつまが合わない)「自家撞着ジカドウチャク」(同じ人の言行が食い違い、つじつまが合わない) (2)「撞木シュモク」とは、①鉦かねをうつT字形の棒、②つり鐘を打つ棒。「撞木鮫シュモクざめ」(先がT字の撞木形をした鮫)
 ドウ・トウ  舟部
解字 「舟(ふね)+童(=撞の略体。つく)」の会意形声。ついてゆく船。ぶつかってゆく船で、いくさぶねをいう。
意味 いくさぶね。「艟艨ドウモウ」(軍艦。いくさぶね。=艨艟モウドウ
 ショウ・シュ・かね  金部  
解字 「金(金属)+童(=撞の略体。つく)」の会意形声。ついて音をだす金属製のつりがね。日本ではお寺の釣鐘だが、現代中国では、時計の意でも使われる。

京都知恩院の大鐘楼(「浄土宗総本山知恩院HP」の「知恩院の建造物」より)
意味 かね(鐘)。つりがね。「鐘楼ショウロウ」(鐘つき堂)「鐘鼓ショウコ」(鐘と太鼓)「梵鐘ボンショウ」(寺院のつりがねをいう)「警鐘ケイショウ」(危急を知らせる鐘)
<紫色は常用漢字>

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