漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「善ゼン」<よい・正しい>と「膳ゼン」「繕ゼン」

2015年11月29日 | 漢字の音符
 ゼン・よい   口部         

解字 金文は、「羊(ひつじ)+言言(ふたりが神に誓って言う)」の会意。羊を神へのいけにえとして差し出し、争う両者が自分たちが正しいと言うこと[字統を参考にした]。両者が、よい結論を求めることから「よい・正しい」意となる。篆文もおなじく「羊+言言」、現代字は「羊+言言の略体[ソ+一+口]」に変化した。善を音符に含む字は、「よい」イメージを持つ。
意味 (1)よい(善い)。正しい。「善導ゼンドウ」「独善ドクゼン」 (2)すぐれた。りっぱな。「善行ゼンコウ」 (3)むつまじい。「親善シンゼン」 (4)りっぱに行なう。「善戦ゼンセン

イメージ 
 「よい」
(善・繕・膳)
音の変化  ゼン:善・繕・膳

よ い
 ゼン・つくろう  糸部
解字 「糸(いと)+善(よい)」の会意形声。糸でつくろってよい状態に直すこと。
意味 つくろう(繕う)。「修繕シュウゼン」(つくろいなおす)「営繕エイゼン」(建物の新築と修繕)「身繕(みづくろ)い」
 ゼン  月部にく
解字 「月(にく)+善(よい)」の会意形声。よい肉の意。転じて、おいしい御馳走を言う。日本では料理を並べる台を含めていう。
意味 (1)取り揃えた料理。「本膳ホンゼン」(料理の主となる取り揃えた料理。一の膳ともいう)「薬膳ヤクゼン」(漢方薬の材料を取り入れた料理) (2)[国]ぜん(膳)。料理を並べる台。また、その上の料理。「食膳ショクゼン」(食事をのせたお膳。また、料理)「膳部ゼンブ」(膳にのせるご馳走。また、料理人)「配膳ハイゼン」 (3)飯を数える詞。「一膳めし」 (4)かしわで。料理人。「膳夫かしわで
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「莽モウ」<くさぶかい> と「蟒モウ」

2015年11月25日 | 漢字の音符
 モウ・ボウ・くさ  艸部    

解字 篆文は、「艸(くさ)+犬(いぬ)+艸(くさ)」 の会意。草むらの中に犬がいる形だが、成り立ちについて諸説がある。後漢の[説文解字]は、「犬が草むらの中でウサギを追い、狩りをする形」とする。[字統]は、「犠牲にした犬とともに人を草むらに葬る形だが、草の茂るにまかせたところで草むらの意となった」という。現在の意味は、くさむらだけであり、犬も葬る意もまったくないので、[新漢語林]のように、「犬の身がかくれる草やぶの意」とするのが妥当かもしれない。現代字は、新字体に準じ「上の艸⇒艹、犬⇒大、下の草⇒廾」に変化した莽が使われている。
意味 くさ(莽)。くさむら。くさぶかい。「草莽ソウモウ」(①草の生い茂ったところ。②民間。在野)「草莽の臣シン」(官に仕えない民間の人)「莽蒼モウソウ」(ひろびろとした草野)「莽莽モウモウ」(草木の繁茂するさま。野原がひろびろと続くさま)「鹵莽ロモウ」(①塩分を含んだ土地と草深い野原。土地の荒れ果てていること。②軽率で不用心。粗略。)

イメージ 
 「草ぶかい」(莽・蟒)
音の変化  モウ:莽・蟒

草ぶかい
 モウ・ボウ・うわばみ  虫部
解字 「虫(へび)+莽(草ぶかい)」の会意形声。虫はここでヘビを表す。蟒は、草深いところに生息するヘビの意。巨大なヘビをいう。
意味 うわばみ(蟒)。大蛇。おろち。「蟒蛇うわばみ・モウダ」(①大蛇。ニシキヘビ。②大酒飲みのたとえ。)「巨蟒キョモウ」(おおへび)

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「壴ジュ」<たいこ>「鼓コ」「樹ジュ」 と 「彭ホウ」

2015年11月12日 | 漢字の音符
 ジュ・シュ・チュ  士部 
 壴(たいこ)
    
解字 上に飾り、下に台がある太鼓を正面から描いた象形。つづみを表す。この字が単独で使われることはなく、太鼓を打つかたちの鼓で使われる。

イメージ 
 「たいこ」
(鼓・瞽)
 「ジュの音」 (樹)
音の変化  コ:鼓・瞽  ジュ:樹

たいこ
 コ・つづみ  鼓部                

解字 甲骨文は太鼓を攴(うつ)形。篆文第一字は甲骨文と同じく「攴(うつ)+壴ジュ(たいこ)」、第二字は「支(=攴。うつ)+壴ジュ(たいこ)」の会意で、いずれもたいこを打つ形で、太鼓の意。現代字は右辺に支を用いた鼓が残り、日本・中国ともこの字が使われている。
意味 (1)つづみ(鼓)。たいこ。打楽器の一種。「太鼓タイコ」「鼓笛コテキ」(太鼓と笛) (2)うつ。たたく。「鼓動コドウ」 (2)奮い立たせる。はげます。「鼓吹コスイ」「鼓舞コブ
 コ  目部
解字 「目(め)+鼓(うつ)」 の会意形声。目を打つ形で、目が見えなくなること。
意味 (1)目が見えない。盲人。「瞽女ごぜ」(三味線などをひき、歌をうたいながら門付けをする盲目の女性) (2)おろか。道理にくらい。「瞽言コゲン」(でたらめな言葉)

ジュの音
 ジュ・き・うえる  木部      
解字 「木+壴(ジュ)+寸(て)」 の形声。「木+寸(て)」は、木の苗を手で立てて植えること。樹は、これに発音を表す壴ジュをつけた字。原義は、木を植えて育てること。また、立ち木の総称として用いられる。木を立てることから「たてる」意ともなる。この字で壴ジュ(たいこ)は、太鼓を鳴らす意味はない。
意味 (1)き(樹)。立ち木。「樹林ジュリン」「樹脂ジュシ」(針葉樹などから分泌される脂(あぶら)類の総称。松脂など) (2)うえる(樹える)。木をそだてる。「樹芸ジュゲイ」(草木を植えること) (3)たてる(樹てる)。うちたてる。「樹立ジュリツ



     ホウ <さかんなさま>
 ホウ 彡部

解字 「彡サン(ひびく)+壴(たいこ)」の会意。彡サンは、音がひびいたり色どりが美しいさま。ここでは音がひびく意で、それに壴(たいこ)がついた彭は、太鼓の音がさかんにひびくこと。
意味 さかんなさま。「彭彭ホウホウ」(物事がさかんなさま)

イメージ 
 「さかんに」
(彭・澎)
 太鼓の音が「ひろがる」(膨)
音の変化  ホウ:彭・澎  ボウ:膨

さかんに
 ホウ  氵部
解字 「氵(みず)+彭(さかんに)」 の会意形声。水の勢いがさかんなさま。
意味 水のみなぎるさま。水のわきたつさま。「澎湃ホウハイ」(①水の勢いがさかん。②物事が盛んに起こる)

ひろがる
 ボウ・ふくらむ・ふくれる  月部にく
解字 「月(からだ)+彭(ひろがる)」 の会意形声。体がふくらむこと。人以外にも移して使う。
意味 ふくらむ(膨らむ)。ふくれる(膨れる)。はれる。ふくよか(膨よか)「膨大ボウダイ」(①膨らんで大きくなる。②きわめて多い)「膨張ボウチョウ」(膨れて大きくなる)
<紫色は常用漢字>

<関連音符>
 キ・よろこぶ  口部
解字 「壴(たいこ)+口(祈りの言葉)」 の会意。口サイは神への言葉である祝詞を入れる器。喜は、神に祈りの言葉をささげるとき太鼓を打ち、神を楽しませること。神が喜ぶ意となる。
意味 よろこぶ(喜ぶ)。うれしがる。いわう。さいわい。「喜悦キエツ」(心から喜ぶ)「喜捨キシャ」(喜んで捨てる。金品を寄付する)「喜劇キゲキ
イメージ  「よろこぶ」 (喜・嬉・禧)、 「キの音」 (鱚)
音の変化  キ:喜・嬉・禧  きす:鱚
音符「喜キ」を参照

            バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする